激しく斬り合う二機だったが、AGE−2はゼイドラに押されて巨大な岩塊に叩き付けられていた。
ビームサーベルを突き出され、アセムは死を覚悟した。
しかし、ゼイドラのビームサーベルはAGE−2の左脇を掠めて岩塊の表面に突き立てられただけだった。


『これが、Xラウンダーの力だ、お前が戦いに向かない理由は、甘さだけじゃない』


そう言いゼハートはゼイドラの武器を収める。


『アセム、二度と私の前に現れるな』


そう言うと、ゼイドラはゆっくりと浮かび上がり、そのまま飛び去っていった。
追おうとAGE−2を動かそうとするが、スパークを起こした機体は動かせなかった。
モニターに映るゼイドラの位置表示に思わず手を伸ばすが、アセムはそれを強く握り締める。


「・・・ゼハート・・・」


なんだよそれ、
そう呟いてアセムは表情を歪めた。










ディーヴァに戻ったGアルターとAGE−2の損傷具合に整備班が悲鳴をあげた。
アデルから降りてきたアリーサとマックスも、オブライトもウルフも二機のパイロットに駆け寄った。

コクピットハッチを開いて出てきたにアリーサが駆け寄る。


!お前がこんなにやられるなんて・・・!大丈夫だったのか!?」

「・・・僕は問題ない。機体を損傷させて、すみませ・・・」

馬鹿野郎!!


ディケとウルフに向かって言うの言葉を遮ってアリーサが声を張った。
そのままの腕を引いてその小さな体を抱き締める。


「・・・心配したのはお前だよ・・・馬鹿・・・!」

「・・・ガンヘイル伍長・・・」

「アセムみたいに名前で呼べよ。


身を屈めてアリーサが手を伸ばす。
短い髪をかきあげられ、深紅色の瞳が露になる。
本当に怪我してないか、と言いアリーサは頬やら肩に触れる。
なんだかこそばゆくなり、問題ない、と言いは離れる。
そのまま逃げるようにAGE−2に取り付いてコクピットハッチを開く。
中に居たアセムは意気消沈した様子で、力なく顔をあげた。


「・・・すまない、アセム。僕があれの相手をすると言ったのに・・・」

は、分かってたのか?」


細い声が届く。
何が、とは問わなかった。


「Xラウンダーの力で、分かってたのか。あれがゼハートだって・・・!」

「・・・ああ、感じた」


そう答えるとアセムは何故か傷付いたような瞳をに向けた。
小首を傾げ、彼を覗き込むように身を屈める。


「そうだよな・・・お前、超Xラウンダーだもんな」


アセムはそう言うとの横を通ってコクピットから出て行った。
その後アセムは着替えをし、自室に篭ってしまったようだが。
身体検査は異常無し。
戦いたくない相手と戦ったという。には良く分からない感情だが、一人で居る時間は必要かもしれないと思った。

思った、のに。

今現在はウルフに連れられて通路を移動している。
困った。Gアルターの状況も見たいのに、それに、整備班に機体の事も話しておきたかった。
けれど、上官に「着いて来い。命令だ」と言われては断る訳にもいかない。
前から歩いてきたミレースが「あら」と声をあげる。


「ウルフ、何処へ行くの?」

「こいつを当てようと思ってな」


そう言うとミレースの後ろに居たロマリーが頭を動かす。
と視線を合わせると、あら、と声をあげる。


「この子を、どうするの?」

「だから、アセムに当てるんだって」


考える時間はやったんだ。次のステップ行かねぇとな。
そう言うウルフにロマリーは小さく息を吐く。
彼女の様子に気付いたはじっと彼女を見詰める。


「・・・アセム、もしかして・・・」


そう呟く彼女の瞳はアセムを思っているというよりは。
そこまで考え、は頭を振った。
自分には関係無い事だ。今はとりあえず、与えられた命令をこなすだけ。

そう思いながらウルフに続いていく。
ウルフはロックの掛かっていない部屋を勝手に開いて「アセム」と声をかける。
背を押されてが室内に押しやられた直後、ドアが閉まる。
え、とお互い瞳を丸くする間に、ウルフはそのまま何処かへ行ってしまったようだった。

暗い室内で、無言で見詰め合う。
アセムはベッドから起き上がり、ライトをつける。


「・・・なんなんだ?」

「すまないが、理解不能だ」


そう言い立ち尽くすに小さく息を吐いて、アセムはベッドの横を軽く叩く。
アセムの仕種の意味が分からないは小首を傾げるだけで、動こうとはしない。
それに気付いたアセムは「来いよ」と今度は声に出してを誘った。
アセムの隣に腰を下ろしたを見下ろしながら、彼は口を開く。


「・・・な、怪我とかは無いのか?」

「アリーサと同じ事を聞く。問題は無い」

「そうか・・・なぁ、なんであんな戦い方したんだ?」


腕を犠牲にして、相手を取ろうとした。
アセムの言葉には彼を見つめ返す。


「右足のバーニアが不調だった」

「えっ」

「多分、機体がついてこれていなかった」


淡々と述べるにアセムが瞳を見開く。
そういえば、ゼハートもそのような事を言っていたかもしれない。
そう思い返し、アセムは慌てて立ち上がる。


「そ、それ!早く整備班の人に伝えに行かないと駄目じゃないか!」

「・・・伝えに行こうとしていた」

「じゃあ今から・・・!」


アセムがそう言いドアに向かおうとした時、くんと後ろに引かれる感覚がした。
振り返ってみると、がアセムの軍服の袖を掴んでいた。
先ほどのアセムのように、ベッドをたしたしと叩くに、アセムは視線を彷徨わせる。


「で、でも」

「ぶつければいい。なんでも。言いたい事。僕は、聞ける」


途切れ途切れで不慣れな言葉を紡ぐ。
アセムが瞳を丸くし、そのまま再び腰を下ろす。
じ、とお互い見つめ合う中、アセムは「えっと」と言う。


「つまりは、なんだ。お前に愚痴れって?」

「なんでもいい。アセムが思っている事を言えば良い」


つまりはそういう事じゃないか。
そう思いながらアセムは大きく息を吐いた。


「・・・Xラウンダーの力って凄いんだな」


どういう物かはよく分からないけど、強さの根底にあるものならば。
アセムはそう思いながらを見る。


「なぁ、お前の親父さんに頼めば俺も超Xラウンダーにしてもらえるのか?」

「・・・分からない・・・アセムはXラウンダーになりたいのか」

「それで、あいつに勝てるのなら・・・!」


拳を強く握るアセムに、は何も言わなかった。


「俺を見逃したのなら・・・俺には戦場に立つ力がないっていうのか・・・!Xラウンダー、俺だって・・・!」


そう言い瞳を鋭くさせるアセムを、はただじっと見詰めていた。





あの後、アセムは「悪いな」と言いの頭を撫でた。
瞳を瞬かせている間に彼は立ち上がり、を連れて格納庫へ向かった。
そこでAGE−2に向かったアセムを横目で見つつ、はディケの下へ向かった。
丁度Gアルターの整備をしていたディケは直ぐにを気遣った。


「おお!大丈夫だったか!?」

「問題ありません」


簡単に答え、は彼を見上げる。
ディケは「それならよかった」と言いの頭をわしゃわしゃと撫でた。


「・・・相手の赤い機体。あれとやりあうにはGアルターの現在の機動力ではスラスターが負けます」

「・・・これ以上機動力を増せってか!?馬鹿言え、そんな事したらお前さんが・・・」

「Gには耐えられます。それに、今の現状では僕についてきていない。こんな事の繰り返しです」


淡々と告げるにディケは眉を潜める。
優しい父親であるディケは、正直には戦って欲しくない。
それなのに、こんな要求をしてくるとは。
しかし、現状彼女を戦わせるしかない自分が出来る事は、彼女を生かす為に機体を整備する事だった。
大きく息を吐いて、「仕方ないか」と呟く。


「艦長に話を通してからだ」

「ありがとうございます」


はそう言い綺麗な敬礼をした。
まだ12歳の少女なのに。
本来なら学校に通い、友だちと共に勉学に励んでいる年齢だろうに。
どうしてこんな所に送るんだ。
そう思いながらディケは再び彼女の頭を撫でた。




アセムはXラウンダーとして戦わされているよりもXラウンダー能力があるから戦えるという考えに惹かれ始めます。
アリーサちゃんお尻ぶっ叩いてやって!