戻ってきてから、あたらと甘えん坊になった奴が一人。
コーリンゲンから少し離れた草原で、二人で暖かな日差しを浴びていた。
くしゃり、とそいつの頭に手を置いて髪を混ぜてやるとそいつはくすぐったそうに身じろいだ。
寝転がり、座る自分の腰に腕を回して膝に乗せた頭を少しだけ動かして、そいつは此方を見上げてきた。
「、くすぐったい」
「・・・じゃあ起きろ、甘えん坊」
そう言って耳を抓ってやると彼は「イテテ」と言って少しだけ暴れた。
仕方なしに起き上がるロックに、は足を寛げる。
「それにしても、私が戻ってからの一月、お前はずっとこんな感じじゃないか」
今も、簡単な所へトレジャーハントに行っている彼だが本当に直ぐに戻ってくるし、一緒に行ったりもする。
それでも、
「・・・お前がこんなにべったりくっ付きたがる奴だとは思わなかったぞ」
がそう言うとロックはクスリと笑みを零した。
「前にも言ったけどな、」と彼は言い、彼女の頬に触れながら続ける。
「こんなんじゃなかったんだぞ? のせいだ」
「私のせいか、」
「そう、のせい」
何で、とは聞けずには彼の好きにさせる。
頬を撫ぜる彼の手に、擦り寄りながら彼女はゆっくりと瞳を伏せた。
「一月、」
「ん」
「が還って来て、一月だ」
「ん、そうだな」
そう受け答えしていると、不意に彼に引かれた。
彼の胸に頬をつけ、好きにさせていると柔らかな動作で背に腕を回された。
「俺が待ってた期間は、三年だ」
「・・・うん、」
彼にそう返しながら、は彼の背に腕を回した。
その手で、背をぽんぽんと撫でてやるとロックは肩口に顔を埋めて来た。
甘えたになってしまったのは私のせいか。
そんな事を思いながら、は彼の頭に手をやった。
「・・・ロック、大丈夫、私はずっと此処に居る」
「・・・うん、分かってる、俺が放さないから」
そう言った後、ロックはふと離れ、の両肩に手を置いたまま微笑んだ。
何かを思いついたようにはにかんでみせた彼に、は小首を傾げる。
「・・・よし! ちょっくら出るか!」
唐突にそう言うロックには瞳を丸くして「え」と短く声を漏らす。
出るとは、何処へ?
戻ってきてから皆にも会ったし、コーリンゲンを出るといっても、
そこまで考え、ふとは顔を上げる。
思い当たったのは―――、
「・・・トレジャーハント?」
そう呟くと、彼は「分かってるじゃないか」と言い笑った。
立ち上がり、服の埃を払った。
「今までもちょくちょく行ってたけど、もっと大物が必要になったからな」
「何時?」
「今、だ」
なんで、と思いつつもも立ち上がる。
「私も、着いて行った方が良い?」
そう問うと、ロックは頭をかきながら「うーん、」と声を上げた。
微妙に悩んでいる様子の彼にが「待っていようか?」と問う。
それにまた彼は「うーん、」と曖昧な返事をするだけだった。
「・・・悪いんだけど、は家で留守番しててくれないか?」
「別に良いんだが・・・、」
何処か複雑な表情を浮かべるロックに小首を傾げつつも、は頷く。
「よろしくな」と言って彼はの手に触れてきた。
それにまた小首を傾げると、彼はちょっぴり照れくさそうにはにかんで、
「村まで、こうしてて良いか?」
と、問うてきた。
「暫く留守にするから、」という理由らしい。
それには金色の瞳を細めて、小さく「仕方ないな」と呟いた。
新章始まり始まりー。
ED後のお話になります!