「正直、犯罪だと思う」



ズバリ言う。と言葉を付け足した後に真顔でそう、本当にズバリと言った少女、を見下ろしながらフィガロ国の若き王、エドガー・ロニ・フィガロは溜め息を一つ落とした。



「君は本当に正直だね・・・」

「お前が正直に言えと言ったんだろう、王様?」



下から挑戦的な瞳を向けてくるにエドガーはまた溜め息を一つ落とす。
そんな彼の動作を見てはムッと眉を寄せて腕を組んだ。



「何だ、溜め息ばかり吐いて、思った事を言っただけだろうが」

「・・・暫く合わない内に少しは素直になっていると思ったが・・・変わらないな、君は」

「王様も相変わらずの女好きで」

「・・・紳士的と言って頂きたいな」

「本物の紳士が可哀想だ、止めておけ」



またしてもズバリそう言う。

少々気落ちしたエドガーに目もくれずは顎に手を当て、思案に耽った。


ちなみに何故この様な会話をしているかというと、自分の居ない間にエドガーが仲間に加入したリルムを口説こうとしたらしい。
本人如く、「女性が居るのに口説かないとはマナー違反。礼儀だよ、れ・い・ぎ!」との事らしいが其れを聞いたは「お前は礼儀を辞書で引け」と思わず口に出した。


ほう、と息を吐いて考えを纏める。


エドガーはそう言ったに少々不安気な表情で「やはり犯罪だと思うかね?」と聞いてきたのでは素直に冒頭の言葉を述べたのだ。
流石にズバリと言うのは如何かと思っただったがエドガーに「正直に言ってくれたまえ」と言われたので遠慮無くズバリと正直に言う事にしたのだ。


それで何故溜め息を吐かれなければいけない。

はそう思い顎から手を放し、エドガーを再度見上げた。



「・・・取り敢えず、身内の目に留まらない内に犯罪から手を引け」

「何だねその言い方は・・・! 私は唯女性を尊重しているだけなのだよ!」



そう言いつつドサクサに紛れての金の髪を手に取るエドガー。
勿論はそれをパシンと叩き落し、一歩後退した。

そんなにエドガーは苦笑し、「つれないね」と呟く。



「好い加減遊んでないで特定の相手を決めれば良い物を・・・。
 あ、ティナとセリスは駄目だぞ」

「君なら良いのかい?」

「だから遊ばないで特定の相手を決めろ」

「君は・・・、」



するり、と頬に手が伸ばされる。

優しい手つきでの頬に手を沿え、空いてる手で彼女の腕を掴み引き寄せる。

身体と身体が一気に近付いても、は臆す事無く唯真っ直ぐにエドガーを見上げた。


エドガーは、ふ、と微笑みを浮かべてに顔を近付けた。





「もし、私が本気だとしたら?」





君は如何する?




言葉にその意味を込めて、じ、と彼女を真っ直ぐに見詰めた。

は少しの間黙っていたが、直ぐに口の端を吊り上げると彼女もまた、手を伸ばした。


伸ばされた手は、エドガーの頬へと触れた。


間近で見る美しい微笑みにエドガーが見惚れた其の時――、



「痛ッ!!」



ギュウウウウウウ、とが思い切り力を込めて彼の頬を抓った。

表情を苦痛で歪めたエドガーには悪戯っぽい笑みを浮かべてパッと手を離した。
コートを翻して、彼女は身体を反転させ歩を進める、
そんなにエドガーは思わず「!」と彼女を呼び引き止める。

立ち止まったはクルリ、と振り返る。
頭の上で結わいている髪が、身体の動きに合わせて舞う様に揺れる、

その動作にも思わず見惚れかけたエドガーに、は悪戯っぽい笑みを浮かべたままこう言った。



「寝言は寝て言うものだ、王様」



そう言うと満足した様に彼女はまたクルリと身体を反転させ、歩を進めて行ってしまった―。


一人残されたエドガーは彼女の後ろ姿を見つつ、笑みを一つ零した。
そして「ああ、」と呟き、額から頭にかけて手を当て、ガシガシとかく。
髪形が崩れるが、別に今の彼には如何でも良い事だった。


ふ、と口の端を吊り上げてエドガーはポツリと呟いた。



「本当に君は正直だな、」



照れ顔もまた可愛らしい―、



【END】

何だこれ、エドガー夢・・・?(笑)
でもエドガーは冗談で言った訳でに恋愛感情がある訳じゃあありません、
ロック→←+エドガー(見守る人)みたいな?(笑)

何だかんだで免疫が余り無いは照れてます。
身近な人にしか分からない様な些細な変化です、
つまり、抓りは照れ隠しといいますか、ゴニョゴニョ(…)