ぴたり、と手と手が触れてしまうと彼はとても恥ずかしそうにする。
それに釣られるように、つい私も頬を染めてパッと手を引っ込めてしまう。
(本当は、もっと触れていたいのに、)
ずっとずっと好きだった。
漸くお互いの中の蟠りも無くなり、素直に思いを伝え合って恋人という物になったのに、
(あんなに、抱き寄せてきたりしてきたくせに、)
そう思いながら思わず頬を膨らます。
子供染みた行為だが、今はそれをやっていないとやってられない気分だった。
頬を膨らませた私に気付いたのか、彼はあたふたと慌てた様子で私の前へ立つ。
「あー、」だとか「うー、」だとか声を上げた後、頬を真っ赤にして私を見やる。
お前はこんなにもヘタレだったか?
皆の前では何時もと変わらず接してくれるのに、二人になるとこれだ。
どうして、と思い彼を見返すと、彼はおずおず、と言った様子で手を差し出してきた。
何だそのおっかなびっくりな動作は。私は別にお前を取って食ったりはしないのに、
そう思っていると彼はきゅ、と私の手を握った。
そしてそれをゆっくりと持ち上げ、私の手に口付けを一つ落とす。
「・・・好きだ。 好きすぎて、触れるのが怖い」
ポツリ、とそう零す彼。
意外な言葉に私は瞳を丸くして彼を見返す。
「二人きりになると、緊張するんだ。
・・・好きすぎて、さ。ほら、今もこんなに、」
ドキドキしてる。
そう言って彼は私の手を自分の胸に触れさせた。
確かに、速い鼓動が伝わってきて、私は笑みを浮かべた。
馬鹿にされたと思ったのか、彼は「笑いたきゃ好きなだけ笑えよ・・・!」と言って俯く。
私は「ばか、」と言って首を振り、一歩前へ出て彼の胸に額をつける。
間近に感じる彼の体温、香る彼の香りに心地よさを感じて瞳を閉じる。
彼の背に手を回し、「ロック」と彼の名を呼ぶ。
それに何故か彼は慌てた様子で「あ、はい!?」と返事をする。
はいってなんだ、はいって。と思いつつも私はぎゅ、と彼に強く抱き着いて体を密着させる。
それに彼は焦った様に「あ、ちょ、・・・!」と言って来るが無視だ、無視。
「聞こえるか?」
「えっ?」
「私も、こんなにドキドキしてる・・・」
そう呟くと、彼は私の鼓動を感じ取ったのか、「・・・ほんとだ」と呟いた。
そして私の背後でどうしたら良いか彷徨っていたらしい手を背に回して、優しく私を抱き締めてくれた。
「・・・好きだ、・・・」
「そうか・・・。 ・・・私は、大好きだ」
そう言い、彼の胸元に顔を埋めた。
照れているのは、お前だけじゃないんだぞ。
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