「君の手って、おっきいね」


ニコニコと笑みを浮かべながらそう言ってくるのはSeeD試験を受ける為にガルバディアガーデンから編入して来た少女、

は手袋を外したスコールの手に自分の手を徐に重ねると、「おっきいね」と言い笑ったのだ。
スコールからすれば男女の差は当然の事、何がそんなに嬉しいのか楽しいのかが解らず眉を寄せた。

そもそも、スコールとこの編入生は教室では隣の席だが大して仲良くも無い。


行き成りこっちを向いたかと思うと、何だ、コイツ。


そう思いながらスコールは自分の前でニコニコしているを半ば睨む様に見た。

は其れに怯む事無く笑顔の儘スコールに「ねえ、」と口を開く。


「お名前は?」

「・・・・・・別に、言わなくてもいいんじゃないか?」

「隣の席になったんだからさー良いじゃん!
 私は! !」


「よろしく!」と、言って重ねていない方の手を握手の為に差し出してくる。
スコールはそれに答える事無く横目でを見ているだけだった。

手を差し出す気の無いスコールに気付いたは強引にスコールの手を掴み、ブンブンと上下に振った。
スコールは「おい・・・」と戸惑いの声を上げるがは気にせず「握手ね!」とこれもまた笑顔で言った。


「・・・アンタ、何なんだ」

「アンタじゃないの! !今さっき自己紹介したばっかだしょうがー」


そう言いスコールと握手をする手に力を込める(少し痛いbyスコール)
それに痛がるスコールに気付かずは「で?君のお名前は?」と再び問うた。


「(
この調子じゃあ、言うまでこうだな・・・)・・・スコールだ」

「苗字は?」

「(
名前だけで十分だろ)・・・レオンハート・・・、スコール・レオンハートだ」


渋々ながら、スコールがそう言うとは満足そうに微笑み、頷く。
「レオンハート君ね? よろしく!」と言いは両手でスコールの手を掴んでまたブンブンと上下に振った。
そんなに呆れの色を露にしながらスコールはを見た。


何で苗字呼びなんだ、アンタ

「ん?何?」


見られている事に気付いたが小首を傾げる。
其れに対してスコールは「別に、」とだけ返しそっぽを向いた。




―次の瞬間、





人と話す時は人の目を見るのよーレオンくーん




ぐりん





思い切り顔の両側を手で挟まれて前を向かされた。

視界が一気に回ったかと思ったら次に目に留まったのはの瞳。
彼女の瞳は不思議な色をしていて、

赤の様な、紫の様な、美しい輝きを放っていた―。


突然の事に咄嗟の判断が出来ずにスコールは瞳を少しだけ大きくして、を見据えていた。

で、瞳を丸くしてスコールを見詰めていた。


・・・何か、レオンハート君って仏頂面不機嫌無口君だと思ったけど、違ったっぽいなぁ・・・


こんなあどけない、子供みたいな顔も出来るんだから。


がそう思っていると、何が起こったのか段々理解してきたのか、スコールの眉間に見るみるみる内に皺が寄って行った。
それを見てがお得意の笑顔でこう言う。


「レオン君、そんな顔してたら将来大変かもよ?」


皺もそうだけど、下手したら禿げるかもよ?

その様な意味を込めてスコールを見ると、スコールはどうでもよさそうに瞳を細めて口を開く。


「・・・アンタには関係無いだろ」

「・・・・・・!」


スコールの言葉には一層瞳を大きくした。
それを見てスコールはが傷付いたのかと思ったが、は直ぐにコロリと表情を戻しニッコリと笑った。


「うん、そうだね。 私には関係無いね」


はそう言った後に「でもね、」と言い言葉を付け足す。


「今は関係あるよ? 同じクラスで、隣の席になったんだからね!よろしくー!」


ニコニコと笑いながらそう言ってくるにスコールは溜め息を一つ零した。
そんなスコールを気にせず、は学習用パネルの電源を入れ、スコールを見た。


「ねぇねぇ、これってどーやんの?」

「・・・ガルバディアガーデンには無かったのか?」

「似たようなのはあったよ。でも違うっぽいからさー・・・
 教えてくんない?レオン君」

・・・さっきから、レオン君って何だ


スコールはそう思い眉を潜める。
彼のそんな表情を拒否と感じ取ったは「あ、嫌ならいいんですぜい?」と言った。

スコールは少しだけ腰を浮かし、に近付いてパネルに手を伸ばした。

それに大しては瞳を丸くするが、スコールは気にせずにカタカタと音を立てて操作をしていく。


「・・・何がしたいんだ?パネルで」

「・・・あ、う、うん・・・。 G.F.をちょっと見たくって・・・」

「(
確か他のガーデンではG.F.の使用が禁止されていたな・・・)・・・アンタのG.F.はどんなだ?」

「シヴァだよ。氷属性の。 レオン君のは?」

「・・・・・・」


G.F.確認のページ画面を見ながら言うだが、少し経っても返答が無いのを不審に感じ、「レオン君?」と言いスコールを見やった。
スコールはパネル画面を見たまま溜め息を一つ落とすと、口を開いた。


「何だ、その"レオン君"っていうのは」

「・・・レオンハートのレオン取ってレオン君」

「・・・だから、何で苗字を使うんだ」

「苗字呼び嫌だった? あ、じゃあスコール・・・でもこれじゃあ面白げが無いよねぇ・・・」


面白げ?とスコールが思っているとは少しだけ思案に耽ったが直ぐにポン、と手を打ってスコールに微笑みを向けた。


「スッコー!これでどうよ!バッチグーでしょ!」

「・・・・・・普通に呼べないのか」

「・・・スッコーでいくない?」

「(
だから、何であだ名をつけるんだ・・・)・・・別に」


スコールがそう言うとは「じゃあ、スッコーって呼ぶね」と言いパネル画面に視線を戻した。

其れとほぼ同時にスコールがに視線を向ける。


微笑む彼女の横顔は、よくよく見ると何処か物憂げだった―。


さっきまでニコニコ笑ってたの変異にスコールは少しだけ戸惑ったが、直ぐに雑念を払うように首を振った。


・・・俺には、どうでも良い事だ・・・


他人と深く関われば抜け出せなくなるから―。


他人と深く関わりたくない。


スコールはそう思いながらのG.F.・シヴァを試しに彼女にジャンクションさせた―。


彼女は其れにふわりと微笑みを浮かべ、ニコリとスコールに笑顔を向けた。



彼女の蝶の飾りが、音を立てて揺れた。



【END】

本編前の話・・・って、六話まで本編前なんですが(失笑)
長編前って事で! スッコー呼びの経由と二人の馴れ初め編、でした!
未だなんかお互い遠ざけあってますがはこの時ら辺からスコールを理解していきます。
もっともっとスッコーの事知りたい、力になりたい、と思いなんか居心地の良い彼の隣で過ごしていく内にー一話に入ります(え)

ちなみに途中でがスッコーの言葉に目を見開いたのは自分と同じ臭いを感じたからです(獣か)