「索敵システムに反応有り!MSらしき機影6!」

「ヴェイガン機体データと照合します」

「総員戦闘配備!」


ミレースの指示にCIC席に座っているロマリーが声を張る。


「総員戦闘配備、総員戦闘配備!」


それを耳にしながらミレースは敵の対応の早さに疑問を抱く。
何故、こんなに早く。


この艦がガンダムを積んでいるのを知っているっていうの?

「これは訓練ではない、総員戦闘配備」

「照合終了、ヴェイガンのMS、ドラドです!」

「MS隊、緊急発進!直ちに迎撃態勢を取れ!」


兎に角、敵が来た以上迎撃しなければならない。
ミレースは指示を出し、眼前の敵部隊を見据えた。





『ウルフ少佐、出撃です。もたもたしないでくださいよ?』

「あんまりカリカリしてっと、おばさんみたいだぞ」


通信相手のイリシャにウルフがからかい混じりに言う。
不愉快そうに表情を顰めた後、彼女は通信を切断した。
振り返り、部下たちを見てウルフは笑う。


「聞いたか?いよいよウルフ隊の初陣だ」


パイロットスーツに着替えたアセムたちの表情には、緊張があった。
ライだけが無表情であったが、ウルフは全員を見渡す。


「その前に一言言っておく。
 せっかくイジメ甲斐のある部下ができて、楽しみが増えたところなんだ。
 いいか、全員生きて帰って来い!操縦桿にかじりついてもな!」

「「「「はい!」」」」


格納庫内に声が響く。
敬礼をした部下を見返した後、ウルフはまたの頭を撫でてから自分の機体へ向かった。
は今度は自分の手を頭に乗せてみせたが、よく分かっていないようで小首を傾げていた。
そんなにアセムたちは少しだけ表情を緩め、それぞれの機体へ向かった。

はGアルターに乗り込み、いつも通りに起動作業をこなしていく。
メインカメラが起動し、モニターに周りの様子がよく見える。
アデルの準備は出来ているようだが、どうやらガンダムAGE−2は最適化作業がまだ終わっていないらしい。
ディケが後5分待つようにとアセムに言っている。


『アセム!お前は後から来い。ガンダムを待ってる時間はない!』


ウルフの声が響く。
アセムは初陣から気が逸っているようだったが、機体が出れない以上は仕方が無い。


『準備はいいな?ウルフ隊、出撃だ!!』


アデルとジェノアスUがカタパルト発進位置へ移動していく。


『オブライト・ローレイン、ジェノアスU、出る!』

『アリーサ・ガンヘイル、アデル2号機、出ます!』

ジェノアスUとアデル2号機が同時に出撃する。
ディーヴァの左舷、右舷から射出したそれは真っ直ぐに進んでいく。


『マックス・ハートウェイ、アデル1号機、発進します』

『ウルフ・エニアクル、Gバウンサー、出るぞ!』


くるりと宙で回転してから飛翔する。
それを見た後に、もカタパルトに移動する。


「SW−1・・・・Gアルター、出撃」


ウルフ隊が出撃をする。
は出撃して直ぐに、瞳を細める。
Xラウンダー能力のせいで感じる。
敵が来るであろう位置。敵の数など、全てを。
警告音より早く、Gアルターを動かす。


『来るぞ!』


ドラド部隊がビームライフルを放ってくる。
ウルフ隊は散開してそれを避けてドッズライフルを構え応戦する。
Gバウンサーはドッズライフルを放ち、左側のドラドに直撃させる。
敵の間を高速で通りぬけ、敵の攻撃を避けて背後から撃ち落す。


『ィヤッホー!!!』


楽しげに機体を駆るウルフ。
それとは対照的にアリーサたちはぎこちない動きをする。


『これが・・・戦場・・・!』

『アリーサ君!行くよ!』

 はい!』


アリーサとマックスのアデル1号機、2号機が連携して攻撃をするが、全てドラドに避けられる。
焦り声をあげる二人にウルフが声を張る。


『お前たち落ち着け!よく見て狙えば当たる!』


よく見て撃つんだ!
ウルフの言葉にマックスが復唱しながらドッズライフルを構える。
落ち着いて狙い、見事にドラドに命中する。


『当たったっ!』


歓喜の声があがる。
しかし戦場での油断はいけない。
別の機体がミサイルを放ちマックス機を狙う。
咄嗟にアリーサのアデル2号機が1号機を突き飛ばし、シールドで防御をする。
しかし全て防ぎきれずに、吹き飛ぶ形となる。


『うあああああ!』


そのまま敵機がアリーサの2号機に迫る。
コクピット内で思わずアリーサはきつく目を閉じる。
直後、


「知ってた」


が呟く。
急降下してきたGアルターがドラドを蹴り飛ばす。
よろけたドラドにビームサーベルを振るい、真っ二つにし、撃破した。


!』

「油断はいけない」


短くそう言うと、はそのまま放たれたビームを避けてドッズライフルを構える。
避けたドラドを追撃する事はせず、そのまま味方の援護に回る。

初陣であるアリーサたちが居るのだ。
出来る者だけが動いても余計な犠牲者が出るだけだ。
此処は彼女たちを援護しながら連携を取るべきだろう。
そう思いながらはマックスのアデル1号機を援護する。

その間にアリーサのアデル2号機がドラドに追撃される。
ビームライフルをシールドで防いでいたが、吹き飛ばされる。
追撃される2号機。
ウルフたちが焦りの表情になる中、だけは落ち着いていた。

来る。

そう思った直後、大出力のビームがドラドを貫いた。
Gストライダーが来たのだ。


『遅くなりました!ウルフ隊長!』

『遅れた分、きっちり仕事してもらうぜ』


ウルフの答えにアセムは「はい!」と返事をする。
ミサイル発射にも怯まず、MS形態となったAGE−2はビームサーベルを振るい切り払う。
一気に間合いを詰めて敵機を撃破する。


『すごい・・・』

『これが・・・』

『ガンダム・・・』

『なかなかやるじゃねぇか!』


ウルフ隊がそれぞれ声をあげる。
もそれを見つつ、アデル1号機に迫るドラドと切り結ぶ。
それを押しやった後、追撃をくらい右腕を破壊された2号機の援護に回る。
が、危惧されたのかドラド2機に一気にGアウターが押さえ込まれる。

コクピット内に警告音が鳴り響く。
両側を捕まれたGアウターの中で、は落ち着いていた。


!クソッ!これじゃ手が出せない!』


ドラドの尻尾の部分にあるビーム砲がチャージされていく。
はそれを見つめつつ、ドッズライフルを構えてAGE−2の背後に迫っていたドラドを威嚇射撃する。
直後、Gバウンサーがビームを放ち、Gアウターを拘束していたドラドを破壊する。

抜け出したGアウターにGバウンサーが背を合わせる。


『大丈夫か!?』

「問題無い・・・です」

『仲間思いも良いが、自分を大事にしろよ!』


やっと調子が出てきたぜ。
ウルフはそう言いGバウンサーを動かす。


『これがウルフ隊長、白い狼!・・・残りは!?』


残るは2機。
ドラドが合流したところをアセムが狙う。
しかしそれをウルフが止めた。


『待てアセム、撃つな!』

『何故です!?』

『位置関係を把握しろ!こちらの射線上にディーヴァが入る!』


丁度ドラドの後ろにはディーヴァがあった。
万一AGE−2の攻撃が外れた場合、ディーヴァに危害が及ぶ。


『下手をすれば、ディーヴァに直撃するぞ!』


話している間にドラドはディーヴァの下へと向かう。
アセムがそれを見てAGE−2で追いかける。


アセム!・・・オブライト、!マックスとアリーサをお前に預ける!』

『『了解』』



ウルフの言葉に従い、とオブライトは損傷したアデル1号機2号機の回収にあたる。
ディーヴァでは近付くドラドへ迎撃しようとするが、AGE−2の距離が近い為に巻き込んでしまう可能性を危惧する。


『アセム、ディーヴァの射線上から離れなさい!』


それでもアセムは機体を動かさなかった。
真っ直ぐにドラドを追い続ける。


『アセム伍長!これは命令です!』


ミレースの声が響く。
アセムはAGE−2でドラドの間を通りぬけ、ブリッジの直前で変形して停止する。
下手をしたらディーヴァのブリッジへ激突するところだった。
そのままAGE−2はハイパードッズライフルでドラド2機を撃墜する。

アセムの行動にアリーサたちは驚きの声をあげる。
ウルフは眉を潜め、は小さく息を吐いた。


『勝った!やりましたよ!全機撃墜!!』


アセムは嬉しそうに声をあげる。
モニターには嬉しそうに笑うアセムの顔が映る。
は無言で視線を逸らし、小さく息を吐いた。


『やれやれ・・・』

『やりましたよ、俺!やりました!』

『俺は息子にまで振り回されることになりそうだな』


ウルフの声が響く。
はアデル2号機を抱えたまま、そのままディーヴァを目指す。
オブライトと共にアデルを収容し、コクピットから出たはアデル2号機に取り付く。
アリーサが降りるのを手伝う。


「・・・ありがとう、


は黙ったままアリーサに外傷が無いかを確認する。
そのまま彼女に握られた手を取り、床に下りる。


「・・・情けないね・・・あんたに助けられちゃった」


そう言うアリーサを一瞥し、は視線を逸らす。
初陣なのだから仕方ない。
そう思いながらその場を去ろうとしたを、アリーサが呼び止めた。


「なぁ。どうして敵が来るって分かったんだ?」


それがXラウンダーの力か?
そう問うアリーサに頷きながら、はその場を離れた。
その様子を見ていたマックスが肩を竦める。


「やっぱり、少し気味悪いな・・・」


俊敏な動きで援護に回り敵を確実に倒していった。
僅か12歳の子どもが、だ。
超Xラウンダーと呼ばれているだけあるな。
マックスの言葉にアリーサは小さく息を吐いた。


「・・・でも、なんか・・・違和感を感じた気が・・・」

「違和感?」

「・・・何かは、よく分かりませんが・・・」


何か違和感を感じた。
アリーサはそう呟きながら、去り行くの背を見つめた。





「これは命令違反です」


ミレース艦長の言葉にアセムは小さく「・・・でも、敵を倒しました」と言い返す。
ディーヴァの艦長室では、今、席を下ろしているミレースの前にはアセム。そして壁に寄りかかっているウルフが居る。


「軍では命令が絶対。あなたは指揮官の命令に背き、艦を危険に晒した」

「まあまあ、初めての出陣だったわけだし」

「黙りなさいウルフ少佐、貴方の監督責任は後で追及します。アセム・アスノ伍長、次の命令があるまで、自室謹慎を命じます」


アセムはミレースの言葉に小さく返事をした。
ウルフが小さく息を吐く中、ミレースが言葉を続ける。


「行動には責任が伴うことを自覚すべきです。行きなさい」


ミレースの言葉にアセムは敬礼をし、そのまま退室した。
そんなアセムの背を見ながら、ウルフが大げさに息を吐く。


「大目に見てやれよお、まだ坊やなんだから」

「敵は坊や扱いなんてしてくれないのよ」

「まあ、そうだけどよ」


ウルフはそう言い、肩を竦める。
そこから「なあ、ミーちゃん」と声をかける。


「その呼び方は・・・」

「あの最年少は、どうして配属された?」


ウルフの問いかけにミレースは瞳を大きくする。
超Xラウンダーと呼ばれている子ども。


「父親は地球連邦の研究所長殿だろう?なんでその子どもは軍艦に乗ってるんだって話だ」

「・・・その、研究所長がディーヴァに乗せてくれって。この艦には、AGEシステムがあるからね」

「最年少をガンダムに乗せるつもりだったってのか?」


現にが乗っているGアルターはガンダムAGE−1をモデルに作られた機体だが。
そう思いながらウルフは小さく息を吐いた。


「あんな自分を大事にしねぇ戦い方、いつかぶっ倒れるぞ」

「あの子にとって、それが今までの当たり前だったのでしょうね」

「けど・・・優しい奴じゃねぇか」


噂通りの兵器人間だったら、仲間の援護なんてしねぇだろうよ。
ウルフはそう言い小さく息を吐いた。
ミレースもの事を気にしていたようで、憂いを帯びた瞳を彼に向けた。


「頼んでもいいかしら、あの子の事・・・」

「俺の隊員だぜ?当たり前だ」


ウルフはそう言い明るく笑んだ。





は軍服に着替え、ハンガーに立って自分の機体を見上げていた。
Gアルター。自分の為に作られた機体。
端末を使用してGアルターの機体状況を見ながらそのままGアルターのコクピットハッチを開く。
そこに身を入れて、簡単にシミュレーションを起動させ、操縦桿を握る。

この機体がどこまで自分に着いてこられるのか。
先ほどの戦いの中では以前使っていた機体よりは動く事は出来たが、未だ不十分な気がする。
ウルフのGバウンサーと同等ほどの出力はあるであろうが・・・。

はそう思いながらシミュレーションを淡々とこなしていく。
ものの数分でクリアし、評価を見る。
高得点のものだったが、速さにやはり限界がある。

機体が自分に着いて来れていない。
どの程度の動きならば大丈夫なのか。
それを確かめる為にはまたシミュレーションに挑んだ。




ウルフ隊初陣でした。
AGEは出てくるキャラ大抵みんな好きで困る困る。