魔物の巣窟だった場所だったが、無事洞窟を越えてサウスフィガロの町に着いた。
町に着いた途端、全身黒い服を着た男が犬を連れて酒場に入っていくのが目に入った。


「・・・・・・あれは・・・」

「どうした??」


無意識の内にじっと目で追っていたからか、にロックが声をかけてきた。
は直ぐに男から視線を外してロックを見ると首を振った。


「・・・・・・否、大した事では無い。 それより、目的地は北だったな。霊峰のコルツ山を越えるのか?」

「そうだ。下準備も必要、かな・・・?」

「当たり前だ。あそこの魔物は手強いし山道も半端無いらしいからな・・・」


下準備は必須だろう。と付け足しては続けた。


「私はアイテムの買出しに行って来る」

、私も・・・!」


口早に言い歩き出そうとしたにティナが慌てて声をかける。
其れには微笑して「じゃあ、一緒に行こうか」と言い歩き始めた。


「町の入り口で集合。二人は武器等を頼んだ」

「分かった、気をつけろよー?」


ロックの声を聞きつつはティナと歩いた。
道具屋の看板を見つけ共に中に入り品物を買っていくが、頭に残っているのは、先ほどの・・・・・・、


(・・・シャドウ・・・・・・)








――買い物も終わりサウスフィガロの町を後にし、東にあるコルツ山の麓に着いた。
其れだけでも少々疲れてしまったので麓にある小屋にお邪魔させて頂く事になった。

声をかけて中に入るが、其処には誰も居なかった。


「誰も居ないな・・・」

「まぁ、ちょっと借りるだけだし、 いいだろ

否、良くないだろ


がロックにそう言う横でエドガーが何だか落ち着き無く辺りを見渡していた。


「・・・この匂いは・・・・・・」

「匂い?」


ティナが反応して言うがエドガーは其の声は聞こえていない様子でずかずかと奥へ入っていった。


おいおい・・・一国の王・・・

「この花は・・・・・・あいつの・・・」


駄目だ、聞いちゃいない。
そう思い花瓶に入っている花を見ているエドガーをもう放っておく事にしては椅子に座った。

だがそれも長くは続かなかった。


「この食器は・・・?あいつが愛用していた・・・・・・」

「これは・・・あいつの好きなお茶・・・・・・」



あれはこれはあいつのあいつのーと言うエドガーを横目で見つつは結局無視出来ていない自分に溜め息を吐いた。
そして横の椅子に腰を下ろしていたロックを横目で見つつ溜め息交じりに言葉を発する。


「ロック、エドガーは如何したんだ?」

「さぁ・・・俺にも分からないな・・・」


ロックはそう言い勝手に頂戴したお茶を啜っていた。
おい、トレジャーハンター・・・。


―十分休んだので小屋の外に出ると一人の老人が居た。
その老人にエドガーが声をかける。


「おいこんな・・・・・・・・・・・・男を知らんか?」


そう言い自分の顔を指す。
最初老人は はて、と首を傾げていたが何かを思いついたように「あぁ、」と声を上げた。


「ほいほい。知っとるよ。二、三日前にお師匠のダンカン様が殺されてね・・・・・・その直後に山に登ったよ。
 ダンカン様の息子、バルガスも行方知れずでねぇー・・・・・・ここもこんなに荒れちまって・・・・・・」


よく分からないが物騒な話だな、と各々思っていたら、


「・・・マッシュがここに・・・・・・」


エドガーがそうポツリと呟いた。












山を登っていると襲って来る魔物達。
山だけあってかどうも毒を持った虫や植物系の魔物が多い。
だがティナにとっては好都合らしくファイアで一掃していた。


「毒には気をつけないといけないな」

「そうね・・・は平気?」

「平気だ。 ・・・・・・にしても、結構険しいな、この山は」

「モンク僧の修行場で使われる程の山だ、険しくて当たり前だろうな・・・」


後ろに居たエドガーがそう言い息を吐く。
明らかに疲れている・・・と言う自分も疲れてきているのだが。
他の面々を見ると何処か疲れ気味だ。 がそろそろ休憩にするか、と言おうと口を開きかけた瞬間だった。

耳障りな羽音が背後から聞こえてきては急いで銃を後ろに向けて発砲した、

醜い音を立てて虫型の魔物は地に落ちて消滅した。
其れを確認してからはふぅ、と一息吐いて言う、


「・・・・・・危なかったな」

「そろそろ休憩にする?」

「・・・と、私も言おうとしたのだがこの場所は適さないだろう、もう少し進もう」


はティナにそう言い上り坂を進んだ―。


「・・・・・・ん?」

「どうした、ロック」


立ち止まったロックを見、が声をかける。
暫くロックはある一点を見ていたが直ぐに「なんでもない、行こう」と言い歩を進めた。


(ロックも気に掛けている、という事はやはり気のせいでは無いか・・・・・・)


先ほどからちらちらと見える人影を気にしつつ、も歩を進めた―。


暫く登った処に休憩に適した場所があったので其処で休んだ後進行を再開した、
結構な場所まで登ったと思う。辺りは霧が出てきている。


「結構登ったな・・・」

「凄い霧ね・・・」


エドガーとティナがそう言いつつ辺りを見渡す。
ロックとは先ほどからちらついていた影が現れなくなったので警戒を強めて辺りの様子を伺っていた。
そうしつつ進んでいたら道の真ん中に人の影を見つけた。
近づいてみてみると、巨体の男だった。
男は此方の姿を目に留めると睨みながら言葉を吐き捨てる用に発した。


「マッシュの手の者か?」

「何者だ!?」

「マッシュ? マッシュは居るのか!?」


ロックが男に警戒の色を強めると同時にエドガーが驚いた様子で男に尋ねた。
はそんなエドガーを押しのけて前に行き男を真っ直ぐに見た。


「先ほどから私達の周りをうろちょろしていたのはお前か?」

「知るか! ・・・ふ、貴様らが何者とて捕まるわけにはゆかん。
 このバルガスに出会った事を不運と思って死んでもらうぞ!」


男―バルガスというらしい―はそう言うと拳を握り突き出してきた。
四人は其れを避けると各々の武器を構えた。
バルガスは明らかに遠距離用の武器を持つに狙いを定めたらしく、に向けて次は足技を繰り出してきた。
其れは流石に避け切れなくて銃で受け止める。


「・・・っ、う・・・!」


(重い!!)


は力を入れて受け流そうとするがその努力も虚しくバルガスの足技の力に負けて吹き飛ばされてしまった。


!! ――ファイア!」

「ぬっ! 小賢しい真似を・・・!」


バルガスは次にティナを狙おうとするが技を出すより早く、ロックが一気に近づいてナイフを振るった。
エドガーは倒れているに慌てて駆け寄り、抱き起こした。


!しっかりするんだ! ・・・・・・ん・・・?」


パリッ、という音を立てて静電気が走った。

何だ、とエドガーが思っていたらが瞳を開けてエドガーを視界に入れた。


「エドガー・・・」

「大丈夫か?」

「・・・あぁ、コレ位は平気だ」


そう言いは立って銃を構えた。
エドガーも手の内の機械、オートボウガンを構える。


「くらえ!」


エドガーの放った機械の矢はバルガスに一直線に向かっていったがバルガスは其れを避けるとロックを蹴り飛ばして此方へ向かって来た。
もろに蹴りをくらって吹き飛んだロックにティナが走り寄りケアルをかけている・・・。

は自分の視界を遮るゴーグルを首元まで下ろし、マントのフードも下ろして小銃を威嚇の為に撃った、が、バルガスは怯まずに向かってくる。

狙いは明らかにだった。


!」

「邪魔だ!」

「っ―――!」


を守る為に前に立ちはだかって剣でバルガスの足を受け止めたエドガーだったが拳を喰らって横へ吹き飛んだ。
「エドガー!」と叫び彼の心配をするが直ぐに自分に振り落とされるであろう拳を察知しは後ろへジャンプして避けた。
バルガスの拳は、地面に深く練りこんでいた。


「・・・どんな馬鹿力だ・・・」

「修行の賜、と言っておこうか」

「それは、ご苦労な事で」


はそう言い辺りを見渡す。
ティナはロックを回復している、もう直ぐ終わるだろうが彼女は次にエドガーの回復に向かうだろう。
ロックは回復が終わったら此方に来てくれるかもしれないが結構な距離が空いてしまった・・・。
エドガーは打ち所が悪かったのか、動けない状態だ。
使うしかないか・・・しかし、 と迷っていたら再度バルガスの足が迫って来たのでは慌てて避けた。

が、避け方がいけなかった。


「捕らえた!」

「!!」


飛んで避けた為に居場所は空中。
バルガスは地に着いているほうの片足を軸にぐるりと身体を回転させての腹部に強く蹴りをお見舞いした。


「っつ、ぁ・・・・・・!」

!!」


ティナの悲痛な叫び声が聞こえる。
と、思った其の時に、


パリッ―、


小さな静電気が起こって、



ズガアアアアアアァァァァァン!!!!


雷がバルガスに落ちた。