さて、何処に行こうか。

食事の後、誰かが呟いた。


勿論瓦礫の塔に向かいケフカを倒す事も考えているのだが、もっと大陸の様子を知っておきたかった。
今度は別行動は取らずに。

さてどうしようかと思い始めても取り合えずは再会後だし、疲れた身体も休めたいのでサマサの村で一泊する事にした。





次の日の朝に、宿に泊まっていた達の耳に「おじーちゃーん!」という響く声が聞こえた。
「今のって、リルムよね」とティナが言う。
は取り合えず窓から外を覗いてみると、自分の家に帰っていく途中のリルムの後姿が見えた。
リルムの声を聞いてか、ストラゴスが家から出てくる。


「大変よ!ガンホーさんが!!」

「ガ、ガンホー!?」


慌てた様子のリルムの言葉を聞いたストラゴスが酷く驚いた様子でそう返す。
そして二人で走っていってしまう。

何かがあったのか、と思いはティナとセリスと共に部屋から出る。
そこで同じ事を思って出てきたのか、ロック達と会った。
と目が合ったロックが「今、リルムが・・・、」と言う。
それに頷きながらが「様子を見てくる」と返した。

全員で行っても何なので、とロック、シャドウにエドガーが見に行く事になった。
ストラゴス達が入っていった家へ行き、ドアをノックすると中からリルムが出てきた。
彼女に中に入るように促され、入って奥の部屋へ行くと一人の老人がベッドに横たわっていた。
その横ではストラゴスが心配そうに瞳を細めている。

ベッドに横たわっている老人は頭に包帯が巻かれており、脇腹を押さえていた。


「ガンホー、しっかりするゾイ!・・・誰にやられたんだゾイ?」


ストラゴスがそう問うとガンホーと呼ばれた老人はゆっくりとした動作でストラゴスに視線を向けて口を開いた。


「儂とお主が追い求めていた伝説のモンスター、ヒドゥンにやられてしもうて・・・後一歩の所じゃったのだが・・・、」

「ヒドゥンじゃと!?」


ストラゴスが瞳を見開いて返す。
それにガンホーが頷いた、と同時に咳き込み始めた。
突然咳き込み、苦しみ始めたガンホーにストラゴスは慌てて「ガ、ガンホー!?」と彼を呼ぶ。
ガンホーは力ない動作でストラゴスを再度見た後、


「ストラゴスよ・・・儂の仇をとってくれい・・・。 う・・・、ゴホッゴホッ!」


と、言いまた咳き込み始めた。

そんなガンホーにストラゴスは少しだけ俯く。
それを見たリルムがバシンと彼の背を叩いて言う。


「おいこら、ジジイ。何躊躇ってるんだよ!」

「そうじゃの・・・。
 この歳になって、若い頃に無くした夢を追う事になろうとは思いもせんかったゾイ・・・。
 ガンホー、儂は行くゾイ!」


ストラゴスはそう言うと一人で歩き出してドアノブを握った。
それを見たリルムが慌てて「おじいちゃん!」と呼ぶ。


「ちょっと待ってよ!一人でどうする気なのさ?」

「・・・儂は、昔逃げ出した物ともう一度向かい合い、これを克服せねばならん。
 これは、わしの意地なのだゾイ」

「でもね、おじいちゃん。意地ばっかり張るのが良いとは思わないよ。
 リルムはおじいちゃんの孫だもん。おじいちゃんが困るのを、黙って見てられないよ」


リルムがそう言うとストラゴスはゆっくりと振り返り、「すまんのぉ、リルム」と言い近付いてきていたリルムの頭を撫でた。


「お前の気持ちはありがたいんじゃが、ヒドゥンは強敵じゃ。
 リルムは此処でガンホーを看てやっておいて欲しいゾイ」

「そうすると良い。ストラゴスには私たちが着いて行くから」


様子を見ていたがそう言うとストラゴスは「すまんのぉ、」と言う。


「お前さん方の気持ち、ありがたく受けさせてもらうゾイ。
 しかしヒドゥンは、隠れる者、という名が示すようにそう簡単に見つけられる奴では無いゾイ」

「簡単に見つけられる獲物じゃないと、こっちも張り合いが無いってもんさ。
 爺さん、そいつは何処に居るんだい?」


ロックがそう問うとストラゴスは「エボシ岩じゃ」と言った。
「何処に?」とエドガーが聞くと彼は直ぐに「サマサの村の直ぐ北に行った所にあるゾイ」と言う。


「秘空挺で行けば直ぐじゃゾイ」

「よし、じゃあセッツァーにまず言おう」


がそう言い外へ出るストラゴスに続いて出る。

宿に戻って皆に詳細を話し、セッツァーに秘空挺を出してくれるように頼む。
彼は直ぐに了承してくれ、ストラゴスと、そしてロックとセリスで出る事になった。
大人数で行ってはヒドゥンと遭遇し難いそうなので、取り合えずは四人で、という事になったのだ。


エボシ岩はサマサの直ぐ北にある大陸にあった。

秘空挺を降りる際、ティナに「気をつけて」と言われたは笑みを返して降りた。
ぽっかり空いた穴から中に入ると、真っ暗な闇に包まれた。

ロックがランプを灯すと、うっすらと明かりが辺りを包んだ。


「逸れない様にな」

「ええ。 、平気?」

「セリスは心配性だな」


此方を振り返って言うセリスには苦笑し、彼女に手を差し出す。
セリスも笑み、の手を取ってまた口を開く。


「貴女は何時も私に手を差し出してくれるわね」

「・・・そうか?」

「ええ。それが酷く、安心出来るのよね」


きっと、ティナもそう思ってるわ。

セリスはそう言って微笑んだ。
それには小首を傾げながらも「そうだろうか・・・?」と呟く。
そんな彼女にセリスは「そうなの」と言って悪戯っぽく笑う。
が、その後直ぐに表情を曇らせて「あの時、」と呟く。


「・・・あの時、貴女の手が離れた時、ほんとは凄く怖かったわ・・・」

「セリス・・・、」


セリスは恐らく世界が崩壊した時の事を言っているのだろう。
彼女を助けようとして、一緒に秘空挺から落ちて、落ちてきた裁きの光に気付きはセリスの手を離して彼女を突き飛ばした。

其の後彼女と再会した時は思いっきり怒られたが、それから色々あって落ち着いたのだろう。
セリスはの手を、きゅ、と握り瞳を伏せた。


「お願いだからもう勝手に離れて行かないでね?」


懇願する様に、言う彼女。

はそれに苦笑いだけを返す事しか出来なかった。
そんな彼女にセリスが「・・・!」と縋る様な瞳を向けてくる。
は苦笑のまま、セリスの手を優しく握り返した。


「・・・傍に居れる間は、ずっと居るさ」

「傍に居れる間、って・・・、それは勿論これからもずっと、よね?」

「ずっと、居るさ」


が微笑んでセリスにそう言うと、彼女はほっと安堵に息を吐いて微笑んだ。
二人で微笑み合っていると、前を歩くロックとストラゴスが足を止めた。
それに気付き達も足を止め、何があったのかと思い前を覗き込む、と。

其処には宝箱があった。


「・・・宝箱じゃないか」

「あぁ、うん、そうなんだが・・・、」


の言葉にロックが歯切れ悪く返す。
それには小首を傾げ、「どうした?」と彼に問う。


「お前の大好きな宝箱だぞ?飛びついて開けないのか?

飛びつくって、どう思われてるんだ、俺。
 ・・・まぁ、確かにお宝は好きだけど・・・。 ・・・これ、今動いたんだ」

「・・・動いた?」


ロックにそう言われ、は訝しげに宝箱に視線を移した。
少しの間、全員が宝箱に注目していると其れはパカリと開いた。

何だ何だと思っていると、


「腹減った・・・・・・」


と、宝箱が喋りだした。

それに驚いていると宝箱は蓋をバコバコと開け閉めさせ、また言葉を発した。


「腹減った・・・。

 
腹減った 腹減った 腹減った 腹減った 腹減った 腹減った
 腹減った 腹減った 腹減った 腹減った 腹減った 腹減った腹減った!!

 何か食べさせてくれ〜。食べさせてくれないと、通さないぞ!!」

「何か、って・・・」

「ストラゴス、何だこれ?」

「知らんゾイ・・・」


セリス、ロック、ストラゴスの順にそう言う。
は一人で「あれ、何かデジャヴ」と思いガウと初めて会った時の事を思い出していた。

あの時は干し肉とかを買ってあげたっけな、と思っていると宝箱がまた言葉を発した。


「俺は"サンゴのかけら"が好物だ。お前ら、持ってない?」

「何だ?"サンゴのかけら"って」

「エボシ岩で良く取れる物じゃゾイ。そこいらに沢山あるじゃろう」


ストラゴスの言葉を聞いたロックが何気なしにランプを掲げて辺りを照らすと、やや高めの位置に輝く物があった。
ランプの光を受けて輝くそれが、恐らく"サンゴのかけら"だろう。


「あんな上の方にあるぞ」

「下のほうにあったのはぜーんぶ食っちまったんだ」

・・・あぁ、そう


疑問を口にした途端、宝箱が直ぐにそう返してきた。
はそれを極めてどうでもよさそうに呟いた後、ロック達を見やる。


「結構上の方にあるが・・・、どうする?」

「台になるような物も無いし・・・」

・・・あの宝箱を台にすれば・・・、


がポツリと呟くと、宝箱はビクリと身体を震わせ必死にその場に留まる体勢を取った。


「お、おおおおおお俺は此処から一歩も動かないぞ!!どうてやんねーからな!!」


梃子でも動く様子が無い宝箱には肩を竦め、「どうする?」と問う。
それにロックがランプをストラゴスに渡し、を見る。


「こうなったら俺がを持ち上げるから、取ってくれ」

は!?


ロックの提案には思わず一歩後ずさって声を上げる。
が、セリスは「良いんじゃない?」と言いストラゴスは「若いのぅ〜」と言う。

何言ってるんだお前等、とが思っているとロックが近付いてきて両手を差し出してきた。


「ま、待って!」

「? どうしたんだ?」

「どうしたもこうしたも・・・! な、何で私なんだ!!」


抗議をするにロックは小首を傾げ、「え?」と言い不思議そうな顔をする。
そしてその表情のまま、「が良いから」とアッサリと言った。

それには「な、」と短く声を上げる事しか出来なかった。

が動揺している隙に、ロックは彼女の腰に手を回して軽々と持ち上げた。


「おい!!」

「大丈夫、軽いから!」


ロックが笑ってそう言う。
完全にからかわれている事に気付いたは、セリスから受け取ったナイフの柄でロックの頭を一発ゴンと殴った後、採掘にかかった。
「痛」と声が聞こえても無視をして、サンゴのかけらを掘り出した。
それをセリスに渡して、近くにあるサンゴのかけらも沢山掘り出す。

結構多めに取れたサンゴのかけらをセリスが宝箱に差し出す。
宝箱は嬉しそうにそれを沢山口に入れ、食べ始めた。


「モシャモシャモシャ・・・・・・。美味い!!うい〜っ、げっぷ!」


汚いな、コイツ。

と、は思いながら地に足を付ける。
笑みを向けてくるロックの腕を抓り、は彼を見上げる。


「お前・・・遊ぶな・・・!」

「良いじゃないか、少しくらい」

「・・・お前がこんなにべったりくっ付きたがる奴だとは思わなかったぞ」


が腕を組んでそう言うと、言われたロックが頭をかきながら「そうなんだよなー」と言う。


「・・・正直、俺もこんなんじゃなかった筈なんだが・・・、」

「・・・人恋しい時期か?」

「乙女か俺は」


そう言って、お互いに笑い合う。

そうしている間に、宝箱は大量のサンゴのかけらを食べたらしく、満足した様子を見せた。


「ん〜、食った食った。鱈腹食った。余は満足じゃ。うい〜っ、げっぷ!!
 お、そうだった。此処を通して欲しいのだったな。 んじゃっ!」


そう言うと、宝箱は颯爽と何処かへ消えて行った。

これで奥へ進める。
達はそう思い、先へと進んだ。




スキンシップロック!!

次はやっとヒドゥンとご対面。