「ヒドゥンじゃ!!」
奥へ進んで、少し開けた所に出た。
其処で闇の中を蠢く巨大な何かを見つけ、それにランプの光を当てた所、ストラゴスがそう叫んだ。
明かりに照らされて姿を露にしたヒドゥンは深い緑色の大きな身体を持った魔物だった。
姿を確認した途端、ヒドゥンは魔法を放ってきた。
はそれに慌てて「散れ!」と叫ぶ。
の声に応じ、全員がその場を離れた途端、先程までに居た場所に異空間が現れた。
銀河の輝きの様な光を放ち、蠢く其れに達は瞳を見開く。
「何だ・・・あの魔法・・・!」
「ヒドゥンは伝説の技を使うんじゃ!気をつけい!」
ストラゴスはそう叫ぶように言うと手を合わせ、詠唱を始めた。
其れが長く掛かりそうなのでは敵を引き付ける為、背から銃を下ろして構える。
ヒドゥンは闇の中を移動している様だが、閃光弾を放てば姿が見える。
はそう思い合図用の閃光弾を撃つ―。
パァン!!と、音を立てて銃弾が弾けた。
ヒドゥンの姿が見えたと同時に、今度は別の魔法を放とうとしているのが確認出来た。
其れを目に留めたセリスが「させない!」と言って剣を高く掲げた。
「魔封剣!」
セリスがそう叫んだと同時に、ヒドゥンが魔法を放つ。
間一髪のところで、ヒドゥンの放った魔法は、セリスの剣に吸い込まれていった。
「ナイスだセリス」
はそう言い彼女が剣を下ろしたのを見計らって魔法を放った。
彼女が放った雷が、ヒドゥンに落ちる。
それによろけたヒドゥンにロックが素早く接近し、飛んで真上から短剣で切りつけた。
その後にバックステップを踏むと同時に腰に挿してあった刃付きのブーメランを抜き、ヒドゥンに向けて放った。
ブーメランはヒドゥンの身体を傷つけ、綺麗な弧を描いてロックの手中に戻っていった。
ヒドゥンは腕を振り回し、ロックを狙うが素早い動作で彼は其れを難無く避けた。
隙が生じたヒドゥンの背後で、大型の銃を組み立てていたが其れを構えて撃つ。
まともに喰らったヒドゥンはよろけたが、毒霧を出してきた。
それをセリスがエアロで吹き飛ばした時、「下がるんじゃ!」という声が響く。
ストラゴスの合図を聞き、三人がバックステップを踏むと同時に、ヒドゥンの周りに異空間が現れた。
其れは先程ヒドゥンが放った魔法だった。それが何故、とは思ったが直ぐにストラゴスの青魔法を思い出す。
(そうか、ラーニングしたのか)
だから同じ技が使えるのか、とは思い勝負が着く様子を見た。
ストラゴスがヒドゥンからラーニングして使えるようになった"グランドライン"で、決着は着いた。
戦闘が終わり、静かになった空間でストラゴスが膝を着いた。
そして嬉々とした瞳で倒れ、消滅していくヒドゥンを見ながら「やった・・・!」と呟く。
「・・・やったぞ! わ、儂は・・・ついにヒドゥンを倒したゾイ!!」
喜び、両手を挙げるストラゴスに達は微笑みながら近付く。
長年の夢が叶ったんだ、喜んで当たり前だろう。
そう思いながらは銃を背に背負いなおした。
ストラゴスはすっくと立ち上がると「そうじゃ、」と言う。
「仇をとった事をガンホーに教えてやらんとな」
「そうだな、サマサに戻ろう」
ストラゴスの言葉に頷き、ロックが言う。
それに全員が頷きを返し、出口へと向かい歩き出した―。
サマサの村に戻ると、ストラゴスは真っ先にガンホーの家に向かった。
「ガンホー! ガンホーーー!!」
「何じゃ、騒々しい!」
名を呼びながら家に近付くとガンホーはドアを開けて出てきた。
・・・あれ?
は違和感を感じて小首を傾げた。
「ガンホー、聞いてくれ! わしゃあ、ヒドゥンを倒したゾイ!」
「何じゃと!?ヒ、ヒドゥンを倒したと?嘘こくでねえ!」
「嘘では無い。ストラゴスは本当にヒドゥンを倒したんだ」
瞳を見開き、否定の声を上げるガンホーにが告げ口する。
それにガンホーがストラゴスを見ると、ストラゴスは腰に手を当て、胸を張って笑った。
「ほっ、ほっ、ほっ!
まあ、わしが本気を出せば、ヒドゥン程度のモンスターなんぞは敵ではないという事じゃゾイ!」
「むむむ・・・。悔しいが認めん訳にはいかんな・・・」
「ほっ、ほっ、ほ!」
悔しそうに言うガンホーに気を良くしたのか、ストラゴスはまた笑った。
その後に「ところで、」と言いガンホーに視線を向ける。
「ガンホー、お主怪我は大丈夫なのか?」
「へ?」
それは私も思っていた、とが思いながら彼らのやり取りを見る。
サマサから出て、エボシ岩から戻ってきて、それまで結構な時間が経ったが、完治にしては早すぎる。
まだ6時間程度くらいしか経っていないのだ。
そう思いながら見ていると、ガンホーは誤魔化す様に笑った後言った。
「・・・へへ・・・。ちょっと調子が良くなったんでな、外に出てみたんじゃ」
「そうか・・・、でももう少し休んだ方が良いゾイ。わしが着いててやるから・・・」
ストラゴスはそう言いガンホーを家に押し込んだ。
その代わりの様にリルムがインターセプターと共に出てきた。
「おじいちゃんが居るならリルムはこの子と外で遊んでくるね」
「あぁ、そうしてきなさい」
ストラゴスはリルムにそう言った後に達に向き直った。
そして「色々とすまんかったのぅ」と言った。
は首を振って「別に構わない」と言い、言葉を続ける。
「出発は明日にしよう。今はガンホーさんに着いててやれ」
「そうさせて貰うゾイ」
ストラゴスはそう言い家に入っていった。
は足元に擦り寄ってくるインターセプターを撫でながらリルムに言う。
「で?何で嘘を吐いたんだ?」
がそう問うとリルムは悪戯っぽく笑い、ぺろりと舌を出した。
「やっぱばれちゃった」と言ってリルムはインターセプターに近付き、頭を撫でた。
「だっておじいちゃん、ああでもしてやる気を出さなきゃ一生口だけのじじいになっちゃうよ。
それに伝説の魔物を倒したのは事実だしね」
「そうだな・・・。ストラゴスも自信ついたみたいだし、結果良ければ全て良し、だな?」
「そーゆーこと!!」
リルムはそう言いニッコリと笑った。
は「ストラゴスは良い孫を持ったもんだな」と言って笑いリルムの頭を撫でた。
それにリルムは頬を仄かに朱に染めて「えへへ、」と照れた様に笑った。
「何か女の人に撫でて貰うのって、良いね。お母さんみたい」
「・・・そうか」
は微笑み、優しくリルムの頭を撫でてやった。
そんな中、此方を見詰める視線に気付き、リルムに気付かれない様に其方を見やる。
インターセプターも気付き、其方に向かおうとするがが「待て、」と言って止めた。
飼い主の所へ、今は戻るべきではないんだ。
そう、思いながらは此方を見詰めるインターセプターに笑みを向けた。
そんな事をしていると、ティナとエドガーが此方に向かって歩いてきた。
何かあったのか、と思い其方を見るとエドガーが片手を上げた。
「やあ、レディ同士がそうしていると華やかで良いね」
「ティナ、何かあったのか?」
エドガーをアッサリとスルーしてはティナに言う。
無視されたエドガーにロックが噴出し、彼の肩に手を置く。
「相変わらずだな、」
「・・・つれない所も、また魅力なのさ」
「懲りない男ね」
セリスが肩を竦めてそう言う。
エドガーはそんなセリスに笑みを向け、「君のそういう所も魅力的だよ」と言った。
そんな彼らがやり取りをしている横で、ティナが口を開く。
「マッシュ達がちょっと外に出てったの、それを伝えようと思って」
「ちょっとって、修行か?」
「さぁ・・・?でも秘空挺で行ったから、修行ではないんじゃない?」
ティナが小首を傾げながら言う。
それには「そうか、」と言いエドガーを見る。
「お前は遊びに行くのに着いていかなくて良かったのか?」
「偶にはのんびりとしていたいものだよ、私も」
エドガーはそう言って柔らかく微笑んだ。
それにはあっさりと「そうか」とだけ返して皆を見た。
「まぁ、明日には帰って来るだろう。わんぱく組みが揃っているが、カイエンやセッツァーも居るんだ。大丈夫だろう」
「そうね、心配はいらなそうね」
の言葉にセリスが頷く。
その後に、が一人で歩き出す。
そんな彼女にロックが「何処行くんだ?」と問うとは「散歩」と言って手をひらひらと振った。
歩いていくに、「ワン!」と一吼えしたインターセプターが後を追う。
彼女の真横に立ち、彼女の歩調に合わせて歩くインターセプター。
それを見てロックは自分は着いて行かない方が良いな、と思い思い切り伸びをした。
「俺は疲れたから寝ようかなー」
「ロックよ、私と久々に話をしないかい? 恋愛談を」
「あら、それなら私も混ぜて欲しいわね」
エドガーが言うと、セリスも便乗する。
そんな二人にロックは「おいおいおい、」と言い手を振る。
「俺は疲れたから寝るって・・・、」
「私も聞きたいわ。 だってロックにを任せるんだもの、ちゃんと話は聞いておきたいわ」
ロックの言葉を遮ってティナが微笑んで言った。
それに思わず固まったロックは直ぐに首を振って回復し、「に聞けば良いだろ!?」と言う。
が、「からじゃなく、貴方から聞きたい事もあるのよ」とティナに返されて項垂れた。
「リルムも聞いてみたいな」
「レディは恋愛話が好きだからね、良いとも」
「何でエドガーが許可出してるんだ・・・!」
ロックはそう言いながら、この後自分に降りかかるであろう災難に溜め息を零した。
(くそっ、散歩着いて行けば良かった・・・!)
ー、と心の中で彼女を思っても、散歩に出かけてしまった彼女からの返事が返ってくる事は無かった。
散歩に着いていってもそっちではインターセプターに吼えられるだけです(酷)