赤黒く変色した大地。
其処に足を下ろして、兎に角進んでみる。
予め決めておいたメンバーで三手に別れた俺達。
取り敢えず進んで、三闘神を倒す為に探す。
そんな中、隣を歩く彼女が気になって思わず声をかけた。
「怖くないのか?」そう問うと彼女は困った様に笑って「怖いよ」と言った。
珍しく自分の気持ちを誤魔化さずに返答してきたに思わず俺は虚を衝かれたが、直ぐに「だったら、」と返す。
は少しだけ照れくさそうにはにかんで、「だって、」と言い俺の方を見た。
「分かっちゃったから、世界の価値を」
「世界の?」
そう問い返すとは頷いた。
彼女の言葉を聞いているとまるで世界の為なら三闘神を倒して、自分が死んでも良い様に言っていると思える。
それでもさきほど「怖い」と口にした彼女。
の真意がイマイチ掴めなくて困惑していると、彼女は言う。
「そんなに私は死にたがりに見えるのか?」
「え? あ、違う!そうじゃなくて・・・!」
眉を下げて言う彼女におれが慌てて両手を振って返していると、今度は悪戯っぽく笑った。
は「分かってる」と言って笑うと今度はちゃんと前を向きながら口を開く。
「ケフカを倒したらどうするかと聞いてきた事があったな」
俺は彼女の横顔を横目で見ながら「ああ」と返す。
ちょっと前の話だ。それもとの将来についての話だ、覚えてない筈が無い。
「戦いが終わっても、ずっと一緒に居よう」
照れながらそう言ったら、彼女も照れた様に笑いながら「私も、」と返してくれた。
「・・・私の気持ちに、嘘は無い」
はそう言って首元に巻いてあるマントに顔を埋めた。
見えている耳が赤い事から彼女が照れている事が見て取れる。
そんなを見てると、自然に笑みが零れてきて、俺は気付いたら笑って頷いていた。
――彼女との将来。
あるかないか、まだ分からないけどあると信じていたい。
彼女とずっと一緒に居て・・・、そうだ、子供の話だってした。
あの時、との子なら欲しいって素直に思えた自分が居たんだ。
自分との子供が居たらみたいな話になって、つい自分達の家庭を想像したりなんかした。
はその時外へ出て行っちまって、嫌なのかと思ったりもしたけどただの照れ隠しってちゃんと理解した。
(・・・なぁ、)
隣を歩く、自分より小さい華奢な彼女を想う。
つい、瓦礫の塔へ行き三闘神との戦闘を躊躇した俺を彼女が活を入れてくれた。
やる前から投げない。やる前から諦めない。
彼女に言われた言葉だ。
分かってる、今までそうやってずっとやってきたんだから。
(・・・でも、)
こればっかりはしょうがない。
不安を拭う事は出来ない、如何し様も無いんだ。
(怖いんだ、もしお前が消えるかもって思うと、)
それでも、僅かばかりな希望に縋るしか、今は道は無い。
そう思ってを見ていたら、彼女が不意にこっちに視線を向けてきた。
バッチリと合わさった視線に思わずドキリとしていると彼女は小首を傾げて「どうした?」と聞いてきた。
俺は「見てただけ」と笑って言い誤魔化した――。
―奥へ進んで行くと、別行動をしていた奴らが見えた。
一番左側の通路に居る俺達。真ん中の通路に居るエドガー達。そして一番右側の通路に居るティナ達。
錘を利用したり、仕掛けの上に乗ったりして、扉が開いた事を確認してからまた別れた。
奥へ進んで、ドアを開けた瞬間、ピリピリとした空気が肌に突き刺さる感覚がした。
セリスが「これは、」と呟いて前を見る。
前方を見ると、石像が安置されていた。
――間違いない、三闘神の像だ。
そう思い俺は武器を取り出し、「皆、準備良いか?」と聞く。
それに答える様に隣に立っているは背から銃を下ろし、セリスとシャドウも其々の武器を構えた。
インターセプターもやる気満々らしく、唸り声を上げて姿勢を低くしている。
「・・・あれは、魔神の像か・・・」
が呟く。
魔神、そう思って揺れ動く像を見ていると、外見も恐ろしいそれは正に魔神と呼ぶに相応しかった。
背から生えている悪魔の様な翼、四本の腕、角や牙が鈍く光っている。
そんな様を見たら誰だってそう思うだろう。
が銃を手に持ったまま意識を集中し始めた。
「・・・魔神には聖なる属性が良いだろう・・・。私は魔法攻撃に回る」
「ええ。私はロックとシャドウを援護するわ」
にセリスがそう返し、剣を構える。
俺は彼女達に頷きを返し、構える。
「頼んだぞ、」
「分かってる」
はそう言い身体を輝かせる。
詠唱が終わりそうな合図だ。それとほぼ同時に、魔神が動き出して大きな掌を此方に向けてきた。
魔法が来る事をいち早く察知したセリスが剣を掲げる。
『ブリザガ』
「魔封剣!!」
巨大な氷の魔法攻撃はセリスの剣に吸い込まれていった。
が、流石に強大な力だったのか、セリスが苦しげに表情を歪める。
俺は飛んで腰に挿していた剣を抜いて思い切り薙いだ。
それは魔神の腕に当たり、セリスへ向けられていたブリザガが止められる。
「ロック!! ッ・・・、ホーリー!!」
今度は握られた拳が俺の眼前まで迫った時、の声が響いた。
の放った聖なる属性の魔法が眩い輝きを放ちながら魔神に襲い掛かる。
その隙にシャドウが追い討ちを与えていたので、俺は着地して体制を立て直した。
まともに喰らったらやばかった・・・!
そう思いつつ自分にケアルラをかける。
先ほどの魔法で魔神も少し怯んだのか、まともな拳の攻撃は受けなかったが相当のダメージは受けた。
これはきつい相手になりそうだ・・・。
セリスがシャドウに援護魔法をかけているのを確認して、俺は何時でも魔神の隙を付ける様に構えておく。
そんな俺の背後で次の呪文を唱えようとしていたがハッと息を呑んだ。
「!! 皆、気をつけて!」
「!?」
の叫びに全員が反応し、身を固くした瞬間身体を淡い緑の光が包んだ。
の援護防御の魔法だ。
―そう思った瞬間、
『絶対零度、受けてみろ』
魔神の感情の篭っていない声が響いた。
直後、パキィという氷が割れる様な音が響き渡って辺り一面が突然氷の世界に包まれた。
当然、自分達にも絶対零度のダメージはあるわけで、前の方に居た俺達は吹き飛んだ。
「ファイラ!」
がそう唱えて氷を溶かしていく。
それに気付いた魔神がに掌を差し出してきた。
ハッとして思わず「!!」と叫んで滑る床の上を走り出した。
身体中がギシギシ痛んで悲鳴を上げていたが、そんなのお構いなしだ。
今は何が何でも、
『ノーザンクロス』
を守るんだ!
パキィ、という氷が割れる様な音を聞いた。
それが最後だった―――。
vs魔神。
こいつ凍らせてくるからうっとうしいったら←