「伏せろロック、シャドウ!」
の声に反応した二人が直ぐに身を屈める。
その真上を雷が物凄い速さで真っ直ぐに伸びて行った。
の放ったサンダラは彼らが注意を引いていた魔物を貫いた。
敵が全て居なくなったのを確認したセリスが剣を収めた。
も辺りを確認してから銃を収め、ロックとシャドウに駆け寄った。
「今治す、待っていろ」
そう言い手を二人に翳して回復魔法を放った。
魔神を倒した後でも、何度も何度も強力な魔物と戦ってきた。
中には機械の物もあったりと、結構苦戦を連戦していた。
二人の怪我を癒した後、自分にもケアルラをかけては服についている埃を払った。
セリスも同じ事をしながら近付いて来た。
「・・・取り敢えず、先へ進もう」
の言葉に三人が頷いたのを確認し、彼女は足を進めた。
洞窟の中のような雰囲気の場所。
回りの壁は岩肌がむき出して足元もごつごつしていた。
奥へ進んでみると、少しだけ開けた所にスイッチらしき物があった。
恐らくは、移転装置であろう。
はそう思いながらも近付いてみて、しゃがみ込んで其れを調べる。
「・・・これって?」と、が呟いたと同時に両脇から聞きなれた声がした。
左右を見てみると、岩肌の隙間から別行動をしている皆が見えた。
「三闘神は、倒せたの?」
ティナの声がする。
それにが頷くとカイエンの「なんと・・・!」という声が聞こえてきた。
どうやら何かあったらしい。疑問を抱きながらが「何かあったの?」と問うと再度ティナの声が聞こえてきた。
「・・・三闘神を倒しても、魔法の力が消えないのよ」
「まさか・・・ケフカが、三闘神から魔法の源の力を吸い取ったというのか・・・?」
ティナの後にエドガーの声が聞こえた。
恐らく彼の考えは外れていないだろう。はそう思いながら瞳を細めた。
そうしながら、足元にあるスイッチを爪先で蹴りながら彼女は口を開く。
「取り敢えず、ケフカが三闘神から力を奪い取ったのは間違いないだろう。
でも、進むしかない。私たちは・・・、」
そう言いは移転装置の上に足を踏み入れた。
それにロックが少し慌てた様子で続いてくる。
セリスとシャドウも続いて、装置の上に四人が乗った。
「・・・強くなったってリルム達が倒しちゃうんだから問題無いじゃん!!」
右側からそのような声が聞こえてきた。
其方に視線を向けて見るとリルムが移転装置の上に乗っているのが見えた。
「早く早く!」と急かす彼女に苦笑を返してエドガーが彼女の横に並んだ。
カイエンとモグ、ウーマロも続いて其方の方も全員が移転装置に乗った。
「貴女達の言う通りね。 兎に角、進むしかないのよね!」
ティナがそう言い移転装置の上に乗る。
マッシュとガウがそれに元気良く返事をし、彼女に続く。
ストラゴスも頷き、しっかりとした足取りで続いた。
全員が移転装置に乗った瞬間、足元から光が零れた。
ワープの光であろう。がそう思っていると突然手が握られた。
反応して横を見ると、真剣な表情のロックの横顔があった。
彼の横顔を少しの間見詰めていただが、不意に視線を逸らして彼と同じように天を見上げた。
この先に、ケフカが―――。
そう思い、は瞳を閉じた―。
移転した先は、どうやら頂上のようだった。
相変わらずの岩肌剥き出しの場所。ごつごつした地面。
其処に達は居た。
周りを見ると別行動をしていた仲間達が居て、合流出来た事を悟った。
各々が服やら肌が汚れており、激戦を通り抜けて来た事が分かった。
お互いを確認し合っていると、笑い声が響いた。
「ようこそ諸君」
その声と共に、真ん中にある岩と岩の間に三角錐の結界の光が現れた。
その中に居るのは当然、ケフカだった。
ケフカは笑みを浮かべたまま、わざとらしく恭しい礼をした。
「皆さん必ず来ると思って相応しい言葉を一生懸命考えていましたよ」
「それで、どこまで破壊を繰り返すつもりだ? ケフカ!」
腕を組んでがケフカを睨み上げて言う。
それにケフカは肩を竦めて見せて「おお怖い」と言い言葉を続ける。
「私は最高の力を手に入れた。 ・・・ほれっ!」
「!!」
「! !!」
ケフカが片手をひょいと上げるとの足が地面から離れて宙へ浮いた。
真横に居たロックが手を伸ばそうとするが指先しか触れ合えず、彼女の身体は宙を移動した。
「この素晴らしい力。お前らなど問題にならない!」
ケフカはそう言うとまた手を動かした。
今度はの下まで移動しようとしていたロックの足が地面から離れる。
「みんな壊れてしまえ。すべてはいずれ壊れゆく」
ケフカがそう言い終えると、宙に引かれるような力が急に消えてなくなった。
真下へ落ちる二人へ仲間が駆け寄った。はシャドウが抱きとめ、ロックはエドガーとマッシュが支えた。
二人を横目で見、無事を確認してからティナが一歩前へ出て、ケフカを見上げる。
「でも、人はまた新しい物を作り出す事も出来るわ」
「それさえもいずれは滅ぶ」
ケフカはそう即答し、言葉を続ける。
「何故滅ぶとわかりきっているのにまた作る?死ぬとわかっていて何故生きようとする?
死ねば全て無になってしまうのに」
そう言い顔を背けるケフカ。
彼の心理に影響しているかのように空の色が変化し、深い青に染まった。
は支えてくれていたシャドウに礼を言い、前へ出る。
「大切なのは結果じゃない」
そう言いつつも、岩肌に手と足をかけてよじ登っていく。
ケフカと同じ高さまで登った時に、やっと彼と目が合う。
「今、何のために生きているか・・・何を作り出す事が出来たのか・・・守るべき物は何なのか・・・・・・、」
がそう言うと、ケフカがまた手を動かした。
それと同時にの足元の岩が崩れ、彼女は下へと落ちた。
転がって落ちた為、腕やら足に岩肌が食い込んで痛みを感じたが、それを気にせずには続ける。
「っつ・・・、生きている間に、人がその答えを見つけ出す事が出来ればそれで良いんじゃないのか?」
「お前は見つけたのですか? この死に絶えようとしている世界で・・・」
「見つけた!!」
ケフカが言い終わる前にはそう言い、真っ直ぐに彼を見上げる。
やり取りを見守っていた仲間達も頷き、其々が口を開く。
「私も見つけた! 愛するという心!やモブリズの皆が、全て教えてくれたわ!」
ティナがそう言い胸の前で手を組む。
彼女の次にカイエンが頷きながら「心の中の妻と子」と言う。
「確かに二人はもうこの世には居ないでござるが、拙者の心の中で常に拙者を支えてくれている!」
そう言うカイエンの後にリルムが腰に手を宛てながら「憎らしいけど放っておけないじじいがいるヨ!」と言う。
そんな彼女を見ながらストラゴスが少しだけ笑みながら彼女の頭を撫でる。
「可愛い孫がおるゾイ」と言い彼女の頭を撫でるストラゴス。そんな二人を見ながらシャドウが呟く。
「友と・・・家族と・・・。 付き合わされた約束もある」
最後だけはを一瞥し、シャドウはそう言った。
その後にエドガーが自分の胸に手を当て、「私には」と言う。
「秩序を持った国を作る使命がある」
「俺の事を可愛がってくれる兄貴だ! がっはっはっは!」
そう言い豪快に笑うマッシュを見て微笑むエドガー。
そんな二人の後にモグが「仲間が居るクポ!」と言う。
「ボクを助けてくれた、大事な仲間クポ!」
「がうがう!ここにいるみんな!ここにいるみんな!! みんなだいじがう!」
モグとガウの言葉にウーマロは何も言わなかったが大きく頷いていた。
ケフカの目が細められた時に、セリスが口を開いた。
「私の事を受け止めてくれる人が居る。 何時だって、私を信じてくれた人が居る!」
そうケフカに言った後、セリスはに視線を送る。
同じく、に視線を送っているロックは決意した様に一歩前へ出て彼女の横へ並んだ。
「守るべき人。 俺を包んでくれる彼女を、俺は見つける事が出来た」
ロックとセリスからの視線を受け、は少しだけ瞳を丸くした。
が、直ぐに少しだけ笑んで真っ直ぐにケフカを見返した。
「・・・私は、自分なんて価値の無いモノだと思っていた」
「そうでしょうねぇ。お前が居るから国が滅ぼされ、親も死に無関係の人々まで巻き込んだんですから」
「・・・分かっている。それは許される事では無いんだ」
がそう言うと隣でロックが「!」と彼女の名を呼んだ。
そんな彼を安心させる様には微笑んだ後、また口を開く。
「死ぬべき存在だと思っていた。幻獣を探し、何としてでも私とケツァクウァトルを分離させるべきだと。
でも、そうしなくても良い、って、言ってくれる仲間が私には出来た。
こんな私でも、必要としてくれる人が居た!!」
何時でも、傍で支えてくれる皆が居て、彼が居た。
だからこそ、こんな自分でも見出す事が出来た。
「・・・黒ずんだ世界にしか見えなかったが、皆と出会えて、黒の中にある白を見つけた。
闇の中で輝く宝石とも言える。 全部が闇では無かった、
自分で耳を、目を塞ぎ、闇の中にまた闇を作っていたんだ。
そのせいで、周りで輝く宝石に気付けなかった・・・でも、今は違う。ハッキリと見える!
人の心の中にある、輝く宝石が!!」
私は、それを見つける事が出来た!!
そう叫ぶように言ったに、ケフカが苛立った様に地団駄を踏む。
「気にくわないですねェ! 揃いも揃って口答えして・・・うきゃーー!
ならば私がそいつらを消し去ってしまいましょう!お前らの生きる糧を!」
「ケフカ、止めろ!!」
ハッとしたロックが叫ぶが、ケフカは聞く耳を持たずに両手を掲げた。
それと同時に、閃光が舞った――。
裁きの光が、世界を、地面を抉った―。
世界がまた裂かれる!
そう思った達は慌てる。
「この世で一番の力を私は取り込んだ。それ以外の者などカスだ!
カス以下だ!カス以下の以下だ! ゼ〜ンブ破壊して死の世界を創るのだ!」
「命は! 夢は生まれ続ける!」
ティナが剣を抜いて、構えて言う。
ケフカはそれを気にした様子も無く楽しそうにはしゃぎながら言う。
「それもこれもゼ〜ンブ破壊、破壊、破壊!!ゼ〜ンブ破壊だ!!」
「命を奪うことは許せない!」
「ひゃひゃ、死のない破壊など面白くも何ともないわ!!」
セリスの言葉にもそう返すケフカ。
そしてまた手を上げて裁きの光を放つ。
「許せない!ケフカ!!」
がそう言い背から銃を下ろす。
そしてそれを放つが、ケフカの結界により銃弾は弾かれた。
ケフカは口の端を吊り上げ、歪んだ笑みを浮かべると手を掲げた。
「お前たちには相応しい相手がちゃーんと居ますからね!!ほれっ!」
ケフカがそう言うと同時に、目の前に何かが現れた。
―魔神だ。
先ほど達が倒した筈の三闘神の内の一つの魔神が居た。
魔神の背からは白男、女、青男、虎が融合された物が伸びてくっ付いており、その更に上には女神と紳士が融合されていた。
まるでタワーだ。はそう思いながら銃を構える。
何時の間にかケフカの姿は無い。
恐らくはこれらを倒さないとケフカ相手に戦うことも出来ないだろう。
それを理解したは声を上げた。
「分散して叩こう!下から叩いていくしか無いみたいだから、気をつけて!」
がそう言い、詠唱の体勢に入る。
彼女に続いて、セリスとティナ、リルム、ストラゴスも詠唱の体勢に入った。
「よっし!俺らは取り敢えず敵の注意を引き付けようぜ!」
「おっしゃ!腕が鳴るぜ!」
ロックがそう言うとマッシュが一番に走り出した。
そんなマッシュに続いてガウが「がうがうがう!」と吼えながら、ウーマロと共に走って行った。
シャドウとインターセプター、カイエンは隙を伺っている様だ。
エドガーは機械を構え、何時でも撃てる様にしている。
これが、最後の戦いなんだ。
ロックは改めてそう思い、腰から長めの剣を抜いた。
(、)
彼女の事を思いながらも、ロックは剣を構えながら走り出した―。
最終決戦開始です。