「うわぁ!」
魔神が腕を振るって放ってきた衝撃波。
それを正面から喰らい、ガウやマッシュは吹き飛んだ。
中衛に移動していたリルムは「このー!」と言うとキャンパスにスケッチをし、魔神の腕を描いた。
キャンパスから出て、実体化した魔神の腕にリルムは「衝撃波返し!!」と命令をする。
再び起こった衝撃波は、魔神を襲った。
魔神が攻撃を喰らった隙に、カイエンとシャドウが急所を思い切り突いた。
よろけた魔神に、ストラゴスがグランドラインを放ち、勝負をつけた。
魔神が崩れ去った為、次に上に居る奴らとの対決になる。
達も移動しつつ、朽ちた魔神の上に降りてきた敵を見る。
白男に女、青男、虎が融合しているものだった。
まずストラゴスがまたグランドラインを放った。
全体攻撃になるので敵全部を怯ませた後、剣を構えたロックとシャドウ、カイエンと槍を持ったモグが飛び込んだ。
其々が其々を攻撃している際に、とティナはガウやらマッシュ、ウーマロの傷を癒していた。
セリスは敵が魔法を放ってきた時に備え、魔封剣の体制を取っている。
真後ろで閃光が舞い、斬撃の音が聞こえる。
それを感じながらはマッシュ達にケアルラをかける。
「・・・よし、大丈夫だ、」
マッシュはそう言うと直ぐに立ち上がり、前の方で戦う彼らの方へ走って行った。
ちゃっかり礼を言うのも忘れずに。
は残りの回復をティナに任せ、前衛の回復に向かった。
前へ出ると、丁度女が絶対零度を放とうとしている所だった。
それに気付いたは直ぐにみんなの前へ出、両手を翳してファイガを唱えた。
冷気と炎がぶつかり合い、それらが相殺される。
魔法を放っている為に無防備なを狙い、青男が拳を繰り出してくるが、インターセプターが青男に噛み付いて其れを防いだ。
インターセプターに噛まれて暴れる青男を、シャドウが一閃した。
中衛にまで下がったは直ぐに回復魔法を唱え、彼らの怪我を癒した。
「ケアルガ!」
が彼らの傷を癒した途端、白男が魔法を放ってきた。
フレアスターだ。 炎の魔法は前衛、中衛に降り注ごうとしていたが、後衛に控えていたセリスが魔封剣を掲げた。
それらの魔法は全てセリスに吸い込まれていったが、膨大な魔力を一身に受けたセリスは耐え切れずに膝を着いた。
セリスにはティナが駆け寄っていた。ガウとウーマロも大丈夫そうであり、後衛に控えている皆を守っていた。
それらを確認しながらは銃を構え、女の中心を狙った。
「・・・これで・・・!」
弾に、デスの魔法をかけて、は引き金を引いた。
弾丸は女の胸を貫き、女は高い声を上げて消滅した。
よし、効いた! はそう思い銃を下ろす。
そして膝を着いているカイエンと座り込んでいるモグに駆け寄って回復魔法をかけた。
そうしている内に、残りも倒したのか第二層が崩れ落ちた。
次に現れたのは、女神と紳士。
紳士は行き成りトルネドを放ってきた。
吹き飛ばされていく皆を視界の端に留めながら、はモグとカイエンを回復した。
「忝い! 拙者とモグ殿が敵の注意を引いておる間に他の皆の回復を頼むでござる!」
「あぁ、頼んだ!」
はそう答えると、取り敢えず近くに倒れているシャドウとロック、マッシュにケアルガをかけた。
後ろに控えていたティナとリルム、ストラゴスは無事だったらしく他の面々を回復している。
ガウとウーマロも同じ理由で無事だったらしく、カイエンとモグと共に前線へ出ていた。
こんなに苦戦するなんて・・・。
やっぱり三闘神の力は恐ろしいものだ。
はそう思いながら傷を癒した三人に声をかける。
「おい、大丈夫か?」
「痛ッ・・・、なんとか、な」
ロックがそう言いながら頭を抑えて起き上がる。
どうやら頭を打ったようだ。
首を振って意識を引き戻すとロックは剣を手に立ち上がった。
「・・・皆、やられちまったのか・・・?」
「・・・微妙な、所かな」
がそう返すとロックは「そっか、」と言い辺りを再度見渡す。
倒れている面々も居て、怪我を治しても起き上がらない者も居た。
気絶しているだけだろうが、気掛かりであった。
も立ち上がり、ロックを見上げる。
「・・・どうするつもり?」
「大丈夫さ、ちょっとコイツの力を借りるんだ」
ロックはそう言い掌にある魔石を見せた。
それはフェニックスの魔石。
傷付き、回復が追いつかない仲間を助ける為、ロックは其れを使おうとしていた。
「力を貸してくれ、フェニックス!」
ロックがそう叫ぶと同時に燃える様な赤色の翼を持った不死鳥が現れた。
羽ばたく度に光の粒子が舞い、全員の傷を癒していく。
各々が起き上がるのを確認し、ほっと息を吐いたロックをが慌てて支えた。
魔石を使用し、幻獣を呼び出したのだ。使用した魔力は半端無く多いはず。
よろけたロックを支えたは、彼を座らせて回復魔法をかける。
「・・・無茶をする」
「はは、お前に言われたくはないかな」
ロックに言われ、はそっぽを向いた。
彼の傷を癒した時、完治した仲間達の善戦により女神と紳士も無事に倒せたようだった。
残るは―――、
「命・・・夢・・・希望・・・何処から来て何処へ行く?」
そう呟くケフカが現れた。
背には天使の翼が生えており、身体も変形をしていた。
恐らく三闘神の力を取り込んだ結果だろう。
「そんな物は・・・この私が破壊する!!」
「させない!!」
ケフカの放った心無い天使。
皆の前にが出て行き、両手を広げた。
ロックがそれに驚いて「!」と彼女の名を呼ぶ。
身体に突き刺す様な痛みを四方から感じ、は耐え切れずに悲鳴を上げる。
『――我がやらせない――』
の頭に響いた声。
ケツァクウァトルの力が内側から膨れ上がり、の身体を光が包んだ。
ふわりふわりと、意識が浮き沈みしている感覚。
不思議な感覚を覚えながら、はふわりと浮き上がった。
「・・・・・・・・・?」
ポツリ、と、ロックが彼女の名を呼んだ。
の背から光の翼が生えていたのだ。
金色の其れは、時折パリ、と電流を放っている。
自身の身体も放電し、金色の輝きを放っていた。
恐らくこれは、のトランス状態だ。
それを悟ったロックは剣を構え直し、彼女の後ろへ近付いた。
「!!」
そう名を呼ぶと、彼女はゆっくりと振り返った。
尖った耳、髪の隙間から生えてきている角の様な物。
何処か神秘的な神々しさを感じさせる彼女は、微笑んで再び前を向いた。
そして、翼を羽ばたかせて宙へと飛んで行った。
「!」とロックが呼んでも彼女は上空へケフカと共に飛び上がり、激しい攻防戦を始めてしまった。
自分達では届かない、どうすれば、と、ロック達が思っているとモグの焦った声が聞こえた。
「ク、クポ!魔物が来たクポ!」
「・・・しょうがないわね、今は取り敢えずこいつ等を片付けましょう!」
セリスが苛立った様子でそう言い、剣を構える。
それに全員が同意して其々の武器を構えた。
上空では、
ケフカの放ったメテオを避けつつ、はサンダガを放った。
『命も夢も希望も、全て世界から生まれて世界へ還る物だ。
世界から人へ、全てが伝わり何れは世界へ戻っていく。それも理解出来ないのか、ケフカ!』
「それら全てを、破壊する!」
話を聞いていないケフカ。
は舌打ちを一つした後、手を掲げて瞳を細めた。
『それを止めたい。だから、私はお前を破壊する』
はそう言うと同時に、幾多の雷が降り注いだ。
ケフカはそれを気にせず、メテオを放ってきた。
上空から響く爆音を気にしながら、ロックは目の前に迫っていた魔物を切り倒した。
どうすれば、とロックが思っているとケフカとが急降下してきた。
「生意気ですねぇ!さっさと堕落すれば良いものを!」
ケフカがそう言いながらを追う。
そして背後からアルテマを放つと、は進行方向を変えてそれをかわした。
思わず其方に視線が行っていたロック達。
そんな中、シャドウが一人走り出した。
何を、とロックは思ったが直ぐに周りの魔物が全て消え去っている事に気付き、シャドウに続いた。
きっとが通り過ぎる時に一掃してくれたのだ。
そんな彼女は今低空飛行をして、ケフカから逃げている。
助けなくては!
そう思い走り出したロックの後に、他の仲間も続いた。
「リルムに任せて!」
リルムはそう言うと真っ白なキャンパスにスケッチをした。
ケフカがキャンパスから出て、実体化をしてアルテマを放つ。
それは見事本物のケフカに命中し、彼は地面に落ちてきた。
其処にマッシュが拳を握り締め、走り出す。
「行くぜ!師匠から伝授された最強奥義・・・! 喰らえっ、夢幻闘舞!!」
マッシュがそう叫ぶと同時に、物凄い拳技を繰り広げていく。
思い切り喰らったケフカがよろけた際、カイエンが必殺剣をケフカに見舞いする。
次に、ティナとセリス、ストラゴスが自分の中の最強の魔法を放った。
物凄い爆音と共に、煙に包まれたケフカ。
エドガーが槍を構えながら「やったか!?」と言う。
恐らく、まだだろう。
はそう思いながら上空から様子を伺った。
―その時、
「カオスを越えて結末が近付く・・・、」
『!?』
煙が晴れる前に、その言葉が聞こえた。
それと同時に物凄い魔力の高まりを感じては思わず肩を跳ねさせる。
感じたのは他の皆も同じだったようで、其々がうろたえている。
は兎に角ケフカを止めようと煙の中へ急降下する。
が、とんでもない魔力に吹き飛ばされてしまう。
直後、
「――ミッシング――」
ケフカがそう唱えたと同時に、次元が歪んだ気がした。
四方八方から身体を突き刺すような痛み、内側からも痛みが起こっている気もした。
耳元で爆発音が響き、目の奥がチカチカした。
何時間にも感じられたそれは、僅か数秒の間の出来事であった。
皆地面へ伏している中、だけが膝を着いていた。
う、と声を漏らす中、は全員を見渡す。
視界に入ったのは、傷付き倒れている仲間達。
「誰一人として耐えられる者は居なかったな」
ケフカの呟きにはゆっくりと首を振った。
『―――皆、耐えた』
「・・・何ですって・・・?」
が呟くと同時に、端の方で倒れていたロックが「う、」と呻き声を上げて顔を上げる。
他の皆も其々が痛みに震える身体を叱咤して起き上がる。
信じられないように瞳を見開き、「何故」と言うケフカに、は笑みを向ける。
そして両手を広げながら言う、
『皆が居るからさ』
そう言うと同時に、全員に回復魔法を放った。
それでも未だ痛みもあり、動けない仲間。
「・・・!」と、ロックが彼女の名を呼ぶと首を動かして振り返ったはニッコリと笑った。
それは何時もの様な大人びた優しい笑みではなく、唯明るい、少女の様な笑みだった。
始めてみる彼女の笑みに戸惑いを覚えているロックに、は笑顔を浮かべたまま『ありがとう』と言った。
『私、頑張ってみせるから』
そう言うとは何時もの表情に戻り、強い瞳でケフカを見た。
彼女の背に何かを感じたロック達は、胸騒ぎを覚えて「?」と彼女の名を呼ぶ。
それに答えず、は魔力を高めるとケフカへ突っ込んで行った。
ケフカも魔法を持って其れを迎撃し、また攻防戦が始まった。
直ぐ目の前で戦いが起こっているのに、動かない身体。
「く、っそ・・・!」
ロックは奥歯を噛み締めて腕を地面に着いて身体を起こそうとする。
が、起き上がるまではどうしてもいかず、また地面に頬を擦ることになる。
「動け・・・、動けよ・・・! 動け・・・・・・!!」
ぐ、と拳を握り締めて、再度身体を起こそうとする。
「今動かないで・・・、どうするんだよ!!俺!!」
ロックはそう叫びながら、何とか上半身だけを起こす。
それでもまた地面に伏してしまう。
傷は癒えているのに、内側から激しい痛みが襲ってきて身体が動かなかった。
動くたびに骨が軋む音がして、酷くそれが耳障りだった。
「く・・・、 ・・・そ、」
、
心の中で彼女の名を呼んで、ロックは腕を動かして地面を這う。
少しでも彼女に近付きたい。
傍に行って、隣に行って彼女と共に戦いたい。
守って、あげたい。
それなのに、身体は動かない。
酷い歯痒さを感じ、ロックは「くっそぉ!」と声を上げた。
―その時、
((ロック・・・、))
「!! この、声は・・・、」
頭に響いて来た優しげな声。
そうだ、と思いロックは瞳をぎゅっと閉じる。
そして痛む身体を叱咤し、ポケットからフェニックスの魔石を取り出す。
「・・・フェニックスよ・・・、再び、俺に力を・・・!!」
貸してくれ・・・!
ロックがそう願ったと同時に、眩い光が辺りを包んだ―。
その光に気を取られたケフカに隙が生まれた。
はその隙を見逃さず、魔力を高めて思い切り振りかざす。
『ケフカ!』
そう叫び、ケフカを貫こうとした。
一瞬送れての行動に気付いたケフカも自分の手の先に魔力を集中させて―――、
ズプッ、
という、音が響いた。
フェニックスの生命の力が働いている中、起き上がる事が出来るまでロックは回復した。
他の面々も起き上がるが、ロックは其方に目もくれずに兎に角の方へと走った。
「!!」
彼女の名を呼ぶと同時に、金色の輝きが目に入った。
自身が握り締めているフェニックスの魔石から未だ放たれている真っ赤な光と金色の光が混ざり合う中、
ロックは、瞳を見開いた。
「・・・・・・・・・?」
視界に入ったのは、
ケフカの胸を貫いている電撃と、 金色の光を纏う彼女の胸を貫いているケフカの腕。
そんな光景だった―――。
心無い天使はトラウマ