マッシュを仲間に加えた達はコルツ山を下っていた。
心強い味方が入ってくれたので現れる魔物も難なく撃退が出来た。
はそう思い怪我がほぼ無くなった仲間を見渡した。
其れはティナも同じだったらしく彼女を見た瞬間目が合ってなんとなく笑い合った。
「何だ?何笑ってるんだ?」
其れにロックが気付いて聞いてくる。
が横に居たマッシュを見上げ、「心強い仲間が増えて戦闘が楽になったなぁ、と思って」と言った。
ティナも頷いて口を開く。
「お陰で皆の怪我も減って、嬉しいな・・・って」
「そうだよなーマッシュが入って結構楽になったよな!」
ロックがそう言い同意を求めるようにエドガーを見る。
エドガーは頷いて少しだけ照れ臭そうにしている弟を見た。
「お前も強くなったな、マッシュ」
「兄貴こそ・・・得意の機械があるじゃないか」
「だがお前の拳の強さには参るな」
態とらしく肩を竦めて言うエドガー。
そんなエドガーを見ては「にしても、」と言い少しだけ笑って続きを発した。
「機械振り回す王様はお前位だろうな」
仮にも王なのに、と付け加えるとエドガーは少しだけ微妙な顔をしたが彼以外は全員笑った―。
そんな事を話しつつもコルツ山を下山した時には陽が傾いてきていた。
このまま進むのは危険と思い、達はコルツ山の麓にテントを張って一晩過ごす事にした。
野営の準備は整い、食事も軽めに済まし、皆自由な時間を過ごしていた。
は一人、皆から少し離れた所で星空を見上げていた。
―明日、リターナーの本部に行く。
其れが頭から抜けない、正直、本部へ行くのは未だ乗り気では無い。
はぁ、と溜め息一つ。
「・・・・・・本当、最近の私はどうかしている・・・」
ポツリとそう呟いて草原へ腰を下ろした。
そして手の届く範囲に銃も置き、再度星空を見上げた。
如何して同行を許してしまったのだろう?
如何して彼等は私を恐れないのだろう?
如何して彼等に私は馴染んでいるのだろう?
浮かんでくるのは「如何して」という事ばから、
其れにも「如何して」と疑問を持ちつつは星を見上げるのを止め、立てていた膝に自分の顔を埋めた。
何だかよく分からないけれど、苦しい気がした―。
瞳を閉じていると背後からさくさくという草を踏む音が聞こえた。
そして、もう聞きなれてしまった声も、
「レディが一人で夜歩きかい?」
「王様が一人で夜歩きですか?」
顔を膝に埋めたまま言うとエドガーは何も言わずに(恐らく表情は困ったものか、苦笑)隣に腰を下ろした。
「気分でも優れないかい?」
「・・・別に、何でも無い・・・・・・」
「まぁ、そう突っ張るな」
エドガーがそう言うと何か温かい物が頭にポンと乗っかった。
そして其れは撫でる様に動く。
・・・これは・・・・・・、
「私は子供では無いのだが」
「十代の内は子供と言って良い年齢だぞ?」
「私は二十歳だ・・・!」
「そうか?そうはあまり見えないな」
少しだけ年下に見られた事に怒気を含んだ声を出しただったがエドガーは大して気に留めた様子は無く撫で撫でと頭を撫でる行動を続けた。
「では何か?行動が子供っぽく見えると?」
「一人で何でもこなそうとする所は、な」
「・・・・・・」
膝から少しだけ顔を上げて隣に居る男を一瞥すると、彼は笑っていた。
は、何笑ってるんだコイツ(失礼)と思い思わずじっと見詰めていたら視線に気付いたのかエドガーは此方を向いて微笑んだ。
「如何した?私に惚れたか?」
「寝言は寝て言うものだ、王様」
思わず拳を出して言う。
今の彼は甲冑をしていないから当たれば当たったでそれはよかったがの頭を撫でていない方の手で簡単に其れは受け止められてしまった。
其れに少しムッとしているとエドガーは笑みを深くしての手を其の侭自分の方へ引き寄せた。
突然の事では驚いてエドガーの膝上辺りに身体を倒れる様にくっ付けてしまった。
其れにハッとして離れようとするがエドガーに両肩を捕まれ上から真っ直ぐ見詰められて身動きが取れなかった。
「君にとって、私達は未だ信用に足らない者だろうか?」
「それは・・・・・・」
「正直私はあまりそうとは見えないのだが」
「・・・・・・何故そう言える」
思わず無意識の内に喧嘩腰な態度になる。
そんなにエドガーは微笑むと言葉を発した。
「ロックはナルシェで同行を依頼したと言っていた。立場上雇い主と雇われだ。
其れなのに君はコルツ山でマッシュが加わった後『仲間が増えて』と言った」
「・・・・・・ぁ・・・」
「その他にも結構君は我々を信用している面が多々ある。
特にロックとは仲が良いな。コルツ山でもよくよく見ていたら君達は連携プレーが多い」
ロックと?
と思いはコルツ山での戦闘を思い出す。
ティナは後方でサポート、中衛で銃を扱っていたは前衛に居たロックとエドガーの二人をサポートしていた。
其れで連携? と思いは瞳を丸くしてエドガーを見上げた。
エドガーは少し苦笑し、「無意識か?」と言い言葉を続けた。
「ロックが敵に囲まれると君は大型の銃を使わず小型の銃を使うのと一緒に体術を使うね。
私の時もあったが違う点があったのだよ。 背中を預けている。 此れは大きな違いだと思うがね?」
「せな、か・・・?」
「あぁ。そして其の侭連携攻撃に入る。息も合っていたから私は良いと思って何も言わなかったが・・・やはり無意識か」
は唖然としていた。
背中を預けた? 此処数十年そんな行動なんて全然取ってなかった。
誰にも心を許してはいけない、誰にも心を開いてはいけない。
ずっと自分にそう言い聞かせて来たから、
心を開けば受け入れて貰いたくなる、全てを、受け止めて貰いたくなるから、
なのに――――――、
「っつ・・・!」
「?」
「わ、たしは・・・いけないんだ、駄目なんだ・・・!」
急にエドガーの手を離そうと抵抗を始めたにエドガーは驚いて彼女を落ち着かせようとした。
「、落ち着―」
「駄目なんだ! っつ、離して!」
はエドガーの手を払うと近くに落ちていた自分の銃を拾い上げると走ってエドガーから離れて行った。
「!!」