「おっ、」
が部屋から出て歩いていくとフィガロ兄弟と出くわした。
マッシュがに気付いて片手を上げて声をかける。
「は俺等に協力してくれるんだよな?」
「私は、な」
がそう言うとマッシュは嬉しそうに笑った。
その横でエドガーも笑いながらを見る。
「それに、君はロックと同じ道へ行かねばならないのだろう?」
「雇い主と雇われ者だ。誤解を招く様な言い方をするな」
はエドガーの胸の辺りをドスッと拳で叩いてから溜め息を吐いた。
「それと私の狙いは幻獣だ」
「分かっているさ」
はそう言い「外の空気でも吸ってくる」と言い外へ向かう為にエドガーの横を通り抜けようとした。
其の時に、
「すまなかったな」
「・・・王様が安易に口にしていいのか?」
すれ違い様にお互いにそう言いは微笑んでから外へと出て行った。
そんなを見てエドガーとマッシュも笑った。
は外に出て後悔していた。
何とバナンが居た。
向きを180゜変えてハイサヨウナラをしようとしたをバナンが呼び止めた。
「、何故逃げるんじゃ?」
「・・・何となく・・・」
「だったら此方へ来い。少し話をしようではないか」
バナンにそう言われ、はバナンの横へ行き腰を下ろした。
そして視界に入った花を見、少しだけ表情を柔らかくした。
そんなを見てバナンも表情を柔らかくした後、口を開いた。
「しかしあれだけ勧誘の言葉をかけても首を縦に振らなかったお主がこうもあっさりと手を貸してくれるとはな・・・。
ロックに感謝せねばならぬな」
「・・・お前までそう言うのか・・・」
呆れ半分の目ではバナンを見やった。
するとバナンは声を上げて笑い、「青いな」と言った。
其れには思いっきり呆れ顔になってふい、とバナンから顔を背けた。
そんなにバナンは微笑し、空を仰いだ。
「・・・本当に、感謝をする」
「・・・私の場合はお互い手を取り合わないとやる気は出さないからな」
「当然じゃ。お主一人に戦わせる訳にはいかん」
そう言い切ったバナンには少しだけ安心して後ろを振り返った。
「ティナ、居るんだろう?」
そう言うと少しだけ遠慮がちにティナが出てきた。
バナンも振り返ってティナを見る。
「答えは出たかの?」
「・・・未だ、迷ってはいます・・・だけど・・・こう思えるのは確かなんです」
ティナはそう言いを見た。
「、私さっきロックの話を聞いて思ったの。私は大事な人なんて、居ない。逆に私を大事に思ってくれている人も、居ないって・・・。
でも、。あなたの事を考えると私・・・心配で堪らないの」
「心配・・・?」
個人的ティナの方が心配なんだが、とは思いながらもティナの話を聞いていた。
「私が、此処で決意をしなかったら・・・は一人で皆の希望にならなくっちゃいけなくなっちゃう・・・
私は其れが嫌なの・・・。私も、と一緒に戦いたい、を帝国から守りたいの・・・!」
だから、と言葉を付け加えてティナはバナンを真っ直ぐに見た。
バナンは真剣な表情で「我々の最後に残された希望になってくれるか?」と聞いた。
ティナは迷う事無く、
「はい」
と言い頷いた。
バナンは「そうか・・・よかった!」と言い嬉しそうに笑った。
「まだ、怖いけれど・・・と一緒なら私、頑張れる気がするの・・・。
迷惑かもしれないけれど・・・・・・」
「迷惑な訳無いだろう?」
はそう言いティナに片手を差し出した。
其れにティナは最初は瞳を丸くしていたが直ぐに理解をすると微笑んで其の手に自分の手を重ねた―。
其れを微笑みながら見ていたバナンは「ティナや、」と名前を呼び、ティナに何かを渡した。
「これを持っていくが良い。 お守りじゃ」
そしてには此れを、と言い源氏の篭手を渡した。(ちなみにティナにはガントレットを)
其の後バナンが「では休憩も取った事だし会議を始めるかの」と言い会議室へ向かった。
会議室に行き待っているとリターナーの兵が続々と集まってきて全員が集まったのを確認するとバナンが口を開いた。
「さて・・・帝国が魔導の力を用い、戦争を始めたのは皆も知っての通りだ。だが、ガストラがどうやって魔導の力を復活させたか?
・・・ポイントは其処だ」
「ロックに調べてもらったんだが、ガストラは世界中の学者を集めて幻獣の研究を始めたらしいんだ」
「ナルシェ攻撃もそのためだ」
バナンの後にエドガーとロックが補足をする様に言う。
「ナルシェには氷付けの幻獣が居るからな」
「つまり魔導の力と幻獣に何か関係があると・・・?」
の後にティナが言い思案をする様に少しだけ俯いて瞳を伏せる。
そして再度バナンが口を開く。
「魔導と幻獣・・・この二つの言葉で思い出される事は一つしか無い・・・」
「まさか・・・、」
ティナと同じく思案しつつ話を聞いていたが反応をする。
そして一呼吸間空けた後、苦々し気に言った。
「・・・魔大戦か・・・」
「その通りじゃ」
バナンがの言葉に同意をすると周りの兵士達がざわめく。
そんな中ロックが「枕元でばあちゃんが話してくれたのは・・・本当の話だったのか・・・」と呟いていた。
御伽噺程度にしか認識されていなかった大昔の事が事実という事を認識し、皆驚いているのだろう。
「魔大戦の悲劇がまた繰り返されると?」
「分からん。もう千年も前の話じゃ。歴史学者によって、其々いろんな説があるからのう。
一説によると幻獣から力を取り出して人間に注入させた、というが・・・。
、お主はどうやってそのお力を?」
バナンがそう言うと部屋に居る全員がに注目するが、はゴーグルを目の位置まで下げて無言を決め込んだ。
其れにリターナーの兵士が苛ついた様に「何故言わない!」と言う。
「・・・人には触れて良い過去と触れてはいけない過去がある。違うか?」
「・・・良いだろう、今は」
バナンが言うと兵士は大人しくなった。
さすが、指導者の特権だな。
とが思っているとエドガーが言葉を発した。
「帝国に立ち向かうには此方も魔導の力を手に入れるしか・・・」
「ならん!それでは帝国と同じ間違いをする事になってしまう!」
「・・・では如何しろと?」
何か良い案でもあるのかと思いながら皆がバナンを見やる。
「幻獣と話が出来ないかと考えているのだが、どうだ?」
「幻獣と!?」
ロックが瞳を見開いて声を張り上げて言う。
ロックだけでは無く、其処に居る全員が驚いていた。
「危険だが・・・ティナと幻獣をもう一度反応させれば幻獣が目覚めるかもしれない・・・」
バナンはそう言いティナを見る。そしてエドガーも言葉を発する。
「本当にそんな事が・・・」
「出来るかもしれないぞ」
がそう言った事により、またに視線が集まる。
は気にした様子は無く言葉を続ける。
「唯、眠っているから百パーセント成功するとは限らないが。
・・・私も、出来ないかもしれないし・・・」
はそう言い腕を組んで自分の足の爪先をじっと見下ろした。
ティナも何やら考えていた様だが顔を上げて真っ直ぐ前を見ると、力強く言った。
「やってみましょう」
ティナはそう言いを見る。
そしてを安心させる様に微笑んだ。
「・・・ティナ・・・」
「・・・何だかチンプンカンプンだが・・・面白そうだな」
黙って話を聞いていたマッシュがそう言った。
・・・否、お前チンプンカンプンって、駄目だろう。
等と思っていただがずるりという音を耳にし、壁から離れて銃を背に背負って音のする方へと足早に近づいた。
其れに皆も続いてくる。
「た 大変です!バナン様・・・ サ、サウスフィガロがっ・・・・・・!」
満身創痍の一人のリターナーの兵士が壁に手を着いて必死に崩れ落ちない様にと怪我をしている足を叱咤しながら此方に向かってきていた。
は彼を横にさせるとポーションを取り出して彼に使い、ケアルをかけ始めた。
「落ち着け、大丈夫だから・・・。ゆっくり話せ」
がそう言うと男は深呼吸をした後バナンを見て再度口を開いた。
「て、帝国が・・・サウスフィガロから此方へ・・・・・・向かっています・・・・・・!」
男の一言に辺りに驚きと緊張、焦りの色が浮かぶ。
バナンは直ぐに冷静さを取り戻して口を開く。
「気付かれたか・・・作戦を急がなくてはならん!」
「ロック!」
エドガーが振り返り自分の後ろに居るロックを呼ぶ。
ロックは既にもう何かの準備をしていて「おう!」と答える。
「分かってる。サウスフィガロで内部から敵を足止めする作戦だろ?」
「お前の特技を見込んでの作戦だ!頼んだぞ!」
エドガーがロックにそう言うとロックは親指を立てて笑った。
そしてこんな状態なのに徐にバンダナを外しての下へ来た。
「、悪い。こんな事になっちまったから・・・」
ロックが申し訳なさそうに男を治療するを見る。
そんな二人に周りが注目しているのに気付いたはハッとして慌ててロックから顔を逸らした。
「べ、別に良い・・・!自分の身くらい自分で守れる・・・・・・!
それに、着いて行ったら私は邪魔だろう・・・・・・」
そう言ってからルナは自分の言った言葉に戸惑う。
着いて行ったら、邪魔?
確かに潜入系の仕事には単独の方が成功率が高い。
其れ以前に『着いて行きたい』と少しでも思った自分に戸惑っていた。
(な、何で・・・?)
が一人どぎまきしている事を露知らず、ロックが再度口を開いた。
「でも、心配なんだよな。俺が戻るまで大人しく待ってろよ?
特に・・・手が早いので有名な何処かの王様には気をつけろよ!」
ロックはそう言いの手をぎゅ、と一度握ってからそう最後の方を強く強調して言った。
心配なのはそっちか。
言う事だけ言って満足したのか去ろうとするロックの手を何故かは掴んでしまっていた。
「ん?」
「あ、え、これ・・・」
指しているのは先ほどさり気無く渡されたバンダナ。
ロックはニッと笑い「お守り」と言った。
は暫く彼の笑みを見つつぽうっとしていたが直ぐにハッとしてから自分の被っていたフードを取り束ねていたリボンを取ると其れをロックに渡した。
「じゃあ・・・此れもお守りだ・・・」
「あぁ、サンキュ!」
ロックは其れを受け取ると腕にリボンを巻いて片手を上げた。
「じゃ!ナルシェで無事会おう!」
ロックはそう言い走ってリターナー本部から出て行った。
(ロック・・・)
どうか、無事で・・・。
はロックに渡されたバンダナをじっと見詰めていたが、考えは次のマッシュの台詞により半分は打っ飛んだ。
「兄貴・・・未だ其の癖・・・直ってないのかい?」
癖だったのか。
思わず呆れの感情を思い切り表に出していたらエドガーが慌てた。
そんな中バナンが一人まともな事を言う。
「こっちはどうする?」
すると先ほどまであたふたしていたエドガーが直ぐに真剣な表情になり口を開く。(切り替え早いな)
「レテ川を抜けてナルシェに逃げるのが良いでしょう。炭鉱で見つかった幻獣のことも気に掛かります」
「うむ。では裏口に筏を用意させよう。少々危険だが、他に手はあるまい・・・」
バナンはそう言い先に外へ兵士と共に向かっていった。
其れにエドガーも続きつつ、ティナとに話しかける。
「ここは危険だ。一緒にナルシェへ・・・。自分の力を知る、良いチャンスになるかも知れんぞ」
そう言い先に進んだエドガーにティナも続く。
とマッシュだけはその場に留まっていた。
「・・・・・・筏・・・」
「ん?如何した」
「筏で大丈夫なのか?レテ川と言ったらかなり流れが速いぞ?」
沈んだら如何する。という意味をも込めてが言うがマッシュは少しだけ考えた後豪快に笑い、言った。
「まぁ修行だと思えば大丈夫だって!」
其れはお前だけだ。
次はレテ川・・・!