「・・・・・・ん?」
は草原で目が覚めた。
何があったんだっけ、と思い辺りを見渡して横たわっているマッシュを発見した時に全てを思い出した。
―タコに投げ飛ばされたんだった・・・。
取り敢えず濡れた服を乾かさなければ。と思いはマッシュを引き摺って木に寄りかからせた。
正直かなり背が高いマッシュを運ぶにはかなり苦労をした。
は一息吐いてから火を熾した。
暫くそうしていたらマッシュが目を覚ました。
「・・・・・・んあ?」
「あぁ、おはよう」
「ん?おはよう?」
疑問符を頭に浮かべながらそう言うマッシュには何だか可笑しくなってくすりと笑みを零す。
そして「服は乾いた様だな」と言う。
「お、本当だ。 すまないな、が運んでくれたんだろ? 大変だったろ・・・」
「まぁ、結構・・・。 それより、此処が何処だか分かるか?」
「さぁ?」
「・・・そう、だよな」
即答するマッシュにはぁ、とは溜め息を吐いてある方向を指す。
「向こうに家が在るのが見えた。ずっと此処に居ても何も変わらないし行って見ないか?」
「そうだな、おし!行くか!」
そう言いマッシュは火を消して歩き始める。
も其れに習って置いておいた銃を背負ってマッシュの後を歩く。
「それにしてもと二人かー。何か新鮮だな」
「新鮮?」
「あぁ。だってって何時もロックと居ただろ?だからあまり俺と一緒って事は少なかったじゃないか」
「あぁ、そうだな・・・」
正直ロックと、という言葉に反応したが事実なので言い返したりはあえてしなかった。
他愛も無い会話を続けて進んでいると一軒だけ家がポツンと在る場所に着いた。
マッシュは「俺は家の人にちょっと話しを聞いてくるよ」と言いノックもせず躊躇いも無く家の中へ入っていった。
いいんだろうか、あれ。と思いつつもは外に居るチョコボに乗った男に話しかけた。
「はい、こんにちは。私は、チョコボの道具屋さん。この辺じゃ知らない人はいないよ。
ははーん、さてはお客さん。他所者・・・・・・・・・だね?まあそれはいいとして、だ。道具気はいらんかね?」
「あ、あぁ・・・頂こう」
ぺらぺらと一気に一人で話す男に多少たじろぎながらもこれからアイテムが結構必要になって行く事を予想して買って置いた。
買い終わったらチョコボの男は「まいど!」と言い去って行ってしまった・・・。
・・・・・・道が聞けなかった・・・。
と思っていると足元にぞわりとした感覚。
思わず肩を跳ねさせる。其れと同時に家からマッシュが出てきた。
「「」」
「え?」
一つはマッシュの声。もう一つは別の男の声。
マッシュと同じ名前を呼ぶものだったが後者の方は確認の様だった。
聞き覚えのある声に振り返ると、其処にはサウスフィガロで一度姿を目にした男が居た。
「あ・・・・・・シャドウ・・・・・・」
「やはりお前か」
「と、いう事は・・・。インターセプターか・・・」
はそう言い自分の足に擦り寄ってきている犬―インターセプター―の頭を撫でた。
そうしていると背後からマッシュが近付いてきて「知り合いか?」と聞いて来た。
其れには頷いてマッシュにシャドウが見えやすい様に少しだけ横にずれる。
「あぁ。彼はシャドウだ。 ・・・シャドウ、私とマッシュは仲間と逸れてしまった。ナルシェへ向かいたいのだが・・・此処ら辺の地理がさっぱりなんだ」
「東の森を抜けたところに帝国が陣を張っているらしい」
「帝国が!?」
シャドウの言葉に大きく反応したのはマッシュ。
大きくでは無いが、も反応し眉を潜めた。
「如何やらドマの城を狙っているような気配だ」
「気配って・・・お前相変わらずだな・・・」
「ドマの城か・・・。でも俺らは急いでナルシェに行かなければならないんだ」
マッシュがそう言うと、は少し考えた後「確か、ドマを通らなければナルシェには行けないんじゃないのか?」と言うとシャドウが頷いた。
「俺がドマへ案内してもいいんだが・・・」
「シャドウが来てくれるなら、安心だな」
「・・・ただし気が変わったら何時でも俺は抜けるからな・・・俺はいつでも死神に追われている」
はインターセプターの頭を撫でながら不思議そうにしているマッシュに「行こうか」と言った。
マッシュも深追いはいけないと思ったのか、はたまた気にしていないのか分からないが頷いた。
勿論先頭は道案内のシャドウが歩く。
とマッシュはシャドウの後に続いた。
家から離れ、東の方角へ進む。
―それにしても、帝国が陣を張っているのか・・・。
気が重い。
そう思いは溜め息を吐いた。
其れに横を歩いていたマッシュが反応する。
「如何した。疲れたか?」
「否・・・。唯・・・・・・帝国の基地を通るのだろう?」
「あぁ、それでか。 大丈夫だ、ロックと合流するまでは俺がを守ってやるから!」
「・・・頼もしいボディガードだな」
くすり、と笑ってそう言った。
笑ったに釣られて笑みを浮かべたマッシュが「あ、そういえば・・・」とに言う。
「シャドウだっけか? コイツとは昔からの知り合いなのか?」
「シャドウを疑っているのか? 大丈夫、彼は私の恩師だ」
「恩師って・・・」
マッシュが首を傾げて言うがは「まぁ、色々」と笑って誤魔化した。
は未だ横で首を傾げているマッシュを横目で見た後、前を歩くシャドウの後ろ姿を見る。
(・・・正しいよな・・・。 お前が何と言おうと、お前は私の恩師なんだ・・・、シャドウ・・・)
暫く進んでいくと、帝国の基地に着いた。
帝国の基地なだけにテントやら魔導アーマーやら兵やらが沢山だ。
「これが帝国の陣地・・・。かなり兵士が多いぞ・・・」
マッシュが呟く。其れにシャドウが「見つからない様に慎重に進むぞ」と言う。
其れにとマッシュは頷いて物陰に隠れつつも一歩、また一歩と慎重進んだ。
物陰に隠れていると前の方で兵士が話しをしていた。
「おい、知ってるか?」
「ああ、あの話か?」
「しーっ・・・。声が大きいぞ。ケフカにでも見つかったら大変だぞ。どうもあいつはレオ将軍を我が軍から追い出して自分が将軍になろうと、企んでいるらしい・・・」
ケフカ・・・。
見つかったら、という事は奴もこの基地に居るのか・・・?
其れだったら、少し厄介だな・・・―。
はそう思いつつも彼等の話に耳を傾けた。
「冗談じゃないよ。あんな奴が将軍になるんだったら実家に帰らせてもらうよ、ホントに」
「しーっ! もしあいつに聞こえたらどうする?牢屋にブチ込まれちまうぞ!」
「・・・分かった、分かった・・・。
・・・おっ!?ヤバイっ!おいでなすったよ・・・・・・早く持ち場へ戻ろうぜ」
おいでなすった、という事は奴が来たのか・・・?
そう思い耳だけではなく視線も其方へ向けたその時、「おい、コラ!」と言いながら偉そうに歩いてくるケフカが見えた。
ケフカが来た途端、先ほど話しをしていた帝国兵の二人は姿勢を正して敬礼をした。
「お前らキチンと見張ってるか、ん?」
「ははっ。これはこれはケフカ様では御座いませぬか。ご機嫌は如何で御座いましょう?」
「ふんっ。挨拶など如何でもいい! いいか?ちゃんと見張ってなかったら酷い目に会わしてやるからな!」
言いたい事を言うだけ言うとケフカは去って行った――・・・。
取り敢えずこの基地ではケフカに注意しなければ、
は強くそう思い彼等の意識が此方に向かない内にその場を後にした。
―奥へ進んでいくとまた別の帝国兵の会話が聞こえた。
「レオ将軍。ドマの者は篭城戦の構えです」
レオ・・・将軍?と思いマッシュとは物陰から覗く。
シャドウは覗いてはいなかったが耳を傾けている様だった―。
覗いた先、其処には一人の帝国兵と鎧を身に着けた褐色の肌で金の髪を持つ男が居た。
彼は帝国のレオ将軍らしい・・・。
「お得意の戦法で来るか」
「将軍。城を攻める心構えは出来ています。何時でも命令を下して下されば・・・」
「そう焦るな。もし今ドマ城に攻め込んだとしても無駄な犠牲を多く払うだけだ」
「しかし、将軍!帝国のためなら私は何時でも命を落とす覚悟は出来ています!」
帝国兵がそう言った途端レオ将軍の表情が変わった。
何と言うか、厳しい様な表情に―。
「・・・お前はマランダ出身だな?」
「は? は、はい。・・・しかし何故・・・?」
「国には家族も居るだろう。この私にお前の剣を持って家族の所へ行けというのか? 其の時私はどんな顔をすればいい?
お前は帝国軍の兵士であると同時に一人の人間だ。無駄に命を落とすな。ガストラ皇帝もきっとそうお望みだ」
「はっ・・・・・・はい・・・!」
兵士は厳しくも、優しい声色で言ってきたレオ将軍に対して笑顔で敬礼をした。
レオ将軍のその言葉を聞いては驚いた。
今まで身を狙われていた上で、帝国兵=悪という方程式が自分の頭に出来上がってしまっていたが・・・、
帝国兵も、全てが悪という訳では無いのだ。
そうだ、帝国の兵士という前に一人の人間だ。
・・・其れを今更ながらに理解したは心に何か重たい物がずしりと乗っかった感覚に襲われた。
其れと同時に今までの自分の偏見を恥じた。
「レオ将軍!ガストラ皇帝からの伝書鳥です!」
「何?」
走って来た他の帝国兵からレオ将軍は手紙を受け取り其れに目を通す。
表情は此処からだと伺えなかったが、内容を理解したのか、直ぐに其れを仕舞い口を開いた。
「皇帝がお呼びのようだ。私は先に本国に帰ることにする」
「ははっ。承知しました!」
「良し。後の事は全てお前達に任せたぞ」
「はっ!」
「いいか。くれぐれも早まったマネだけはせんようにな。 頼んだぞ」
「はっ! 後はお任せください」
「うむ。頼んだぞ」
レオ将軍はそう言い近くのテントへ入って行った。
帝国兵も去ったので今のうちに移動するか、と思い三人で物陰から出ようとするが足音が聞こえたのでその場に留まった。
―来たのは・・・、
「レオ将軍がいなくなったらこの川の水を毒に変えてやる・・・触れただけで即死じゃあ・・・ヒッヒッ・・・!」
ケフカだった。
奴は歪んだ笑みを浮かべながら川を眺めていた。
暫く奴は其処で気味の悪い笑い声を上げていたがレオ将軍がテントから出てくると其れも止まった。
「皇帝からお呼びが掛かった。私は先に本国に帰る。くれぐれも間違いは起こさぬことだ」
「お前さんよりも手っ取り早くやってやるよ」
「卑劣な真似だけはするなよ。敵兵といえども同じ人間。其処を忘れないでくれ」
「リターナーに属する国などに情けの心はいらんわ! 最も、最初からそんなもんは持ち合わせて無いがなっ!」
レオ将軍はケフカの物言いの眉を潜める。だが皇帝の呼び出しが来たので急いで帰らなければいけない。
数名の帝国兵を引き連れて基地を出て行った。
は去っていくレオ将軍の後姿をじっと見詰めていた。
彼は、帝国では珍しく分別のある男だ。 は今そう思っていた。
「・・・良い子ぶりやがって。 ふんっ!」
ケフカはそう言うと近くに居た帝国兵に寄り、声をかける。
・・・まさか・・・・・・・、
「毒は用意できたか?」
「しかし毒はダメだとレオ将軍に・・・・・・」
「奴はもう此処には居ない。俺が一番偉いんだ。毒を寄越せ!」
かなり自己中心的な物言いをするケフカ。
帝国兵は毒の入った瓶を両手で強く持ちながら抗議の声を上げる。
「ドマ城内には我が軍の捕虜も居ます!もし彼らが水を・・・」
「構わん!敵に捕まるような間抜けは必要無い!」
其の言葉を聞いた瞬間横に居たマッシュが姿を消した。
見るとケフカの前へ出ている。
マッシュに続いてシャドウとも前へ出る。
「そうはいかないぞ!!」
「けっ。五月蝿い奴め。痛い目に遭わせてやる!」
ケフカの手には先ほど帝国兵から奪い取ったらしい瓶があった。
あれさえ川に流させなければ良いんだ。
がそう思っているとの姿を目に留めたケフカが「おや?」と言い嬉しそうに笑った。
「ご自分から来て下さいましたか!さぁさぁ我等の下へ!」
「誰が行くか・・・!」
はそう言い銃をケフカに向けて一発放った。
其れはケフカの肩を掠った。
「いったぁーい!」
掠っただけなのにうざい位大袈裟な反応をして貴職の悪い声を上げてケフカは瓶を片手に走っていった。
当然だが、其れを追う。
「待て!ケフカ!」
「待て!と言われて待つ者が居ますか!」
そう言いながらうひょほほほと気味の悪い高笑いをしながら逃げて行くケフカ。
意地でも追いついてやる。そう思いながら三人はケフカを追った。
「ハァハァハァ・・・しつこい奴だね、全く!!!」
ケフカが何かの合図を出すと帝国兵や魔導アーマーがやって来た。
かなり此方が不利だ。魔導アーマーまで来るとは・・・!
「ほれっ!行け!魔導レーザー!」
ケフカがそう言うと魔導アーマー達が一斉に魔導レーザーを放ってきた。
幾らなんでも避けられずに三人共一気に吹き飛んでしまった。
「邪魔をするからですよー!ヒッヒッ!」
ケフカが高笑いを上げて「さて、」と言い倒れているマッシュとシャドウの脇を通っての下へ向かう。
そして嬉々とした表情でに手を伸ばす。
「ル、・・・!」
マッシュとシャドウ何とか身体を起こした時はもう既に遅く、ケフカがにもう触れるという所だった。
―――が、
パリッ―――。
「ん?」
パリッ・・・・・・、バリバリッ、
「んんんんんんん!?」
の身体から静電気の様な光がパチパチと出ている。
其れを唖然として見ている帝国兵やケフカ。
マッシュは瞳を丸くして思わず凝視しているがシャドウは違った。
「・・・! 、止せ!」
シャドウがそう言い痛む身体を叱咤して立ち上がりに駆け寄ろうとするが、時既に遅し、
バリッ、という一際大きい電気が流れた瞬間、
バリバリバリバリ!!!
という轟音と共に無数の雷が落ちてきて魔導アーマーや帝国兵へ命中した―。
シャドウとの関係は後ほど・・・