「マッシュ殿!この鎧の化け物のようなやつは何でござるか???」


マッシュの後を着いて行ったら魔導アーマーが三体置いてある場所に着いた。
魔導アーマーを見上げつつカイエンが瞳を見開いてそう言う中、マッシュは既に一体の魔導アーマーに乗り込んでいた。


「詳しい説明はあとで!いいから早く乗った乗った!!!」


マッシュにそう言われカイエンは頭に疑問符を飛ばしながらも魔導アーマーに乗る。
其れにシャドウも続いて乗る。が、


「・・・待て・・・私はどうするんだ・・・?」

「・・・そうだなー・・・悪いが誰かと一緒に乗ってくれ」


一人見上げていたがそう言うと少し考えた後マッシュがそう返事を返す。
は取り敢えず一番近かったカイエンのところに乗り込んだ。


「失礼する」

「う、うむ・・・」


カイエンは自分の後ろに乗り込んだに少しだけ戸惑いを見せたが直ぐに視線を前に向ける。
操縦席に彼は座っているのだが、一行に動かす気配が無い。
色々とレバーやらボタンやらを一通り見た後カイエンはもう既に動かしているマッシュの方を見て言った。


「・・・マッシュ殿ー! 一体どうやれば動くのでござるか!?」


どうやら操縦の仕方が分からなかったらしい。
・・・まぁ、仕方無いか。魔導アーマーの事を鎧の化け物とも言っていたし・・・。
が思いながら見ているとカイエンの声を聞いたマッシュがやれやれと肩を竦めた。


「全くもう・・・世話が焼けるでござるな・・・・・・いけねぇ!俺までうつっちまったよ!
 いいかー!? 手元のレバーを倒すんだ、早く!」

「こ、こうでござるか?」

「カイエン、其れは―――
・・・わっ!


出来ればゆっくり倒した方がいいと思う。
―と、が言おうとしていたが其れよりも早くカイエンはレバーを思いっきり倒してしまった。
其れのお陰でカイエンとを乗せた魔導アーマーは物凄い速さで前進を始めた、これぞ爆進・・・。


マッシュ殿ー!あべこべでござるぞー!!!

「分かった分かった・・・。 ー、何とか出来ないかー?」

「てっ・・・・・・手が届かないし・・・わっ、 揺れが酷くて・・・!」


分かったとか言いながら私がやるのか。

と思いつつもルナはそう言う。
混乱するカイエンの後ろでマッシュに返事を返しながら倒れきってしまっているレバーを元の位置に戻そうとするが揺れが酷く、の手がレバーに届く事は無かった。
其の後もマッシュが「大丈夫かー?」と声を張り上げて言うがカイエンの悲鳴とエンジンの音での耳には入らなかった。

マッシュは隣に居るシャドウに如何しようか・・・という目を向ける。
その時、


「おい!其処で何をしている!?」


騒ぎを聞きつけたのか、円を描く様にぐるぐる物凄い速さで回っているカイエンの暴走魔導アーマーのやや左側から数名の帝国兵が来た。
はそんな彼等の姿を目に留めると手の届く範囲にあった進行方向を操作するレバーをぐっと左に倒した。

魔導アーマーはスピードを緩める事無く進行方向を一気に変えてまた走り出した。


「あわわわわ!止まらんでござるぞー!!!」

好都合だ

「う、うわああ!」

「ぎゃっ!」


暴走したカイエンとの乗った魔導アーマーはやって来た帝国兵を全て轢き倒して進んでいった。
唖然としてマッシュはシャドウと共に其れを見ていたがの「今の内に突破するぞ!」という声に我に返り後を追った。
は後ろから二人が着いて来ているのを確認してから前に居るカイエンの肩に手を置いた。


「カイエン、すまないが少し膝を借りるぞ」

「へっ?」


はカイエンの肩に片手を置いて其処を軸に身体を伸ばした儘飛んでからカイエンの膝の上に座り込んだ。
そして倒れているレバーを少しだけ緩やかにする。
するとスピードは段々と遅くなりマッシュとシャドウも追いついた。


「な、なななななななななな!!!若いおなごがなななな何という行動に!!」

「五月蝿いぞ・・・仕方無いだろう、お前は操縦が出来ないんだから・・・」

「だ、だだだだだだだだだだ・・・だからといって・・・!」

・・・・・・。  此処まで来れば平気じゃないか?」


赤面しつつ何やら色々と言ってくるカイエンは無視する事にしたが辺りを見渡してから皆に聞こえる声の音量で言う。
其れにマッシュとシャドウは頷いて帝国軍基地の入り口で魔導アーマーを乗り捨てた。

全員が降りてさり気入り口を魔導アーマーで塞いでから帝国軍基地を出る。


「ところで、ここからナルシェには如何やって行けばいいんだ?」

「ナルシェでござるか?
 此処からでは、南の森を抜けるしか無さそうでござるが・・・」

「では南に向かうか。 ・・・此処から離れて安全な場所で一夜を過ごしてからになりそうだがな」


日も落ちてきているし、と付け足しつつはそう言い銃を背に背負いなおした。




暫く歩いてから四人は野営地に丁度良い場所を見つけ、其処で一夜を過ごす事になった。
食事も簡単に済ませてから各々自由に時を過ごしていた。

は火の近くに座り込み、燃える火をじっと見ていた。
そして、考えていた。

ずっとそうしていたからか、マッシュが声をかけた。


?如何したんだ?」

「・・・否・・・。 少し考え事をしていた」

「・・・ケフカの事か?」

「それもあるが・・・・・・また、やってしまった事かな・・・」


はそう言い自分のマントの裾をきゅ、と握った。


「・・・コルツ山で以前も一度皆の前でやってしまったんだ、さっきのアレは。
 ・・・ケフカの前であんなに強力な魔法を放ってしまったんだ・・・。奴の興味心という火に油を注いでしまったな、と思って・・・」

「・・・魔法?」


が其処まで言うと話を聞いていたカイエンが反応した。


殿は・・・魔法を扱うのでござるか?」

「・・・言っておくが、帝国の力等で手に入れた力では無いぞ。
 ・・・この力は・・・・・・純粋な、ものだ・・・。あんな帝国軍の機械等が使う邪なものではない」


真っ直ぐにカイエンを見て言うと彼は少しだけ複雑な表情をしたが、に嘘は無いという事が解ったのか深くは追求して来なかった。
マッシュが「ケフカは、」と口を開く。


「・・・帝国がでもあるが・・・本腰入れてを狙ってくるかもな・・・」

「・・・もうずっとこの七年間私はそうだったんだ。 ・・・大丈夫、逃げ切ってみせるさ」

「おっと、一人で、だなんて思ってないよな?」


瞳を伏せて言ったにマッシュは笑って言う。
そしての頭に自分の大きな手をポン、と乗せた。


「俺らも居るからな。 一人で背負い込むなよ?」

「・・・マッシュ・・・」

「それにには今は効果抜群のお守りがあるじゃないか!」

「・・・・・・。  ・・・・・・寝る」


マッシュが笑っての髪を結わいているバンダナを見て言う。
最初ははきょとんとしていたが理解したのかマッシュの笑みをじと目で見てボスンと地に横になってそう言った。
だがマッシュは笑顔の儘「あぁ、おやすみ!良い夢見ろよ!」と言った。

・・・もしかしてからかうのでは無く、純粋にか?

はそう思い、溜め息を吐いてから瞳を閉じた。