ゴースト達を車両切り離しという方法で撃退した後は難無く進めた。
先頭車両が近くなってきた、という所で食堂車へ入った。

さすがに食事を取る所だからか、他の車両内とは違い埃はあまり無い。

が辺りを見渡していると、マッシュが極々普通な動作で席に腰掛けているのが見えた。


「・・・待て・・・お前何して―――・・・
「メシだ、メシだ!山ほどもってこ〜い!」


聞け。

と、は思ったが既にナイフとフォークを両手に持ってご飯を待っている状態のマッシュを見、頭を抱えた。
それと同時に溜め息が出た。


(しかも料理来てるし・・・)


マッシュの前には出来たてでじゅうじゅうとまだ肉が焼けている音がしているハンバーグ。
しかもちゃっかり人数分あるという、
其れにはシャドウと顔を見合わせ、カイエンはマッシュの横へ行き彼に声をかける。


「こ、こんなもの食べて、大丈夫なのでござろうか?」

「心配なのか?ま、いいんじゃないの? 腹が減っては戦は出来んよ」

「うーむ・・・ 拙者、どうもこういう話は苦手でござるよ。全く・・・」


カイエンはそう言い迷いながらも席に着く。
と、いうかマッシュは心配をしていないのか・・・?

とシャドウも彼らに習って席に着く。
目の前には、美味しそうなご飯。

ちらり、とマッシュとカイエンを見ると普通に食べているし何も異常は無い様だ。
其れを見てからとシャドウはナイフとフォークを掴んだ。

食べやすい大きさに切ってから、口に入れる。
結構美味しく自分好みの味だったのでは思わず笑みを零す。


「・・・・・・インターセプター、お前も食べるか?」


シャドウは少し迷いながら其れを口に含んだが異常が無い事を再確認すると自分の足元で丸くなっているインターセプターに丁度良い大きさに切って少し冷ましてある肉を差し出した。
インターセプターは嬉しそうに「わん、」と一度だけ鳴いてから其れを口に含んだ。








食事も終わり、その後も難無く進めた。
唯途中で自称世界一の剣士のジークフリードとかいう男に会ったが特に何も無かった。(というよりが無視した為皆も従った)

取り敢えず、先頭車両にやっと着いた。

列車を止める為に機関室の中へ入る。
が、どれを如何すれば列車が止まるのか、達はサッパリだった。

そんな中インターセプターが何かの紙を咥えて来た。
シャドウが其れを受け取り読む。
一人だけ理解して如何する。と思ったは覗き込み其れを声に出して読む。


「・・・機関車を止めるには、第一、第三番圧力弁を止め、煙突の横にある停止スイッチを押してください。
 ―――と、書いてある」

「第一と第三・・・これか」


シャドウが其れに従い第一と第三の圧力弁を止める。
じゃあ煙突のは俺らが、と言いマッシュとカイエンは機関室から出て行った。

其れにシャドウも習って出て行こうとするが、室内で止まっているに気付き彼も室内に残った。


「・・・行かないのか?」

「・・・如何しようか・・・?」


がそう返答するとシャドウは眉を潜めた。
そんなシャドウを見、だって、とは言う。


「・・・私は帝国に狙われているんだ」

「知っている」

「あいつ等に迷惑をかける・・・」

「離れれば良い・・・」


シャドウがそう言う。
はその一言に拳を強く握り、シャドウから視線を逸らして苦々し気に吐き出すように言葉を放った。


「・・・出来たらしているっ・・・!」

「・・・・・・お前に、心を許せる相手が出来たんだな」

「・・・こころ・・・」


はそうポツリとシャドウの言った事を復唱して自分の足の先を見た。
暫くずっとそうしていて沈黙が続いたがの「シャドウ、」という声で沈黙は破られた。


「・・・・・・私は、帝国の為じゃなくて、誰かの為になら―――・・・」


キキーーーーッ!!!!!


が其処まで言いかけた時、急に物凄い金属音が響き車内が酷く揺れた。
突然の事に驚いたは体制を崩したがシャドウに支えられた事で倒れる事は無かった。
何だ何だと思っているとバタバタという音が近付いてきて扉が開かれた。
其処には慌てた様子のマッシュとカイエンが―。


「列車が!!」

「兎に角出ろ!此処に居たら危ない!」


そう言い彼らは走っていった。
何やら危険な雰囲気なのでとシャドウも急いで彼らに習い外へ出る。
列車の走行は止まっていて、薄暗い森の中だった。
如何するんだ?とが考えていたら魔列車の汽笛が騒々しく鳴った。

其れと同時に響いた声。


『走行を止める訳にはいかない』

「・・・魔列車が喋ったぞ・・・?」

「あ、あぁ・・・何か怒ってるみたいなんだ」

「・・・戦う、という事か」


は銃を出し、魔列車へ向ける。
其れとほぼ同時に魔列車からボムが大量に出てきた。
「げ、」と声を上げるマッシュ。気持ちは分かる、ボムは爆発をするから―・・・。

爆発する前に倒せば良い事、はそう思い集中し、魔力を一気に放出した。


「サンダー!」


其れは見事ボムへ命中した。
怯んだボムにマッシュが拳を打ち付けて遥か遠くへ飛ばす。
シャドウもマッシュと同じように怯んだボムに攻撃を繰り返している。

―カイエンは?

そう思いふと後ろを見てみると道具袋を漁っているカイエンが居た。


「何をしているんだ?」

「魔列車はアンデットの魔物でござる!だからポーションやフェニックスの尾があれば・・・」

「楽に倒せる、という事か・・・ ・・・そうか、アンデット・・・」


少し考えた後はカイエンに道具はあったかと聞く。
するとフェニックスの尾は無かったがポーションはあったと答えられた。
ポーションだけで魔列車を倒すのは恐らく難しいだろう、ケアルでもキツイかもしれない。

はそう思い少しだけ腕を組んで考える。

そんなを見、マッシュが声をかける。


「何してんだよ!魔列車も雷落としてきてるから援護を・・・」

「否、其れはいい。 一撃で決める」


はマッシュにそう言い魔力を高めた。
―今の自分の魔力なら少し身体に堪えるかもしれないし、未だこの魔法は使った事が無い。
上手くいってくれるといいが、と心の中で静かに考えながらは銃を握り締めた。


「私は少し強力な魔法を放つから少しの間奴等を引き付けておいてくれ」

「分かった!」


マッシュがそう返事をし前へと戻っていく。
カイエンも其れに続き、アイテム袋を置いて刀を手に走っていった。


「―――よし、 やるか・・・」


ゆっくりと瞳を閉じる。

ぽう、との身体を金の光が輝き、包んだ。
其の光は時が流れるごとに次第に輝きを増していった―。

前のほうに居るマッシュ達の場所にも、その光が行き届いた。


「・・・?」


マッシュは思わず振り返り、彼女を見る。

はきつく瞳を閉じて、額からは汗が浮き出ていた。
表情は何処か苦しげだ―。

其れを見てマッシュは彼女が無理をして上級の魔法を放とうとしている事を理解した。
だが、今は彼女に頼る事しか出来ないという事実も理解し、奥歯を強く噛んだ。

パン、という光が弾ける音が響いた―。
其れと同時には発動の呪文を口に出す、


「レイズ!」


が其の魔法を放つと魔列車が強い輝きに包まれた。
光の中で魔列車の苦しむ声が聞こえる。
かなり効いたらしい、もう攻撃不能状態になった魔列車だが、カイエンとシャドウは警戒態勢を崩さずに居た。
マッシュだけがふらついて其の場に膝を付いてしまったに走りより彼女を支える。
そして覚えた必殺技のチャクラで自分の気を彼女に与えた。

暫く其れを続けていたらは結構回復し、「すまない、大丈夫だから」と言い自力で立った。
それでもマッシュは心配気な視線を彼女に向ける。
そんなマッシュには安心させる様に微笑んで見せた。


「大丈夫だから」

「・・・・・・!」

「・・・お前たちは近くの駅で降ろしてやろう」


の笑みが何時もと違い、何かを感じたマッシュはに其れを言おうとするが、出来なかった。
魔列車が言葉を発したのだ。


「だが、その前にやらねばならぬ事がある」

「降ろして貰えるなら其れで良い」


はそう言い未だ自分を見ているマッシュの視線から逃げる様に列車の中へと戻って行った。
其れにシャドウとカイエンも続く。
―マッシュも少し遅れて、列車内へ入った。


列車の中で其々が好きな席に腰を下ろして、降ろしてもらえる時を待っていた。

マッシュは浮かない表情で何やら考えていた。


(・・・何だ?この突っかかり・・・・・・)


何か重要な事を見逃している、そんな気分に追われ、マッシュは気付かれない様にをちらりと彼女に視線を送った。
だがは廊下を挟んだ向こう側の椅子に座り、窓の外を見ていた為表情は伺えなかった。

マッシュは心の中で舌打ちをし、無意識の内に強く拳を握り締めていた。


―暫くそうしていたら、列車が止まった。


「着いた様でござる」


カイエンがそう言い席を立つ。
皆其れに習って席を立って外へと出る。

外の空気を吸ってマッシュははぁ、と重い溜め息を吐くと両手を天へと伸ばして身体も一緒に伸ばした。


「やーれ、やれ。やっと降りられたぜ。こんな列車とは早いところおサラバしようぜ」


そう言いまた溜め息を吐く。
相変わらず胸の内の突っかかりはあったが魔列車から出れた喜びがあったので素直にその感情を出した。
―が、突っかかりが消えた訳ではない、未だ気になっている。

そうマッシュが考えていると自分達の降りた場所と違う所から乗り込んでいる人たちが視界に入った。
其れを見ていたカイエンが瞳を見開いて声を張り上げる。


「あれは・・・!? ミナ!シュン!!」

「カイエン!お前の奥さんと息子さんか!?」


マッシュがカイエンに聞くがカイエンは答えず魔列車へと乗っていった自分の妻子の方へと駆け出した。
そんなカイエンを横目で見つつ、は一歩下がった。

下がった先は、魔列車の中。

其れと同時にポッポーという汽笛の音が響いた。
 

「出発するのか!? ―――・・・!!!?」

「待ってくれ! ミナ・・・シュン・・・!」


マッシュとカイエンがほぼ同時に物凄い速さで走り出す。
マッシュが慌てての手を掴み自分の方へ引き寄せようとする。


「馬鹿!何で未だ降りてないんだ! 今なら未だ列車も走り始めたばかりだから・・・」

「マッシュ・・・」

!」


マッシュは腕に力を入れるがが其れを拒んだ。
そんなにマッシュは思わず声を張り上げる。
は首を振って少しだけ微笑んで、言った。


「皆の足枷になりたくないんだ」

「足枷?そんな事一度だって思った事ないさ!」

「でもきっと何時かは必ず思うようになる!」

「思わない!」

「思う!!」


はマッシュに負けない程に声を張り上げて、続けた。


「私は七年間、帝国から逃げてきた・・・色々な所へ身を隠した!でも其処は必ず帝国の火花に襲われた!
 皆死んでいった!生き残った人も居たけど私を嫌った、迷惑がった!

 ・・・私はロックやティナ達に死んで欲しくないし・・・嫌われたくない・・・・・・

 私は・・・もう離れられない所まで来てしまった・・・・・・!」


最後の方に行くにつれて言葉が段々と小さくなっていったが、彼女の声は全てマッシュの耳に届いていた。
の瞳が、微かに潤んでいる。
マッシュは其れを見、眉を潜めた。


「・・・皆に死んで欲しくない、嫌われたくない、でも、離れたくないんだ・・・馬鹿でしょ・・・?
 だから、此の儘死出の旅路に案内されるのが、一番なんだ・・・

 ・・・私は、帝国の為じゃなくて、誰かの為になら、こんな命、惜しくは無い・・・」


だから、と言葉を続けようとしたにマッシュは堪らなくなって「馬鹿野郎!」と怒鳴り、全ての力を込めて腕を引いた。
は思いのほかすんなりと此方側へと倒れこんできて、マッシュが其れを抱きとめて支えた。


「・・・っつ・・・! マッシュ、どうしてっ―――」


パンッ!!!


瞳を見開いて見上げてきたの頬をマッシュは思い切り叩いた。
叩かれた衝撃での身体が傾いで、顔は斜め下を向く。

はじん、と痛み始めた頬へ、無意識の内に手を持って行っていた。

そんなにマッシュは再び「馬鹿野郎!」と怒鳴りの両肩を掴んだ。


「俺らがそう簡単にお前を嫌うと思うか!?俺らがそう簡単にくたばると思うか!?」

「でも!!」

「でももだってもクソも無ぇ!! 俺らがお前が・・・仲間が死ぬって言ってるのを黙って見ていると思うか!?」


反論しようとしたを威圧で黙らせマッシュは続けた。
次に出た声は先ほどの怒鳴る様な声では無く、に悟らせる様な静かな声だった。


「・・・如何したら俺らは信じて貰える?」

「信じる・・・・・・?」

「未だ信じて貰えてねぇんだろ?その証拠には俺らが帝国に勝つという終わりを見ていない。
 バッドエンドの方向ばかり見てる」

「・・・・・・」


黙って俯いてしまったの頭にポン、とマッシュは手を置いた。
そして何度も何度も優しく撫でた。


「もっと俺らを見てくれよ、今そんな全部決定するのは早すぎるだろ?
 もっともっと、俺らを見てたら見えるだろうさ、一番良い終わり方が」

「・・・マッシュ・・・・・・」

「な?」


はマッシュを見上げ、彼の名を呼ぶ。
瞳を揺らして言う彼女を安心させる様に、理解させる様にマッシュは優しい声色でそう言いの頭を撫でる。
するとはくしゃりと表情を歪ませ、自分のマントで顔を覆った。

―肩が震えている。


「・・・ごめん、なさい・・・・・・」

「分かってくれたならいいんだ」

「ごめん・・・・・・ごめん・・・!」

「ほれ、泣くなよ」

「泣いてない、この筋肉ダルマが・・・」

「きっ!?」


照れ隠しなのか、悪態を吐くにマッシュは苦笑しつつも彼女の頭を撫でた。
暫くそうしていると彼女の髪を束ねている物に目が行った。

確かリターナーの本部でロックがに渡したバンダナ―。


、此れの事も忘れちゃ駄目だぞ?」

「・・・・・・?」

「此れ」


マッシュは首を傾げたに分かるようにバンダナに軽く触れる。
は気付いたのか、少しだけ頬を染めて首下のマントに少し顔を埋めた。


「・・・忘れてない」

「ロックの、だもんな〜」

「・・・・・・」


からかう様な口調で言ってきたマッシュをジト目で睨むとマッシュは豪快に笑いの頭をまたくしゃりと撫でた。
そして歩き出す、出口へ。

も其れに付いていくがふと、後ろを振り返る。

奥さんと息子が魔列車に乗って行ってしまった、カイエン・・・。

少しの間彼を見ていたがシャドウが止まっているの背を押した。


「そっとしておいてやれ」

「・・・そう、だな・・・」


達はカイエンを待つ為に出口で止まった。