あの後魔列車で思いのほか時間がかかってしまったので一晩また野宿をし、バレンの滝に着いた。

バレンの滝は前は断崖絶壁。左右も断崖絶壁。
唯左右には滝が流れていた。

―恐らく正面の所も途中から水が流れているのだろう、覗き込むと水が見える。


「此れがバレンの滝かー・・・」


凄いな、とつけたしてマッシュが言う。

確かに、凄い・・・・・・。


「此れより南は獣ヶ原・・・。凶悪な獣が居る場所ですぞ」

「だが後戻りしても帝国軍が待ち受けてるぜ・・・」

「フム。獣ヶ原を抜けることが出来れば、東の海岸沿いにモブリズという村が在る筈でござるが・・・」


カイエンとマッシュの話し合いを尻目にシャドウが背を向けて歩き出した。
其れを見、が「シャドウ」と声をかける。


「俺の役目は終わったようだな・・・」

「シャドウ!」


去ろうとするシャドウにマッシュが声をかける。


「お前には世話になったな。また一緒に冒険しようぜ!」


マッシュが片手を上げてニッと笑い言う。
シャドウは無言だったが少しだけ柔らかい雰囲気を出した気がした。
もシャドウに「またな」と言い彼がインターセプターと一緒に去るのを見届けた。

は「さて、」と言いマッシュとカイエンを見る。
そして断崖絶壁の前に居る二人の肩にポン、と手を置く。


「「??」」

「まぁ、行くより他は無いんだろう?」

「そうでござるな・・・」

「・・・これは・・・まぁ、凄い流れだな」

「そうでござるな、激流でござるな」

「死ぬかな?」

「そ、そうでござるな・・・下手したら・・・」

「でも行かないと始まらないよな」

「そ、そうで・・・ござるな・・・」


そうだな。とは最後にそう言い振り返る二人ににこり、と花の様な可憐な笑みを向ける。
至近距離で見る整った顔の美しい微笑みに二人は思わず見惚れていたが、直後我に帰るのであった。


「迷っている様なので押してやる」

「「はっ?」」


どん。


気付けば、空中。


「「はっーーーーーーーー!!??
 
はあああああああああああああああ!?!?!?!?」」


二人の絶叫が段々と小さくなっていく―・・・。


「よっ、」


思い切り力を込めて二人を押したルナは自分もバレンの滝へと飛び込んだ。

重力に従って、三人は下へ下へと落下していく。


「臓器が上に上がっている感じがして気持ち悪いな」

!!お前何するんだよ!」

「吃驚したか?」

「「した!」」

「そうか、其れはよかったな」


声を揃えて言う二人にルナは何だか面白くなってくすくすと笑った。
それにマッシュが「・・・お前なぁ・・・」と言葉を投げかけようとするが真横の滝の水面から魚型の魔物が出てきた。


「うお!敵が居るのか!」

当たり前だろう。・・・まぁ、」


パリッ―。


「一気に全てを仕留めれば良いから問題は無いだろうが」


ルナは滝の水面に手を突っ込んで瞳を閉じた。
其れと同時に魚型の魔物は苦しげに悶えてから動かなくなった。


「・・・?」

「一瞬だけ電撃を走らせた。 ・・・あぁ、大丈夫だ。お前等は今リフレクをかけておいたから」


ルナはそう言い下を見た。
其れに習ってマッシュとカイエンも下を見やる。

有る物を視界に居れ、三人は同時に「あ、」と言った。


「滝壺だ、でかいな」

「そうだな・・・って、何でさっきからルナはそんなに余裕なんだ?」

「大丈夫だと確信しているから」

「根拠は?」


はマッシュの問いに少し首を傾げた後くすりと笑った。


「お前が言ったんだぞ、昨日忘れるなと」

「え?」


はそう言い髪を掻き揚げると同時にそっとバンダナに触れる。
其れと同時にロックがニッと人懐こそうな笑みを浮かべて「お守り」と言った時の記憶が蘇る。


(―そう、これはお守りだから・・・)


だから、何だか安心する。

そう、傍に・・・。



ザッパアアアァァァァン!!!



お前が居てくれる様な気がして・・・。





やっと獣ヶ原・・・!