「・・・え?ヘルメット?」

「あぁ。何でも三日月山ってとこから入れる蛇の道っていう海底を走る海流があるらしいんだ。其処を通ると港町のニケアまで行ける。
 其処からサウスフィガロへの定期便が出てるからそのルートで行こうと思ったんだ」


また水中走行か。

は思いながらも先ほど聞いたヘルメットについて尋ねてみる。


「その、ヘルメットというのは?」

「何でも水中で息が出来るヘルメットらしい。でもこの前盗まれてこの村には無いらしいんだ・・・」


マッシュはそう言い頭をかいた。

―――ちなみに此処はモブリズ。
バレンの滝を通り抜けて獣ヶ原に着いた後此処に来たのだ。
途中、何も無かったわけでは無いが―。

獣ヶ原で子供に会ったのだ。
腹の音を大きくならして「はらへった」と言っていた男の子に。

見るからに彼は野生児だった。
素早い身のこなしで走り回っていたし、言葉も余り知らない様だった。
彼は其の侭去っていってしまったが、カイエンの話によるとその少年はどうやら光物が好きでよく村の物を取って行っているらしい。
ヘルメットも光っている物なので恐らくその少年が盗んだのだろう。

情報収集をしてきた二人の話を聞きつつ買い物に行っていたは「取り敢えず、少年に会うか」と言い食料袋を少し漁る。
其処に先ほど買った干し肉が入っているのを確認すると、二人を見た。



モブリズの村を出て三日月山に向かいつつも少年を探す。
出てくる魔物も倒しつつ進んでいたら、少年を見つけた。

少し離れた所で蹲っている。


「がうー・・・・・・」

「居たぞ」

「元気が無いでござるな・・・」

「腹が減っているのだろう」


がそう言いつつしょんぼりしている少年に近付く。
すると彼は行き成り立ち上がり警戒の態勢を取った。


「がううう・・・」


唸り声を上げて威嚇している、まるで獣。
はさして気にせず食料袋から干し肉を出した。
其れを見た瞬間、少年の表情が変わった。

なんと言うか・・・ 瞳が輝いている(眩しい)

だがまだ警戒しているのか、それとも奪おうと考えているのか寄って来ない。
はその場に座り込んで銃を蹴ってマッシュの足元に飛ばした。
そして少年に手を差し出す。


「大丈夫、私達は敵じゃない。腹が減っているのだろう?」

「・・・・・・うー」

「ほら」


干し肉を右にずらすと、右を見る。
左にずらしてみると、左を見る。

何だか面白くなって其れを繰り返していたら「早くやれよ・・・」というマッシュの呆れ声が聞こえたのでは慌ててもう真正面まで来ていた少年に干し肉をあげた。
少年は其れを受け取るとぺろりと直ぐに平らげてしまった。

もっと欲しそうな顔をしていたので二枚あげた。
すると少年は満足したのか辺りを飛び跳ねて回り始めた。


「な、なんだ?」

「妙な奴でござるな・・・拙者はカイエン、で、こっちがマッシュとでござる」


カイエンが前に来た少年にそう自己紹介をする。
そう言うと少年は頷いて口を開いた。


「マッシュにカイエンにか。もっとくいものくれ」

「もう無ぇよ」


マッシュがガウを見下ろしてそう言う。
は確か未だあった筈だが・・・と思ったが口には出さないでおいた。


「じゃあさがしてこい」

「お前小さいな」

「おまえ、こわいんだろ?」

「やるのか?」

「ついてこれればな!」

「甘く見るなよ!」


・・・気付けばかけっこ競争が始まっていた・・・(あれ?)
しかもあまり会話が噛み合っていない・・・・・・。


「元気だな・・・」

「そうでござるな・・・」


取り敢えず目で追う二人。
ぼうっとマッシュと少年のかけっこを見ていたら少年がサッと素早く抜けた。
だがマッシュは気付かず暫く一人で走っていた。
其れを見て少年がケラケラと笑い転げる、其処で初めて気付いたのかマッシュが少年に近付く。


「ひっかかった!ひっかかった!」

「うるせぇ!!」


ふざける少年に本気で怒るマッシュ。
お、大人気無い・・・。とは思ったが彼の怒りを煽るだけなので黙っておいた。
そんな二人の間にカイエンが入る。


「まあまあまあまあ・・・。 それはともかく、君は何者でござる?」


カイエンがそう言うと少年はきょとんとカイエンを見上げた後「ござる?」と言う。
其の後行き成りにんまりと笑顔になって「ござる!」とまた言う。


「ござる!ござる!
 ござる!ござる!
 ござる!ござる!
 ござる!ござる!
 ござる!ござる!」


「・・・・・・・・・・・・」


からかわれている。カイエンまで・・・。
ははぁ、と溜め息を一つ零した後少年の前へ行った。


「こら」

「がうっ!?」

「・・・え?」


唯一言短く言っただけなのにかなりびびられてしまった。
何でだ?と思ったは少し困った色の瞳で少年を見る。すると、少年は、


「がうー・・・がう、むらでみた。おかあさんおこる、こらのあと、たたく」

「お、お母さん・・・・・・? ・・・・・・取り敢えず、叩かないから大丈夫だ・・・」

「ほんとか?」


がそう言うと少年はずい、とに近付いてきたので思わず仰け反る体制になって言う。
そんなに少年は気を良くしたのかに飛びついた。


「がうっ!」

「わっ・・・!」


少年が飛び付いて来たからは其の侭後ろに尻餅をついてしまった。
其れをマッシュが助け起こす。
は少年は大丈夫かと彼を見たが彼はカイエンをじっと見詰めていた。
・・・元気が無いからか、心配しているのか・・・。

そんな少年をくい、と軽く引いてマッシュが「実はな・・・」と説明をした。

少年は「うう」と唸った後項垂れてこう言った。


「そうだったのか・・・ガウ、わるいやつ、おいら・・・わるいやつ」

「何、何時までもくよくよしてはいられぬ。それに、ガウ。
 お主とは、何か馬が合いそうでござる!一緒に来るか?」


カイエンが笑ってそう言い少年―ガウを見やる。
ガイは嬉しそうに頷いた後また飛び跳ねて両手を挙げた。


「あっ!!プレゼントする! ガウ、カイエンとマッシュとにプレゼントする!」

「どうせ、下らない物なんじゃないのか・・・?」


半信半疑のマッシュがそう呟く。
はそう言ったマッシュを肘で度突く。


「ガウの宝だ!ピカピカ ピカピカ ピカピカの宝だ!」

「そんなに、ピカピカしてるのか?」


マッシュはに度突かれた所を摩りながらガウを見てまた口を開く。


「そんなに、ピカピカしてるのか?」

「ござるは、ピカピカすきか?」

ござるはあっちだ!
 ・・・それにしてもピカピカかあ・・・。ロックが聞いたら羨ましがるだろうなあ・・・」

「そうだな」


マッシュの呟きには同意して彼をまた思い浮かべた。
自称トレジャーハンターの彼だ。光物は大好きだろう。

そんな事を考えているとガウが首を傾げた。


「ロックってだれだ?わるいやつか?おいらの宝をとろうとしてるのか?」

「ロックって言うのはの・・・・・・、 ・・・って人の話聞けよ!


ロックの説明をしようとマッシュが言葉を発している途中、ガウはもう興味が反れたらしくまた飛び跳ね回った。

ところで・・・、


「・・・私の? 何だ?」

「いや、何か怖いから止めておく」


が聞くとマッシュは両手を前に出して首を振った。
そんなマッシュを見、は首を傾げていたがガウが「」と呼んでいるので其方へ向かった。
の後姿を見つつ、マッシュはポツリと呟いた。


「お似合いだと思うんだがな・・・」

「いく!いく!みかづきやまにある、ピカピカ! ござる、はやくこい」

「だからござるはあっちだって・・・」


マッシュははぁーと大きく息を吐いてから三人の下へ向かった。





次は長いぞ!ロックと会える!