ガウの案内で三日月山に着いた四人は取り敢えず中へ入った。
中は薄暗い洞窟で結構足場が悪い。
気をつけて進もう、とお互いに言い合い進む。
そんな中カイエンが口を開く。
「で、ガウ殿、何処にあるのでござるか?」
「ガウ、わすれた!」
即答。
そんなガウに溜め息を吐いてマッシュが「探してみるか?」と聞く。
見られていたは頷いて「仕方ないからな」と言った。
微かな明かりの中、悪い足場に気をつけながら進んでいたらガウが飛び跳ねて穴を覗き込んだ。
其れにマッシュが近付く。
「何だよガウ。何かあったのか?」
「ガウッ!!」
「どわっ!」
急にガウがマッシュの背後へ素早く回りこんで大声を出して脅かした。
驚いたマッシュの腰から何かが飛び出て、穴に勢い良く落ちていった。
其れを見たマッシュがぎょっとした表情になり、嘆きの声を漏らした。
「お、俺の500ギル入った財布が! ガウてめぇ!」
「がうー!」
「少しは静かにしないかお前等・・・」
額に手を宛てては溜め息を零した。
―更に奥へ進んで行くと何かを思い出したのかガウがある場所へと走っていった。
何だと思い彼の様子を見ていると丸いガラス玉を数個引っ張ってきた。
「これが、ピカピカ、でござるか?」
カイエンが尋ねるとガウは勢い良く首を縦に振り「たから!たから!」と嬉しそうに言った。
が其れに近付いて持ち上げてみる。
・・・結構ずっしり来るな。
「此れが水中でも息が出来るヘルメット、か?」
「そうっぽいな」
マッシュが人数分ある事を確認して皆に配っていく。
そしてぽっかり空いている穴から外を覗き込む。
「此処から出れそうだぜ!」
「蛇の道、だったか?其処を通ればニケアに行けて、其処からサウスフィガロに行けるんだな?」
「あぁ。サウスフィガロまで行ったらもう楽だな!ナルシェは目と鼻の先だ!」
マッシュはそう言うと「今行くぜ兄貴ー!」と叫びヘルメットを被って外へ勢い良く飛び出していった。
―サウスフィガロ。
ロックが潜入して帝国軍の足止めをしたんだったな、
とは思いきゅ、と気付かぬ内に両手を握っていた。
(・・・無事で、いるよな・・・?)
否、無事でいるに決まっているよな。と考え直しもヘルメットを被りマッシュに続いた。
外に出るとマッシュは待っていたのか(待っていて貰わないと困るのだが)達が来たのを見ると「行くぜ!」と言い飛んで水中に姿を消した。
其れにカイエン、も習い飛び込む。
ガウは吃驚して少しだけ迷っていたがヘルメットをすっぽり被ると彼等に続いた。
水中でも勿論敵は出た。が、ほぼ難なく全て倒せてニケアへ辿り着いた。
其処で買い物をした後宿で一晩過ごして、疲れも結構取れていた。
一応情報収集の為に皆で酒場に行くとカイエンとマッシュが踊り子に絡まれ始めた。
は取り敢えずガウの目を塞いだ。教育上宜しくない。
「ねぇ〜 おにいさん。わたしと一緒に飲まない? うっふ〜ん」
「なっ、ななななななななななな何を!ふしだらな!其処へ直れ!」
意外にもマッシュは動じずに居たがカイエンが面白いくらいに動揺した。
・・・まぁ、魔導アーマーで二人乗りした時の事を考えると当たり前か・・・。
と、は思い「がうー?」と不思議がっているガウの頭を撫でた。
動じているカイエンが面白いと思ったのか酒場の女はセクシーなポーズを取ってみる。
「お堅いことなしよ。楽しもうよ。ほら、谷間」
「た、た、たたタニマ〜!?」
「カイエン、免疫なさそうだからなぁー・・・」
茹蛸状態のカイエンにマッシュが苦笑しながら言う。
カイエンはそんなマッシュに勢い良く振り返り言う。
「お お、お主は平気なのか?」
「禁欲生活長かったからねえ。これも修業の賜物って事さ」
「禁欲生活か・・・。お前の兄貴には無理な話だな」
「・・・俺も今そう思ってた・・・」
が言うと苦い顔をしてマッシュが言った。
まぁ、事実だろう。エドガーが禁欲生活出来る人間には到底思えないし、
とは思い呆れた。
「ごちゃごちゃ言ってないで。ねぇ〜〜」
「こ、コラ!お主っ、オナゴと言うのはな、恥じらいと慎みを持ってじゃな・・・・・・」
「まあまあ」
ウンチクウンチクと説教を始めたカイエンと踊り子の間にマッシュが割って入る。
さすがに見ているのが下らなくなってはガウの手を引いて酒場を出た。
「がうー・・・」
「何だ?」
「いいのか?カイエン、マッシュ。おいてけぼり」
「あぁ・・・。先に船に乗って待っていよう。ガウは船初めてだろう?」
「がう!たのしみ!」
子供には和むな、
はそう思い港の方へと足を進めた。
あの後マッシュとカイエンも後から来て定期船に乗ってサウスフィガロへ辿り着いた。
其処からナルシェに向かい時間短縮の為にチョコボを使用し、今やっとナルシェへ辿り着いた。
「やっとナルシェだ・・・長かったな」
「あぁ・・・。あのタコさえ居なければ・・・」
「そうだな・・・。あのタコさえ居なければな・・・」
タコ、タコ。
マッシュとはそう言いお互いにレテ川で遭遇したあの紫色の気色悪く、そしてうざったいタコを思い出してしまいげんなりとした表情になった。
そんな二人をカイエンとガウが心配する。
「お二方、如何したでござるか?」
「否、嫌な記憶を掘り起こしてしまって後悔している所だ。気にせず」
「は、はぁ・・・」
はそうカイエンに言い脳内からあの紫タコを抹殺してから歩を進める。
其れを慌ててマッシュが止める。
「お、おい!入り口にはナルシェのガードが・・・」
「あちらが友好的では無い事は分かっている。だから抜け道を使うから安心しろ。 こっちだ」
はそう言い以前ティナとロックと此処から出る時に使った隠し通路の前に来た。
其処を通って、炭坑の中へ入る。
「へぇー・・・こんな物があるのか」
「道はこっちだ。急ごう」
が先頭を歩き、案内をする。
は以前此処を通った時の事を思い出していた。
(・・・あの時お前は私を助けてくれたな。そして依頼をして来た・・・)
あの時は唯お人よしで物好きな男、としか思っていなかったがは何時の間にか彼に大してかなりの信頼を寄せている事に気付いていた。
その彼にこれから会える、やっと、
会えなかった期間は大して長くない筈なのに、酷く長く感じた。
はそう思い瞳を伏せて息を吐いた。
炭坑を抜けて取り敢えずジュンの家へ向かう。
ドアを開けようとしていたら、中から話し声が聞こえた。
「大体の話は分かった。しかしじゃ・・・わしらに血を流せというのか・・・?」
知らない老人の声。
誰だ?と思い耳を澄ます。
「そうは言っておらん」
「同じ事じゃ」
「ハッハッハ!そのとおり!」
「バナン!」
ジュンとバナンの声・・・。
となると此処で合っているのか、とは思った。
「わしらは、あんたに血を流せと言っておる。
ガストラ帝国は更に魔導の力を得るために動き出している。この都市で見つかった氷づけの幻獣をねらったのもその為・・・。
此の儘帝国が魔導の力を増大させていけば、過去の過ちを繰り返すことになる・・・」
「魔大戦・・・」
「あの世界を破壊し尽くしたいう伝説の戦い・・・」
「其れが・・・・・・また起こると言うのですか?」
「人間はもっと、知恵のある生き物じゃ無かったのか・・・・・・」
暫く様子見の為に話を聞いていたが耐え切れなくなったのか、マッシュがドアを勢い良く開いた。
「兄貴!」
「マッシュ!も・・・! 無事だったか!!」
マッシュに習い三人で中に入ると老人とナルシェのガード達。
バナン、ジュン。そしてティナとエドガーが居た。
エドガーがそう声を上げ横のティナと同じようにほっとした表情になる。
はそんな二人に笑顔を送った後、室内をもう一度見渡す。
其処にロックの姿が無い事を再確認すると少しだけ瞳を伏せた。
「、無事で良かった・・・」
「ティナも。 あの後難無く此処に辿り着けたようだな」
がティナにそう言うと彼女は微笑んでに近付いてそっと手を握った。
「本当、心配していたの・・・」
「・・・ありがとう」
も少し微笑んでティナに言う。
ふと、エドガーがカイエンとガウの姿を目に留める。
「・・・そちらは?」
「ドマ王国戦士カイエンでござる」
「ガウ ガウ!!」
其々が自己紹介を済ました後マッシュが苦々し気に言葉を投げ捨てた。
「ドマ王国は帝国によって皆殺しに・・・・・・」
「ケフカによって、皆、毒殺され・・・」
「惨い・・・」
「長老!」
バナンが老人に向かって強い口調で言う。
・・・長老だったのか。
とは思いその長老をじっと見る。
恐らくナルシェに強力を求めているのだろう。
彼は少し考えたが渋い表情をした。
「ウーム・・・・・・だが其れはドマ王国がリターナーに協力していたからの事。
中立を決め込んでいれば帝国とてそんな無茶な事は――・・・「そんな事は無いぞ!!」
長老が其処まで言いかけた時其の声と同時にバン、と強い音でドアが開いた。
反射的に其処に居た全員が開いたドアに視線を向ける。
「―――ぁ・・・、」
は其処に居た人物を目に留めると金色の瞳を大きく見開いて短く声を上げた。
其処に居たのは、ずっとずっと、今まで探していた、彼―。
「ロック・・・!」
思わずは彼の名を呼ぶ。
すると彼は直ぐにを見つけてどこか安心した様にほっと息を吐いた。
だが今は再会を喜んでいる時間は無い。
ロックは直ぐに真剣な表情に戻ると再び口を開いた。
「帝国はもう直ぐ此処にやって来る!」
「何っ!!」
「ロックよ。どこでその情報を?」
バナンがロックを見て言うとロックが横にずれた。
其れで今まで彼に隠れて見えなかった人陰が見えた。
―女性だった。
凛とした表情のプラチナブロンドの髪が歩く度にふわりと舞う美しい、女性。
はその女性を見た瞬間、ツキン、と胸部に痛みを感じた。
「・・・?」
何だと思い手を宛ててみるが当然外傷も無いし、もう痛みも無い。
気のせいだったのか?と思いつつロックの話を聞いた。
「このセリスが・・・元帝国の将――・・・「そうであったか!どこかで見た顔だと思ったら・・・!」
ロックの言葉を遮ってカイエンが吼える様に言う。
そして刀に手をかけて前に居たガウを押しやった。
「ガウ殿、退きなされ!
マランダ国を滅ぼした悪名高いセリス将軍!この帝国の犬め!
其処に直れ!!成敗してくれよう!」
はカイエンがロックが連れて来た女性―セリスというらしい―に斬りかかるカイエンを見、急いで「駄目だ!カイエン!」と声を張り上げて彼の腰の部分に抱きつくような体制で彼を止めた。
ほぼ其れと同時に「待ってくれ!」とロックが言いカイエンとセリスの間に立ち塞がった。
―ツキン。
「・・・・・・ぁ・・・?」
また?とは思い自分の胸部を見た。
だが、やはり何も無い。
「セリスはもう帝国を出てリターナーに協力することを約束してくれたんだ」
「しかし!!」
「俺は!」
カイエンを強い瞳でキッと見、ロックは続けた。
「俺はこいつを守ると約束した。
俺は一度守ると言った女を、決して見捨てたりはしない!!」
「!!!」
―ズキン、
ロックの其の一言で、今度は胸が強く痛んだ。
は何とも言えない表情をし、カイエンの背に顔を埋めた。
其れに気付いたマッシュはカイエンをちらりと一瞥し、もうセリスに斬りかかる事は無いだろうと認識するとに近付いて優しく肩を叩いた。
マッシュを見上げたの表情は、言葉で表すのは難しかった。
悲しい様な、嬉しい様な、困惑した様な、様々な感情が入り混じった表情。
そんなを見、マッシュは無理に笑顔を作りの肩を叩いた。
「もうカイエンは大丈夫だろうさ」
「あ、あぁ・・・」
そんなの様子を心配気に見ていたティナだが、今はマッシュに任せる事にしてカイエンを見て口を開いた。
「私も帝国の兵士でした・・・」
「何!!」
「確かに帝国は悪だ。 だが、其処に居た者全てが悪では無い」
エドガーのその言葉にはある人物を思い出していた。
―そう、帝国軍基地で見かけたあの将軍。 確か名前は・・・、
「レオ将軍・・・」
「・・・?」
ポツリと呟いたの声が聞こえたのか、ロックが首を傾げてを見る。
だが彼の視線に気付かないは唯、俯いていた。
「兄貴に免じて此処は・・・」
マッシュがそう言いカイエンを静める。
カイエンも渋々、といった感じだが頷き刀を鞘に収めた。
そしてに頭を下げる。
「すまぬ、殿・・・」
「謝るなら私にでは無くガウにだろう?」
「そうでござるな・・・ガウ殿、すまぬ」
「がう、がう だいじょうぶ」
「でも少し腫れているぞ、頭」
はそう言いガウの頭に手をそっと添える。
そして「ケアル、」と呟いてガウの頭の瘤を治療した。
其の時、荒々しくドアが開かれた。
「大変だ!帝国が攻めてくる!!!」
切羽詰った表情で言うナルシェのガード。
其れに長老は拳を握り締めて叫ぶように言った。
「ええい、しょうがない!戦うしかあるまい!」
「敵の目的は幻獣だ」
「・・・幻獣は谷の上に移した」
「よし、そこで死守するぞ」
エドガーの一言に皆頷き、移動を開始した。
やっとロックと会えた・・・!
でも複雑だな、これ