さくさくと雪を踏みしめながら進む。

そんな中エドガーがセリスに声をかけているのが聞こえた。


「ロックも色々と過去を持つ男だ。
 さっき君を庇ったのを、愛情だと勘違いして、惚れちゃいけないぜ」

「私とて軍人の端くれ。そう簡単に心を動かしたりしはない!」

「その台詞、しびれるね!」

・・・馬鹿か・・・?


エドガーの言葉にが溜め息混じりにそう言う。


(・・・ロックの、過去か・・・)


は彼の女性を守る、という事に関して何かあるな、とは最初の方から薄々感づいていた。
だが自分には関係の無い事であり、彼だって知られたくない事かもしれない。
そう思っていたから気にしない様にして来ていた。

だが―――・・・。


「・・・馬鹿か、私は・・・」


気になってしまう、なんて・・・。







「それともう一つ」


エドガーが人差し指を立ててセリスに言った。
何だと思いセリスはエドガーの言葉を待つ。


「ロックの奴には今はが居る。
 奴の彼女に対しての接し方は私から見て気が有りと見るな」

「・・・・・・・・・」


セリスはエドガーの言葉を聞いた後前方を歩くを見る。


(帝国が全勢力を持って探している娘・・・か。
 ・・・・・・ロックからも聞いた話からして、お熱いのかしらね・・・・・・・・・・・・)


セリスはそう思いほうっと息を吐いた。
何を思っての溜め息かは、誰にも分からなかった―――。










短く名前を呼ばれては前を見る。
先ほどマッシュと何やら話していたロックが気付けば目の前に居た。

ロックは歩調を少し緩めてと合わせると隣を歩いた。
何だと思いゴーグルを少し上にずらしてロックを直で見る。

彼の表情は何処か冴えない。


「・・・如何した?」

「・・・・・・・・・・・・否、これが終わったら、話があるんだ」

「話?」


首を傾げて言うにロックは強く頷いた。
真剣な表情のロックには少し戸惑ったが直ぐに「分かった、」と返事をしておいた。
ロックは「忘れるなよ」と言った後の手に軽く一度触れて離れた後、また触れた。

手を握ってぐっと上へ持ち上げられる。
其れにが瞳を丸くしているとロックは真剣な表情の儘、口を開いた。


「絶対、お前は俺が守るからな」


――ツキン、


「―――・・・・・・」


また、胸が痛んだ。

は其れを感じ、表情に影を落とした。

嬉しい筈なのに、如何してかこう胸が痛む。

如何して―・・・、


取り敢えずは了承とも否定とも言えない笑みを浮かべてロックの掌をパン、と音を立てて軽く叩いて歩調を速めた。

―残されたロックは何処か困惑の色を瞳に浮かべつつ、彼女の後姿をじっと見詰めていた。


(―――俺は、もう後悔したく無いんだ・・・)


ぎゅ、と無意識の内にリターナー本部で別れる際に預かって腕に着けていた彼女のリボンに触れていた。


歩調を速めたはティナとセリスが話している所へ居た。
ティナはの姿を視界に留めると手を引いて自分の横に来る様に促した。
も其れに従う。
ティナとセリスの間に入ったを、セリスが見詰めて声をかける。


「先の事は礼を言う」

「・・・否。自分のしたい様にしただけだ」

「何故私を助けた?」


帝国の兵士だったのだぞ?と言葉を付け足してセリスは言った。
は其れに「だった、だろう?」と言い言葉を続ける。


「今は違う、反帝国組織に加わったセリスという一個人だ。
 決意をしてあの巨大勢力から抜けてきたんだ、生半端な覚悟では無い事も分かる。
 ・・・それに、カイエンを傷付けたくなかった―――」


はそう言い先頭でマッシュと共に歩いているカイエンを見詰めた。


「もしあそこでカイエンがお前を斬っていたら、あいつは一生立ち直れなくなる。
 復讐という、闇の中から、」

「・・・・・・そうか・・・」


の言葉にセリスは其れだけを言い、彼女もカイエンに視線を向けた。










氷付けの幻獣が移された丘へ移動して作戦会議を取る。
作戦内容は三つのチームに分かれて三方より来る敵を食い止めるという作戦だ。


「振り分けは如何するんだ?」


ロックがエドガーに聞くとエドガーは面々を見渡した後「ふむ、」と言い顎に手を当てて少しだけ考えた後口を開いた。


「ロックとセリス、私。ティナとマッシュ。とカイエン、ガウが妥当かな」

「そうだな」

「・・・・・・エドガー、俺は出来ればと行きたい」


皆が頷いている中、ロックだけがそう反論の声を上げた。
其れに驚いたのは
だが直ぐに表情を元に戻すとロックに「駄目だ」と言い首を振った。


「だが俺は君を守ると約束した・・・!」

「お前はティナにもセリスにも言っていただろう」


はそう言った直後、胸が痛むのをまた感じ、眉を潜めた。

―まただ・・・。

は気にしない様にしつつ、ロックを見上げて続けた。


「回復役は一チームに一人は必要だし、此れが今一番バランスが取れているのではないのか?」

「其れはそうなんだが・・・」


未だ渋るロックを見、は苦笑してロックの肩をポン、と叩いた。


「大丈夫。私はそう簡単に敵にはやられない」


其れに居る場所も近いから、と付け足して半ば強制的に決定させた。
はロックに背を向けてエドガーを見上げる。


「これで意義無しだ」

「・・・分かった。では各自配置に着こう!」


エドガーの一言で全員が動く。

・・・何だかリーダーみたいだな、





エドガーてリーダーっぽい