「ほー・・・裏切り者のセリス将軍もおいでですか・・・。
 丁度良い!纏めて始末してあげましょう!! 行け!!虫けら共を、蹴散らせ!!」


ケフカの号令と共に帝国兵やら魔導アーマーやら何やら犬の様な魔物が攻め立ててくる。
はジャコン、という音を立てて銃を背から降ろして構える。


「さぁ、行こうか!」


そうカイエンとガウに言うと彼らも構えて頷いた。

向かってくる敵にカイエンとガウが突っ込みは後方から銃撃をしたり魔法を使ったりと比較的楽に進めた。
カイエンの必殺剣やガウが敵の技を真似て思いっきり敵を蹴散らしてくれたりするのでは疲労をあまりせず、さくさくと進めた。

暫く進んでいると三方から攻めてきていた敵を足止めしていた三チームだが、着々と倒せている為に逆にこちらから攻め進めてきた。
そんな三チームが真ん中の道で合流した。


!!」


皆数々の戦闘をこなして来たせいか所々怪我をしている。
回復もしたのだが、間に合わない分だってあった。

―仕方無いんだ。

そう思いつつ全員を確認していたの名をロックが叫ぶ様に呼んだ。
少し離れた所に居る魔導アーマーがに向かってビームを放とうとしていたからだ。

突然の事に驚いて固まってしまったにロックは舌打ちを一回して一気に走ってを抱きかかえて其の侭雪の中に倒れこんだ。


「くっ、」

「ロック!・・・・・・くそっ、」


ロックの腕の中から這い出ては魔力を高める。
そして同じようにしていたティナとほぼ同時に魔法を魔導アーマーに放った。


「サンダラ!」

「ファイア!」


雷と炎が見事に命中して魔導アーマーは爆発した。
其れに全員がほっと息を吐いたのだが、直ぐに表情は引き締まった。
帝国兵やら魔導アーマーがまた来たのだ。
その奥には―、


「さぁ、雑魚共を蹴散らせ!」


ケフカが居た。
ロックにケアルをかけつつ、はキッとケフカを睨んだ。
そして声を上げる。


「此の儘では埒が明かない!此処で此の儘身動きが取れなくなるなら私が奴を倒してくる!」

!私も行くわ!」


ティナが走ってきてに言う。
其れにセリスが続く。

は頷いて立ち上がり二人と共にケフカの所へ行こうとするが、腕を強く引かれた。


「俺も行く!」


振り返った先にはロックが居た。
は力強いロックの瞳を正面から見据えて頷いた。
ロックは嬉しそうに笑った後「行こう!」と言いの手を引いて行った。


「ではこいつ等は我々に任せてもらおうか」

「・・・頼んだぞ、エドガー達」


が言うとエドガーは人差し指を立ててウィンクをしてからもう既に戦っているカイエン達の所へ走った。
其れを見た後直ぐに達も脇の道へ進みケフカの下へ向かった。


来る途中何回か戦闘もあったが難無く終えてケフカの下へ辿り着いた。
ケフカは自分に近付いてくる人物を目に留めるとニヤリと口元を歪めた。


「おや、また私の前に来てくれたのですね? その力は頂きますよ」

「ほざけ。帝国軍基地では仕留め損なったが今度こそ・・・、」


は自分を見て歪んだ笑みを浮かべつつ言うケフカにジャコンという音を立てて銃を向けた。
そしてケフカに向けての魔法のイメージを浮かべ集中すると、ぱり、という音を立てて電流が流れた。
だが其れを見てもケフカには怯んだ様子は無く、唯笑うだけだった。

苛ついたが銃をケフカに向けて撃つ。
が、ケフカは其れを難無く避けて剣を構えてに突っ込んできた。

咄嗟の事には持っていた銃で防ぐ。
攻撃を防がれたケフカにロックが素早く切りかかるがケフカはバックステップを踏むと今度は魔法を放ってきた。


「ポイズン!」

「させない・・・魔封剣!」


セリスがそう言い剣を空に掲げる様に上げると一瞬剣が光輝きケフカの放った魔法を吸収した。

魔封剣・・・。
アレは魔法を自分の方へ引き寄せて吸収する事が出来るのか、

は思い自分が魔法を使う時も気をつけなければいけないな、と思い銃を再度構えた。
ティナも其れを思っていたらしく魔法を手の内で光の形で留めて放つ機会を窺っている。

こうなると前線で戦っているのはロックだけになってしまう。
セリスはケフカの魔法対策で魔封剣の準備をしていなければならない。
ティナは魔法を撃つ機会を窺う。
は別に魔法攻撃に拘る理由は無い、ので彼女はロックのサポートに回る事にした。

前線で素早いケフカの剣捌きに苦戦しているロックの方へ走りは重い銃は外して置いた。
そして強く地を蹴ってジャンプし、ケフカの真上から急降下した。
勿論攻撃も忘れない、ケフカの肩辺りに思い切り踵落としを喰らわせてロックの横へと着地した。

少しだけ瞳を丸くしていたロックだが直ぐに気を取り直して構えつつもに声をかける。


「・・・接近戦も出来たのか?」

「これでも一人で傭兵をやっていたんだ。近距離も遠距離も頭と身体に叩き込んださ」


はそう言い体術の構えを取った。
その瞬間ケフカがまた魔法を放って来たが其れはセリスの魔封剣に吸収された。
また斬りかかってくるがとロックを其々横に飛んで避けて其れを回避した。

は自分を狙ってきたケフカの剣術を雪に足を取られつつも何とか全て無事に避けていた。


「ホラホラホラホラ、如何しました!?」

「・・・五月蝿い、 奴だ!」


は雪を思い切り蹴ってケフカの目晦ましをして一気に後ろへ飛んだ。
不意をつかれたケフカは思わず足を止める。


「ぐっ・・・」

「―はぁっ!」


その隙をロックは見逃さずケフカに勢い良く斬りかかった。

其れは見事に当たりケフカはよろけた。
―が、直ぐに体制を立て直すとロックに魔法を放った。


「ファイア!」

「!!」

「! ロック!」


正面からまともに其れを喰らってしまったロックは雪の上に倒れこんだ。
自分の魔封剣が間に合わなかった事にセリスは舌打ちをし、剣を構える。
が、其れは直ぐに解かれた。


「セリス!ロックを頼む!」

「だが・・・お前が・・・!」

「余所見をしている場合ではありませんよ!」

「!!」


ティナが既にロックの所へ走り寄って回復をしているがとても一人では間に合いそうも無い。
はセリスを見、彼女にそう言う。
が、隙を付いて来たケフカの攻撃を肩に喰らってしまった。

は舌打ちを一つして回し蹴りをケフカの腹部に強く決めると後退してまた構えた。

そして躊躇しているセリスを横目で見て、声を張り上げた。


「早く!」

「・・・分かった・・・直ぐ戻る!」


セリスはそう言いロックを回復する為に走った。
は其れを横目で見届けてから銃のある所へ行き其れを拾い上げてケフカを正面から見る。

相変わらずケフカは笑っていた。


「・・・一つ聞くが、もう既に魔法の力を持っている帝国が何故私の力を欲している?」

「純な力をお持ちですからねぇ。それと・・・ティナについては生まれ持った魔法の力、ですが貴女は違う」


はケフカを睨みながら銃を弾を入れ替えてからギュ、と強く握った。


「確かに貴女は人間だった!だった、と過去形ですがね!突然幻獣と同等の力を持った貴女には大変興味がある!」

「如何して私がこの力を持っているか、お前等は知っているだろうが」

「そうですね、でもやはり貴女は貴重だ・・・・・・!」


ケフカはそう言い笑みを一層深くした。

直後、
物凄い速さでに急接近して来た。


「!!」


は咄嗟に銃を撃とうとするが撃った弾はケフカに当たる事は無かった。
ケフカは銃撃を避けた後の首に手をかけて上へと一気に引き上げた。


「っあ・・・!」

「!! !」


其れを見たティナが悲痛な声を上げる。
ティナはセリスにロックを任せて攻撃魔法の準備に入った。
―が、


「おっと、妙な事はしないで下さいね」

「うぁっ・・・!」


ケフカがそう言いつつもの首を絞める力を強くした。
其れのせいでティナは魔法を放てずに眉を潜めた。

ケフカは再度に向き直るとまた口を開いた。


「皆さんは知っているのですか?貴女の事・・・」

「だ、まれ・・・!」

「おやおや、まさか怖いのですか!?未だに!?これは笑えますねぇ!!」


ケフカは歪んだ笑い声を上げてに言った。


「そんな今更」

「っ―――・・・!」


ケフカのその一言には唇を強く噛んで瞳を強く閉じた。


(畜生っ・・・!)


―その時、


っ!」


ドゴォ、という大きな音と共には雪の上に投げ出された。
追いついてきたマッシュがケフカを殴り吹き飛ばしていた。
倒れたにガウが駆け寄ってきて助け起こしてくれた。


「がう・・・、へいきか?」

「あぁ・・・すまない、ガウ・・・」


がガウに礼を言いつつも未だ息苦しさが残っているせいか、咳き込んだ。

―今はケフカの周りには追い付いて来たマッシュ達に回復を終えたロックやティナ、セリスが居て各々武器を構えていた。
形成は逆転だ。 だがケフカは口元に歪んだ笑みを浮かべ続けていた。


「あなた方は何故その娘を守るのですか?あのままだった方が良かったと後々後悔する事になりますよ?」

「私はを見捨てないわ」


ティナが魔力を高めつつケフカにはっきりとした声色でそう言った。
そんなティナを横目で見つつケフカは鼻で笑い続けた。


「先ほど私が言った言葉を聞いていましたか? この娘は、生まれながらにして魔法の力を持った訳では無く、
 ましてや人工的に魔導注入をした訳でも無いんですよ。賢い方はもうお分かりでしょう?」

「・・・人工的でも、無い・・・?そんな事がありえるのか?」

「普通ならありえませんね。ですが其処の娘は幻獣と同等の力を持つ。

 雷の力を持つ"幻獣、ケツァクウァトル" 彼女は体内に其れを飼っているのですよ」

「「!!」」


ケフカの言葉に全員が驚いて瞳を見開く。
其れにエドガーが「馬鹿な!」と声を張り上げる。


「人の体内に幻獣が住む事など出来るはずが無い!」

「その娘はもう人間では無いんですよ」

「人間では、無い・・・?」

「そうですよ。実際その娘は一度―――、「黙れ!!」


がケフカの言葉を遮って銃口を彼に向けた。
暫くその場に沈黙が流れたが其れは破られた。

ケフカがクッと喉を鳴らして笑った。


「今回は退いてあげますよ、流石に分が悪いですからねぇ。

 ―久々に思い出しましたねぇ、あの国の事―」

「!!」


その一言にはビクリと肩を跳ねさせた。
其れを見てケフカは満足そうに笑ってから「サヨウナラ」と呟きその場から姿を消した。

再度その場に座り込むにロックが急いで走り寄った。
そして俯いているの両肩にそっと触れて「、」と名を呼んだ。
だがは其の声に反応する事は無く、唯、地に降り積もっている雪を見ているだけだった。

そんな様子のにロックは表情を歪ませる。


「くそっ・・・・・・守ると言ったのに・・・!」

「・・・まも、る・・・? ・・・・・・私はっ!」


パァン!

という乾いた音を立ててはロックの手を叩き落とした。
全員が唖然とする中、は眉を吊り上げて正面からロックを睨んだ。


「別に・・・守って欲しくなんか無い!」

「・・・え?」

「何なんだ・・・お前は・・・、人の心にズカズカと入ってきて、乱して!」


はそう声を張り上げると振り上げた儘だった手をパタリ、と雪の上に落とした。
眉を今度は下げて、瞳には悲しみの色が染まっていた。

未だズキズキと胸が痛む、


如何して、如何して、

如何して、この胸が痛む?

如何して、分からないんだろうか?

如何して、如何して、


「守る人なら、私じゃなくても平気なんだろう・・・?」


ポツリと、風の音に負けてしまいそうな音量の声では呟いた。


「・・・え?」

「・・・・・・」


唖然としているロックは視界に入れない様にしては立ち上がった。
落とした銃等を拾い上げて背に背負う。
そして皆を見ないまま、こう言った。


「・・・本来の目的は、氷付けの幻獣だった筈だ・・・行こう・・・」

、」


エドガーに名を呼ばれたが、は振り返らなかった。


「・・・話してくれるのか?」

「・・・此処まで言って、言わないは無いだろう・・・。
 私の力と、私自身については話せるだけ全て話そう・・・。
 だが其れは後だ。 今は氷付けの幻獣が先だ・・・」

「・・・・・・そう、だな」


はエドガーにそう言うと歩を進めた。





ぐだぐだ