当然だが、何時までもナルシェに居る分けにはいかない。
達はナルシェを発ってフィガロ城を目指した。
発つ際に、をずっと心配していたガウがロックをじと目でずっと見ていたが、はあえて其れに気付かない振りをしていた。
戸惑うロックと不思議そうに眺めているマッシュ達は少し、面白かった。
―フィガロに向かう理由はティナと思われる光がフィガロの方角に飛んでいったという情報も入ったからだ。
砂漠は難無く越えられたが日が傾いてきた為に達はフィガロ城で一泊する事にした。
―、否。 難無く、とは言えるかは微妙な所だった。
ナルシェでの帝国相手の攻防戦の時にとロックは些細な事で突っかかり合う(と、言っても正直だけ)事があったのでお互いにギクシャクしていた。
ロックは如何したら彼女に再度信じてもらえるか悩み、は自分の感情に戸惑っていた。
其れと同時に、ロックへの申し訳ない気持ちも押し寄せてきていて、今回の戦闘ではロックとの連携は一度も無かった。
以前と同じ、宛がわれた部屋にはセリスと居た。
ベットに腰掛けているセリスを見、は気遣いの声をかける。
「疲れたか?」
「砂漠だったからな・・・。流石に少し。 は?」
「私も、少し疲れたかな・・・?」
はセリスにそう言いテーブルの上にある水入れからコップに其れを注ぐとセリスに渡した。
「ありがとう」と言いセリスは其れを受け取り口に含んだ後、ふとドアの方を見て言った。
「・・・、貴女はロックとあのままでいいの?」
「・・・分かっているのに聞くのか?」
「・・・・・・・・・」
黙ってしまったセリスには苦笑して椅子にかけておいたマントを掴みドアを開けた。
そして、「少し出てくる」と言い夕暮れの中、外へ出て行った。
が外に出て一番に目に入ったのは城内を走り回りながら皆に挨拶をするマッシュ。
彼にとってはこのフィガロ城は懐かしい存在だったらしく、久々の我が家(城)に興奮して来た時からずっとあの調子だ。
そんな彼を見ては少しだけ笑った後、以前した様に手すりに肘を着いてフィガロの沈む夕日を眺めた。
『何れ道は見えてくるから』
ふと、脳裏にロックの言葉が過ぎる。
これは彼がティナに向けて言った言葉。
『よく・・・分からない・・・如何していいか・・・、・・・頭が・・・・・・痛いわ』
『これからは自分の意志を持てって事さ
今はあまり深く考えない事。道は何れ見えてくるから』
『自分の、意思・・・』
―――道、か。
はそうポツリと呟いて瞳を伏せた。
その時、背後から足音が聞こえてきた。
「・・・」
声をかけてきたのは、ロック。
嗚呼、こんなやり取りも前にあったな、とは思い振り返らずに少しだけ笑った。
それでもロックは気付いたのか、少し不思議そうにしながら横に並んだ。
そしての方を見て、彼も笑う。
「バンダナ、着けてくれてるんだな」
「・・・リボンはお前に渡してしまったから・・・。 ・・・代わりだ」
考えつつ、言葉を選んで言うを見てロックは微笑むと「そう言うならそういう事にしておくか」と言い壁に寄りかかった。
は横目でそんなロックを見つつ少し間を空けた後口を開いた。
「・・・私は、大切な仲間が出来た・・・」
「・・・そうだな」
ロックがそう相槌を打つ、
は言葉を放ちながら脳内で色々な事を考えていた。
『俺等と来てくれ、依頼だ』
―あの言葉が無かったら、私は今此処には居ない。
「・・・・・・私にとっては、お前が一番大きいのかもしれないな・・・」
「――え?」
の言葉に驚いてロックがを見る。
は微笑んでロックを見上げて続けた。
「最初、私を誘ったのはお前だ。 ・・・それに、エドガーにも言われたが私はお前と一緒だと、戦闘だってし易いし・・・。
あぁ、それと・・・沢山、助けられてしまったしな・・・・・・」
指折り数えながらは言った。
の言葉を聞いていたロックは瞳を丸くして「え、」と短く声を発した。
「・・・君は・・・、」
「何時か私も借りを返す。助けられた儘では私の気が済まないからな。
・・・それとロック・・・。私はナルシェで言った事を撤回する気は無い」
ナルシェで言った言葉。
其れは彼から守ってもらうという事を拒否した事―。
未だ戸惑いを感じるロックに、は続けた。
「私は傭兵だ。自分の身くらい自分で守れる」
「・・・君の実力は分かってるさ。 でも、俺は君を守る」
「――だから、」
「俺は、」
の言葉を遮ってロックが言葉を放つ。
強い光を持った瞳を向けて、真正面から見られては思わず口を噤んだ。
「・・・俺は、軽い気持ちで君を守ると言った訳じゃないんだ。 だから、守りたい――・・・!」
真っ直ぐ胸に響いてくるロックの言葉には心地よさを感じていたがまた、胸が少しだけ痛んだのも感じた。
其れは、自分だけじゃない、という事実―。
「・・・でも其れは、ティナとセリスと同じ・・・」
「・・・?」
俯いてしまったにロックは声をかけるがは俯いた儘だった。
すっかり沈んでしまった夕日。
辺り一面、闇色の中。は俯いた儘自分の手を髪に持って行ってバンダナに手をかけて其れを引いた。
しゅるり、という布の音が静かな空間に響いた後、闇色の中に金の光を纏った髪が舞った。
思わず見惚れてしまっているロックに気付かず、は憂いを帯びた瞳を伏せて、其の手の内にあるバンダナを自分の胸に抱き締める様に宛てた。
「・・・ごめん、これは私の我が儘だ・・・!」
事実、彼を困らせてしまっている、仲間に迷惑をかけている。
自分の身勝手で、醜い感情で――。
(この感情の名前は知らないが、酷く醜く感じる・・・。 私は・・・)
ツキン、と痛んだ胸。
は瞳を伏せた儘、口を再度開いた。
「・・・私は、酷く我が儘だ。 お前には、お前のやり方があるのにな・・・・・・」
「・・・」
「守ってもらいたく、ない・・・ううん、何か少しだけ違うけど、そうなんだ・・・
よく、自分でも分かってないのだけれども・・・・・・」
視線を彷徨わせながらそう言うにロックは微笑んでの肩にそっと触れた。
「俺は、これからも君の隣に居る。
が何かに苦しんでいるのも、悩んでいるのも、俺のせいかもしれない。
だけど、君の傍に居たいんだ、俺も・・・我が儘だな」
ロックは苦笑をして、を正面から見た。
そして、の金の髪にそっと触れる―。
「俺のせいでの苦しみも、悩みも、俺が癒してやりたい。
出来れば・・・・・・、」
「――っ、 !」
ロックはを引き寄せて自分の腕の中に閉じ込める様に抱き締めた。
突然の事には驚いて瞳を丸くしていたが直ぐ傍で感じる彼の心音を感じ、自分が彼に抱き締められているのだと実感した。
ロックはを抱き締めながら、瞳をきつく閉じつつ、言った。
「出来れば・・・だけれども・・・・・・!
だから・・・居なくなろうと、しないでくれ・・・!俺が君を守るから・・・」
「で、でも!私は別に――・・・!」
「俺は、守ると決めた奴からは離れない・・・・・・。何時か、そう言った筈だ」
「頼む、傍に居させてくれ―・・・」
ロックはそう言いの肩に顔を埋めた。
は胸の内が痛みでは無く、温かい何かに包まれている感覚を覚えた。
以前、ナルシェで皆に仲間だと言ってもらった時に感じたのと同じ。
嗚呼、自分は―、
嬉しいんだ、
はそう理解すると自然と笑みが零れていた。
そして自分もロックの背に腕を回した――。
守る、という事はまだ良く分からない。
守ってもらいたくない、とは言い切れない。
だけれども、時に凄く、胸が痛んでそう思ってしまう事がある。
でも、守ってもらいたくないと思ってしまっても、
離れたいとは、決して思わないんだ―――。
そうが言うとロックは少しだけ頬を赤く染めてはにかんだ後、を再度抱き締めた。
きょとんとするにロックは「素で恥ずかしい事を言うな、って」と言われ、つられて頬を赤く染めた。
誰が恥ずかしいって、お前等だよ!!!
三十話行った・・・!何話で終わるんだろう?(笑)