「女の子?見たことないねェ ましてやこのビルの最上階になんか居ないぜ」

「ここの人間は皆正直者さ」

「今はニ時だよ」

「十二時になった」

「十時か・・・家に戻らなきゃ」

「他のヤツらより俺を信用しな。今は八時だよ」

「時間?四時だぜ」

「俺の時計の秒針は四の数字の所を差してるぜ」

「今の時間の秒は二十で割り切れる数だぜ」

「俺の時計は三十秒を指しているぜ」



ザーーーーーーーーーーーー。



此処はゾゾ。
空の天気模様は真っ暗な雲が上空を占めていて雨がザーザー降り続いている。

ティナが此処に向かったという情報をジドールで入手してジドールで一泊してからチョコボ屋でチョコボを借りて此処まで来たのだ。
途中野宿をしたりしたが、難無く来れた。

―それにしても、


は街を見渡して表情を歪めた。

汚い。

ゾゾの街はかなりのゴミが錯乱していた。
それと治安が酷く悪いのは聞いていたが、此処までとは思っていなかった。
死んでいる人がそこら辺に無造作に倒されていて、強い雨を其の冷たくなった体で受け止めている。

しかも此処に居る人は嘘吐きと来た。

はフードを深く被り、今回は最初の時の様にゴーグルもしっかりと着けた。

取り敢えずビルの最上階に居るらしいので(天邪鬼共め・・・)達はビルの階段を登っていた。
かなりの高さのビル、正直階段は物凄く、キツイ。


「・・・何段あるんだ・・・」


思わずエドガーがそう呟く。
機械を背負っている彼は唯でさえ辛いのに他の皆よりも更に辛そうだ。
セリスも疲れて来たのか、肩で息をしている。
ロックとマッシュは未だ平気そうだった―。

は銃を背負いなおして「はぁ、」と息を吐いて再度階段を上がった。

其の後、階段が途切れていた。
上を見上げると、未だビルはあり、階段も上のほうはある様だった。


「・・・・・・」

「如何する?」


ロックが声をかけるとセリスが「道が違ったのか?」と言う。
正直皆(マッシュ以外)戻る?冗談じゃない。的な心境だ。
マッシュは何故か先ほどの階段上がりの時「これも修行だと思えばいいんだよな!」とか一人爽やかに笑ってそう言い直後「うおー!」と叫んで一気にダッシュで上がって行ったからだ。
ふと、が辺りを見渡していると、ビルからビルへ飛び移っている男の姿が目に入った。


「・・・ビルからビルへ飛び移れればいいんだが・・・やはり無理か?」


はそう言い少し考える。
不可能ではないかもしれない。

と、思っていたが危険だし、ビルだ。怖い。
そう思いやはり撤回をしようとしたら・・・、


「飛び移るか・・・良いな其れ!


一人元気なマッシュが笑顔で同意した。

・・・え?

まるで魔列車の時の様に物凄く軽いノリで言ってきた。

其れにはデジャヴを感じながら大きな溜め息を吐いた。


・・・・・・やっぱり撤回・・・

「俺らなら余裕だって!」

魔列車でも似たような事があった様な・・・・・・

「魔列車でも平気だったから今回も大丈夫だって!」

「・・・根拠は?」

「気合!」


笑顔で即答されてしまった・・・・・・。

ははぁ、と大きく深い溜め息を吐くと屈伸を始めた。
そんなを見てセリスが「ちょっと!」と声を上げる。


「本当に飛ぶの!?」

「こうなったらマッシュは止められない・・・。以前もあったんだから、もう少し警戒して言葉を発した方が良かったかもな・・・」


少し後悔しつつはセリスにそう言った。
何かもうマッシュは手すりを登っているし・・・。
諦めるしか無いだろう。

マッシュが飛んで向こう側に着地したのを確認しても手すりに足をかけた。


「気をつけろよー」

「分かっている」


ロックにそう言われは足に力を入れて強く飛んだ。
なんとか届いてマッシュに支えられて着地した。

次にはエドガーが飛んできて、セリス、ロックの順に飛んできた。

次に階段を登って、また向こうに戻る。

正直、かなり疲れた。

はそう思いながらも向こうにマッシュが渡ったのを確認してから飛んだ。
―が、飛ぶ瞬間、雨で濡れていた手すりのせいで滑ってバランスを崩した。


「「!!!」」

「あっ・・・!」

!!」


後ろからロックの声がする。其れと正面の瞳を見開いたマッシュの姿。
はマッシュに力いっぱい腕を伸ばして向こうからも伸ばされていた手を握った。
重力に従って身体が下に落ちて空中に居る為にゆらゆらと揺れる。


「・・・ったく・・・吃驚させるなよ!」

「すまない、滑った」


はそう言い苦笑して自分の腕を浮かんでくれているマッシュを見上げた。
上から引っ張り上げられて、はやっと着地した。
向こう側から声が聞こえた。


!!大丈夫か!?」

「ロック・・・。 問題無い!」


向こう側に聞こえる様に大声でそう返すとロック達はほっとした様子だった。
其の後ロックが難無く飛んできた。
さすがに身のこなしが軽い。
ロックはを見て怪我が無いのを確認すると安堵の息を吐いた。
そして少し離れた所で「はあああぁぁぁー」と大きく息を吐いてしゃがみこんだ。


「勘弁してくれよーほんと・・・!」

「し、心配かけて悪かった」

「全くだ」


飛んできたエドガーもそう言いを見る。


「寿命が縮んだぞ・・・」

「大袈裟な・・・」

「次からは注意してくれよ」


エドガーにそう言われ、は苦笑した。