ついに、本番。

朝起きてからは枕の横に置いておいた台本を手に取った―。


(頑張らなくっちゃ・・・)


そう思いは台本を読み返し始めた。




色々な支度も済ませ、客も入ってきて本番直前。

以外は二階席の真正面というとても良い席に居た。
ダンチョーの好意による物だ、とエドガーは満足そうに言い腰を下ろした。
は平気かしら・・・」と呟いてセリスも席に腰を下ろす。
其れにマッシュが「平気さ」と言いつつも習い腰を下ろす。


結構練習してたしな!平気だろ!」

「そうね」


セリスはそう言い未だ暗いステージを見詰めた。
ロックは其方は見ずに、唯控え室の方向だけを見ていた。


(・・・・・・)


大丈夫だろうか?

緊張しているだろうし、それに今は本番だ。ドレスを着ている筈だ。

大丈夫だろうか?

ロックはそう考えつつも、席に腰を下ろした。


フッ、と辺りが暗くなり開演を告げるブザーが鳴った。




「・・・始まった・・・」


控え室に居るは控え室の窓からこっそりとステージを見た。

赤いマントを羽織った男、ドラクゥがチョコボに乗って走って来る。


『西軍と東軍の戦いは日増しに激しくなって行った

 西軍のガルー城の戦士ドラクゥは激戦の戦地で母国に残して来たマリアの事を思う……』



ドラクゥはチョコボから降りて息を吸い込んで、歌った。


『オー マリア   オー マリア

 私の声が届いているか  お前のもとへ』



彼はゆっくりと歩きつつそう美しい声で歌い舞台袖へと引っ込んでいった。
哀愁漂う歌声が、背景の橙の景色と見事に合っていては思わず見惚れていた。
彼が去った後、音楽が哀愁漂う物から激しい音楽に変わった。

その音楽を聴きながらは舞台をじっと見詰めていた。

暫くそうしていたらドアがコンコン、とノックされた。
「開いている、どうぞ」と言うとドアは開いてロックが入ってきた。
まさかロックが来ると思っていなかったは瞳を丸くした。
入ってきたロックも、の何時もと違う姿を見、瞳を丸くした。


「・・・ロック・・・」

「よ、よぉ。 ・・・・・・、ドレス凄く似合ってるな」


ロックはを見てはにかみながらそう言った。
直後、二人で赤面。

ロックは「オ、オペラって凄いな!」と言い誤魔化し、は「だ、台本をチェックしなければ・・・!」と言い机の上に置いてある台本に手を伸ばした。
頬を赤く染めつつ台本をチェックするをロックはちらりと見た。


―髪は何時もと同じ部分で結わいているが自分の渡したバンダナは其処には無く、綺麗なリボンが巻かれていた。

 服は綺麗な純白のドレスを着ており、何時もマントを羽織っていて分からなかった腰のラインがコルセットのお陰でよく分かる。

 大胆に開かれている胸元。

 首元には綺麗な宝石が嵌め込まれているネックレス。

 耳には美しい輝きを放つイヤリング。

 目元は何処かキラキラしていて、唇は潤いを持つ綺麗な 赤―


其れを見ていてロックは思わずごくり、と生唾を飲み込む。
直後ハッとし、ブンブンと邪念を振り払う様に首を振った。


「わ、悪かったな。 こんな事頼んで・・・」

「・・・否、ティナの為だから・・・」

「・・・そうだな・・・・・・。 


ロックはに一歩近付いての後ろに立った。
すると、良い香がした―。

其れを感じつつロックはじっとを見詰めた。

気になったのか、は振り返りロックを見上げる。


「・・・ロック?」

「・・・あ、わ、悪い! その・・・・・・本当に綺麗で・・・。

 ・・・・・・はは、何か、照れるな・・・!」

「こっちが照れる・・・」


はそう言い頬をほのかに赤く染めてふい、とそっぽを向いた。
ロックは其れを見てナルシェでの事を思い出しつつ、ふ、と笑う。


「何かって、普段はキリッとしてるけど本当は可愛いよな」

か、かわっ!?

「本当だって・・・―――、」


肩を跳ねさせて此方を向いたの頬に手を伸ばして、触れる直前で止める。
其れをは不思議そうに見、「ロック・・・?」と呟く。

ロックは少し苦笑した後、「、」とまた名を呼んでこう言った。


「・・・触れても、良いか・・・?」

「・・・・・・」


は頬を染めて、静かに瞳を閉じた。
言葉で返事はしなかった物の、ロックには伝わっていた。

ロックは嬉しそうに笑い、の頬にそっと触れた。

そして瞳を閉じているの額に軽く、口付けを一つ落とした―。

ゆっくりと瞳を開いて自分を見上げてくるに、ロックは鼓動が早くなるのを感じた。


心音が五月蝿い、顔に熱が集まってくる!

ていうか自分今何した!?


ロックは頭の中で色々と考えがごちゃ混ぜになっている事に焦り一度だけ強くを抱き締めた。


「きゃっ・・・!?」

、頑張れよ!見てるから!」

「えっ? あ、あぁ・・・」


はロックの腕の中で瞳を丸くしながらそう答えた。




あんまーい!(砂吐き)