『西軍は破れ、マリアの城は東軍の配下に置かれた。東軍の王子ラルスとの結婚を強いられたマリアはドラクゥへの思いを捨てきれず毎晩夜空を見ては恋人を思う……』
ゆっくりと歩を進める。
柔らかくなった音楽の中、ドレスを身に纏ったが出てきた。
其れを見て客席で見ていたエドガーやマッシュ、セリスも、他の客も、控え室で見ているロックも見惚れていた。
は柱と柱の間から前に出ると、柔らかい動きで両手をゆっくりと広げて息を吸い込んだ。
『愛しの貴方は 遠い所へ?
色褪せぬ永久の愛 誓ったばかりに・・・』
の凛とした声は劇場内に綺麗に響いていた。
其の後の音楽が少しだけ明るくなる所で、はゆっくりと方向を転換し、歩を進めつつ歌った。
『悲しい時にも 辛い時にも 空に降るあの星を 貴方と思い
望まぬ契りを交わすのですか? どうすれば? ねえ貴方? 言葉を待つ』
歌を歌いつつ、階段を上る。
そしてドラクゥを見、微笑む。
『さぁ・・・マリアよ。 私と一緒にステップを・・・』
微笑んで手を差し出してくるドラクゥの手を、微笑んでそっと取る。
そして曲に合わせて二人で踊る。
ドラクゥがリードしてくれたお陰で難無くステップも踏めて、踊りも上手く踊れた。
『ははははは・・・』
ドラクゥは楽しそうに笑いながら、姿を消した。
は彼の代わりに現れた花束をそっと丁寧に拾い上げて、再度階段を上る。
きゅ、と大切な物を扱う様に花束をその胸に抱き締めては城の屋上へ来た。
辺り一面を見渡せる、城の展望台。
其処では少しだけ微笑んだ後息を吸った。
『ありがとう 私の愛する人よ 一度でもこの想い 揺れた私に
静かに優しく 応えてくれて 何時までも 何時までも 貴方を待つ』
歌の途中で花束を投げる―。
花束は花弁を散らしながら美しい弧を描いて重力に従い落ちていった。
其れを見ていたの後ろに大臣が来る。
「ラルス王子がお探しです。ダンスのお相手を。
・・・もうお諦め下さい。我が国は東軍の属国になってしまったのですから・・・」
そう言い階段を下りていく大臣にも続く。
―一度だけ、其処を振り返り、踵を返した。
次はダンスのシーンだ。
はそう思い次の事を思い出しつつ、進んだ。
ダンスのシーンに入り、皆が曲に合わせて踊っている。
暫くは陽気な音楽に合わせて皆で踊っていたが事態は急変する。
『西軍の生き残りが攻めて来た!』
『何!?』
と踊っていたラルスが踊りを止めて報告をして来た兵士を見やる。
其れと同時に左右から『かかれー!』という声と共に兵士が入ってきた。
勿論其処にはドラクゥの姿も。
ドラクゥはチョコボに乗って登場してラルスをチョコボで退かしてからの前へ降り立った。
『マリア』
『ドラクゥ この日を信じてた』
とドラクゥが合わせて歌っている所にラルスが入ってくる。
『マリアは この私の妃になるべき人だ』
『命 尽き果てようとも 離しはしない 』
『『 決闘だ! 』』
ラルスとドラクゥのハモリの歌が最後に入り二人は剣を抜いて決闘を始めた。
は其れを唯見ていた。
今正に、舞台裏で行われようともしている、自分の危険に気付かずに―。