『お前ら気に喰わんからオペラ邪魔してやるけんね

    オルトロス 』



「何ですと!?」


ロックが控え室に落ちていた変な手紙をダンチョーに見せるとダンチョーは大声を上げた。
だが丁度オペラで『西軍の生き残りが攻めてきたぞ』の所だったので大して害は無かった。

それにホッと安堵の息を吐きつつ団長が口を開く。


「しかしそいつはどんな恐ろしい方法で芝居を邪魔しようと? ・・・・・・あれを?!


彼が何かに気付いた様に天井裏を指差す。
あそこは証明等を色々弄ったりする場所であろう、其処の、しかもステージの真上に紫タコの姿があった。
タコは何やら笑った後真横にある六tと書いてある錘をマリア―の上に落とそうとしていた。
其れを見ていたロック達は身体の芯まで冷え切る感覚に襲われたが重すぎたのか錘を押しても動かせていないタコを見、安堵の息を吐いた。

眉を吊り上げたロックが「セコイ真似を!」と言う。


「兎に角、此の儘ではが危険だ!」

「あのタコを止めに行きましょう!」

「あぁ!あいつには未だやり返さなきゃいけない事があるからな!」


エドガー、セリス、マッシュの順にそう言い走り出す。
それにロックも続こうとしたがダンチョーの「待って!」という声に足を止める。


「右の部屋の裏方さんに声かけてみなさい!舞台上に行けますよ!」

「任せろ!」


ロックはそう言い前を走る皆にダンチョーから聞いた事を言う。

て、いうかお前等行く先分からないのに走ってたんだよな!?

まあ置いといて・・・。と思いロックは右の部屋へ入った。
裏方に声をかけると彼は壁に沢山あるスイッチを指差してこう言った。


「ダンチョーの命令か。一番右のスイッチを下へ。他には触っちゃだめだよ」

「分かった!」


これか!と言い言われた通りに一番右のスイッチを下へ落とす、
するとかちり、という鍵が開いた音がしたので急いで全員で舞台上へ行く為のドアに行って其処を開ける。
階段も急いで上り、其処へ辿りついたがオルトスの所まで行くのに魔物がわんさか居た。

だが其れはセリスの放った魔法で難無く倒れた。
勿論エドガーやマッシュ、ロックも戦ったが。

出てくる敵を始末してオルトロスの所へやっと辿り着いた。

ロック達が来た事に気付いたのかオルトロスは錘を落とす事を諦め、「ええーい、畜生!」と言い舞台の上へと飛び降りていった。


「あ・・・ 
あああああああああ!!!あのタコ野郎!」


ロックの叫びだけが響いた。











一方はそろそろ次のシーンか、と思い準備をしようとしていた所、何やら上からびちゃ、と液体らしき物が落ちてきてステージに滲みを作ったのを見た。

何だと思い上を仰ぐ。 と、


ズドオォォン!!!


目の前で戦うラルスとドラクゥの真上に見覚えのあるタコが落下して来た。

衝撃により周りの人も倒れてしまっていた。
だけ慌てて受身を取ってかわしていたお陰で無事だった。

急いで周りの皆の無事を確認すると、皆伸びているだけらしい。


「ああ、いかん! あの二人がのびてしまったら話が続かない! マリアは一体誰の妃になったらいいんだい?」


ダンチョーがそう言う。

お前、意地でもオペラを続ける気だな・・・?

はそう思いオルトスと一緒に仲間達も落ちてきているのを見、ほっと息を吐いた。
だがロックだけが居ない。

不思議に思い首を傾げていると目の前にロックがストン、と軽い音を立てて降り立った。


「コイツを娶るのは ドラクゥでもラルスでもない!! 世界一の冒険家! この、ロック様だァァ〜!」


格好良く降り立ってきたと思ったら急に胸に片手を上げてそう歌い始めた。

それにダンチョーが飛び跳ねつつも「だーーーっ!もう!ヘッタクソな演技しおってからにィ!」と喚いていた。


ヘッタクソな演技か・・・ 
・・・・・・確かに・・・・・・。


はそう思いながらぼーっとロックを見ていた。
其の時、第三者の声が響いた。


「だまァ〜れェ〜! 我とてタコの端くれ!お前なんかに負けはしないぞ!! お前としょーぶだ!!」


先ほどまで静かだったタコが起き上がり一本の足でロックをビシィ!と指差した。
は呆けていたがハッとして「ロック!」と彼の名を呼んだ。
すると彼は此方を振り返って笑った(オルトロスはスルー)


「安心しろ!俺が守ってやる! 俺の後ろから離れるなよ!」

「ロック!」

だからだ!!」


強い口調でロックはそう言い前を向いて腰のベルトに括り付けてあった短刀を抜いた。


「俺は、お前だから守るんだ! 誰でも良い分け無いだろ!?」

「・・・!!」


は其の言葉に喜びを覚えた。
―――でも・・・、

曇った表情になったルナを見、ロックは言葉を続けた。


「誰かと、同じなんかじゃないぞ。
 ・・・・・・だけ、特別なんだ・・・。俺は・・・!」

「・・・え?」

「!! 来るぞ!」


ロックの言った言葉が信じられずに、が聞き返そうとした時、オルトロスが足で攻撃を仕掛けてきた。


「ええい、もうどうにでもなれだ!ミュージックスタート!!」


ダンチョーの声と同時に激しい音楽が流れ始めた。
エドガー達も起きて戦闘態勢を取った。

ロックと。そしてマッシュが右側でエドガーとセリスが左側に位置してオルトスを挟み撃ちにした。
ロックはを自分の背に庇い、構えを取った。


「ひさしぶり・・・また出たよ。 待った?待った?」

誰も待ってない

酷いっ!


オルトスはそう言い何故か水が無いのにザッパンという水の音を出しつつ移動をした。
其れはロックとの前で、


「!! この・・・ 
「「サンダー!!」」


ズガアアァン!!


二本の雷撃が目の前に現れたオルトスを襲った。
オルトスは「グェグェガボボ」と何やら奇怪な声を出してよろけた。
ぷすぷすと焦げ付いた所から煙が上がっている。其れを容赦無くマッシュが殴る。

其れを見つつもはちらりと前のロックを見る。
先ほどの魔法、明らかに多かった・・・・・・。まさか、

そう思い見ていたらロックが振り返りニッと笑ってラムウの魔石を出した。


「爺さんの力だ」

「そうか・・・魔石が・・・!」


がそう言うとロックは頷いた。

タコの方を見るとエドガーがオートボウガンをオルトロスに放っている所だった。
怯んだ所をセリスがブリザドの魔法を放ち、凍らせる。

だが意地を見せたのか、再度ロックの前に現れた。


「しつこいんだ・・・・・・よっ!!」


ガキイイイィィン!!!


ロックが力を込めて腰にあったブーメランを向かってくるタコに向けてぶん投げる。
それは綺麗な弧を描いてタコの脳天に命中した。


「グエエエェェー!

 ・・・今日も駄目だったか・・・・・・タコで すみません・・・」


オルトスは観客に恭しく一礼をした後ザッパーンという音と共に何処かへ消え失せた。
其れと同時にロックは振り返ってを見る。


「大丈夫だったか?」

「・・・・・・あぁ・・・。 ロック、ありがとう・・・」


がロックを見上げて言うと彼は照れ臭そうに鼻をかきつつ「いいよ」と笑った。
其れと同時に歓声が上がる。どうやら劇は台無しにはならなかった様だ。

辺りが暗くなったと思ったら急にのところだけスポットライトが当たった。
何だと思っていると声が響いた。


「待ちな!素晴らしいショーだったぜ!」

「セッツァーだ!」

「え・・・!?」


はダンチョーの声に驚いてセッツァーは何処に、と姿を探すが見つからない。
声のした方を見ようにも、マイクを使ったのか何処からか分からない。
は不安に思いロックの服をそっと握った。
其れに気付いたロックが振り返りを安全な位置へ導こうとした時だった。

突然上から降りて来た男がの腰を掴み勢い良く持ち上げてバックステップを踏んだ。


「約束通り、マリアは貰っていくぜ!」

「え・・・? キャッ――――――!!!」

「!! あ・・・! !!


突然現れた銀髪の男―恐らく彼がセッツァーだろう。

セッツァーは少し格好付けてからを抱えた儘ロープに捕まって勢い良くまた急上昇して行った。


「意外な急展開!
 突如表れた男の妃になると思われたマリアはセッツァーによって攫われてしまった!
 さて彼女の運命は如何に!? パート2を乞うご期待ィー!!」


無理矢理終わらせたダンチョーの声はロックの耳には入っていなかった。