「よし、こんなものだろう」
はそう言い鍋の蓋を閉じた。
其の横ではティナが其れを興味深そうにじっと眺めていた。
「おっ、美味そうな匂いだな〜」
「美味そうじゃなくて美味いんだ」
薪拾いも兼ねて見回りをして来たロックが鼻についた匂いに思わず笑顔を零しつつそう言う。
視線を鍋に向けたままはそう言いロックが拾ってきた薪を一本取ると火の中へ投げ込んだ。
「周りはどうだった?」
「少し魔物が居たが倒してきた。他は平気かな・・・、ほら」
空にして持っていった筈の道具袋がいっぱいになっているのを見てティナはきょとんとしていたがは溜め息を吐いた。
「盗んだのか?泥棒さんが」
「俺は泥棒じゃない!トレージャーハンターだ!」
「似たようなものだろうが・・・ そろそろ良いかな?ティナ、其処の皿を取ってくれ」
「似てないって」
ロックが何やら言うのを無視しはティナから皿を受け取ると其の中にスープを注いだ。
其れをティナへ渡し、次の皿にも注ぐ。
「ありがとう」
「熱いから気をつけて」
「えぇ・・・ 良い香り・・・」
ティナはそう言いつつスプーンでスープを掬い、口に含んだ。
そして「美味しい」と呟く。
暫く食事を進めていたがロックが「なぁ、」と口を開いた。
「は如何して帝国に狙われているんだ?」
「・・・・・・」
「・・・や、無理には、聞かないけどさ」
「何時か・・・」
かちゃり、と音を立ててスプーンを皿の上へ落とし、視線も下へ落としながらがポツリと言った。
「何時か、話せる時が来たら・・・」
出来れば―、
最後にそう呟いてはゴーグルで隠された瞳を伏せた。
少しの静寂の後にロックがスープの皿に口を付けて一気に飲み干して息を吐いた。
「美味かった!ありがとうな! 明日も早いんだ、早めに二人は休んでくれ」
俺が見張りやるから、と付け足すロックには軽く礼を言い空になった皿を置いた。
そして食べ終わったティナからも皿を受け取る。
汲んできておいた水を使い簡単に其れを綺麗に洗い吹いて仕舞う。
その後にティナにテントに一緒に入ろうと促し、立ち上がった。
「ロック、後で代わろう」
「否、いいよ。今日は疲れただろ?ゆっくり休みな」
ティナと共に火の前に座るロックに礼を言いテントに入ろうとした時ロックがの名前を短く呼んだ。
「・・・・・・俺は、守ると決めた奴からは離れないからな?」
遠まわしの様でストレート。
つまりは待っていてくれるという事だろう。
も其れを理解していた様だが無言のままティナと共にテントに入った―。
テントの中で毛布を鞄からぐいぐいと引っ張り出しているの後姿を見つつティナが口を開いた。
「は、良かったの・・・?」
「何が?」
毛布を出したが其れを手に振り返りつつそう聞き返す。
ティナは胸の前で両手をきゅ、と握りながら不安そうに瞳を揺らして見詰めてきた。
「私たちと、一緒に来る事になって・・・本当に良かったの?」
「・・・・・・ティナは、迷惑か?」
「そんな事!! ―――きゃっ!」
「だったら、其れで完結しておいてくれ。もう寝よう。明日は砂漠越えだ」
毛布をティナに被さる様に投げてマントを外しつつは言った。
驚いて瞳を丸くしていたティナだったが毛布から抜け出してを見て言葉を無くした―。
「・・・どうした、ティナ? ・・・痛かった、か・・・?」
「ううん、違うの」
少し眉を下げて言うを否定しつつ、ティナは真っ直ぐを見詰めていた。
「凄く、綺麗ね、」
「・・・ティナの方が綺麗だよ」
寝る前だから取って当然なのだがゴーグルも取ったの整った素顔にティナはそう溜め息交じりにそう言った―。