カンカン照りの太陽の真下をとロック、ティナの三人は歩いていた。
直射日光を避ける為のマントを羽織って。
「見えた、あれがフィガロ城だ」
ロックがそう言い指した方角を見るとゆらゆらと揺れる蜉蝣の奥にフィガロ城があった―。
それからかなり歩いてやっと城の前まで来た。
来たはいいがどうやって入るのだろう?
そう思いつつは横のロックを見たが彼はお構いなしに進んでいく。
門の前に行った時、フィガロの兵士が彼を止めた。
「待て。 ん?お前か?通ってよい」
だが咎める処があっさりと彼を通した。
とティナは瞳を丸くし、顔を見合わせながら自分の家の様にすいすいと中へ入って行くロックの後を付いていった。
屋根の下に入ったので以外マントを取った。
恐らく此処は玉座の間だろう。は辺りを見渡しつつそう結論をつけた。
ロックはマントを外した後その部屋に居た男に近づいてなにやら話しをしている、
金の髪を後ろで結っている気品のある男―。
(この男が多分・・・・・・、)
が考え事をしていたら男が近づいてきた。
そしてティナをじっと見てポツリと「そうか・・・この娘が・・・」と呟く。
「誰?あなたは」
「おっと失礼」
ティナが言うと男はやんわりと微笑んだ。
「初対面のレディに対してする態度ではなかったな。
私はフィガロ国王。 エドガーだ」
気品溢れる物腰だな。
等とは思いつつも自分の考えが間違っていなかった事を確認した。
・・・にしてもなんなのだろう、この王は・・・。
レディとか言ったり・・・軽いのだろうか?
は複雑な心境でゴーグル越に王を見た。
「へへー俺が王様と知り合いだなんてビックリしたかい?」
ロックが子供っぽい口調で鼻をかきつつそう言う。
其の後私を見て、また口を開く。
「俺はちょっと所要で此処を離れるけど、すぐ戻るから。
大丈夫。エドガーは悪い奴じゃあない」
「別に其れは私に言わなくても・・・」
「昨晩俺が言った事、忘れたとは言わせないぜ? じゃあ、またな」
ウィンクを一つしてロックは片手をひらりと振りながら玉座の間から出て行った。
私はそんな彼の後姿を気付けばじっと見ていてハッとしてエドガーとティナに視線を戻した。
エドガーはティナに一歩近づき、安心させる様な優しい声色でティナに話しかけた。
「帝国の兵士だってな。・・・心配はいらない、フィガロはガストラ帝国と同盟国だ。しばらくゆっくりしていくといい
それに私はレディを傷つけるつもりはない」
「なぜ 私に良くしてくれるの? 私のこの力が・・・」
「まず一つ」
ティナの言葉を遮ってエドガーは人差し指を立てて言った。
「まず君の美しさが心を捕らえたからさ。第二に君達の好きなタイプが気に掛かる・・・・・・」
中指も立ててエドガーは続けた。
途中チラリとを見やる。
はぞわりという音の出そうな微妙な感覚を覚えたが表情には出さずに我慢して彼等のやりとりを見ていた。
「魔導の力の事は其の次かな」
そう言い王はティナをじっと見るがティナは首を傾げるだけ。
通じてない通じてない。其れを理解したのか少し眉を下げて苦笑するエドガーを見ていて何だか面白い気分だったが、相手はあれでも一国の王。
取り敢えず気を抜いたら出そうな言葉は飲み込んでおいた。
「・・・・・・?どうしたの?」
「私の口説きテクニックも錆付いたかな?」
「そうなのね・・・・・・普通の女の人なら・・・その言葉に何らかの感情を持つのね。
でも、私は・・・・・・」
俯いたティナには近づき肩に手を置く。
するとティナはを見上げた。
はエドガーを見、口を開く。
「・・・フィガロは機械化が進み世界で最も近代化が進んでいると聞きました。
城内を見回ってみてもよろしいでしょうか?」
「勿論だとも。 ところで君はマントは取らないのかい?」
コレも、と言いエドガーは自分の目元に手を当てた。 ゴーグルの事だろう。
は首を振ろうとしたがある事を考え止めた。
「砂埃が舞うから?」
「否、唯単に興味があるのだが・・・。 君の声は美しい。きっと容姿も大変美しいのだろう?」
は笑顔で言ってくるエドガーに心の中で溜め息を吐いて首を振った。
なんだか長くなりそうなのではティナに「先に行っててくれ」と言い彼女を先に行かせた。
そして改めてエドガーを見る。
整った顔立ちなのにあの性格・・・否、整った顔立ちだからこそあの性格・・・?
「フィガロ王」
「エドガーと呼んでくれたまえ、敬語も要らない」
「ではエドガー。馬鹿な話は無しで思っていた事を聞いても?」
馬鹿な話に少しショックを受けた様だがエドガーは頷いた。
「フィガロは帝国と同盟を結んでいるのだろう?
ティナに危害を加えるつもりは無い様だが、私に関しては?」
「君がリターナーが欲している狙撃手という事は知っていたよ。ちなみに、帝国が欲している君と外見が一致しているレディの事もね」
「だが安心してくれたまえ」とエドガーは続けての目の前に立っての頬に触れた。
払いのけたい心境に駆られたが同時に触れていて欲しい、とも感じ、はゴーグルの奥の瞳を細めた。
「君にも危害を加えるつもりは無い。そうしようとする輩が居たとしてもさせないから安心してくれ」
エドガーはそう言いマントのフードを後ろへ下ろした。
パサリ、と乾いた音を立てて其れは重力に従って下へ落ち、上のほうで一つに結わいている髪をマントの中から出される。
同時に、マントの止め具を外されてしまいマントも重力に従って下へ落ちる。
マントの下の私の服装にエドガーは瞳を丸くしたが直ぐに「ちゃんと服を着なさい」と言って来た。
・・・・・・私は結構水の中に入ったりする依頼が多かったから水着にバレオを巻いているだけの服装だ。
「砂漠の国で鎧をガッシリ着ている人はもう少し脱いだ方がいいのではないか?」と言うとエドガーにゴーグルを外された。
「脱げとは・・・誘っているの―――っつ、おっと!」
「軽いお口だな、喋れなくしてあげましょうか?王様」
「遠慮するよ・・・」
腕の布の中に仕込ませてあった小銃を手にブンとエドガーの顔のあった位置で勢い良く振ってからそう言うとエドガーは苦笑交じりにそう言った。
そんな中、玉座の間の扉が開いた。
「エドガー、ちょっと・・・・・・っておいちょっと!?」
入ってきたのはロックだった。
ロックは瞳を丸くして駆け足でとエドガーに近づいて二人の間に入り込んだ。
まぁ、そりゃあ一国の王に向けて銃を向けている事等を見ると誰でも慌てるだろうが、
「何やってんだよ!?」
「口の軽い王に制裁を」
「君はつれないね」
「・・・・・・」
「待った待った、取り敢えず止まれ?な?」
無言で銃を再び構えなおそうとするをロックが止めた。
止まったに安心しつつ正面から彼女の素顔を見ているのに今更気付く。
至近距離で初めて見る彼女の整った顔に少し頬を染めながらロックは疑問を口にした。
「あれ・・・?ゴーグルと、マント・・・」
「其処の王に脱がされたし取られた」
良く見ると落ちてるマント、ゴーグル。
その一言を聞いた直後、ロックは凄い速さで振り返ってエドガーを睨み上げる様に見上げた。
「・・・・・・エドガー!!!」
「誤解だ!」
何処が誤解なんだか、正しいじゃないか。
はそう思いつつマントを拾い上げて羽織ってゴーグルも首から下げて扉に向かって歩き出した。
「ティナのところに行ってくる」
多分聞いてないだろうが一応はそう言いは玉座の間を後にした―。