玉座の間を出てティナを探していたら彼女は城の左の棟に居た。
其処で女性に、
「エドガー様は女性が好きでいらっしゃる。おばあさんから子供までどんな女の人でも口説くのよ?
この間は神官長様を口説いて怒られていたわ・・・。あなたも口説かれたでしょ?」
と言われ口元に手を宛てて真剣に考えていた。
恐らく口説く、という事を考えているのだろうが正直は純粋なティナをあまり汚したくないと思い彼女に近づいた。
「ティナ、ごめん。待たせた」
「・・・いいえ、大丈夫よ?行きましょ」
ティナは声をかけると振り返って少しだけ微笑んでそう言った。
それからは二人で雑談をしながら城を見回った。
エドガーには双子の弟が居たとかエドガーは小さな女の子までも先ほどの女性が言った通りに口説いているやらフィガロの機械文明について・・・など。
そんな中全て見終わったので玉座の間に戻ろうとしていたらティナがの名前を呼んだ。
が名前を呼ばれて振り向くとティナが笑っていた。
「・・・ありがとう」
「・・・何に?」
「貴女は、さっきから私を気に掛けてくれてる。 だから、ありがとう」
「・・・・・・ティナ・・・」
はティナをじっと見ている内にある感情で、胸の内が温かくなっているのを感じた。
この感情を何と呼ぼう、この感情は何て言葉で表せばいい?
黙ってしまったにティナは首を傾げて近づいてそっと声をかける。
「・・・? どうしたの、・・・?」
「・・・否。なんでも、ない」
はそう言い初めて出会った仲間に向けて微笑んだ―。
自分でも何故笑みを浮かべたのかが不思議だったが、ティナもが笑わない事を不思議に思っていたのか、が笑った瞬間彼女も嬉しそうに頬を綻ばせたのでは気にしない事にした。
「如何だったかな? 私の城は?」
玉座の間に戻るとエドガーにそう言われた。
素直にが「いい城だった」と答えるとエドガーは満足そうに微笑んだ。
そんな中扉が慌しく開かれ、一人の兵が走りこんで来て敬礼をした。
「エドガー様!帝国の者が来ました!」
「ケフカか!」
「!!」
帝国という単語と其の名を聞いては思わずビクリと肩を跳ねさせた。
其れを見ていたティナが「、」と名前を優しく呼んでの手を握った。
「・・・あ、」
「大丈夫よ、きっと」
「ティナ・・・・・・」
自分も帝国に狙われている筈なのに、
は自分を気に掛けてくれるティナを見つつそう思い小声で「すまない・・・」と謝った。
するとティナは首を振って、口を開いた。
「私、会ってからに守られっぱなしだもの。短時間の付き合いだけれども、私も貴女の力になりたい・・・
何でか、そう思ったの・・・」
力に、なりたい・・・。
はその一言を聞いてまた胸の内が熱くなるのを感じた。
力になりたい。其れは彼女に自分と同じようなモノを感じるからだろうか、
それとも―――・・・・・・、
「麗しい友情だな、見ていてもいい」
エドガーがそう言いとティナの横を通って行く、
(友情?)
「私と、の?」
「そうさ、君達は確かにまだ出会って間もないだろうが確かに友情が生まれてきている。
いい事じゃないか」
目の保養にもなるしな。とエドガーは続けたが二人の耳にはそんな言葉は入ってなかった。
「私は奴と話をしてくる。君達は此処で隠れて待っていろ」
そう言いエドガーは兵士と共に王座の間を出て行った。
残されたとティナは顔を見合わせた。
暫く沈黙が続いたがティナが口を開いた。
「私、友情とかそういうの、分からないの」
「・・・当に忘れていた感情だ」
はそう言い、フードを外して壁に寄りかかる。
金の髪が宙を舞う―。
「・・・友達に、なれるのかしら」
「ん?」
「私と、友達に、なれるのかしら・・・?」
ティナはそう言い真っ直ぐにを見詰めた。
澄んだ緑の色をした綺麗な瞳が、真っ直ぐにを見る。
は微笑して壁から離れティナの肩をぽん、と片手で一回叩いて歩を進めた。
「なれたらいいな」
暗に「なってもいい、」「なりたい、」「なれるんじゃあないか」 そう彼女は言っていた。
ティナは暫く唖然としていたが意味を汲み取って頬を朱に染めてからの後に続いた。
『同盟を結んでいる我が国へも攻め込まんという勢いだな』
扉に近づくと外の話し声が聞こえた。
恐らくこの声はエドガーであろう。
『同盟?寝ぼけるな!こんなちっぽけな国が!』
次に聞こえたのはケフカが引き連れてきた帝国の兵士だろうという事が想像出来る。
『三つの国を滅ぼしたようだな。如何いうつもりなんだ?』
「・・・・・・」
エドガーの問いには眉を寄せ、自分のマントの裾をぎゅ、と無意識の内に握っていた。
『お前らの知るところではない』
『・・・・・・ガストラ皇帝直属の魔導士ケフカがわざわざ出向くとは?』
『帝国から一人の娘が逃げ込んだって話を聞いてな』
魔導士、ケフカ。
恐らく最後の作った様な高い声は奴であろう。
はティナを気遣う様に見たが其れはティナも同じであった。
彼女もを気遣う様に見ている。
お互いがお互いを心配しつつ、二人は外の会話に耳を傾けた。
『魔導の力を持っているという娘の事か・・・?』
初耳だ、という様な驚いた様な声色でエドガーが言う。
『お前達には関係の無いことだ。 其れより、此処に居るのか?ん?』
『さあ。 娘は星の数ほどいるけどなあ・・・・・・』
『じゃあ質問を変えようか。狙撃の女も匿っているだろう?』
『狙撃の女?其れは未だ探索中だとこの前聞いたばかりだが?』
『隠しても、何もいいことはないのにねえ・・・特に狙撃の女の方は、ヒッヒッヒ・・・・・・』
ケフカの気味の悪い笑い声を聞いている内に、ぞわりと先ほどのエドガーに感じた嫌悪以上に嫌な嫌悪感を抱いた。
身体の芯から拒絶する様なこの感情、 たまらなくなっては自分を抱き込む様に両肩に手を回してその場に座り込んだ。
『ま、せいぜいフィガロが潰されない様にに祈っているんだな!』
完璧にケフカと帝国兵が去って行ったのだろう、外へしん、と静まり返っている。
そんな事を考えていたら目の前の扉が開いた。
中へ入ってきたのはロックとエドガーだった。
座り込んでいるに気付いてロックが駆け寄ってきて様子を確認する為にしゃがみ込む。
そんな彼には「平気だ、すまない」と言いロックを見た。
「・・・奴等は?」
「帰ったよ。 まったく、気に食わないヤツらだぜ」
よほどムカついたのかブツブツとロックが帝国に向けての文句を言う。
そんなロックにエドガーが近づいて小声で、「例の部屋へ、」と言った後エドガーはティナを見た。
「君とずっと話をしていたいが大臣達と今後の作戦を立てなくてはいけない・・・・・・王様の辛い所さ・・・。失礼するよ」
エドガーはそう言い玉座の間の奥の部屋へと入っていった。
あんな性格だが先ほどのケフカと話している時といい今の感じといい、やはり王なんだな。
とが考えていると前のロックが立って親指をくいっと自分に向けた。
「俺に着いて来な」
ロックはそう言いティナとを見た。
は立ち上がってティナをちらりと一回見た後歩き出すロックの後に続いた。
彼に着いていくと城の右の棟の一室へと通された。
中に入るとロックはティナとに椅子を勧めるが座ったのはティナだけでは壁に寄りかかった。
大して気にした様子も無くロックは口を開いた。
「窮屈な思いをさせてすまない。そういえばティナには自己紹介がまだだったな、俺は・・・・・・」
「ロックでしょ?エドガーさんから聞きましたしとの会話で大体は理解しました。ドロボウなんでしょ?」
「トレジャーハンターだよ」
「大して変わらないと思うのだが・・・」
「大違いだよっ! ・・・まぁ、ともかく、」
コホン。と一つ咳払いをしてロックは続けた。
「エドガーは表向きは帝国と同盟を結んでいるか裏では反帝国組織リターナーと手を組みたがっている。
俺はそのパイプ役として動いている。君らがナルシェで会った老人もリターナーの仲間だ」
「知っている」
「帝国・・・私は帝国の兵士・・・」
「・・・だった。帝国に操られた嘘の姿。でも今は違う」
「そうだ、操りの輪を付けられていたんだ」
ロックとに言われるがティナは不安気に瞳を揺らした。
「よく・・・分からない・・・如何していいか・・・、・・・頭が・・・・・・痛いわ」
「これからは自分の意志を持てって事さ」
ロックはそう言いティナを安心させる様に微笑んだ。
「今はあまり深く考えない事。道は何れ見えてくるから」
「自分の、意思・・・」
「そ。 じゃあ俺は行くな。ゆっくり休むといいさ」
ロックはそう言い部屋を出て行った。
残ったのはティナと。
は未だ不安気に瞳を揺らしているティナの肩に手を置いた。
「ロックの言う通り、今は深くは考えないほうがいい。
・・・まぁ、無理な話かもしれないがな。 取り敢えず今日は砂漠越えもしたし城内を探検したんだ、疲れているだろうからゆっくりお休み」
そう言いティナにベットに行く様に視線で促すとティナは、
「・・・は?」
「・・・少し風に当たって来ようかと思っている、戻ったら休ませて貰う」
「・・・そう・・・私は先に休んでいるわ、」
「お休み、ティナ」
「えぇ、お休みなさい・・・」
は扉を開けつつティナにそう言った。
夕暮れ時の真っ赤な太陽の光が微笑むを赤く照らしていた―。