夕方となると暑さも段々無くなっていく。
はゴーグルを首元まで下げて裸眼で沈む太陽をじっと見詰めていた。
ぼうっとしていたら、ふっと先ほどのロックの言葉が脳裏を過ぎる、
『道は何れ見えてくるから』
「・・・何れ・・・・・・道は・・・」
ポツリと呟いてからはフィガロ城の石壁に腕を回して置いて其処に顎を乗せた。
暫く其の侭ぼうっとしつつ夕日が沈んだ後の名残の光を眺めていると背後から声がかかった。
「よっ、」
「・・・ロックか」
ロックが来ての横に立った。
彼は壁に寄りかかって横目でを見た。
「は、大丈夫だったか?」
「私は問題無い」
「そっか・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
沈黙が続く。
夕日の名残も消えて、辺りは暗くなってきて星空が見え始めた。
は今まで真っ直ぐ見ていたがふいに空を見上げた。
そんなに習って、ロックも空を見上げる。
「・・・・・・お前はお人よしだな」
「え?」
の言葉に思わずロックはを見詰めるがは依然として空を見上げたままだった。
整った横顔が、目に焼きつく―。
「・・・私を守るとか抜かす物好きは、お前くらいだ」
そう言って、ほんの少しだけ彼女は笑った。
そんな彼女を見ているロックの瞳がみるみる大きくなっていく。
其れを見たが「・・・何?」と言うとロックは慌てて両手をブンブン振りつつ「いや、その、あれだ!」と言葉を濁らせた。
「・・・何、本当に、」
「その・・・初めて笑ってくれたな、って思って」
「えっ?」
「少しは信用してくれたって事か?」
ロックは嬉しそうに笑いながらにそう言った。
そう言われているはロックを見上げたままぱちくりと瞳をまん丸にして数回瞬きを繰り返した後、頬を紅潮させた。
其れに今度はロックもつられて頬を紅潮させつつ瞳を丸くするとはバッと視線を逸らした。
「・・・・・・お人よし」
「いや、なんだよ、其れ・・・」
「五月蝿い」
「いや、其れこそ何だよ・・・」
笑いながらロックが言うのをは無視して再度空を見上げた。
もう星が綺麗に見える位に辺りは暗くなっていた。
「・・・お前は、トレジャーハンターなんだよな」
「ん?やっと理解したか?」
「世界中を回った?」
「流石に帝国の支配している地域とか飛空挺が無きゃ行けない様な処は無いがな」
「幻獣について、ナルシェの氷付けの幻獣以外に耳に挟んだ事は?」
「・・・無いな・・・」
「・・・そうか・・・・・・」
はそう言うとロックと同じように壁に寄りかかった。
ロックはを横目で見つつ「・・・なぁ、」と声をかけた。
「は、狙撃の傭兵なんだよな?」
「まぁ、そんなところだな」
「其れで金稼いでるのか?」
「そうだが・・・話が来ない時もある。其の時は歌って稼いでいるが・・・」
「歌?」
「そう、歌。 ・・・お人よしな誰かさんには結構助けられているからな、礼として如何かな?」
「い、いいのかっ?」
「イラナイならいいが・・・」
「いいっ!いる!歌ってくれ!」
ロックが慌てて弁解するとはくすりと笑った。
そして壁に寄りかかったまま息をすぅっと吸った。
「――――――」
彼女の歌声は澄んでいて夜の静かな空間によく通った。
変調の少なく、一般的なメロディー。
其の声は見張りをしている兵士や私室で休んでいるエドガー、部屋でベットに横になりつつも瞳を開けていたティナの耳にも行き渡った―。
終わった後、ロックが拍手を贈った。
「ありがとう、」
綺麗な歌声だった、と言うとはマントの襟元を口元までそっと上げてロックを見上げた。
「何て歌なんだ?」とロックが聞くとは短く「Melodies of life」と答えて壁から離れて歩を進めた。
「小さい頃、よくオルゴールで聞いていた曲だ」
そう言い空を見上げる―。
「切ない曲だな」
「そうだな」
は短くそう返した後欠伸を噛み殺しているロックを見た。
「ロック、お前もそろそろ休んだらどうだ?」
「は?」
「私も休むさ」
「そっか・・・じゃあ、お休み」
「ああ・・・・・・お休み」
星空の下、二人は片手を上げてそれぞれに宛がわれた部屋へと戻っていった―。
FF9・・・・・・!!(笑)