あの後色々と大変だった。
何時かお前は俺の女にしてやる宣言をしたセッツァーに何故かロックが食って掛かったのだ。
何だ何だお前等何なんだと思いつつ其れをぼうっと見ていただがセリス達に「飛空挺の中を見て回りましょう」と言われたので四人で二人を放置して部屋を出た。
甲板に出ると風が気持ちよく身体にかかった。
景色は最高に良い。
は辺りを見渡しながら風に煽られている髪を押さえながら手すりに手をかけて下を覗き込んだ。
「凄いな・・・」
「えぇ・・・飛空挺なんて・・・初めて乗るものね」
セリスがそう言いの隣に来て同じように下を覗き込む。
暫くそうしていたがセリスが「少し大変な事になっちゃったわね」と言った。
は其の言葉の意味が深く分からず首を傾げたが「セッツァーの事よ」と言われ「あぁ・・・、」と納得した。
それに反応したのか背後からエドガーが声をかけてきた。
「は如何するんだい?」
「何がだ?」
「セッツァーの事さ。 奴に落とされてしまうのか?」
「・・・まさか・・・」
はそう言い手すりに背を預けてエドガーを見上げて言った。
するとマッシュが「じゃあロックは?」と聞いて来たのでは瞳を丸くした。
「? 何でロック?」
「「「え?」」」
「・・・・・・え?」
全員に逆に瞳を丸くされてしまいは少したじろいだ。
何でと聞き返したのは自分なのに、心底驚いた様な、不思議な表情をされてしまった・・・。
暫く微妙な沈黙が続いたがが「ロックなら・・・」と呟いた。
「・・・ロックになら、セリスじゃないのか・・・・・・?」
「えっ!? ・・・な、何言ってるの!?」
ほのかに頬を朱に染めたセリスが慌てて横に居るの方を向いた。
はそんなセリスを見、何処か胸が痛んだ。
嗚呼、又だ。と思いながら「だって、」とは言葉を続けた。
「ナルシェで・・・・・・」
「・・・ナルシェ?」
「・・・・・・否、良い。何でも無い」
はそう言いこの話は終わりだとでも言う様にまた視線を下へと向けた。
そんなにセリスが口を開く。
「、私は別にロックとは何も無いわ」
「・・・・・・」
「ロックだって、貴女を見ていると思うわ。・・・彼と行動していた時、貴女の話を結構していたわ。
行動している時、よくボヤいてたもの・・・気になって聞いちゃったわ。
そしてら「は大丈夫か」とか言ったり腕に巻いてあるリボンに触れたりしていたわよ」
「・・・え?」
セリスの言葉を聞いては瞳を丸くした。
そして彼女が言った事を理解すると、頬をほのかに朱に染めた。
「だからってそんな・・・!」
「其れと」
エドガーが人差し指を上げた手をずい、との目の前に出した。
困惑するにくすりと笑って言葉を続けた。
「先ほどのも脈アリだと私は見るが?」
「先ほどって・・・・・・?」
「セッツァーと今言い合いしているだろう?奴は」
君を巡って。
そう最後に付け足してエドガーはにこりと微笑んだ。
は暫く固まっていたがエドガーの言葉を理解して「な・・・!」と短く声を発して顔を真っ赤にさせた。
「何を馬鹿な事を!!」
「オペラの時にも良い感じだったじゃないの」
「あれは・・・きっと舞台を台無しにさせない為の・・・っ!」
赤面しつつ言うにセリスは少し笑ってから「如何かしら?」と言った。
次にマッシュがの頭に手を置いて撫でた。
「まぁ、あんまり苛めてやるなよ」
「マッシュよ・・・ お前はそうやって美味しい所を持って行くのか」
「な、何言ってんだよ兄貴・・・」
「マッシュ諦めろ。何せ禁欲生活が持たないと言われている兄だ」
は少し苛ついた口調でそう言いそっぽを向いた。
だが直ぐに瞳は哀愁の色に染まった。
「・・・・・・恋沙汰とかは・・・私は望んではいけないんだ・・・」
「え?」
「私はもう、人では無いんだぞ・・・?」
望める訳が無い、望んではいけないんだ、
はそう呟いて何処か悲しそうに、寂しそうに微笑んだ。
「仮初の生命で・・・何処まで持つか・・・」
「仮初・・・? 、何の話なんだい?」
エドガーが聞き返すがは無言の儘甲板を進み、梯子を降りようとした。
其れをマッシュが「!」と呼び止める。
は視線だけを向けて「何時か・・・」と呟いて下へ降りていった。
残った三人で顔を見合わせる。
「・・・の得意技だな。 『何時か』は」
「そうね・・・。でも、話そうとしてくれているわ」
セリスの言葉にフィガロ兄弟が頷く。
何時か。其れは何時かは話すという事。
「・・・今はを信じて待つしかないよな。無理に聞き出してもアイツが傷つくだけだ」
が降りていった梯子を見つつ、マッシュがそう言った―。
そろそろ自覚してくれヒロインさん←