『我を求めよ』


「っは・・・・・・!」


『我を・・・・・・』


「・・・ケツァクウァトル・・・」


パリッ、


の身体からまた電流が走ったと思った途端、の身体が光り輝き、ロック達の傷が全て消えた。


「これは・・・・・・! ・・・?」


ゆっくりと立ち上がったをロックが見上げる。
の身体は金色の光を放っていて、彼女の瞳は、何処か虚ろだった。

は其の侭前へ進みイフリートとシヴァの前へ立つ。
危ない、とエドガー達は思ったが、イフリートとシヴァは攻撃する様子は無く、唯をじっと見ていた。


『俺達と同じ力を感じる・・・』

『貴方達は誰・・・?』



イフリートとシヴァがそう言うと、はゆっくりと二人を見上げて微笑んだ。
そして口を開いた――が、彼女が発した声は確かに彼女の物だったが、何か違う声も重なって聞こえた。


『分かりますか? 我が・・・、』

『・・・まさか、』

『この魔力の感じは・・・・・・、ケツァクウァトルか?』



イフリートがそう言うと、否。
の身体を使っているケツァクウァトルはにこりと嬉しそうに微笑んだ。


『彼等はラムウに言われて此処に来ました。我等幻獣の為に・・・・・・』


ケツァクウァトルがそう言いロック達を見渡す。
其れに習いイフリートとシヴァもロック達を見渡して彼等に声をかけた。


『お前達はラムウの力を・・・?』

『待ってくれ・・・俺達は・・・幻獣だ・・・』



そう言い、双方戦闘態勢を解いた。
ケツァクウァトルがイフリートとシヴァに簡潔に説明をしている間、ロック達は顔を見合わせた。


「・・・は、如何しちまったんだ・・・?」

「・・・恐らくだが・・・・・・体内の幻獣が騒いでいる、と先ほど彼女は言っていた。
 体内で幻獣は生きていると言っていた事からすると、表に出てきているのではないのか?
 の身体を使い、体内に居た幻獣が・・・・・・、」

の中に居た、幻獣・・・」


エドガーの仮説を聞き、ロックはそう呟きの姿の幻獣を見た。
其の時に丁度説明が終わったのか、三人が此方を向いた。


『流石・・・』

『ラムウが力を託しただけの事はある・・・』



そう言った後、ケツァクウァトルが両手を差し出した。
シヴァとイフリートに向けられた其の掌からは淡い光が滲み出ている。
シヴァとイフリートは其れを優しい動作で止めさせて何時の間にか""に戻っている彼女に言った。


『いい、もう分かっている。
 魔導の力が無くなると此処に捨てられる。後は死すのみ・・・。 私たちも、もう命は長くない・・・』


「・・・・・・」


は俯いて、掌の内にあった光を消した。


『仲間達は、皆ガストラによって捕えられ此処で魔導の力を吸い取られているのだ・・・
 私も、この研究所のビーカーに入れられ力を吸い取られた・・・・・・』

『ラムウと私達は三対の力をそれぞれ持つ兄弟。友に当たるケツァクウァトルの力も加わると、更に・・・・・・、
 ラムウとケツァクウァトルが力を託したのならば私達もお前達に・・・・・・』



シヴァとイフリートがそう言い終えると、彼等の身体が輝いた。
魔石に、とは思いゆっくりと瞳を閉じた。
次にが瞳を開けると、瞳の色が変わっていた。
恐らく、ケツァクウァトル。

ケツァクウァトルは強い輝きを発し、魔石へと姿を変えたシヴァとイフリートの魔石を優しく手に取った。


『・・・仲間はもう・・・命は長くない・・・・・・お前達に・・・力を貸すだろう・・・・・・、
 ・・・・・・ケツァクウァトル、お前の消息不明で皆心配をしていた・・・、』
 
『無事で、良かった―――・・・』



その声を最後に、双方の魔石が輝きを失った。
ケツァクウァトルは表情を歪め、一度魔石を抱き締めた後、二人の魔石をロックに手渡した。


『・・・シヴァと、イフリートです。
 そして我は幻獣ケツァクウァトル。の体内に居ます・・・』


「あぁ、分かってる・・・」


ロックが言うとケツァクウァトルは少しだけ笑った後、口を開いた。


『彼女を守りたいのなら、決して帝国に彼女を手渡してはいけません。
 奴等の狙いは我。我は彼女の生命の源・・・我が消滅したらは消えます』


「あぁ・・・」


ロックがそう答えるとケツァクウァトルは微笑んで、


『頼みます、私も出来る限り、を守るので、』


と言い瞳を閉じた。
―次に瞳を開けた時は、だった。


「・・・すまない、混乱しただろう」

「否・・・そんなには」


ロックが苦笑して言うともつられた様に苦笑して皆を見た。


「・・・偶に、こうなるんだ・・・。
 そして、偶に、力が暴発する・・・。私の中で、幻獣の力が暴発して・・・」


はそう言った後、皆の顔に不安の色が浮かんだのを見、「今は平気だ!」と慌てて言う。
―その後に、少しだけ悲しげに瞳を伏せた。


「・・・私がちゃんと力を制御しないから、暴発するんだ・・・。
 だから、今は大丈夫・・・・・・」


以前、村や町で力を暴発させてしまった事がある。
化け物、化け物と罵られても仕方が無かったあの時―、

は其の時の事を思い出して少しだけ愁いを帯びた瞳を閉じた。

瞳をゆっくりと開いてはほうっと息を吐いて奥のドアを見た。


「・・・あそこから奥へ進めそうだ、行こう」




―――奥へ進むと、段々と先ほどとは違う景色になって来た。

ベルトコンベアやらワイヤーやらクレーンは変わらないのだが、カプセルが増えてきた。
外側から見えない様になっているせいで中身は分からないが恐らく幻獣だろう・・・。

はカプセルから視線を逸らして、前を見た。
すると、ドアの前に立っている一人の男が目に留まった。
セリスがハッとして口を開く。


「魔導研究所の守備を任されているナンバー24だわ・・・気をつけて、彼は強いわ!」

「・・・取り敢えず、倒せば良いんだろう?」


はそう言い手強そうな相手、ナンバー24を見つつセリスにそう言い、背から銃を降ろした。
その瞬間、剣を構えたナンバー24が突っ込んできた。
其れと同時にマッシュが駆ける。
エドガーも機械を持ち走り、ロックもブーメランを構えて援護の体制を取った。
セリスは魔法を放とうとしているのか、詠唱を始めた。

は銃を構えて標準をナンバー24に合わせる。
だが今は撃たない。
接近戦を行っているマッシュに、サポートをしている二人に当たってしまうかもしれないからだ。
何時でも撃てる体制を取りつつ、は好機を待っていた。


「・・・!!おわっ!」

「ぐ・・・!」


ナンバー24の放った衝撃波でエドガーとマッシュが飛ぶ。
辛うじて身をかわしたロックは舌打ちを一つして少しだけ長めの短剣を抜いて自分に降りかかった剣を防いだ。


「ブリザド!」


セリスが魔法を放つがナンバー24は予想していたのか素早く後退した。
は其れを見、口の端を吊り上げて引き金を引いた。

銃撃音が響き、ナンバー24を弾丸が狙う。

それでもナンバー24は其れを交わしつつ、に近付いてきた。
剣圧を放ったナンバー24からは銃を持った儘後退した。
に気を取られていたナンバー24の横からセリスが剣で斬りかかるが、其れは難無く止められてしまった。
逆に斬られそうになったセリスを、マッシュが抱えて後退する。

防戦一方だ―、と思いはバックステップを踏んで腹部を押さえて座り込んでいるエドガーの横に行く。
そして腹部が斬られているのを確認するとしゃがみ込んで手を翳した。


「ケアル」

「・・・すまないな」

「当然の行動だ・・・。 エドガー、マッシュ達と一緒にあいつの動きを封じる事が出来るか?」


が治療しつつエドガーに言うとエドガーは肩を竦ませて笑った。


「出来るか出来ないかと言うより、やらなければいけないな。此れは」

「まぁそうなるな。 ・・・頼む。 ・・・封じる、とまでは行かなくても平気かもな。時間を稼いで欲しい」


回復を終えたがその場に立って詠唱を開始する。
其れを見たエドガーは機械を構えてナンバー24の集中攻撃を喰らっているロックの下へ走った。


「ロック!」


エドガーの声に反応し、ロックは身を屈めた。
直後、ロックの頭上を幾つもの矢が飛んで行く。
ナンバー24は其れを剣で弾きつつ、後退をした。

オートボウガンを構えた儘ロックの横に来たエドガーは、彼に声をかける。


「時間を稼げ、だそうだ」

「・・・了解ー」


ロックはそう言い短剣をまた構えた。
エドガーは向こう側に居るマッシュとセリスに視線を送ると、既にが詠唱を始めた事に気付いていたのか、彼等は頷いて構えの体制を取っていた。


パリ、との身体に電流が走る。


(・・・上手くコントロール出来ないと、この場に居る全員が黒焦げだ・・・)


上手くいけ、と願いつつ、は瞳を開けた。
そして重い動作でゆっくりと手を掲げる。

上から魔力が凄い重さで自分に降りかかってくる・・・、
以前魔列車で発動させたレイズ以上だ、とは思いつつ膝が崩れてしまわないように踏ん張った。

そしてナンバー24の周りで攻撃や防御をしていた仲間が離れたのを見、一気に魔力を解放した。


バリリッ!!


「サンダガ!!」


ズギャアアアアアアアァァァァン!!!


サンダーなんかよりも物凄く協力な雷がナンバー24に直撃した。
ナンバー24は一瞬の内にして黒焦げになり、その場に倒れた。

其れを見届けた後、ががくりと膝をついた。
!」と慌てて名を呼びロックとマッシュが走り寄る。

荒い呼吸を繰り返していたは「大丈夫だ、」と何とか言い地に手を着いた。

マッシュが表情を歪めて「無茶ばっかしやがって」と言いに自分に寄りかからせる体制を取らせた。
そして必殺技のチャクラで自分の気を彼女に与えた。


「魔列車の時と同じだな」

「・・・はは、そう・・・・・・だ、な・・・」


は魔力を一気に放出したせいか、辛そうに微笑んだ。
それにマッシュも苦笑。

そんな二人を見つつ、が大丈夫な事が分かるとエドガーとセリスはほっと息を吐いた。

ロックもが平気な事に安心していたが、何処か表情は冴えなかった。




幻獣登場ー(淡々としてるな、彼)
ロックは複雑な心境・・・(次はロック)