「ごほ、ごほ・・・・・・何が起こったんじゃ?」


それは、此方が聞きたい位だ。とロックは思った。


何が起きた?

セリスが裏切って? 消えて? 裏切る? セリスは本当に裏切ったのか? 

だって最後は―――、助けてくれたじゃないか、


ロックは知らず内に拳をギュ、と強く握っていた。


「こりゃいかん!今のショックでカプセルのエネルギーが逆流し出したんじゃ・・・此処は危険じゃ! 急げ!こっちじゃ!!」


シドがそう言いエレベーターに乗り込む。
それにマシュとエドガーも続き、ロックも続くがは動かなかった。
ロックは一度通り過ぎたがまた戻ってきて「、」と短く彼女を呼んだ。
それでも動く気配が無かったのでロックはの手を引いて行った。

エレベーターで地下へ降り、トロッコがある場所へ来た。


「いくらケフカに、脅されていたとはいえ、わしは何という事をして来たのか・・・。
 幻獣の命を力に・・・・・・、 ・・・お前たちと出会ってわしも決心がついた。皇帝に話をしてみよう。この戦争の愚かさを・・・」

「今更、だな・・・。貴様等帝国のせいで私や幻獣がどれだけ苦しんできたと思っている・・・」


ずっと黙っていたが口を開いた。
其れにシドは「お前は幻獣の力を持つという娘じゃな・・・、」と言い表情を歪ませた。


「本当に、申し訳無く思う・・・。 幻獣欲しさに、お前さんの国を、家族を・・・・・・我等は・・・」

「・・・・・・」

「・・・未だ頭に鮮明に残っておるわ、 小さかったお前さんを・・・
 ・・・セリス・・・あの娘も幼い頃から知っておる。娘の様に可愛がって来た。
 しかし同時に魔導戦士として教育すると言う、惨い事もして来た。だから・・・もう一度会えるなら、謝りたい・・・・・・、
 儂のして来た、過ちを・・・・・・」

「・・・・・・」


は黙った儘だった。

が何かを言おうと口を開いたその時、静かになった空間に、ケフカの高笑いが又響いた。

其れにシドは焦りの表情を見せ、「いかん!ケフカだ!」と言い全員がトロッコに乗ったのを確認するとレバーを引いてトロッコを発信させた。


「行け!」


シドの声が響いた。
は真っ直ぐに、段々と小さくなっていくシドを見ていた。


―トロッコで外に出た所で皆は降りて脱出を試みようとする。
だが、は止まった儘だった。

先ほどから行動の遅いにロックは苛立ち「!」と言い手を引く。
だがは其れを振り払った。

唖然とする皆には真っ直ぐな視線を向けてこう言い放った。


「私は行かない」

「何を言っているんだ!」

「セリスが心配だ・・・セリスは私を助けてくれた。帝国軍のスパイだったなんて言葉、私は信じない!」


がそう言うとロックは黙ってしまった。

ロックは悔いていた。
冷静になって考え直すとそれは当たり前の事だ。

共に戦い、笑い、悲しんだ仲間のあの表情。

それは嘘偽りには到底見えないものだった―。

ロックは唇を噛み締めて唯、自分の愚かさを悔いていた。

そんなロックを横目で見、は歩を進めようとした。
を見てロックは慌てて彼女の腕を掴む。


「駄目だ!!」

「放せ!」

「駄目だ!!お前まで居なくなったら・・・・・・!!」

「――っつ・・・!!」





パァン!!





乾いた音が響いた。

が酷く傷付いた表情で、ロックの頬を強く叩いたからだ―。

見ていたエドガーとマッシュも驚き、瞳を見開く。
叩かれたロックはじんわりと痛む頬を押さえ、唖然とを見ていた。

は俯いていたから表情は分からなかったが、酷く脆い空気を放っていた。


「・・・だ・・・・・・、」

「・・・え?」

「やっぱり・・・、誰でも、いいんだ・・・・・・」


の呟きは、ロックには届いていなかった。
聞こえていたエドガーとマッシュは苦い表情をしていたが、マッシュが動く。

そっとの肩に触れて「、」と声をかける。


「・・・セリスが心配な気持ちは分かるが、今は戻ろう。
 ティナの事もあるし、セリスは後で必ず・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・分かったか?」


マッシュが優しく言うとはこくりと頷いた。
其の時、背後から「おい!」と声がかかった。
何だと思い振り返ると其処にはセッツァーが立っていた。


「あんまり遅いんで心配したぜ。 ・・・? セリスは如何した?」

「・・・・・・」

「・・・話は後だ!行くぞ!」


セッツァーは押し黙ってしまった皆の空気を察したのか、直ぐにそう言いの手を引いて走った。
突然の事に驚いたは「セッツァー・・・!」と彼の名を呼ぶ。
セッツァーは振り返らずに「南に飛空挺を停めてある、其処へ急ぐぞ」とだけ言い手に力を込めた。










セッツァーの言った通り南へ進むと飛空挺が停めてあった。
直ぐに乗り込んで自動操縦に切り替えて帝国大陸を離れる。


「・・・長居は無用だ。早いとこ脱出しようぜ」


ロックがそう言いちらり、とベクタの方角を見る。
その言葉には突っかかりを覚えたが彼を見るだけにして口には出さなかった。


(・・・セリスが居るかもしれないのに・・・?)


其処まで考えて、否、と思う。


(彼女は無事だと信じている、きっと・・・・・・。私達の仲間は、無事だって・・・。
 そうだよな・・・? ロック・・・)


そう思いは視線を自分の足元へと降ろした。
其れと同時に瞳を見開く。


「うむ。・・・・・・と言いたい所だが、如何やらお出でなすったようだな」


ロックにそう返事をしつつ、セッツァーはカードを取り出す(恐らくは彼の武器)
も既に銃を背から降ろしており、其れを見たエドガーとマッシュ、ロックは急いで二人の視線の先を見る。
柵に手をかけて其方を見ると、帝国の城から伸びている巨大な二つのクレーンが迫ってきていた。


「うわーっ!何だありゃ!?」

「何かデカイ奴が向かって来るぞ!!」


マッシュが驚きの声を上げた後エドガーが「掴まれ!」と付け足して皆に言う。
直後、クレーンは二体共甲板を掴み、飛空挺の進行を停めた。
あまりの衝撃によろけたを傍に居たセッツァーが支えた。


「・・・すまない」

「いや。 ・・・来るぞ!」


セッツァーがそう言った直後、クレーンの外側がパカリと開いてミサイルを発射してきた。
は打ち落とそうかと考えたが、飛空挺が壊れかねない。

舌打ちを一つして皆の前に立って魔力を高めた。


「ブリザド!」


シヴァの魔石を片手に、氷の魔法を放つ。
ミサイルは全て凍り付いて落ちた。

次はレーザーを放ってきた。
其れは流石に防ぎきれないので皆でジャンプして避けた。
代わりに甲板の床が大きく抉れる。


「この・・・!!」


大事な船の甲板を抉られたからか、セッツァーが瞳に怒りの色を混ぜてそう言い、カードを放った。
カードはクレーンの間接部分に食い込み、一体のクレーンの動きが鈍くなった。
其処を狙ってロックが素早く走りこみ一閃する。

短剣といっても切れ味は抜群だ。
クレーンの間接部分は真っ二つに切れた。

残りの一体にはエドガーがファイアの魔法を放ち、動きが鈍くなった所をマッシュが拳を撃つ。
放電して止まったクレーンを、が銃を組み立てて大型のバズーカの様な形にした其れで狙う。


「此れで、終わりだ!」


ズガン!という大きな音と共に弾がクレーンに命中する。
クレーンは其の侭甲板から離れて落ちた。

邪魔が無くなった事により、飛空挺も進行を再会する。

落ち着いてきた甲板でロックが口を開く。


「ティナが心配だ。ゾゾに戻ろう」

「ティナ?誰だいそれは?」

「ゾゾに行くまでに説明しよう・・・・・・ティナやリターナーや幻獣の事を・・・・・・」


聞き返したセッツァーにロックが言う。

はそんなロックを見つつ、瞳を伏せた。


―今も、彼は心中で葛藤しているのだろうか、

セリスの事、そして―――・・・、


自分の事も・・・?


そんな、浅はかな期待を抱いている自分に溜め息を一つ零した。




叩いちゃった!!(予想外)←おい管理人