ナルシェの様子が気になったので達は飛空挺、ブラック・ジャックに乗ってナルシェへ向かった。
取り敢えず大人数で行っても何なので、、ティナ、ロック、エドガーで行く事になった。
ナルシェに入った途端、此方の姿に気付いたナルシェのガードが近付いてくる。
「皆さんをお待ちしていました。どうぞ此方へ・・・」
先導するナルシェのガードの後を付いていくと、ジュンの家に着いた。
中に入るとバナンとジュン、そしてナルシェの長老が居た。
エドガーが一歩前にでて一礼をする。
バナンも目でエドガーに何かを訴え達を見回す。
「来たか。ナルシェの人達もやっと、帝国と戦う事を決意してくれた。
所で如何じゃった?帝国の首都は?」
「其れは此処の王様が説明するだろう」
「・・・、何故私が・・・?」
「お前が適役だろうが。さっさと進めろ」
「・・・少々腑に落ちないのだが・・・。 ・・・最近何だか私に冷たくないかい?」
「気のせいだ」
スッパリと言い切ったにエドガーはがくりと肩を落としてバナンに向き直った。
そして説明をした。 帝国の首都、ベクタでの出来事を―。
説明を聞いたバナンは「フム、」と言い顎に手を当てた。
その横でジュンも同じように思案している体制を取り、口を開く。
「なるほど・・・ナルシェの資源とフィガロの機械を使い、帝国を攻め入る計画を練っていたが・・・・・・兵力不足かも知れんな・・・」
「封魔壁を開くしかないのか・・・」
「幻獣界へ・・・!?」
バナンの言葉に反応したのはティナ。
瞳を大きく開いてそう言う彼女にジュンは頷く。
「幻獣の助け無くして、帝国を倒す事は出来んじゃろう」
「帝国の東にある、封魔壁を開き幻獣達が其処から帝国に攻撃を仕掛けるのと同時に、我々が北から攻める」
「挟み撃ちか・・・随分と姑息な手だな」
バナンの提案にがそう言う。
そんなに後ろに立っていたロックが冷や汗を垂らしつつ「おい、」と小声で言いつつ肩に手をかける。
そんなロックを振り返りは微笑んで見せた。
「別に反対な訳では無い。其れ位しないと帝国は潰せないだろうが」
「そ、そっか・・・!」
安堵の息を吐くロック。
はそんな彼を見てくすりと笑いバナンに向き直った。
バナンは頷いて再度口を開く。
「其の為には・・・幻獣を説得しなければならん・・・。
幻獣と人間の間にもう一度、絆を作る・・・ その役目が出来るのは・・・、」
其処まで言ってバナンはティナをちらりと見る。
其れにつられる様に其処に居た全員がティナを見る。
ティナは少し瞳を伏せて、口を開いた。
「人間と幻獣・・・。相容れぬ者ならば私は生まれなかった・・・。
そしても、此処には居なかったわ・・・」
ティナは其処まで言うときゅ、と胸の前で手を組んで真正面からバナンを見据えてハッキリとした口調でこう告げた。
「私がやる・・・・・・私にしか出来ない!」
は確かに、ティナにしか出来ないと思っていた。
幻獣と同等の力を持っている、そして、幻獣を体内に宿していると言っても、所詮は人間の子。
幻獣と人との間で育まれた愛の結晶が、ティナだ。
だから、彼女にしか出来ない。
彼女だからこそ、出来る。
そう思っていた。
「幻獣を説得出来れば、この戦争にピリオドを打つ事が出来る。
ティナならば・・・其れが出来るはず・・・!」
「いよいよ、帝国と戦う時がやって来たか・・・。・・・避けられぬ道か・・・」
「封魔壁は帝国の東にある。帝国が監視しているが、なんとか潜り込み開放してくれ」
バナン、長老、ジュンの順に言う。
其れに強くティナは頷いた。
すっかり強くなったティナを見て、は何だか嬉い気分になった。
「宝箱?」
ナルシェの宿の一室では暖かいお茶を啜りながら先ほど目の前のトレジャーハンターから放たれた言葉を復唱した。
ロックは「あぁ!」と元気に返事をするとに説明をした。
「ナルシェの長老がさ、小屋にある物は戦力になるかもしれないからって全部くれたんだ。
でも一個だけ宝箱が開かなくてな・・・。 俺の勘からすると結構な値打ち物が入ってるぜ、あれは」
「やっぱり金目当てか・・・ドロボウ・・・」
「違うっ!俺はトレジャーハンターだっ!」
両手でお茶の入ったカップを持ちながらロックが言う。
同じ様なものだ、と思いつつは再度お茶を口にする。
そしてカップから口を離し「で?」と問いかける。
そう言われた本人は「え?」と小首を傾げる。
お前が今話していた事だろうが・・・!
「だから、取りに行くのか?宝箱」
「あ、あー其れか!当然! の銃でなら開くかなーって思ってな」
「・・・で、付いて来いと」
はそう言い空になったカップをテーブルに置いてマントを羽織った。
そしてベッドの上に置いておいた銃を手に取った。
「悪いな」
「否、良い。依頼主の命だしな」
「お、何か其れ懐かしいかも・・・!」
二人は宿を出て長老の言っていたという小屋へ向かった。
さくさくと雪を踏む音が響く。
は歩きながら横を歩くロックをちらりと見やった。
(・・・何だか、急に元気になったな)
ゾゾから結構彼は自分の隣に居る。
けれども当然、セリスの事を考えている彼だ。
はほうっと息を吐いた。
(・・・でも、元気なら・・・其れで・・・・・・、)
そう思い前に見えてきた小屋を見る。
冷えたノブを回して中に入る。
中に入って見た物は、開けられて錯乱した宝箱―。
「・・・・・・ドロボウが入った後みたいだな」
「俺はトレジャーハンターだって」
「犯人はお前か・・・」
「いいじゃんか、使われて無い小屋だって言ってたし!ちょっと位散らかしても平気だろ」
ちょっと・・・?
錯乱している空箱を見つつは、うん?と思い首を捻った。
がそうしている内にロックは空箱を蹴り飛ばして進む。(おい)
取り敢えず着いて行く、一応手助けの為に来たのだ、手助け。
奥に行って目に入ったのは開けられていない宝箱。
―ではなくて、
「げげ!見つかっちまった!」
「「は?」」
開けられている箱の前に居るのは、二足歩行で人語を喋る狼男。
その手には、金色に輝く綺麗な何かがあった。
恐らくは自分達が目当てとして来た物の中身だろうが―・・・。
ちなみに狼男はご丁寧にも大きな声でそう言いわざとらしく慌てた素振りを見せていた(実際彼は本気なのだろうが・・・)
「金の髪飾りか?アレは・・・」
「おいらはコソ泥一匹狼!」
「誰がお前の事を聞いた」
がそう突っ込みつつコソ泥なら捕まえるか、と思い銃を背から降ろす。
そんなを見て慌てた狼は「お、お宝は頂戴したぜ!!」と少しドモリながら走っていった。
「待て!」
ロックが追ったので、も続く。
走りつつ銃を構えて標準を合わせようとするが、狼がウロチョロ走っているので中々合わない。
取り敢えず足を止めようと威嚇のつもりで小銃を出して狼の足元を狙うが、奴は器用にも全て「わわわ!」と言いつつピョコピョコ飛んで避けた。
「・・・うざい奴め・・・」
「魔法も当たらなさそうだしなぁ・・・」
其処まで言って「でも、」とロックは続ける。
狼は炭坑に入っていった。
「この先なら前幻獣を移した所に行くんじゃないか?行き止まりだ」
「馬鹿な奴だ・・・」
そう言いつつ狼を追い続けると、案の定奴は行き止まりに来ていた。
だがそんな奴の腕の中には、一匹のモーグリが居た。
「動くな!動くとこいつの命は無いぜ・・・!」
「悪人の言う台詞だな・・・。いかにもって感じだ」
「おいいいいいい!!動くなって!!」
冷静にそう突っ込みつつ銃を構えてゆっくりと標準を自分に合わせているに狼は慌てた。
其れと同時に腕の中で暴れていたモーグリが「クッポー!」と叫びつつ狼の顎に頭突きをした。
「「おー」」
「わ、馬鹿!テメェ、暴れるなって・・・・・・! うわあっ!!」
「「・・・あ、」」
ズルリ、と狼の足が雪で滑った。
そして、落ちた。
モーグリが暴れたせいか、モーグリは右側に、狼は左側へと弾き飛ばされて落ちた。
何とか捕まって落ちないようにはしているが、お互い長く持たないだろう。
とロックはお互いに顔を見合わせてお互いに無言になった。
少し経ってが口を開く。
「・・・ロック、」
「・・・何だ・・・?」
「何だこの急展開は」
「今更だな」
「・・・そうか・・・」
「・・・そうだよ・・・」
「「・・・・・・」」
再度、無言。
そんな助けてくれる様子の無さ気な二人に崖下から焦りの声が聞こえた。
「クッポー!ボクは被害者クポ!助けて欲しいクポ!」
「ああ・・・モーグリなら助けてもいいか」
「なら!?おいおいおいおいおいおいお前等俺は見捨てるのか!?」
がそう言うと狼が直ぐに反応してそう言ってくるがとロックは其れを無視してモーグリに近付く。
「おい!本気で見捨てる気か!? そ、そうだ、助けてくれたら此の金の髪飾りやるよ!」
「え?」
「おい、つられるなドロボウ」
思わず其方の方向を振り返ったロックにはそうキツメの口調で言い崖下を覗き込んだ。
其処には必死に岩肌にしがみ付いているモーグリが居た。
はしゃがみ込んで無言で下手に触れて落としてしまわない様に注意しながら手を伸ばす。
モーグリの手をふにりと掴む(柔らかかった)そして引くが思いのほか力がいる。
―と、が思っていたら背後からもう一つ、自分の其れとは比べると酷く逞しく見える腕が伸ばされた。
横を見れば思いのほか至近距離にあった彼の横顔に胸が高鳴る。
「一気に引き上げるぞ」
「え、 あ・・・うん・・・」
「行くぞ・・・。 よっと!」
「クポポー!」
引き上げたらモーグリは雪の上に顔面からダイブした。
しかし元々寒い地方に住んでいたモーグリ。直ぐに起きて顔や頭についた雪を自分でパパッと払ってしまった。
そして元気にピョコンと一度ジャンプすると此方に礼をした。
「有難うクポ!」
「ああ。・・・・・・って、喋れるのか!?」
「何を今更・・・」
さっきから喋ってたじゃないか。
とは思いつつ横で驚いているロックを見た。
「ラムウって言う爺ちゃんに言葉を教えて貰ったクポ。
爺ちゃんが皆の仲間になれって言ったクポ! だから僕も仲間クポ!」
「・・・そうか、お前には以前助けて貰った事も(多分)あるだろうし。実力に関しては文句無しだろう」
「そうだよな(多分) よろしくな、モーグリ!」
(多分)を付けながらロックとがそう言いモーグリに笑顔を向ける。
するとモーグリは「そうだクポ!前一緒に頑張ったクポ!」と言いまたジャンプした後笑った。
「ボクの名前はモグだクポ! よろしくクポ!!」
―新しい仲間が増えた。
其れに素直に喜びを感じながらロックは「じゃあ戻ろうぜ」と言いモグの頭にポンと手を置いた。
其れにも頷き、チラリと未だ氷付けの幻獣を一瞥した後歩き始めた。
(あの幻獣は未だ眠っている・・・。 彼になら出来るだろうか・・・?)
目覚めたらもう一度会いに来よう、と思いつつは歩を早めた。
―が、ロックが付いてきていないのに気付き、モグと共に立ち止まる。
「ロック?」
「今行く」
ロックは何かをポケットに仕舞い込むと笑顔で走って来た。
其れには小首を傾げたが「何でも無いさ」と何処か上機嫌で答えるロックを見、深くは追求しなかった。
―身長の低いモグはロックのポケットから少しはみ出している金色の物に気付きハッとしていたがあえて何も言わなかったそうな。
狼華麗に放置