「封魔壁へは誰が行くんだ?」


帝国の南東に位置する封魔壁に向けてブラックジャックが進んでいる中で、がそう言った。
そしてティナを見て「ティナは行くんだよな、だったら私も行きたい」と言った。
そんなの一言にティナは何処か嬉しそうに微笑んで抱いていたモグの頭を優しく撫でた。


「俺も行く」


直後、ロックが口早にそう言った。
其の後にマッシュが「じゃあ俺も行こうかな」と声を上げる。


「・・・四人が打倒な所だろう」

「では我々は帝国に備えて飛空挺に残るでござる」


少々渋々といった感じでエドガーが言った後、カイエンが腕を組みつつ言う。
今回も一緒に行けない事に不満を感じているのか、自分をじっと見詰めてくるガウを見ては苦笑して彼の頭を撫でた。


「ガウ、飛空挺を守るのも大事な事だぞ?」

「がう・・・」

「ガウが残ってくれるなら、私も安心だ」


がそう言うとガウはにぱりと笑顔になって「ガウ、がんばる!」と言い両手を上へ上げた。
其れを見てその場に居た全員が和やかな雰囲気になった時、上からセッツァーが降りて来た。


「封魔壁監視所にそろそろ着くぜ」

「・・・あぁ。準備はもう整っている」


ロックがそう言い自分の装備を再確認する様に腰に下げた剣と短剣に触れる。
も背の銃を背負いなおして、隣に居るティナを見た。
ティナも丁度此方を見たらしく、直ぐににこりと微笑んだ。


「私は大丈夫。 は?」

「問題無い。 ・・・行くか」

「えぇ」














帝国軍の封魔壁監視所。

敵に警戒しつつ身のこなしが一番軽いが最初に入って様子を見る。
―が、余りの人気の無さには何だか拍子抜けした。

直ぐにロック達に合図を出して合流する。

合流したロック達は辺りを見渡して、眉を潜める。


「・・・誰も居ないな・・・」

「可笑しい・・・」

「・・・・・・罠かもしれない、が。進まないと何も変わらない」


ロックとマッシュの後にがそう言いティナを見る。
ティナも頷いて「兎に角行きましょう」と言い歩を進めた。

封魔壁に通じる洞窟に入る。
其れまでに歩いてきた道には、帝国兵も、何も、誰も居なかった。

洞窟を通っている間は魔物と遭遇したが難無く倒せた。



―奥へ進んで行くと、一つの吊橋が視界に入った。


其処の空間だけぽっかりと穴が空いた様に左右上下広い。
は吊橋に片足を乗せて力を込める。
案外しっかりしている事に安堵してその上を歩く。


「・・・下、凄いな」

「落ちたら命は無いだろうな。 ・・・それより、地面があるのか・・・・・・」


ロックにそう返事をしつつは吊橋の下の暗闇を見た。
下を見ても暗闇しかなく、酷く其処は深いという事が理解出来た。

進んでいると、岩に囲まれる様に其処に扉があるのに気付いた。

―恐らくあれが、


「封魔壁・・・・・・」

「此の奥に幻獣界が・・・」


とロックがそう言い扉に目を向ける。
マッシュはティナを振り返り、口を開く。


「頼むぞ・・・ティナ・・・!」


ティナは無言で頷いて前へ出た。
そして扉の前まで行くとゆっくりと両手を翳す。

直後、ティナの身体が光り輝いた。

魔力を放出して扉の中の幻獣に呼びかけているのだろうか―・・・。

等とは思いつつ見ていたが、


ゾクリ!!


っつ!?


背筋に嫌な汗がつたい、鳥肌が立った。

反射的に銃を背から降ろして物凄い速さで身体を反転させて其れを構える。
ロックとマッシュは何事かと思い振り返る。

―直後、二人の表情が凍りついた。

其処には帝国兵を連れたケフカが立っていたからだ。


「ケフカ!」

「くそっ・・・!つけられて居たのか!」

「ヒョッヒョッヒョッ・・・・・・ガストラ皇帝の仰った通りだ!
 ティナを帝国に歯向かう者に渡し、泳がせれば封魔壁を必ず開く・・・・・・!」


ケフカはそう言い歪んだ笑みを浮かべる。


「 つ ま り ! 我々の手の内で踊っていたに過ぎないのだよ! ヒッヒッヒ・・・!」

「ケフカ・・・!」


が銃を握る手に力を込めつつ吐き出す様に彼の名を呼んだ。
そんなを見てケフカは満足そうに笑った後、再度口を開いた。


「そう、貴女もなのですよ? 精々私の用意した道から外れない様に頑張って下さいね。
 ・・・さて、君達に用はありません、私の為に用意された栄光への道を開けるのです!!」


ケフカがそう言い兵士達に合図を出す。
途端、兵士たちは此方に向けて武器を構えてきた。


「そうはさせない!」


が先陣切って銃口を敵に、ケフカに標準をあわせた。
其れにロックとマッシュも続けて構える。


「おや、私とやり合うおつもりですね・・・? そういうおつもりは、いけませんねぇ!!」

「ティナが扉の中に入るまで、ケフカを食い止めるんだ!!」


ロックがそう言い此方に向かって走って来た帝国兵を蹴飛ばし、よろけた所を短剣で斬りつける。
マッシュももう一人の帝国兵に殴りかかった。
は前に駆け出して行った二人を援護する為に銃を何時でも撃てる様にしていた。

そんな中、ケフカが「あ!」と短く声を上げた。


「扉が開きますよ!」

!!


其の嬉々とした声に反応して思わずその場に居た全員が封魔壁に目を向ける。

―確かに、封魔壁はゆっくりと開き始めていた。
ティナの身体が淡い光を放っている。
達から見ると彼女は後姿だったので如何いう表情をしているかは分からなかったが、声色で大体は想像がついた。


「幻獣達よ・・・、私を受け入れて・・・!」


ゴゴゴ、という岩と岩が擦れる音が響く。
同時に、扉が開いた―。

直後、地面が揺れた。

達や帝国兵は思わず座り込んでしまったが、ケフカだけは嬉々とした状態で立っていた。


「開きました!開きましたよ!」

「ティナ!」


ティナを気遣う声が飛ぶ。
の声にティナは反応して振り返った途端、今度は強風が吹いた。

余りにも強い風だったせいでは吹き飛ばされそうになる。


・・・!」

「!」


そんなを背後から支えたのはロックだった。
彼はに「大丈夫か?」と言って来たのでは「平気、ありがとう」と返答をして封魔壁を見た。


(・・・・・・何だ・・・?この感じは・・・、)

「むむむむむなさわぎが」


嫌な予感を感じた。

封魔壁の向こうは幻獣界だ。

だから魔導の力を酷く感じているのは当たり前の事だ。

そう思っていたが如何やら違うらしい。

肌に突き刺さる様に降り注いでくる魔導の力。

其れを感じているのはだけでは無く、その場に居る全員だった。


「! 何か来る!」


ロックがそう声を張り上げて言い向かってくる"何か"からを守るように強く抱き締め、身を屈めた。
ロックの言葉に慌ててマッシュも身を屈めた。


―直後、



キイイイイイイィイィィン!!



鋭く、強い閃光が走った。

封魔壁から物凄い数の幻獣が飛び出して来たのだ。

其のスピードは相当の物で、咄嗟に身を屈める事が出来なかった帝国兵は吹き飛ばされていった。

一気に何体もの幻獣が頭上を物凄い速さで通り抜けていく。

其れだけで真上から魔力の圧力を喰らい、酷く身体が痺れた。


「っつ・・・・・・!」

『幻獣が・・・』


の脳内でケツァクウァトルの声が響いた。

―其の声色は何処か怒りの念を込められた物でもあり、


「凄いエネルギー!!」


ケフカが純粋に唯喜びを表現する様に両手を広げてそう言った。
だが自分の真上、真横を通っていく幻獣の魔力の圧力を喰らい、吹き飛ばされていった。


「ぬわあああああああああぁぁぁぁ・・・」


声が聞こえなくなった頃、幻獣の数も減ってきた。

魔力をさほど強く感じなくなってきた頃、目の前で何かがドサリと倒れる音が聞こえた。

はガバリと上半身を起こし、倒れたのがティナだと分かるとロックの腕の中から抜け出して倒れるティナに走り寄った。


「ティナ!」


抱き起こすが、ティナは力を使いすぎたせいかぐったりとしていた。
は所々怪我をしている彼女を見、直ぐにケアルをかける。

そんな中、マッシュがハッとして声を上げる。


「扉が!」

「!!」


封魔壁は閉じられた―。

更に先ほどの幻獣達の振動で上のほうの岩盤が緩くなったのか、岩が落ちてきた。


「此処は危ない! 向こう側へ渡ろう!」

、ティナを・・・!」


マッシュはロックの言葉に頷いてからティナを受け取って抱きかかえると走り出した。
も其れに続きつつも、封魔壁を見る。


―落ちてきた岩は完全に封魔壁を塞いでしまっていた―。


橋も壊れてしまった。

封魔壁から見た向こう側に渡り、達は封魔壁を再度見た。


「・・・あれじゃもう開かないかもな」

「・・・・・・幻獣達は如何したんだ?」


ティナにチャクラをかけつつマッシュが呟く。
其の疑問に答えられる人は、この中には居なかった。


『―――怒っていた・・・、皆・・・・・・、』


はやまっちゃいけない、


ケツァクウァトルの声は其処で途切れた。


酷く、悲し気な声色が脳内に響いた。