あの後街を歩いていても誰ともすれ違わなかった為に取り敢えずエドガー達と合流しよう、という話になり城に向かうと城の中から出てきたエドガー達と会った。

何故城から出てきたのか、其れと城内の様子は如何だったかを聞いてみると意外な様で予想を何処かでしていた答えが返ってきた。


「帝国が終戦を申し込んで来た」

「「「!!?」」」


エドガーの言葉にロック達は瞳を大きくして驚いていた。
そんな中はピクリと肩を動かしただけだった。


「・・・・・・大方、幻獣の力を舐めていた。とかもう疲れたとかが理由だろう・・・・・・?
 ふざけるのも大概にして頂きたいな」


腕を組んで言うに誰も声を上げなかった。

―此処に居る誰もが思っている事かもしれない。



帝国は信用出来ない。



そう今までの経験が語っている。

―だが今は無意味な争いを起こしている場合では無い。


「・・・夕食を共にして話をしたいと言っていた」

「和平の会議も行うつもりだろうがな」

「・・・取り敢えず、今は時間まで待てと言われた。 会食には誰が行くか?」


私は出席するつもりだが・・・、とエドガーが続けた。
其れに続いてカイエンが「拙者も出席するでござる」と声を上げる。

そんな中、は視線を感じて其方に目を向けた。

其処には自分の様子を気にしているロックとティナが居た。
見られている方向は違うが、明らかに二人は帝国との会食でガストラ皇帝の真偽を自分の目で確かめたいけれども、が気になっている様子だった。

そんな二人には苦笑して「行って来ればいい」と短く言った。
すると同時に二人は「でも・・・」と声を上げる。
と、其処でティナがロックを、ロックがティナを見た。

恐らくを見ていたのが自分だけじゃなかった事に驚いたのだろう。

瞳を丸くしている二人が何処か面白くては笑みを零した。


「行って来れば良い。 私はパスさせてもらうがな」

「けど・・・」


ロックが言葉を濁した。

心配そうに自分を見てくるロックには近くに居たモグの頭を撫でる。
其れに何処か嬉しそうにモグが「クポッ?」と反応する。


「誰かと行動するから心配は要らないさ。 それと、幾ら帝国でも平和条約を結ぶ相手に手は出さないだろう」

「・・・そうだろうけど、」

「・・・もういいから、お前達は行って来い!」


腰に手を当ててじれったそうにが言うとロックとティナは条件反射で頷いた。

そんな二人を見て「良し」と言い笑うにガウが近付いた。


「ガウ、いっしょにいる!」

「ボクも居るクポ!」


ぐいぐいとのマントを引っ張りながら言うガウに続いて頭を撫でて貰っているモグもそう言う。

そんな可愛らしい二人には笑顔を向けて「ありがとう」と言った。

――恐らくマッシュとセッツァーとも離れずに行動する事になると思うが・・・、

は少し考えたがそんな考えは直ぐに捨てて二人の好意を素直に受け取った。












ロック達が会食に行っている間、達は帝国兵に運んできて貰ったブラック・ジャックの修理に取り掛かっていた。
取り敢えず、機械は皆分からないのでセッツァーが担当。
セッツァー以外は穴の開いた甲板や剥がれてしまった外装を直す事になった。

モグが板を押さえてガウが何処か楽しそうに釘をトンカチで打ち込む。
トンテンカンテンというリズム音を聞きながらは上の方の外装を見上げていた。


「・・・梯子か何か、台でもあればいいのだが・・・」

「あー上の方か、届かねぇもんな」


流石に2メートル越えているマッシュも届かない場所。

後少し、という感じなのだが微妙に届かない。

他の部分は結構やってしまったし、床はガウ達が今頑張ってくれている。

さて如何しようか、と思いは顎に手を当てる。


「台、かー・・・」


ポツリとマッシュが呟く。
そんなマッシュには「台はさっき思い付いて少し探したが無かったぞ」と言うとマッシュは「あーじゃあしょうがないな」と言い頭をかいた。

諦めたのか?と思いは横に居るマッシュを見る、――――と、


「・・・・・・マッシュ・・・?」

「ん?如何した?」

否、お前が如何した


はそう言いつつマッシュを見下ろした。

マッシュは何故かいきなり甲板の床に座り込んだと思ったら手と膝を床に付いて微妙な体制を取っていたからだ。

俗に言うorzポーズ(…)


「何をしているんだ?」とが問うとマッシュは此方を向いて「え、踏み台」とさらりと言った。



・・・・・・は?



踏み台・・・!? 
馬鹿かお前!?

が乗っかってやればいいんだろ?」

「そんな事誰も言ってないし予想もついた! の、乗るだなんて・・・・・・!」


ほんのりと頬を朱に染めたが焦った様に一歩後退する。

あまりの驚きにトンカチを手から落としそうになった位は動揺していた。


「大丈夫だって!位なら軽く五人は持てるって!」

「お、お前が力持ちなのは良く知っているが・・・・・・!というか五人って・・・・・・!
 ・・・! そ、そうだ、大体四つん這いだったら移動が面倒だろうが!」


が言うとマッシュは今気づいたのか「あぁ・・・そう言えば」と呟いた。
立ち上がって他の手を考えるマッシュを見てはほっと安堵の息を吐いた。


―のも束の間。


「がうがう!、のっかるといい!!」

・・・・・・え?

「ガウお前聞いてなかったのか? 移動が面倒になっちまうって・・・・・・、」

「がう! こうする!!」

「クポーーー!?」


ガウはにっこりと笑ってモグをがっしり掴むと持ち上げた。
突然の事にマッシュとが驚いているとガウは次の行動に出た。


「こうこうこう!!」


ガウはモグを自分の肩の上に乗せて満開の笑みを此方に向けた。

其れは俗に言う、肩車。


「「はっ!?」」


流石に其れにはマッシュも焦り二人して驚きの声を上げた。
仄かに頬を朱に染める二人を見てガウは小首を傾げた。


「がう?」

「・・・・・・ガウ、それはその・・・、私じゃ駄目なんだ・・・」


座った儘モグを肩車しているガウに目線を合わせる為にが膝を曲げて言う。
「だから、」と言葉を付け足しては苦笑いした。


「ガウがマッシュに肩車して貰ってあそこの修理をしてくれ・・・頼めるか・・・?」

「がう!! ガウがんばる!」


ニコリと笑ってガウは了承をするとモグを降ろしてマッシュに走り寄った。

「がうがう!のせろ!」「痛たたたたたた!引っ張るなコラ!」という声をBGMにしてはモグと一緒に甲板の修理に取り掛かる事にした。



暫く賑やかに(ガウとマッシュが)修理を行っていたがロック達が戻ってきたので其れは中断された。



「お、修理してるのか」

「あぁ、結構直った・・・・・・そっちは如何だった?」


下から見上げてくるロックにはそう声をかける。
ロックは「あぁ・・・、」と言った後なにやら言葉を繋げるが後ろでマッシュとガウが騒いでいるので全然聞き取れなかった。
頑張ってロックの言葉を聞こうとするのだが、背後が喧しすぎる。

はロックに手を出して「ちょっと待ってくれ」と言い振り返る。

無言でじっ・・・・・・とマッシュとガウを見ると二人は視線に気付いたのか直ぐに大人しくなった。

は其れに満足して直ぐにロックを再度見下ろして「すまないがもう一度頼めるか?」と言った。

何が起きたか分かっていないロックは瞳を丸くしつつももう一度口を開いた。


「幻獣は帝国を攻撃した後、北の方角の大三角島の方に飛んでったらしいんだ。
 幻獣を探し出して和解したいから、俺等に頼むって」

・・・結構省略しただろう、お前・・・

「だってさっきも同じ事言ったんだぜ・・・」

「まぁ理解出来るから良いが・・・。 あぁ、二度手間の文句についてはマッシュ達に言ってくれ


マッシュとガウを一瞥しつつはそう言う。

そしてロックの言った内容を頭で整理した。


幻獣との和解では帝国側が行っても上手く行くとは限ら無い。

寧ろ上手く行かないだろう。 だから魔導の力を持つティナに頼んだのか、


そうは理解して「で、ティナと誰が行く予定なんだ?」と聞いた。

するとロックの横に居たエドガーが苦笑して答えた。


「相変わらず読みが良いね・・・。 ティナと君とロックに行ってもらいたいのだが・・・」

「・・・私も幻獣の力を持つ。何か役に立てるかもしれないからな。
 それにティナが行くんだ、私も当然行くに決まっているだろう」


がティナを見て微笑むとティナは嬉しそうに「・・・!」と言って微笑んだ。
先頭でロックが「俺は・・・?」と言っているがは聞こえない振りをした。


(・・・お前は、もう分かってるからな・・・)


色々と、 着いて来てくれるって。


がそう考えていると何時の間にか真横に来ていたマッシュが「大三角島にはどうやって行くんだ?」と言った。
それに反応したのは兄のエドガーだった。


「アルブルグで帝国のレオ将軍と合流してからアーマー運搬船で大三角島に向かうらしいぞ。
 私達は帝国に残って奴等の監視だ」

「分かった。 ・・・帝国はイマイチ信用出来ないからな・・・」

「・・・レオ将軍・・・」


が帝国軍基地で見た男、レオ将軍の事を思い出してポツリと呟いた。


(彼と一緒に・・・・・・)


帝国からも同行者が来る事は予想していた。
彼が一緒に来てくれるなら、案外心軽く与えられた任を遂行出来るかもしれない。

そう思うとは自然と笑顔になっていた。

そんなをロックはじっと見ていたが、直ぐに気持ちを切り替えて口を開いた。


「準備が整ったら直ぐに行きたいんだが・・・」

「分かっている。今すぐでも行けるさ」


はそう言い自分の銃を拾い背負い荷物を持って飛空挺から降りた。
丁度エドガーの横に下りたので、彼を見る。


「気をつけて」

「・・・お前等もな。帝国は油断ならない」

「あぁ・・・。それは其方にも言える事だがな」


エドガーはをじっと見た後ににこりと微笑んで肩に手を置いた。


「お互いに、」

「気をつけよう・・・か?」


がエドガーの言葉を遮って言う。
エドガーは最初は瞳を丸くしていたが直ぐに笑った。




あれ?最後何でエドガー?(おい)