「もうすぐ大三角島だ。上陸したら二手に分かれよう。
私とセリスが組むから、君はとロックとシャドウと組んでくれ。
幻獣の手がかりを見つけることが出来たなら、すぐ報告をするように」
翌朝、正面に立つティナにそう言うレオ将軍。
ティナは彼の言葉に頷いて自分の後ろに立つとシャドウを見て「あら?」と瞳を丸くした。
「・・・ロックは?」
「・・・・・・あいつなら・・・、」
が額に手を当てて呆れた様に言葉を零す。
其れとほぼ同時にティナは甲板の隅で蹲っているロックの背を見つけて苦笑した。
大三角島に着き、板で簡単な橋を船から陸に掛ける。
はレオから渡された地図を覗き見、現在地と近場にある村を確認した。
(此処からだと・・・・・・、サマサの村が近いな)
は位置確認を簡単に済まし、地図を荷物の中にねじ込んだ。
そして皆を見て口を開く。
「行くか?」
「あぁ」
ロックが頷いて陸へと足を下ろす。
其れに習ってシャドウとティナも陸へと足を下ろした。
は一度だけ船を振り返りセリスに軽く手を振って歩を進めた―。
其れを見たセリスは「ぁ、」と小さく声を漏らし、手を伸ばしかけたが直ぐに下ろしてしまった。
情報集め。
其れを目的とし達はサマサの村で人に話しを聞いて情報収集をしていたのだが―・・・、
「幻獣? 何だ、それは? 獣の事なら村外れの家に住むじいさんに聞いてみな」
「ゆっくりして行きなされ。魔法・・・?なんですかなそれは?」
話を聞く度に村の人は目を逸らして言う。
正直に言うと目が泳いでいる。
・・・明らかに挙動不審だろう・・・。
「其れ、俺も思ってた・・・」
「ん?」
は隣で呟いたロックを見てあれ?と思う。
如何やら思っていた事を口に出していたらしい。
はコホンと一つ咳払いをして視線を彷徨わせた。
「・・・正直、こうも挙動不審だと疑って下さいと言われているのと同じような気がするんだが・・・」
「そうね・・・。 ・・・? 何の音かしら?」
ボウ、という炎が燃える様な音が聞こえ、ティナは小首を傾げた。
シャドウが「向こうだ」と言い音のする方を指した。
皆で其処を覗いてみると、少年が立っていた。
「ファイア!!」
少年がそう唱えると同時に炎が舞う。
其の光景を見た四人は瞳を大きく見開いた。
(魔法!?)
見るからに魔法を普通に村の中で放っている少年。
ある意味「いいのか?」と思いながらは取り敢えず彼に話を聞いてみようかと彼に近付いた。
「ファイア!! ・・・んが!?やべえ!」
だが少年は達の姿を目に止めると物凄い速さで走っていってしまった・・・。
残されたは行き場の無くなった手に視線を落とした。
「・・・・・・逃げられた」
「あ、あぁ・・・ そうだな、見るからに・・・」
やべぇって言ってたしな。
と付け足してロックは少年が走り去って行った方向を見た。
―ら、丁度良いタイミングで他の少年が小石にでも躓いたのか、転んだ。
ロックが思わず「あっ」と声を上げるが直ぐに少年の傍に母親と思わしき女性が来て彼を立たせて埃を払った。
「ママー 痛いよー」
「はいはい。 ケア・・・・・・、」
母親が少年の擦り剥いた膝に手を翳しかけた時に自分を凝視していたロックと目が合う。
彼女は直ぐに視線を逸らすと少年を抱き上げて歩き出した。
「薬は何処かしら・・・」
「ママー ケアルしてよー! ママー!」
少年は暫く母親にそう抗議していたが母親に口を塞がれ、家の中へ消えた―。
そんな人々の様子には横にいたシャドウを見上げたが、彼は肩を竦めるだけだった。
否、何て言うか、
「「不自然」」
思った事を言っただけだったのだが自分と重なる声に瞳を丸くしては隣を見た。
したら、バチリとロックと視線が合わさってお互いに苦笑した。
其の後も村の中を見回ってみたが大した情報は得られなかった。
店も家も訪ねて聞いてみたのだが何処も空振り。
・・・否、空振りというのは可笑しいかもしれない。
村の人の様子からすると知っているけど知らない振りをしている様にしか見えないのだから―・・・。
そう考えたはふぅ、と息を一つ吐いて辺りを見渡した。
聞き込みを始めてから数時間、辺りは段々と闇に包まれてきていた。
「残り一件だけになってしまったな」
「あぁ・・・取り敢えず其処の人に話を聞いたら今日はもう休もう」
ロックの言葉には頷いて「そうだな、」と言い言葉を続ける。
「船の中でも誰かさんは船酔いのせいで中々休めなかったようだからな」
「しっ、仕方ないだろ!苦手な物は苦手なんだ!」
色々あーだこーだと言い訳をするロックには笑みを浮かべてティナとシャドウに「行くぞ」と言い歩を進めた。
「無視かよ・・・!」と言い項垂れているロックが視界の端に入りは笑みを深くした。
「幻獣? 幻獣・・・、んー。久しく聞かなかった言葉じゃゾイ」
村はずれにあった最後の家に行くとストラゴスという老人が家に入れてくれた。
がストラゴスに幻獣の事を尋ねるとストラゴスは懐かしむ様に目を細めて自身の顎に手をやった。
そんな老人の様子にロックが瞳を丸くした。
「知っているんですか?」
「・・・! いや、知らぬ。知らん知らん・・・わしゃーな〜んも、知らんゾイっ?」
彼も他の村の人と同じように挙動不審になるのだろうと思っていたのでロックはストラゴスにそう言った。
するとストラゴスは暫く経った後に瞳を丸くし。肩を跳ねさせた。
直ぐに彼はこう否定の言葉を口にしたが明らかに遅かった。
が口の端を吊り上げたのを、真横に居たティナは見た。
「今更そう言っても遅いぞ」
「知らんもんは知らんゾイ」
「では、私と目を合わせてそう言って頂こうか」
にこり、と可愛らしい笑みを浮かべて言う。
確かに可愛らしく、見る者が惚れ惚れしてしまう様な素敵な微笑みなのだが、その場に居た全員には酷く恐ろしい悪魔の笑みにも見えた。
(怖ッ!!)
ロックが剥き出しの両腕に手を回して自身を抱え込む様な体制を取ったその時、
「おじーちゃーん!!」
バン!!という大きな音と共にストラゴスの真後ろのドアが開かれて何かがストラゴスにぶつかった。
その衝撃でストラゴスは前のめりになり重力に逆らう様に両腕をぐるぐると回して倒れない様にしていたが、その努力は無駄に終わり思い切り転んだ様に派手に倒れた。
大丈夫だろうか?と思い達はストラゴスに視線をやったが思いの他彼は直ぐに起き上がった。
腰を摩りながら、後ろに立っている少女に視線を向ける。
「あた、あた、あた・・・・・・。 全く・・・何をするんじゃ」
ストラゴスにそう言われ非難の目を向けられるが少女は彼から視線を外して達を大きな瞳で見上げる。
目が合ったは小首を傾げてリボンの似合う少女を見詰め返した。
お孫さんか何かだろうか? と思っていたら少女はストラゴスに視線を戻し「おじいちゃん」と呼んだ。
「誰、そこの人?新しいお客さん? この人も魔法を使う人なの?」
「あわわっ!!こらっ!」
「!!」
ストラゴスが少女の言葉に慌てて両手をブンブンと振った後に少女の両肩を掴む。
慌てたストラゴスを見、少女は目を丸くして「ヤバイ!」という表情をした直後にくるりと身体を反転させての足元に居るインターセプターに視線を向けて近付いて来た。
「まあ、可愛い犬」
「止せ、噛み付かれるぞ」
そっとインターセプターに伸ばされた小さな掌を見、シャドウがそう言うがインターセプターは大人しく少女の掌を受け止めた。
少女が嬉しそうに頬を緩め、頭を数回撫でるとインターセプターは気持ち良さそうに「クゥン、」と鳴いた。
ストラゴスは少女に近付いて肩に優しく手を置いて声をかける。
「奥に入ってなさい」
「何でなのよ〜!この頑固ジジイ!!」
可愛い見掛けによらず、口悪ッ・・・!
とは思ったが自分も口の悪さについては余り人の事は言えないので小さく息を吐いて瞳を伏せた。
「いいから行くのじゃ!」
「・・・ハーイ」
渋々、といった感じで少女は立ち上がって先程出てきたドアに近付く。
インターセプターを連れて。
そんな少女を見てストラゴスが「こらっ」と声を上げる。
「人様の犬を・・・!」
ドアに近付いて少女を叱ろうとしたストラゴスだが、それより早く少女は自分の口の端を両手で摘み上げて「イーッだ!!」と言いドアをバタンと閉めた。
階段を上がっていく音が聞こえる中、ストラゴスが振り向いてシャドウに「すまんのう、人様の犬を」と言った。
シャドウは軽く首を振って返した。
「かまわん。 ・・・人には懐かない犬なのに・・・」
「? そうなのか?」
はシャドウの呟きを聞き取って彼を見上げてそう言った。
シャドウから帰って来た言葉は「お前は特殊な出会いだったからな」だけだった。
(出会い、)
少しだけ思い返す、
(帝国に、国を滅ぼされて、野垂れ死にそうだった所を私は、シャドウに拾われた・・・)
インターセプターとは? と思い少し思案に耽ろうとしたがストラゴスの声では現実へ思考を戻した。
「すまんが、きっと力にはなれんぞ」
「そ、そうですか・・・」
否、嘘だろ。
という意味を少々滲ませながらロックが苦笑交じりにストラゴスにそう返す。
「ここは、何処にでもある田舎の村に過ぎぬ。 幻獣等と言った話とは、まーったく関係無いのじゃ」
ストラゴスは「はぁぁぁぁ」と態とらしく残念そうな溜め息を吐いてそう言った。
其れを見たロックはを引いてこそり、と小声で声をかける。
「う〜む。この村には、何かあるな・・・」
「否、見ていて直ぐ分かった事だろう」
「何かある事は確かなのだし、暫く様子を見ましょう」
ティナもこそり、と小声でそう言って来たのにロックとは頷いてストラゴスに視線を向ける。
「では、私達はこれで・・・」
「何の役にも立てんで、すまんかったの」
「いえ、有難うございました」
がストラゴスに礼を言うとシャドウが上に視線を向けて口を開いた。
「インターセプター!行くぞ!」
その声が上がると同時に階段をトトッと軽く下りる音が聞こえてきた。
ドアが開かれて、少女とインターセプターが姿を現す。
少女はインターセプターを最後にひと撫ですると「バイバイ」と言い手を振った。
インターセプターも少女に一度擦り寄って、飼い主の下へと走っていった。
久々な更新、 やっと会えたねおじいちゃんにリルム!
次はちょいの過去が入ります、ちょっとですが