タコを撃墜した後奥へ進むと、狭かった道から急に広間の様な広い空間に出た。
そして感じる強い魔力。 は此処に幻獣が居ると確信し辺りをゆっくりと見渡した。
視界に入ったのは、背に羽を持った幻獣。
の横に居たリルムも気付いたのか其方を見て口を開く。
「これが・・・幻獣・・・」
初めて見るその姿に、リルムは瞳を大きく見開いてポツリと呟いた。
リルムがそう呟いた途端に、周りの岩陰から次々と幻獣達が出てきて達を囲う様に迫ってきた。
驚き慌てたストラゴスが「何じゃこいつら!」と声を張る。
ティナもリルムと同じく瞳を大きく見開いて「幻獣が・・・こんなに沢山・・・」と言いつつ辺りを見渡した。
ロックは慌てているストラゴスの腕を引き、「爺さん、リルムを連れて逃げるんだ」と耳打ちした。
其れに了解したストラゴスはリルムの手を引いて来た道を戻ろうとするが、其の道も出てきた他の幻獣に塞がれてしまった。
ストラゴスはリルムを背に庇い、魔法を唱える為に詠唱を始めた。
ティナも其れに続き、ロックは構える。
だけは何もせず、瞳に少々焦りの色を浮かべつつ辺りの幻獣を見渡していた。
―酷く警戒されている、
戦いたくなんて、無いのに、
そう思い幻獣達を説得してみようとが一歩前へ足を踏み出した途端、凛とした声が洞窟内に響いた。
「待て!」
「・・・!」
その声で幻獣達、そして達も思わず動きを止めた。
声を発したのは奥から出てきた若い青年の容姿を持つ幻獣だった。
彼はゆっくりと歩を進め、ティナを見た。
ティナも彼を見返した途端、二人の身体を光が包んだ。
その光は互いへ伸びて行き、交差を繰り返し続けた。
「な、何?何してるの?」
リルムが怯えた様にストラゴスに寄り添い、服をキュ、と掴む。
ストラゴスはリルムの頭を軽く撫でた後、ティナと幻獣の青年を見て口を開いた。
「ティナに・・・強い魔力を感じる。 否、魔導の力と言うべきか・・・・・・」
「・・・また、あの時みたいに暴走するのか・・・?」
「否、あれは違う」
少々焦った口調で言ったロックにが答える。
「じゃあ、」何をしているんだ、とロックは言いかけたがの「まぁ見てろ」という言葉に遮られた。
暫くすると光は収まり、幻獣の青年はゆっくりと瞳を開き、ティナを見詰めた。
「君は・・・ちょっと違う・・・、我々と同じ力を感じる」
「ええ」
「そして・・・、」
幻獣の青年は次にに視線を移した。
は彼と目が合うと彼に近付きつつ、口を開いた。
「ティナは人間と幻獣の間で生まれた子だ」
「・・・封魔壁の扉を開いてくれたのも、彼女でしたね」
幻獣の青年の言葉には頷き、彼を見上げた。
すると彼はから魔導の力を感じ取ったらしく、「そうか・・・貴女は、」と呟いた。
は頷きだけを返して、他の事を聞くために口を開いた。
「見た所若い者ばかりだが・・・、」
「幻獣界には、此方の世界に来てはならぬという掟があります。
でも魔石化された仲間を助けるために若者たちが扉の前に集結したのです。その時にティナの姿が・・・」
「私も感じました。あなた達の想いが扉の中から」
ティナの言葉にが頷く。
あの時、幻獣達の想いは全て自分の中の幻獣、ケツァクウァトルを通じて流れ込んできたから。
「ティナが扉を開けてくれた事で外に出ることが出来ました。
・・・しかしこちらの世界へ出た途端に自分の力をコントロールできなくなってしまったのです。
そのために、一つの都市をメチャメチャに破壊してしまい、罪のない人達まで・・・・・・」
「私と同じだわ・・・突然手に入れた力を・・・コントロール出来なくて・・・」
「恐らく幻獣はあちらの世界では力がある程度抑えられる傾向があるのじゃろう。其れが突然開放された為に・・・」
幻獣の青年が苦しげに出した言葉に、ティナが反応し過去の自分を思い出して瞳を伏せる。
其の後にストラゴスがそう口を開いた。
「幻獣によっては精神に失調をきたし人に危害を加える者も・・・・・・本当に申し訳無い・・・」
彼はそう言い頭を下げた。
周りに居た幻獣達も瞳を伏せ、顔を俯かせと、後悔の色を露にしていた。
はそんな彼等を見た後、目の前で頭を下げている幻獣の青年に片手を差し出した。
「これからの道もある。帝国も幻獣達との和解を望んでいる。だから・・・私達と来ないか?」
幻獣を苦しめた帝国も、帝国を苦しめた幻獣も、お互い後悔の色を露にしている。
其れが本心だと今は信じるている、だから―――、
―其処まで考えて、は自嘲気味に笑みを零した。
(結局、信じるしか無いんだ。今は、無駄な争いをこれ以上しない為にも)
そう考え、少々呆けていたが伸ばした手が何かに包まれる感覚に現実に意識を引き戻された。
幻獣の青年がの手を両手で包み、懇願する様な瞳で見詰めてきていたからだ―。
「・・・我々を、許してくれるのか・・・?」
彼の言葉を聞いて、は優しく微笑んだ。
「許すも何も、私はお前達寄りだ」
微笑んで言うに、幻獣の青年も笑みを返した―。
そんな二人を見て、周りの幻獣達も安堵の息を吐いていた。
幻獣の青年は「ありがとう、私はユラという」と言いと握手をした。
も「私はだ」と自己紹介をし、手に力を込めた―。
そんな二人を見た後、ロックが不意に背を向けて口を開いた。
「サマサの村へ行ってレオ将軍と合流しよう」
「・・・? そうね」
意外にも一人でズカズカ進んでしまったロックに小首を傾げつつも、ティナは頷いておいた。
「レオ将軍」
サマサの村に戻ったら、村の中央付近にレオ達が居た。
付近に居たセリスや他の帝国兵を止めさせて、彼は此方を見て片手を上げて一人で近付いて来た。
「おお、ロックか。幻獣達に会えた様だな。手間をかけた」
ロックは其の侭ティナ達と進んでレオ将軍に近付いたが、だけは進めなかった。
後ろに居る幻獣達が立ち竦んでしまったからだ。
―やはり未だ帝国に対する怒りと後悔、申し訳無さ等の感情が心を渦巻いているのだろう、とは察して彼等に近付いて安心させる為に笑みを向けた。
そうしていると、レオが近付いてきて幻獣達に一礼をした後口を開いた。
「私は、帝国の将軍、レオ。貴方の名前を伺いたい」
「私は、ユラ」
幻獣達の中から一歩前へ出たのはユラだった。
彼は自分の名を名乗った後、再度口を開く。
「我々は貴方方にとんでも無い事をしてしまった。 許してくれ等と言えた立場では無いかもしれないが・・・・・・」
瞳を悲痛の色に染めて言うユラに、レオは「分かっている」と言い彼も言葉を続けた。
「犯した過ちを責める気は無い。
逆に、貴方方を戦争の為の力としてしか考えていなかった自分を恥じる・・・。
魔大戦の過ちを再び引き起こそうとしていた、自分達を・・・」
レオがそう言うと、ユラ達幻獣は表情を緩め、真っ直ぐにレオを見詰めた。
幻獣と人が、通じ合った瞬間。
其れを目の当たりにしたは、心が酷く温かくなるのを感じた。
(人と幻獣だって、分かり合えるんだ、)
自分と、ケツァクウァトルの様にも、
そして、今目の前に居る、彼等の様にも、
は安堵の息を吐いて口を開いた。
「これで私達の役目も終わりだな。・・・本当の平和が訪れてくれる、かもしれないな」
「ええ、そうね・・・戻りましょう、ベクタへ」
の言葉にセリスがそう答える。
は其れに少しの間瞳を丸くさせていたがセリスがを見てにこりと笑みを向けてきたのでも笑みを返した。
「セリス・・・」
「・・・、ありがとう、」
セリスにそう言われは「良いんだ」と言いロックを横目でチラリと見た。
此方の会話に加わる機会を伺っていたらしいロックはと目がバッチリと合いビクリと肩を跳ねさせた(分かりやすい)
セリスもロックを見、ロックもセリスを見る。
ロックはセリスに近付いて「セリス、その・・・、」と言葉を濁しつつ口を開くがセリスは首を振って彼の言葉を止めた。
「何も言わないで」
「・・・・・・あぁ」
ちょっと困った様に笑い合う二人に、はほうっと息を吐いた。
胸がツキン、と痛んだけれども、仕方ない。
自分は、ロックが好きなのだから、
そんな事を思いロックとセリスの仲を見て嫉妬の念を今までずっと浮かべていた自分を考えると、思わず自嘲気味の笑みが零れる。
今まで恋だなんて、全然考えた事が無かったけれども、悪くは無い。
はそう思い瞳を伏せた。
――其の時、
「ひょっひょっひょっ!!ぼくちんの魔導アーマー隊の力を見せてやるぞ!!」
「「!!」」
―キィン―
「!! 伏せろ!」
嫌に鋭い魔力をいち早く察知したがそう叫び防御の魔法を繰り出すが、既に遅く皆吹き飛ばされていった。
発動したばかりだったシェルはだけにしか掛からなかった様だ。
魔法防御はグンと上がったが、あまりの威力には膝を付いていた。
其の侭辺りを見渡すと、皆が散り散りに倒れていた。
自分だけが軽傷という事には舌打ちし、地に手を付いて立ち上がった。
そして眼前に居る数体の魔導アーマーの中心に立っている男をキッと睨み上げた。
「ケフカッ・・・・・・!!」
鬱展開になって来た