帝国空軍の猛攻を抜けて、シャドウと会って、数多くの魔物を倒して、やっと見つけたのに、



其処に居た君は―――、



「・・・・・・・・・?」



酷く虚ろな瞳をしていた―。















































力無く倒れたその身体。


金の髪が地に散らばっていてまるで華の様だった。


投げ出された手足はピクリとも動く事は無かった。


けど、金の瞳だけは、力無く此方を見た。



思わず、叫んだ。



ッ、!!


そう叫ぶと同時にガストラとケフカが此方に視線を向けた。
此方の姿を視界に留めるとガストラは笑みを浮かべ口を開いた。


「よく、来たな・・・。ファファ 仲良く死にに来たか。だが此処まで・・・!
 見よ!この三闘神を!!」


三闘神の像の真ん中で力無く倒れているを一瞥した後、ガストラは両手を天へ掲げた。
其処へ光が舞い、吸い込まれる様にガストラの中へと入っていく―。

ガストラは嬉々とした顔で口の端を吊り上げた。


「おおっ!血が騒ぐ!これぞ三闘神の力!!」

「ガストラ皇帝!止めて下さい!」


思わず呆然と立ち尽くしていると背後からセリスが出てきた。
其れにロック、そしてティナとエドガーは瞳を見開いた。


「セリス!?何で此処に!」

「帝国と決着を着けたくて・・・・・・!! !!


セリスも三闘神の像の真ん中で力無く倒れているを視界に留め、悲痛な叫びを上げる。

ロックは少々冷静になって、再度に視線を向けた。

相変わらず動かない身体、そして、虚ろな瞳―。
ケフカらに何かされたのは明らかだった。 


そう、



三闘神の封印を解かせたとか―、



ロックはそう思い至り奥歯を噛み締めた。

その直ぐ後にガストラが「セリスよ、」とセリスを呼ぶ。
そして手を差し伸べてきた―。


「さあ来い。お前だけは特別だ。
 我がガストラ魔導帝国を築く為にケフカとお前に新しい子孫を残す使命を与えようではないか!」

「その手でヤツらを殺せば裏切った事、許してやるよ」


ケフカがそう言い剣を鞘から抜いて地面へ投げ捨てた後、蹴ってセリスの足元へと其れを移動させた。
カラカラ、と金属音を立てながらセリスの足元へ其れを、彼女は瞳を細めて見詰めた。


「その剣を取れ!そして奴等を殺せ!」

「・・・・・・に、何をしたの?」


セリスが剣に手を伸ばし、其れを手に収めた後にケフカとガストラを見て問う。
彼女の問いかけにガストラは「この神獣の娘か」と言い倒れているの髪を掴んで頭を引き上げた。
其れにロック達が眉を顰める―。


「この娘は幼少の頃我が国で人口魔導注入を受けた、魔導の力を持った娘と幻獣の融合は、神に価する力をも持つ!
 三闘神の封印を解かせるにはもってこいの存在じゃったよ、ファファファ!」

「・・・なん、だって・・・?」


ガストラの放った言葉を聞き、ロックは震える拳を握り締めた。
そんなロックの横でティナが「でも・・・!」とケフカを見て声を上げる。


「貴方はナルシェでの力は人工的な物では無いって・・・!」

「嘘に決まってるデショー!!あれは私なりの忠告だったのですよ。
 あの女と共に居ると、不幸になるっていうね!!」


そう言い高々と笑うケフカ。
しかしロックの耳にはほとんど入っていなかった。


何て言った、コイツは―・・・!

まさかの居た国を襲った理由というのは・・・!


「・・・っつ!!そんな理由の為にの親も仲間も皆殺したってのか!!自身さえも!!」


叫ばずにはいられなかった。

ロックの叫びを聞いたケフカは口の端を吊り上げてニコリと笑って、言った。


「当たり前じゃないですか」

ッ・・・!! お前等ッ!!


ロックが魔法を放とうとした瞬間、ケフカが何やら素早く唱え、光を放ってきた。
其れはセリスの横をすり抜けてロック達に当たり、彼等を拘束した。

動かない手足を苦々しげに見ながらロックは「クソッ!」と声を上げた。


―以前ゾゾでの記憶を垣間見た時があった。

あんな惨状を!コイツ等はこんな下らない理由の為に!!

そう思うと怒りが収まらなかった。


ガストラが三闘神の力を取り入れるのを一旦止め、の髪を掴んだままセリスに視線を向けた。


「さぁセリスよ!奴等を殺せ!!」

「・・・! セリス!」


ティナが剣を手に持っているセリスに視線を向けた。
其れに習う様にエドガーもセリスを見るが、ロックの視線はにだけ向いていた。

其れをセリスは見て皆に気付かれない様に小さく笑みを零すと、剣をゆっくりとした動作で振り上げた。



「力とは争いを生むもの・・・・・・。 ならばっ!!」




ぐ、と柄を握る手に力を込めてセリスはティナ達に向いていた身体素早く反転させ、真っ直ぐに剣先をケフカの腹部に下ろした―。


どす、という刃が通った音が響く―。


瞳を見開いているケフカから剣を勢い良く抜き、セリスは其れを投げ捨てた。




「存在しない方が良いに決まっている!」




カラン―、という音を立てて血のついた剣は地面を滑って行った。

その音でやっと意識が戻ってきたのか、唖然としていた全員がハッとした。
ガストラは口を開けたままケフカの腹部から流れる血を凝視していた。

ケフカはというと―、未だ唖然と自分の腹部を見ていたが恐る恐るといった感じで手を腹部に持っていく。

びちゃ、という水音が響いた瞬間、瞳を更に大きくして叫んだ。


いたーーーーーーーーーい!!!!!!!!!!!


悲痛な叫びを上げつつケフカは前のめりになって「痛い痛い痛い!!!」と痛いを連呼する。
大きく見開いた目で己の掌を見て、べっとりとついた血を見て荒い呼吸を繰り返す。


「血・・・・・・・っくしょ、」


荒い息の中、ポツリと呟く―。




「ちっくしょ・・・・・・、


 ちくしょう・・・・・・、ちくしょう・・・・・・、


 ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう
 ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう
 ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう
 ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう
 ちくしょうちくしょうちくしょうちくしょう
 ちくちくちくちくちくちくちくちく
 ちくちくちくちくちくちくちくちく
 ちくちくちくちくちくちくちくちく
 ちくちくちくちくちくちくちくちく
 ちくちくちくちくちくちくちくちく
 ちくちくちくちくちくちくちくちく
 ちくちくちくちくちくちくちくちく
 ちくちくちくちくちくちくちくちく

 ちっっっっくしょ――――――!!!






急に海老反りになり荒い息を吐き出しつつ、歪んだ笑みを浮かべつつ、ケフカはそう叫んだ―。
そんなケフカの様子に全員が再度唖然としていたらケフカは流れ出る傷など気にせずに三闘神の像へと走っていった。


「戦うために生まれて来た神達よ! 今こそ、其の力を見せる時だ!!」


そう叫び両手をバッと勢い良く広げる。
そして三体の像の真ん中へと身体を滑り込ませようとするが、物凄い衝撃波が生じて吹き飛んでいった。

セリスとガストラをも巻き込んで―。

重症を負っている筈のケフカだが、傷など気にする様子も無く再度立ち上がり像の真ん中を目指す。


「ぼくを受け入れろ!!」


そう言って再度突っ込むが、また同じように跳ね返された。
だが諦めずに再度立つ。


「くそっ!言うことを聞けー!! ぼくちんをバカにするなよ・・・・・・! 力を見せてみろー!!」

「ケフカ!やめろ!三闘神を復活させれば世界は消える・・・それでは意味が無い!」


正気に戻ったガストラがそう叫ぶが、ケフカは聞く耳持たなかった。
今度は三闘神の像に手を着いて動かそうとしている。

そんなケフカの様子にガストラは焦りの声を上げる。


「ケフカ!乱心したのか!?」

「乱心・・・・・・? 皇帝!何をおっしゃっているのですか?三闘神の力を見せつける時なのにっ!!」


本気の瞳を向けてそう叫ぶケフカにガストラは瞳を細めた。
そして重い動作で口を開く。


「ええい、仕方の無い・・・。ケフカお前はもう役には立たぬ。残念だが此処までだ! 悪く思うな・・・・・・!
 最期の慰めとして、お前が自ら生み出した魔法で眠らせてやろう・・・」


ガストラがそう言い魔法を放つ為に魔力を高めていく。
が、ケフカは臆する様子は無くまた高々な笑い声を上げた。


「何が可笑しいのじゃ!
 ・・・ふっ、まあ良い・・・・・・、笑いながら眠るのがお前にとって一番お似合いじゃろう!」


ケフカは笑いながらゆっくりとした動作で倒れているの真横に立った。
そして虚ろな瞳をしている彼女を見下ろした。


「ほんと、貴女には助けられますよ」


ケフカがそう言ったその瞬間―、

ガストラが魔法を放った。


「ファイガ!!」


膨大な魔力が舞い、炎が現れる―。

が、其れは直ぐに消えてしまった。


一瞬にして消えた炎にガストラは瞳を見開いて何が起きたのか分からず唯辺りを見渡している。
そんな様子のガストラを見たケフカは小馬鹿にした様に笑みを向けて倒れているの腕を掴んで座らせた。
馬鹿にされたガストラは瞳に怒りの色を浮かばせ、再度魔力を高めた。そして、


「フレアー!」


再度魔法を放つが、其れも先程のファイガ同様消えてしまった。

二度も同じ現象が起きてガストラは焦りを露にした。


「馬鹿な!何故魔法が撃てぬ!!?」


自分の両手を見詰めた後にまた「メルトン!!」と叫ぶがまた無意味に終わった―。

ケフカとガストラの様子を見ていたロック達も何が起きたのか理解出来ずに唖然としている。
其の中でティナだけがハッとして三闘神の像を見上げた。


「・・・・・・まさか・・・、」

「ケ、ケフカ・・・・・・お前・・・一体・・・・・・」


ティナの呟きの直後に、ガストラの掠れた声が響いた。
ケフカは相変わらず高笑いを続けるだけ―。


「何故だ???」

「何故ならー、僕ちんが三闘神の真ん中に立っているからなのでした!」


呆けていたガストラに素早く近付いて彼の腹部を勢い良く蹴り上げた。
吹っ飛んでいったガストラを一瞥してケフカは再度三闘神の像の真ん中へ入る。
そして人差し指を立ててちっちっち、と数回振ってからまた口を開いた。


「全ての魔法の力は三闘神に吸い取られてしまうのだ!お気付きになってませんでしたか・・・・・・? うふふふふふふふ」

「・・・・・・!」


ケフカの言葉に意味を理解したガストラは目を大きく見開いた。
その瞳には、恐怖の色が浮かんでいる―。


「三闘神よ、どうやら最初の獲物が大決定したのだ!
 役立たずになった皇帝にお前のその力を見せ付けてやるのだ!!」


嬉々とした様子でとんでもない事を言うケフカにガストラは慌てた。


止せ!ケフカ!!

やるのだー!!


ケフカが高々と手を上げた瞬間―、



ドゴオオオオオオオオォォン!!!!!!



轟音が響き渡った―。




鬱すぎ