物凄い轟音が響いた。
ガストラはなんとか雷を避けたが爆風で吹き飛ばされた老体にはもう余り力が残っていない。
ロック達の所まで爆風は来て、四人はなんとか耐えていた。
舞った土埃のせいで咳き込みながらセリスが瞳を細め、「何て力なの・・・!」と呟く。
「・・・・・・しゅごい・・・」
ポツリ、とケフカが呟いた。
直後にんまりと笑みを浮かべて子供の様に「しゅごいしゅごい!!」と声を上げて喜んだ。
そして倒れているガストラから少し離れた所にまた轟音と共に雷が落ちてきた。
其れに驚いたガストラは立ち上がり、走り出す。
何とか雷を避けながらガストラは逃げ回る。
「下手くそ!!下手くそ!! 何処を狙っているのだ!!」
ケフカが像を見上げてそう叫ぶと、其の声に応えたのか、はたまた偶然か、ガストラの真横に雷が落ちた。
その様子に満足してきたのかケフカは嬉しそうにまた声を上げた。
避けるガストラを見ながら「もう! もっと右!右!!」と叫ぶ。
必死に逃げ回るガストラだが、近くに落ちた雷の爆風でまた吹き飛んで地面に身体を打ち付けられて倒れた―。
「逃げろ逃げろー! でないと黒コゲだじょー!!」
倒れているガストラにケフカが歪んだ笑みを浮かべつつ声をかける。
ガストラは先程地面に倒れた時に切ったのか、頭から血を流していた。
頭を抑え、よろける身体を叱咤しつつなんとか逃げようとしているが、立ち上がろうとした直後―、
ズガアアアアァァァン!!!!
「あったりー!!!」
雷が、ガストラに直撃した。
嬉々としているケフカとは別に、ロック達は瞳を見開いていた。
直ぐにティナが瞳を細めて顔を背ける。
雷が直撃したガストラは、原型を留めておらず、唯の黒い墨の様なモノになっていた―。
ケフカが黒焦げになったガストラに大股で近付いていって「ふんっ!」と声を上げる。
「ジジイが・・・・・・。さっきの役立たずと言ったのは取り消してあげましょう。
何故なら、 皇帝、 貴方は! 役立たず以下、だからだー!!」
ケフカはまた高笑いを上げて真っ黒になったガストラの身体を思い切り踏み潰した。
其の後、ケフカは三闘神の像に近付き一つの像に手を着いて動かそうとしていた。
ケフカの行動を見、セリスが焦った声を上げて彼に走り寄る。
「駄目!!ケフカ!!」
「どけぇ!」
何とかケフカを止めようとするがセリスはケフカに思い切り突き飛ばされた。
エドガーが慌ててかけより地に倒れる前にセリスを支える。
「駄目・・・・・・ケフカ・・・・・・三人の力のバランスが・・・破れたら・・・力が暴走する・・・・・・!」
セリスが吹き飛ばされた時に殴られた腹部を押さえつつか細い声で言う。
が、ケフカはそんな彼女の話には聞く耳持たず、像を思い切り押した。
―ズズ、という音を立てて像が少しだけ動いたその瞬間―、
「止めろッ!!ケフカ!!」
ケフカの真横から、ある人物が飛びついた。
予想出来なかった事態にケフカはバランスを崩し、飛び掛ってきた人物と共に地面に転がる。
その人物とは―――、
「・・・ッ!!!」
「ロック!皆!聞け! 此の儘じゃ魔大陸は崩壊する!」
先程まで虚ろな目をしていた、ロックがずっと追い求めていた人物―、だった。
が正気に戻った事でロックが歓喜の声を上げるがは切羽詰った表情で此方を見ずにそう叫ぶように言った。
「早く脱出しろ!!此の儘じゃ皆死ぬ!!」
「!君も共にだ!!」
エドガーがそう言いセリスをティナに預けてケフカを押さえつけているに手を伸ばすが彼等の間に亀裂が走った。
エドガーは思わず足を止めてを見詰めた。
エドガーの直ぐ後ろまで来ていたロックが「!」と叫ぶ、
はゆっくりと振り替えり久々に見た気のするエドガーを見て少しだけ笑みを浮かべた後、口を開いた。
「軟派王は其方の女性に手を差し伸べろ」
「ッ・・・冗談を言っている場合では・・・!」
エドガーが眉を顰めて言葉を口にしようとした瞬間、ケフカに押し返されそうになったが力を込めてケフカを地面に押し付けた。
暴れるケフカの足がの腹部に食い込むが、は唇を噛み声を上げず、ケフカの顔を一発殴った。
「早く行けって・・・言ってるでしょ!?」
「お前を置いて行ける訳無いだろうが!!」
ロックがそう叫び助走を着けて飛び移ろうとする―、
其の時、
―ズズ、という三闘神の像が動いた音が響いた。
がハッとして其方を見上げると同時に出来た隙をケフカは見逃さず、思い切りを突き飛ばした。
彼女が吹き飛んだ先は―――、亀裂の間。
ロックは物凄い速さで駆け寄り「!!」と彼女の名を叫んで出来る限り腕を伸ばした。
吹き飛んでいるもロックと瞳が合い、「ロック!」と彼の名を叫ぶ。
は手を伸ばさなかったが、なんとか届いた手。
ロックは半分亀裂の中に身体が半分以上入っても気にせず、の手をしっかりと掴んだ―。
だが揺れる地面のせいでロックまでもが亀裂の中へと引きずり込まれそうになっている、
其れに気付いたはロックの手を振り払おうとするが、彼の手は硬く自分の手首を握っていて離れる気配は無かった。
は焦りの色を瞳に浮かべながら「ロック!」と叫ぶ。
「離して!此の儘じゃお前まで落ちる!」
「ふざけんな!! 絶対・・・・・・絶対離さないからな!!」
「っ・・・・・・ロック!!」
訴えかけるようにロックに離せとは言うが彼は「嫌だ!」と言い首を振った。
が再度彼の名前を呼ぼうとした瞬間、彼が揺れる地面のせいでまた亀裂に身体が飲み込まれそうになった。
としては彼を失うという事は耐えられない事で、瞳を細め、悲痛な表情で「ロック!!」と叫んだ。
「私なんか助けてはいけない!!私のせいで国は滅んだ!私のせいで立ち寄った村は襲われた!
私に関係した者は皆不幸になる!! だから―――!!」
私なんて・・・!そう言うの手首をギュ、と更に力強く掴んでロックは裂け目に擦れる腕に痛みを感じたせいか、眉を寄せながら「馬鹿野郎・・・!」と口を開いた。
「好きな女の手を、離せるかってんだ!!!」
「―!!」
ロックがそう叫んだ瞬間、ふわりと身体が浮いた。
直後、地面に二人は腰を下ろしていた。
一瞬の事で何が起きたのか理解が出来なかったが、真横を通る漆黒。
は思わずバッとその漆黒を目で追う、
「っ――シャドウ!?」
「行け!世界を守れ!」
亀裂の向こう側に着地したシャドウがそう叫びケフカと対峙する。
先程三闘神の像を動かしたのは彼で、今助けてくれたのも彼だ。
はそう理解するとシャドウに駆け寄ろうとしたがシャドウ自身に止められた。
「俺に構うな。 早く行け!もう暴走は止まらない!」
現状は理解していた―。
はぐっと唇を噛んだ後、しっかりと頷いた。
真っ直ぐに自分を見詰めてくるにシャドウは優しげな笑みを返した。
「・・・ふっ・・・・・・必ず戻ってみせるさ。 心配するな」
「・・・・・・約束だ・・・!」
はそう言い、駆け出した。
ティナ達は戸惑っていたが、の後に続いて走り出した―。
「逃がしゃん・・・・・・」
崩壊の中―、ケフカが呟いた。
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