「世話になったな」
ベッドから起きながら言うに、レオは苦笑を返した。
「本来礼を述べるはずなのは私の方だ。サマサではすまなかったな・・・」
「気にしていない」
はそう言い壁に掛けてあった自分のマントを手に取った。
其れはやはり、というか、結構ボロボロになってしまっていた。
しかしは其れを気にせず手に持ち、ベッドへと投げる。
そんなに、レオが何かを手渡してきた。
「世界は崩壊し、気温も下がっている。それに、君は女性なのだからその様な服装で居るのは余り・・・、」
「・・・服か、ありがたい」
はレオの言葉を聞きつつ「以前にも言われたな・・・」と思いつつ受け取った服を見やる。
色々あったが、は動きやすい服装が好きなので、上着はハイネックの黒のノースリーブを選び、腕には黒のアームウォーマーを着ける事にした。
下も黒色のショートパンツを選び、ニーハイブーツを足に履く事にした。
アームウォーマーも結構ボロボロになってしまっていたのでこれはとてもありがたかった。
が着替えるので、部屋の外で待っていたレオは出てきたを見て少々呆れの色を瞳に浮かばせた。
「・・・気温は下がっているぞ」
「動きやすくなくてはいけない。寒さならコレがあるから大丈夫だ」
そう言いバサリ、と少々短くなったマントを羽織る。
は下ろしたままだった髪を下の方でバンダナで結わく。
そして、壁に立てかけてあった自分の銃を背負う。
「・・・お前は、此処に残るのだろう?」
「・・・あぁ。未だ残っている住民も居るのでな。魔物から守る、それが私に今出来る事だ」
レオはそう言い「君は?」とを見てきた。
は太股のポーチに弾が入っているかやら小銃はきちんとあるかやら色々と確認をしながら答えた。
「皆を探す。それが今私に出来る事だ」
皆、目覚めた時傍に誰も居ない場合だってあるかもしれない。
場所だって、世界は引き裂かれ、地形も変わった。
無人の孤島だってあるのだ、 其処で仲間が絶望を感じているかもしれないから―、
はそう言い銃を背負いなおして「取り敢えずは、」と口を開く。
「炭坑を少しだけ調べさせて貰う。氷付けの幻獣に少々用があるのでな」
「好きにすればいい、魔物には気をつけるのだぞ。
・・・それと、ナルシェの炭坑には雪男が住み着いていると耳にした事がある・・・それにも気を払っておいてくれ。
・・・船なら、海岸沿いの所に着けさせておく、出発するのなら其処に居る者に声をかけてくれ」
「分かった、すまないな」
はそう言い微笑み、片手を差し出した。
レオも笑みを浮かべ、彼女の手をしっかりと握る。
「また、会おう」
硬い握手を交わし、は家のドアを開けて外へと足を踏み出した―。
再び、ナルシェから始まるんだな。
そう思いながらサクサクと雪道を進む。
ゴーグルが壊れてしまったので、かけられないので直に頬等に当たる冷たい雪を感じながら、はほうっと息を吐いた。
―炭坑に入るまでに数回魔物と戦ったが大した強さでは無かったので一人でも難なく辿り着けた。
は炭坑を進みながら、以前氷付けの幻獣があった崖の上を目指す。
覚醒しているかもしれない、という期待を抱いて―。
暫く進んで行くと、其処へ辿り着いた。
は氷付けの幻獣の前に立ち、じ、と其れを見詰めた。
「・・・覚醒して、無いのか・・・?」
『そのようですね』
脳裏に響く、声。
はケツァクウァトルの声を聞き、溜め息を一つ落として来た道を戻るために身体を反転させた。
微量に魔力が放出しているのを感じるのに、
そう思いながらサクサク、と音を立てて来た道を戻る。
(・・・覚醒まで、未だ暫くかかるという事か?)
それならば、また後で来れば良い。
他の幻獣の情報が歩き回っている内に入ってくるかもしれない。
其の時は其の時で他の幻獣に自分とケツァクウァトルの分離についての情報を聞けば良い。
はそう思い、来た時とは違う、別の道を通った。
穴から下に下りたのだ。
―最初、ティナと会ってナルシェのガードから逃げている時に空いて落ちた穴から。
は難なく着地をし、辺りを見渡した。
着地した反対側の方の道へ行けば、隠し通路を通れて近道になるはずだ。
そう思い歩を進めようとした其の時―、
「!!」
ズガンッ!!!
背後から獣の様な唸り声を聞いて振り返った瞬間、大きな真っ白な腕が振り下ろされた。
は瞬時にバックステップを踏み其れを避ける。
先程までが立っていた地面は、大きな毛深い腕がめり込んでいた―。
は背から銃を下ろし、構える。
砂埃が舞う中、姿を現したのは―――、
「ウガアアア!」
「!?」
大きな身体を持ち、真っ白な体毛に覆われているモノだった。
獣の様な声を上げ、厚い胸板をドンドンと手で叩いている。
しっかりと二つの足で立っている其れは、何処からどう見ても―――、
「・・・・・・ゆき、男・・・?」
―だった。
瞳を大きくして思わず唖然として其れを見上げるは、初めて見る雪男に戸惑いを感じていた。
これがレオの言っていた・・・、とが思っていると雪男は再び腕を振り上げてきた。
は舌打ちを一つしてまた飛んで其れを避けた。
相手にすると厄介そうだ、はそう思い、威嚇の為に銃を撃った。
雪男は銃が苦手なのか、大きな身体をビクつかせて一歩後退した。
其の隙にが走って逃げようとするが、直ぐに体制を取り直した雪男の大きな手に腕を掴まれてしまった。
は動じず、微量の電流を流し素早く雪男から離れ、構える。
雪男は自分を逃がす気は無いみたいだ。
は其れを理解すると本格的に構えをし、銃口を雪男に向けた。
一定の距離を保ち、攻制に出ようとしたと雪男の間に、白は白でも小さい白が割り込んできた。
「待つクポー!」
「え?」
バァン!!!
「キャー!」
時、既に遅し。
思い切りは引き金を引いてしまい、銃弾は目の前に現れた小さい白いものを掠って行った。
其れはへたり、と余りの驚きに地面に座り込んでしまったが直ぐに起き上がってに近付いて来た。
其れは―――、
「酷いクポ!待つって言ったクポ!!」
「モグ・・・!」
は瞳を大きく開いて自分の足元でピョコピョコと動いているモーグリのモグを見下ろした。
モグは怒っている様子だったが、直ぐに「でも、」と言いピョン、とジャンプしてに抱きついた。
「良かったクポーーーーーーー!!」
「なっ・・・!?」
「生きてて良かったクポ!、皆、死んじゃったかと思ってたクポーー!」
良かったクポ、良かったクポ。と繰り返して言うモグには笑みを浮かべ、優しくモグの頭を撫でた。
するとモグは顔を上げ、の顔を真っ直ぐに見た。
「僕、僕、が苦しんでるのに何にも出来なかったクポ!これから僕だってを助けるクポ!」
「モグ・・・、」
「僕は最初に助けられたクポ。お礼だってしたいクポ!」
モグは飛空挺の守り等の役が多かったからな、と思いながらはモグの頭を撫で続けた。
「頼りにしている、モグ」と言いが微笑むとモグも嬉しそうに笑った。
―其の時、自分達に影が差したのをは感じ顔を上げた。
すると其処にはすっかり忘れていたが、雪男が立っていた。
「あ・・・!」
しまった! とは思ったが、時、既に遅し。
雪男の手が伸ばされてきた―――、
――が、其れは途中で止まった。
身体を硬くしていたは何だと思い小首を傾げ、雪男を見上げる。
すると雪男は膝を着いてと目線をあわせ、顔を覗き込んできた。
思わず近付いて来た大きな顔から逃げる様に仰け反る。
ビクついているに気付いたモグが、「大丈夫クポ」と言う。
「コイツはウーマロクポ! おれはこいつの親分クポ!」
おれ? こいつ? 親分?
また瞳を丸くするの前に、ウーマロというらしい雪男がずい、と握り拳を差し出してきた。
何だと思って其れを見ていると、光られた掌の中には、魔石があった。
「・・・! 魔石じゃないか!」
驚きの為大きな声を上げてしまう。
は直後に自分の失態に慌てたが、モグとウーマロは気にした様子は無く魔石を見ていた。
『・・・ミドガルズオルム、ですね』
「ミドガルズオルム・・・・・・、」
はウーマロから受け取った魔石をモグに渡す。
モグは魔石を持ち、「これでを守るクポ!」と言い笑った。
喜んで飛び跳ねるモグに、が和んでいると目の前から唸り声の様な物が聞こえた。
「ウー・・・ウーマロだウー」
あ、喋った。
驚きの為思わず口に出しそうになったが何とか耐えては差し出された大きな手を両手で優しく包んだ。
そして自分も「私はだ」と自己紹介をした。
「親分の命令・・・おれ・・・あんたたち仲間! よ ろ し く !」
ニィ、と真っ白な歯を見せて笑みを浮かべるウーマロに、は少々乾いた笑みを浮かべた。
先ず、親分って何だ、とか何だ其の「よ ろ し く !」は、と思ったりしたが気にしない事にした、
恐らく深く考えるとキリが無い・・・。
はそう思いほう、と一息を吐き、笑みを浮かべて「よろしく、ウーマロ」と言った。
綺麗なの微笑みをウーマロは暫く、じ、と見ていたが直ぐにまた彼も笑みを浮かべ、の手を上下にブンブンと振った(少し痛いby)
嬉しそうなウーマロを見、「良かったクポ!の事気に入ったみたいだクポ!」とにモグは言い、次にウーマロを見てまた口を開いた。
「ウーマロ!頑張れクポ!!」
ウーマロは其れに答える様に大きく頷きながら唸り声を上げた。
最初のキャラ加入はまさかのウーマロ。 何で最初ウーマロ(爆)
いやいや、モグだけの予定だったんですがね!二人じゃ心細いですしね!!