「・・・後で・・・、話したい事があるんだ。 たくさん、」
「・・・・・・うん、私も、お前に言いたい事がたくさん、ある」
そうお互いに言い合い、瞳を合わせた。
お互い思っている事は同じ、唯、伝えられないだけ、
―再び会ったら―、
そう思いながら、重力に従い、地へ落ちていった―――。
「あ、」
ぽつぽつ、と空から降ってきた物は、
「雨だ」
手を前に出し本当に降っているかどうかを確認した後、はモグを見下ろして口を開いた。
「雨宿りしよう、強くなりそうだ」
獣ヶ原の洞窟はまだまだ遠い。
雨に濡れて行くよりも、何処かで雨宿りして行った方が良いのは当然の考えだった。
モグも同じ事を思ったのか、の言葉に頷くと辺りを見渡し始めた。
雨宿り出来そうな場所を探す為、も辺りを見渡す。
取り敢えず、森があったので其処へ向かい木の下で雨宿りをする事にした。
葉が大きく、雨を防ぐには都合の良い大樹にとモグは寄りかかった。
二人が黙る中、強くなった雨が葉を打つ音だけが響いた―。
「、」
そんな中、モグがを呼び、彼女を見上げた。
は優しくモグを見返し、「ん?」と小首を傾げて彼を見た。
モグはそんなの手に己の手を伸ばし、きゅ、と握った。
「・・・温かいクポ、」
「モグ、寒いのか?」
はモグにそう問うが、モグは何も返さなかった。
取り敢えず寒がっているのだろうと解釈したは木の根元に腰を下ろし、マントを開いてモグに手を伸ばした。
「ほら、」と言ってそうするとモグは嬉しそうにに飛び付いて来た。
飛び付いて来たモグをマントで包み、人肌で温める。
自分も温まるし、一石二鳥だな、とが思っているとモグが顔を上げて来た。
「、僕は恩返しがしたいクポ」
「恩返し?」
何の?とが思い首を傾げているとモグは「ナルシェで助けてもらったクポ」と言った。
其の言葉にはナルシェで(自称)コソ泥一匹狼からモグを助けた事があった事を思い出した。
「ああ、」と言いモグを見、は苦笑した。
「私が恩返ししただけじゃないか、恩返しに恩返しをする必要は無いよ」
私もナルシェで助けてもらったんだからな、と言いは笑った。
が、モグは首をブ振り、の手を柔らかな手で握った。
「それでも、僕はに助けてもらったクポ。あの時助けてもらわなかったら僕は今頃崖の底クポ」
「・・・でも、」
「僕はとロックに恩返しがしたいクポ」
真っ直ぐにモグに見上げられ、は瞳を丸くした。
が、直ぐに彼の言いたい事を理解し、微笑んだ。
そして、モグの頭に優しく手を乗せて撫でた。
「・・・モグは良い子だな」
「クポッ!? い、良い子だなんて・・・初めて言われたクポー!」
嬉しそうに、そして恥ずかしそうに言うモグには笑みを深くして頭を撫で続けた。
モグは気持ち良さそうににそうして貰っていたが、気付いたらすやすやと寝息を立てていた。
はモグを抱えなおして、空を仰いだ。
ザァザァと振り続ける雨。
其れを見ながらは彼の事を考えた。
ロックが無事なのか、分からない事だけれども、は信じていた。
先程別れたガウに言った言葉には嘘偽りは無い。
唯、自分の思っている事を言っただけ。
「あいつも、今雨に降られているのだろうか、」
ああ、あいたいな、
ザァザァと雨が降る音が聞こえた。
洞窟内だというのに、嫌に響く雨音だな、と思いながら荷物が沢山入った袋を抱えなおす。
結構歩いて、漸く外へ出てみると、やはり雨が降っていた。
土砂降りの雨を前にして、外を歩く気は失せる物。
そう思い荷物を置いて腰を下ろした。
する事も無いので、唯、呆っとしながら降り続ける雨を見ていた。
「・・・此処も、ハズレだったな・・・」
一体何処にあるんだよ、そう一人で愚痴零しながら無意識の内に腕に巻かれた真っ赤なリボンに触れた。
その手触りを感じながら、深い息を吐く。
「・・・早く、ケリを付けないとな」
自分の為にも、彼女の為にも、
そう思い拳を握り、空を見上げた。
灰色の空を見、心が何処か沈む、雨のせいもあるだろう、
こういう時、何だか無性に彼女に会いたくなる、
しかし彼女が何処に居るのか、そもそも無事なのか、分からなかった。
そういう時は瞳を閉じて、瞼の裏で彼女を思い描く―、
それが、今の自分の唯一の救い。
話したいことがある、勿論、彼女の話も聞きたい、
何より、
「・・・に会いたい・・・、」
呟かれた声は、雨音に混ざり、落ちた―。
洞窟行かなかった!(ハッ!)