届け、届け、貴方の下へ、
この風に乗って、届け――。
「You do not understand my feelings. I think of you so much. ・・・・・・あ、」
サァ、と雨が止んだのを見てはモグの頭をポンと叩いた。
其れに瞳を閉じての歌を聴いていたモグがぱちり、と瞳を開けて彼女を見上げる。
「クポー? もう終わりクポ?」
「あぁ。雨が止んだからな」
がそう言い銃を背に背負うとモグも立ち上がって木に立て掛けて置いた槍を手に取り、荷物も持った。
残りの荷物はが持ち、立ち上がる。
歩き出すの後を、モグが雨上がりでぬかるんだ地面を注意しながら追い、彼女を見上げて口を開いた。
「さっきの歌はの故郷の歌クポ?」
「・・・否、違うな。 立ち寄った街での歌、だった気がする。
・・・何時の間にか覚えてしまっていたんだ、良い歌だからかもな」
少しだけ照れ臭そうに頬をかきながら言うにモグは笑い、「きっとそうクポ」と言った。
私の気持ちを貴方は理解していない、私はこんなにも貴方を思っているのに、
は先程自分が口ずさんでいた歌の歌詞を思い出し、空を仰いだ。
(愛の歌は、どうしてこんなにも綺麗で悲しいのばかりなのだろう・・・)
そう思い、歩を進めた―――。
途中、休み休み進んだので少々遅れたが達はやっと獣ヶ原の洞窟へ辿り着いた。
ガウの言っていた所は此処か、と思いつつは洞窟の入り口の穴を潜る。
すると、足元に何やら暖かい物が擦り寄ってきた。
最初こそ瞳を丸くして驚いただったが、くぅん、と鳴く声に聞き覚えがあり、驚きとは違う方向で瞳を丸くした。
手を伸ばすと、其処にあったのは柔らかな毛並み。
其れを確認した途端、は笑みを浮かべしゃがみ込んだ。
「インターセプター!! お前か!」
嬉々とした様子ではそう言い安堵の息を吐いた。
生きていた―。
それなら、彼も。
その事に関しても安堵の息を吐いて、インターセプターを抱き上げようと手を伸ばしかけ、はハッとした。
ツンとした臭いが、鼻に付いたからだ。
眉を潜め、は口を開く。
「・・・鉄の臭い・・・、インターセプター、怪我をしているのか?」
がそう言いつつインターセプターの身体を確かめる。
すると、背や足に傷があった。
深くは無いが、血は流れ続けている。
は直ぐにケアルをインターセプターにかけ、傷を癒した。
そして立ち上がりインターセプターに声をかける。
「・・・お前のご主人様は何処だ?」
「シャドウクポ! そういえば居ないクポ・・・」
モグがそう言い辺りを見渡す。
インターセプターは一声、ワン、と吼えると洞窟の奥へ走り始めた。
インターセプターの意図を理解したとモグは直ぐに後を追う為走り出した。
(・・・シャドウ・・・、)
記憶の中での彼は怪我をしてばかりだ、
はそう思いながらインターセプターの後を追った。
奥の方まで進むと、インターセプターがスピードを速めた。
そして奥の方で倒れている男に近付き、擦り寄る様に鼻先を近づけた。
は直ぐに走りより、膝を追って彼をゆっくりと抱き起こした。
其処に居たのはやはりシャドウだった。
は彼が生きていた事に安堵の息を吐いたが、辺りに何かの気配を感じ表情を戻した。
そして気を失っている彼の頬を叩く。
「シャドウ、起きろ・・・、 シャドウ!」
「・・・う、」
「・・・シャドウ!」
微かな声が聞こえ、は彼が意識がある事を確認してから傷口に手を翳した。
其処は彼の黒衣を嫌な赤色に染まっていた―。
ケアルをかけると少しはマシになったのか、彼が見上げてくる。
「・・・・・・、か・・・」
「・・・ああ、私だ。もう少し待って、今治すから」
がそう言い再度魔法の為集中しようとした時、力ない手がの腕を掴んだ。
そして彼は弱弱しい声でこう言う。
「・・・気をつけろ、未だ、居る・・・」
「居る・・・?」
シャドウの言葉には先程自分が感じた気配の事を思い出す。
はシャドウの傷を癒しつつ、後ろに居るモグに目配せをする。
モグは頷きを一つ返して、傷を完全に癒したインターセプターと共に辺りの気配を窺った。
「・・・お前がこんな深手を負わされるほどだ、余程凶悪な敵が居るんだな」
「・・・・・・」
がそう呟き最後にケアルラをシャドウにかけると彼女はゆっくりとシャドウを抱き起こした。
そして肩に腕をかけさせ、壁に寄りかからせる。
「・・・どうせ戦闘になるんだ。お前は此処で見ていろ」
はそう言い背から銃を降ろしてシャドウに念のためシェルをかけてからモグ達に近付く。
「・・・何か、居るクポ・・・」
「あぁ・・・」
薄暗い洞窟の中、此方を窺う気配が伝わってくる。
はある一方に強い殺気を感じ、すぐさま其処へ銃口を向け、発砲した。
洞窟内に銃声が響くと同時に、獣の唸り声が聞こえた。
達が其処へ注意を向けていると、大きな巨体が現れた。
見たところベヒーモスだが、何処か格が違いそうだ。
「・・・キングベヒーモスか・・・!」
「キングクポ!? キングの類はもう居ないって聞いてたクポ・・・!」
「さぁ、生き残りか地下から出てきたとかそんなんじゃないのか?」
が銃口を再度キングベヒーモスへ向けつつそう言う。
そして再度発砲しようとした其の時――、
インターセプターが、ギャウ!と声を上げてモグとを突き飛ばした。
突然の事で驚いてモグは倒れてしまったが、受身を取ったが何事かと思い自分らの前で唸り声を上げているインターセプターを見やる。
先程まで自分達が居た所は深く抉られていた。
地に突き刺さっているのは、大きな腕。
もう一体のキングベヒーモスの腕だった。
だが腕の色が違った、キングベヒーモスの腕は見るからに腐敗していて、アンデッド化しているのが分かった。
それなら、とは思い後ろに居るモグを呼ぶ。
「二体は厄介だが、片方はアンデッドだ。私が即死させてやる」
「クポ!じゃあにアンデッドの方は任せたクポ!!」
「・・・インターセプターと、もう片方を頼む。私も片付けたら応戦する」
がそう言うとモグは「分かったクポ!」と言い槍を構え、インターセプターはワンと一声鳴いた。
キングヘビーモスに向かった二匹を見て、は小銃でアンデッドの方の意識を此方に向けさせ、隙をついてケアルガを放つ。
アンデッドの魔物は回復魔法に弱い。アイテムもそうだが、ポーションやらを使っている余裕は無かった。
出来れば魔列車の時の様にレイズを放ちたいのだが、詠唱に集中のいる魔法も使える余裕が無かった。
ケアルガを食らい苦しむアンデッドキングヘビーモスには好機、と思い意識を集中させる。
―が、それは直ぐに中断させられた。
意外にも早く回復したアンデッドキングヘビーモスが拳を繰り出して来たのだ。
それを避けたは舌打ちを一つし、足技を食らわした。
だが当然、アンデッドキングベヒーモスは其れに怯まず手を突き出してきた。
魔法が来る事を予想したはバックステップを踏み、意識を集中させた。
下手したらやられてしまうが、此処はこうするしかない、
はそう思いレイズの詠唱に入った。
パリ、と身体から電流が放たれるが気にしている余裕は無い。
高位の魔法を使おうとすると、大抵こうなり内に居るケツァクウァトルが魔力のバランスを失い微かに暴走させる。
は瞳をきつく閉じつつ、心の中で内に居る幻獣に言葉を紡いだ。
(ケツァクウァトル・・・すまない・・・!少しだけ耐えてくれ・・・!)
『・・・、私は大丈夫・・・、』
頭の中で響いた優しい声を聞き、は微かに口の端を吊り上げ、魔力を開放した。
「レイズ!!」
彼女がそう言い、腕を振り上げたと同時にアンデッドベヒーモスも同時にメテオを放ってきた――――。
メテオ怖い