「がうがうがうがう!!」


ガウが魔物に威嚇の意を込めて吼えると、怯んだ魔物はガウから離れ、逃げ出そうとする。
其処をウーマロが体当たりをして仕留める。

そんな二人の様子を見つつもも銃を構えていた。

モグが槍を突き刺し、怯ませた魔物に止めの一発を放つ。

放たれた弾丸は真っ直ぐに魔物に当たり、見事に魔物を倒した。


辺りに魔物がもう居ないかと確認するの視界に喜んで飛び跳ねているガウと豪快に笑っているウーマロが視界に入った。
これは別れるのは当分後になりそうだ、とは思いつつ地に膝をついてある物を拾い集めた。

ガウとウーマロの修行に付き合いながらもはギルを集めていたのだ。
療養中のシャドウの為にも薬やら色々な物が必要だからだ。

思いの他彼の傷は深く、心身の疲労もあった為療養という形を取る事にしたのだ。
当然シャドウは嫌がったが其処はが無理矢理ベッドに沈めておいたらしい。
室内から聞こえてくるインターセプターの心配気な鳴き声にモグは不安を覚えたが、が平気と言うので部屋にはあまり近付かないでおいた。

シャドウの治療をした後、は決まって彼に回復魔法をかける。
其の方が治りが早いからだ。

そうこうしながらも、は次の目的地を如何するか、と考えていた。


未だに地形が安定していないらしい。


そんな情報もあるのでは未だに次の目的地は決められない儘だった。











そんな中、ある出来事が起こった。



村の住民の焦り声が聞こえる中、は目を覚ました。
何事かと思い部屋を出て、僅かな揺れに気付く。

揺れは次第に激しさを増し、家全体が揺れ始めた。
廊下で会ったモグに何事かを聞いてみるが、モグも「僕も今目が覚めたクポ。様子を見に行ってみるクポ!」と言ったので取り敢えず二人で外に出る事にした。


外へ出ると、もっと激しい揺れに襲われた。

村人は立っている事が出来ず、地に座り込んで困惑の表情を浮かべていた。


何だと思いが辺りを見渡していると、インターセプターがワンと吼えて駆け出した。
其れをは慌てて追い、インターセプターに追いつく。

「如何した、インターセプター」と言おうとしただったが、口を開いただけで其れは音として発せられる事は無かった。
瞳を大きく見開いて、は愕然とした。


「・・・な・・・!!」


道が、無かった。


サマサの村は世界崩壊後、島が動き獣ヶ原がある大陸とくっ付いてしまっていた。
代わりの様に港町ニケアが離れて行き、やっと落ち着いてきたと思っていたのに・・・、


「・・・まさか・・・、この、揺れは・・・!!」


はある考えに思い至り、慌てて辺りを見渡した。
すると結構離れてしまった、西の方角に獣ヶ原が見えた。

この揺れと切れた道から想像するに―――、


「島が・・・動いている・・・?」


愕然としながら、はポツリと呟いた。

暫く激しい揺れの為に動けず、はインターセプターと其処に居たが、ある大陸に近付き、ハッとした。


「・・・あれは・・・まさか、モブリズか?」


モブリズも獣ヶ原のあった大陸から消えていたが、やはり離れていたのか。
はそう思い崩壊しているモブリズの村を見た。

結構近い位置にある様に見えるが、やはり遠いものだ。
がそう思いモブリズの方向を見ていると、海を挟んで向こう側で誰かが走ってくるのに気付く。

恐らく村の生き残りが行き成りの地震と荒れた海に気付き、様子を見に来たのだろう。

はそう思いながら未だに酷く揺れる地についた手をぎゅ、と握った。



―其の時、



ぶわり、と真正面から潮風が吹いた。


行き成りの強風にが思わず顔を腕で庇った時、潮風に乗って声が聞こえた。


「・・・!!  !! ・・・・!!」

「・・・え?」


微かに聞こえてくる、声。

この声は―――、


はハッとして先程人影が見えた方へと視線を向けた。
一体誰かまでは上手く確認出来ないが、聞き覚えのある声には瞳を大きく見開いて其方を凝視する。


「―――!! ・・・・・・!!」

「っ!!」


は誰が声を潮風に乗せているのかを理解し、堪らなくなって立ち上がって自分も声を張り上げた。

丁度真横に大陸同士が並んだ時、声はハッキリと届いた。


!! でしょう!?」

「ティナ!!」


間違い無かった。

向こうのモブリズ側の大陸に居るのは、ティナだった。

過ぎてしまう大陸に少しでも近付く為にはギリギリまで進んで彼女の名を呼んだ。


「ティナ!!」

!!」


お互いに、お互いが解っているのに、手を伸ばしても届かない。
それに歯痒さを覚え、は唇を噛んで聞こえないだろうがティナに向けて思い切り叫んだ。


「会いに行くから!!」


慣れない事で、喉が痛みを訴えるが構っている暇は無い。
は痛む喉を気にせず、再度彼女に訴える様に叫ぶ。


「必ず・・・必ず行くから!!」


―けほり、と喉の痛みから咳をする。


けれども、そんな場合では無い、


はそう思い精一杯の笑みをティナに向けた。


「会いに・・・行くから・・・!」


最後にそう呟くように言った言葉を最後に、ティナの姿が見えなくなるまで見送った。

は地の上へ力無くへたり込んで、呼吸を整えた。


(・・・ティナ、だった、確かに、)


自分の心の中でそう言い聞かせる様に繰り返す。

そう、あれは確かにティナだった。

そう確信した途端、心の奥がほわり、と温かくなる。


(生きてた・・・!)


やっぱり、無事だった!

は嬉しさを噛み締めながら、ぎゅ、と拳を握った。




















































ティナがモブリズに居る事を話しながら、はシャドウの看病をしていた。

彼の背に手を翳し、回復魔法をかける。

其の後に薬を塗り、包帯を巻く。

その作業の間黙っていたシャドウが、横になってから口を開いた。


「・・・で、お前はどうしたいんだ」

「当然、お前が完治した後にモグと私とお前の三人で向かう」

「決定事項か」

「お前が着いて来てくれると言ったんだ」


がそう言い微笑むとシャドウは、ふい、と顔を背けた。
そんなシャドウの行動にはくすりと笑みを零し、椅子から立ち上がる。
「夕食を用意してくる、それとモグ達にも話をしてくる」と言いはシャドウの部屋から出て行った。

は階段を下りながらある事を考えていた。


(大方、自分を置いて直ぐにでも会いに言っても良い、とアイツは言いたかったのだろうが・・・、)


出来る訳無いだろう。とは思い台所へ向かう。
元々料理は得意であるし好きな事でもあるので、は軽い動作で食事を作り始めた。


(確かに、ティナには早く会いたいが・・・、)


お前を放っておける事が出来なくなってしまったんだよ、今の私は。

そう思いある事を思い出して悲しげに瞳を細め、笑みを零す。


(そう、何処かのお人好しのせいで、な・・・)


はそう思いある人物を脳裏に思い浮かべながら調理の手を進めた。

其の時、足元に温かいものが擦り寄ってきた。
インターセプターだ。

は其方に顔を向けると、「どうした?」と優しい声で問うた。
インターセプターは、クゥ、と短く一声鳴くと少し離れた所で横になった。
そして、何をする訳でも無く、を唯、じ、と見詰めているのだ。

そんなインターセプターには最初こそ小首を傾げていたが直ぐにどのような理由があってこの聡明な犬がこうしているのかを理解し、くすりと笑った。


「お前のご主人様はも、十分なお人好しだな」


はそう言い微笑んで出来上がったスープを皿によそった。




シャドウは良いお父さんみたいな存在(笑)