「ウー・・・」
唸り声と共に差し出されたのは、綺麗な髪飾りだった。
突然のウーマロの行動に小首を傾げるだけのだったが、金色の輝きを放つ其れに見覚えがある気がしては更に首を傾げる。
「・・・これ、どっかで・・・?」
「クポ!これって金の髪飾りクポ!」
モグがウーマロの肩に座りながら彼の手の中にある輝く物を見てそう言う。
其の言葉にはある事を思い出して「あ!」と声を上げた。
「確か・・・ナルシェで、変な狼が・・・」
が記憶を掘り返しつつそう呟くとモグは「そうクポ!」と言いウーマロの肩から下りた。
更に記憶を掘り返しながら、は顎に手を当てつつ言葉を紡ぐ。
「・・・確か、モグが仲間になった後、ロックがあの狼からさり気無くぶんどってなかったか?」
其れと同じ物だろう?とが言うとモグも「そうクポ!」と同意した。
これを何処で?とが思いウーマロを見上げると彼はシニカルに笑い、口を開いた。
「ウー・・・洞窟行って取ってきた・・・」
「洞窟?獣ヶ原のか?」
がそう問いかけると彼は頷きを返してきた。
はウーマロがアクセサリー等、洞窟に落ちている物を持ち帰る事が意外だと思いつつ「へぇ、」と返した。
確か、彫刻が好きだって事は聞いていたが・・・、
何でアクセサリーを? はそう思いながらまたウーマロに問いかけようとして顔を上げた途端、目の前に彼の大きな掌が迫ってきたので驚いて少しだけ背を仰け反らせる。
最初こそ驚いたが、目の前にある彼の掌の内に金の髪飾りがあるのを見て「あ、」と声を上げる。
もしかして・・・、
「・・・くれる、の?」
差し出された金の髪飾り。
が思い当たった事を言うと、ウーマロは正解だと言わんばかりに笑い、頷いた。
そして大きく無骨な手が、酷く優しい動作での髪に触れた。
チャリ、と金属の音がしたかと思った後、ウーマロの手は離れて行った。
レイナは少しだけ首を回し、二人に見せるようにしつつ微笑んで「似合うか?」と問うた。
それにウーマロとモグはとても嬉しそうに微笑み、パチパチと手を叩いた。
「、似合ってるクポ!」
「ウー!」
「ありがとう」
はニコリ、と微笑んで二人に礼を言う。
そしてウーマロにも金の髪飾りに関しての礼を述べる。
「でも、良いのか? 売ればお金になるぞ」
「ウー・・・。 、最近元気無かった・・・おれ、心配だった」
「・・・え?」
は金色の瞳を丸くさせ、ウーマロを見上げた。
ウーマロはを真っ直ぐに見詰めながら、言葉を紡ぐ。
「これ、洞窟の中で光ってた。 おれ、、思い出した」
ウーマロはの髪と瞳を見つつそう言い、ニッと口の端を吊り上げて笑った。
そして「元気出たか?」と問うて来た。
彼の優しさを感じ、は一度髪飾りに触れ、また微笑んでウーマロを見上げた。
「優しいんだな、お前は。 ・・・ありがとう、すごく、嬉しい」
微笑んで言うにウーマロは豪快に笑い、「それなら良い!」と言った。
そんなウーマロの横のモグも「良かったクポ」と言い笑っている。
表には出さない様にしていたのだが、気付かれてしまったか。とは思う。
ロックの事や、ティナの事。
そして他の仲間の事、魔大陸の事。色々な事が沢山頭の中でグルグルと回って、は気分が落ち気味だった。
大丈夫だ、信じていると口では言っているが、やはり不安な物は不安だった。
でも、とは思いゆっくりと瞳を伏せる。
(・・・大丈夫、)
彼らの優しさに、酷く癒される―。
はそう思い、吹く風を心地よく感じながら瞳を閉じた。
風に乗り、金の髪飾りがシャラン、と音を奏でた。
それから数日後、シャドウの怪我の具合も大分良くなって来たので達は出発をする事にした。
ガウとウーマロは獣ヶ原周辺で修行をするとの事で、彼らとは別行動を取る事になった。
はモグとシャドウと共に、ティナの居るであろうモブリズを目指す為にレオ将軍の好意から借りている船へと乗り込んだ。
(この船もあまり長く借りている訳には行かないな・・・)
ナルシェは今や孤島となっている。
貴重な船を、唯でさえ少ない船を、貸してくれたのだ、彼は。
他の移動手段も考えなければ、とは思いつつ、海を見詰めた。
「・・・飛空挺・・・否、セッツァーが居れば、良かったのにな」
はそう呟き、動き出す船内で揺れを感じていた。
まさかのウーマロ(二回目)
次はモブリズへ向かいます、再会です。