「っ!!」
セリスは再度の名を呼ぶと小走りにに近付いて真正面からに抱きついた。
―否、この場合は抱き締めた、という方が正しいかもしれない。
・・・何故なら―、
「・・・セ、セリス・・・苦しい、かもしれないぞ、これは・・・!」
「ばか!!苦しくしてるのよ!!」
く、苦しい・・・!と呻くと馬鹿馬鹿言いながら強く、思い切り抱き締めているセリス。
そんな二人を見ていたマッシュはハハッ、と笑い二人に近付く。
近付いてくるマッシュに気付いたは震える片手を彼に伸ばして助けを求める。
どうやら相当苦しいらしい。顔を赤くさせているにマッシュはまた笑みを浮かべるとの手をやんわりと大きな手で包んだ。
「久しぶりだなー、!」
「い、今はそれより・・・助けろ・・・!」
「まあいいじゃないか。セリス、お前の事凄く心配してたんだ」
握っていた手、如何して離してしまったのかしら・・・!
悲痛な表情でそう言ったセリスの姿を思い浮かべながらマッシュはセリスの腕の中に居るを見つつ言う。
思い返せば、本当に久々だ。
まともに最後に会って話したのは、ベクタでの飛空挺修理の時以来だ。とマッシュは思い返した。
あの時はを肩車しろとかガウが言い出してちょっと大変だったなーとのほほんと思い返しているマッシュの手をぎゅ、との手が抓った。
当然全然痛くなどなかったが其れに反応して彼女を見やる、と。
「・・・好い加減・・・助けろ・・・!!」
窒息寸前だった。
取り合えずセリスからを解放してやるとは「助かった・・・」と言い真っ赤になった顔を夜風にあてて、気持ち良さそうに瞳を閉じた。
座り込んでいるとは対照的にセリスは腰に手を当ててを見下ろしていた。
「・・・!私、本当に心配してたのよ!」
「・・・あぁ、あの時・・・」
は呼吸を整えつつ世界が崩壊した時の事を思い返した。
セリスを助けようとしたら一緒に落ちたのだ。
其処に裁きの光が狙ってきたので咄嗟にセリスを突き飛ばして彼女を助けたんだった。
がそう思い返しているとガッ!と突然両肩をセリスに捕まれた。
ぼんやりしていた為に酷く驚いたは瞳を丸くしてセリスを見上げた。
両肩に手を置いているセリスは眉を潜め、「ほんとに!!」と言うとと同じように甲板にへたりと座り込んだ。
俯いてしまったセリスの表情は伺えなかったが、ポツリと紡がれた言葉が彼女の今の感情の全てを表していた。
「・・・また会えて良かった・・・」
「・・・セリス・・・、」
肩に触れている手が震えている―。
はそんなセリスの手に優しく触れ、彼女の肩に頭を預けた。
「・・・無茶し過ぎなのよ・・・貴女は・・・、もっと私たちに力を貸させてよ・・・!」
「・・・うん、ごめんね、」
思えばセリスには心配かけてばかりだ、とは思い返していた。
オペラのセッツァー相手の囮の件もゾゾでの出来事も、
魔導研究所でもセリスもかなりの無茶をしたが自分も結構無茶してしまった。
そしてサマサでは皆を助ける為、自分一人が犠牲になる道を選んだ。
思い返すとほんと、心配かけすぎだな。とは思いセリスの頭を優しく撫でる。
そして、マッシュに視線を送る。
「お前にも心配をかけたな・・・」
そう言うとマッシュは苦笑だけを返してきた。
そんなマッシュには「さて」と言い気になっていた事を問いかける。
「ところで何故盗賊の船なんかに乗っているんだ?」
「兄貴を追ってきたんだよ」
が小首を傾げて問いかけるとマッシュはさらりとそう答えた。
ばれてるし、まぁ実の弟にはそりゃあばれるか。とは何処か遠い目をしてそう思ったがあえて口には出さないでおいた。
「ああ・・・、あの自称ジェフね」
が溜め息混じりにそう言うと離れたセリスが頷く。
「私たち彼にエドガーでしょって聞いたんだけどのらりくらりとかわすのよ!取り合えずエドガーな事は間違いなしだから追ってきたのよ」
「レディとか言うのは奴しか居ないしな」
が腕を組んで言うとセリスは大きく頷いた。
次にマッシュが「はどうして?」と問うて来たのでは彼を見上げて口を開く。
「ティナの案内で此処に来たらエドガーらしき男を見つけたのでな。
それに、フィガロ城が地中に埋まっているという噂も聞いたので救出にでも行こうかと」
「ティナ? 、貴女モブリズに行ったの?」
セリスの問いかけに頷くと、彼女とマッシュは複雑そうな表情をした。
そんな二人を見て、は瞳をゆるりと伏せて溜め息交じりにこう言った。
「ティナに魔力があろうがなかろうが関係無いだろう。
ティナは今あの村でやるべき事だってあるんだ。邪魔は出来ないし同情の意を送る事は良しとされる事では無い」
「・・・そうだな。今は兄貴の事だよな」
マッシュがそう言い船の前方を見やる。
セリスも頷き、彼に習って其方を見やる。
「取り合えず、明日にはサウスフィガロに着くだろう。
私たちは盗賊と一緒に行動して洞窟を抜けてフィガロ城に入るつもりだが・・・お前等はどうする?」
「私たちも手を貸すわよ。 最も、後からつけさせて頂くけどね」
それで良い。とは言い船首に向かい歩を進める。
「取り合えず隠れておけ。見張りはシャドウが請け負ってくれているから見つかる心配は無いだろうが万が一の事もあるからな」
「ええ、分かったわ。じゃあまた明日会いましょう」
そう言い「おやすみ」と言ってくる二人には笑みを返して「おやすみ、」と言った。
次回は地中のフィガロ城入り。