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「素敵な、お髭のおじさまがこの町にやってきたの。『ござる』がとってもチャーミング!マランダに行くと言ってたわ」
コーリンゲンでその話を聞いた時、ルナ達四人は直ぐにある人物が頭に浮かび、「あぁ・・・」と呟いた。
ファルコンに戻って、その話を残っていたセッツァー達に言ってルナは「どう考えても、」と言う。
「カイエンだよな」
「あぁ、カイエンだな」
「私は彼意外に『ござる』を使う人なんて知らないわ」
はい。全員一致で決定
、 『ござる』がとってもチャーミングな素敵なお髭のおじさまはカイエンだ。
マランダに行くという情報を頼りに取り合えずカイエンを追ってみる事にした。
ルナはそう考え操縦桿を握るセッツァーを見やる。
其れに彼は口の端を吊り上げ、「分かってるさ」と言う。
「マランダに行ってみるんだろ?」
「あぁ、頼む」
そう言いルナはマランダに向かい動く飛空挺・ファルコンの甲板から遥か下に見える大地を見下ろした。
丁度其の時、視界の端をあるものが横切り、小首を傾げる。
「何だ、今のは?」と言うルナの声に反応したのがシャドウ。
シャドウはルナの横に行き、彼女と同じように下を見下ろして未だ視界に十分に入る位置に居るものを見て口を開く。
「伝書鳩だな、手紙を持っている」
「何だか向かっている方向が同じな気がするクポ」
モグがそう言った後、エドガーが顎に手を当てつつ「案外目的地が一緒なのかもな」と言う。
そうかもな、とルナが思った時、ふわりと何かが舞って来た。
ルナは身体と腕を伸ばし、宙に舞ったそれを手に取って甲板に両足をつける。
「・・・花?」
カサリ、と音を立ててルナが手の内でそれを回す。
こんな枯れた大地に花が咲く訳・・・、とまで考えていると何時の間にか横に来ていてそれを覗き込んでいたエドガーが「ほう、」と感嘆の声を上げる。
「造花だ、良く出来ているな」
「あぁ、造花か」
そういえば触り心地も、と思いルナは前方を飛ぶ伝書鳩を見やる。
よく見ると手紙の他に花を持っていた。恐らく一本落としたのだろう。
「丁度目的地は一緒みたいだし、届けてあげるのも良いんじゃない?」
セリスが良く出来ている造花を見つつ言う。
それにルナは頷きを一つ返した。
伝書鳩はやはりマランダに舞い降りた。
そしてある一軒の家の前に下りると、ポストに花と手紙を入れた。
その音を聞きつけたのか、中から若い女性が出てきてポストの中から花と手紙を取り出す。
そして鳩に「待ってて、直ぐに返事を書くから」と言って家の中に入ろうとしたところで「あら」と言い飛空挺から下りて鳩を追ってきていたルナ達に気付く。
「やぁ」と言いキラリと輝くような笑顔を浮かべるエドガーを押しのけてルナが造花を手に前へ出る。
(女性に挨拶は礼儀とか言っていたが気にしない)
「一本落ちていたので」
そう言い造花を渡すと女性は「あら」と言い造花を受け取ると礼を述べる。
「どうもありがとう。そうだわ、ちょっと寄って行かない?」
女性はそう言いルナ達を家の中へと招き入れてくれた。
それにルナが頭を下げ、ドアを潜り中に入ると視界いっぱいに赤が広がった。
何だと思い辺りを見渡すと、部屋のあちこちに造花があった。
辺りを見渡して唖然としているルナに女性はクスリと笑みを零し、「凄いでしょ」と言う。
「見て。この部屋にある花はみんなモブリズにいる彼が送ってきてくれたの。 よーく見て、手作りの造花なのよ。
草木が花を咲かせなくなったこの時代に彼が作ってくれた花・・・、そしてこれが彼からの手紙・・・」
女性が微笑みながらそう言い自分が読み終わった手紙をルナへと渡す。
それを見つつ女性の言葉を聞いていたセリスとエドガーは後ろの方で小声で話す。
「ねぇ、モブリズって確かケフカの裁きの光で・・・」
「あぁ・・・。恐らく誰かが代わりに手紙を書いているのだろう」
二人の話を聞こえない振りをしてルナは手紙を読ませてもらう。
なになに?と思って文面と辿っていると後ろからセリスとエドガーも興味があるのか覗き込む。
手紙の内容はこうだ。
『愛するローラへ。
村の再建も、一区切りがついて・・・そろそろ国に帰ろうと思っていたところでござる・・・』
どうやら女性はローラというらしい。
・・・じゃなくて。
「・・・何か文が・・・・・・」
「カイエンっぽいな・・・」
ポツリ、とセリスとエドガーが呟く。
ルナも頷いて其れに同意し、女性が奥で今貰った造花を飾っているのを確認してから口を開く。
「でも、何処から手紙を送っているんだ?」
モブリズといえばティナが居た場所だ。
とてもカイエンが居るようには見えなかった(居たなら彼らを手伝っているだろうし、)
そこでルナはある考えを思いつき、手紙を書いているローラに近付く。
「ローラ、さん?」
そう名を呼ぶと彼女は少し驚いた様子で振り返る。
名前を呼ばれた事に関して驚いたのだろうが、直ぐに手紙の冒頭に書いてあった事を思い出したのか、笑顔で答える。
「何ですか?」
「邪魔をした、手紙と造花をありがとう」
「いいえ。 ・・・私の彼、すっごく良い人でしょう? 数年前帝国に徴兵されて、ずっと会えず終いで・・・。
でも、世界が崩壊してしまって、諦めかけていた時に彼からこの手紙が来たの、私の安否についても気にかけてくれてたのよ」
とても嬉しそうに、でも何処か寂しそうにローラは微笑んだ。
それはとても、綺麗な微笑み。
ルナはそれを見、微笑を返す。
「素敵な方なんだな、貴女の恋人は」
「えぇ。 ・・・貴女も恋しているんでしょ?目を見れば分かるわ」
ローラの突然の言葉にルナは瞳を丸くする。
何故?と視線で問いかけるとローラは手紙を書きながら「だって、」と言う。
「羨ましそうな目、してたわ。今。 貴女の彼は世界が崩壊してから会えていないのね、」
「・・・あぁ。 でも、生きているから、絶対。何時かは会える」
きゅ、と手を握って言うルナにローラは「素敵ね」と言うと手紙を書き終えたのか、丁寧に折って便箋に入れる。
そして鳩の足に括り付ける為の部分を念入りにチェックした後、ルナを見上げる。
ルナは彼女の澄んだ瞳に見詰められ、少しだけ身体を硬くしながら先程思いついた事を実行させる為、片手を差し出す。
「あまり長居するのもあれだろう・・・、その、ささやかな礼だが外の鳩に手紙を届けておこう」
帰るついでに、とルナが言うとローラは「じゃあ、お願いするわ」と言い手紙をルナに渡した。
ルナは其れを受け取り、ローラに別れと礼を告げると外へ出る。
そして外で待っていた鳩の足に手紙を括り付けた。
飛び立つ鳩を目で追いつつ、ルナ達は近くに停めてあった飛空挺へと乗り込む。
ルナ達が乗った後、飛空挺は空へ浮かび上がり、前を飛ぶ伝書鳩を追った。
「何処に向かってるんだ?あれ」
マッシュがそう言うと鳩を追う様に飛空挺を操作しているセッツァーは「さぁな」とだけ返した。
その近くで辺りを見渡していたモグが「あれって何クポ?」と言う。
その言葉に反応したルナとセリスが下を覗き込むと、オペラの会館が見えた。
と、いう事は。と思いルナは前方に見え始めた街を見る。
「あれはジドールか」
そうね、と言うセリス。
ジドールも素通りし、鳩は山間を潜って進んでいく。
目的地が段々予想出来てきた時、鳩は予想していた所へ入っていった。
其れを見、ルナは下りる準備をする。
それにマッシュが「俺も行く」と言いルナに近付く。
シャドウも無言で近付き、同行の意を表す。
「私も行くわ、男共にルナは任せられないもの」
腰に手を当てて言うセリスにルナは苦笑を返した。
相変わらず雨が降り続く街、ゾゾにルナ達は足を踏み入れる。
鳩は結構奥の方へと飛んでいったみたいだ。
取り合えず、また前のようにビルを飛んで移って、奥に進んでみるか。
そう思い歩を進めるルナの後ろから三人が着いて来る。
其の中でマッシュが「ルナ、」と彼女の名を呼ぶ。
「頼むからもう滑んないでくれよ?」
「
・・・お前、何時の事を言っているんだ・・・!
」
以前ビルからビルへ飛び移る際に滑って落ちかけたのをマッシュに助けられた事があった。
それを思い出し、ルナは羞恥の意味で頬を仄かに朱に染めた。
「エドガー如く寿命が縮むのよね、ほんと、気をつけてね」
「・・・分かっているさ」
ルナはセリスにそう返し、少しだけ乱暴に足を踏み出した。
「パブの看板があるビルを上って行くとゾゾ山へ通じる道があるぜ!
ゾゾ山の魔物は素早しっこいから、確実にダメージを与えられる方法を考えていくといいぜ。
スナ・・・、なんとかっていう・・・。まぁいいや。この錆取りがあればあそこのドアを開ける事ができるぜ。
千ギルで買うかい?」
よくこんなにぺらぺらと、とルナは思いながら財布から千ギルを出す。
鳩はどうやらゾゾ山の方へ行ったようなので(嘘吐きな男共に聞いた話)其処へ行こうかと考えて居た所にこの正直な男が現れたのだ。
正直な男はルナから千ギルを受け取ると「まいどっ」と言い錆取りをルナに手渡した。
「パブの看板があるビルを上るんだ、その奥のドアが錆ついてるからその
サビトレール
を使って開く様にすればいいさ」
ご丁寧に二回の説明をして去って行った正直な男。
ありがとうと言う前に、先ずサビトレールという安直過ぎる商品名に突っ込みたい。
そう思い、手の内にあるサビトレールを凝視してしまっていたルナだが、やはりそう思ったのは彼女だけではなかったようだ。
後ろに居るマッシュとセリス、そしてシャドウまでもがサビトレールを複雑な表情で凝視していた。
「・・・取り合えず、行こうか」
商品名はあれだが、きっと千ギルもしたのだ、錆は綺麗に取れるのだろう。
ルナはそう言いパブの看板があるビルへと向かった。
ローラが無駄にしゃしゃってしまった、何故。
サビトレールって、おい。的な突っ込みを入れた人は一体何人いらっしゃるのか・・・!