「なんだか、初めてね。こうしてと二人っきりで旅をするのは」
ティナはそう言い嬉しそうに笑った。
今とティナが居るのは船の上だ。
モブリズを出た二人は港町ニケアへ行き、ナルシェへ特別に向かって貰う事にしたのだ。
レオにも会っておきたいし、このままサマサに行くのも何だか気が引ける。
取り合えず、ナルシェへ行き船をまた借りるという事で収まったのだ。
それでナルシェへ向かう船の上で、ティナが潮風で舞う髪を押さえながらそう言った。
は舞う髪は其の侭にし、「そうだな」と返す。
甲板の脇の壁に寄り掛かって、ティナが「皆は元気?」と問うて来た。
それに頷き、は「まだリルムやストラゴス。・・・ロックには会えてないがな・・・」と言う。
そう言った後に、は「あ、」と短く声を漏らす。
いけない、これではティナに気を遣わせてしまう。
自分がロックの名を出すと皆が気まずそうにするのだ。
彼と離れて、近付いて、また離れて、やっと近付いた距離。
彼と想いを通じ合わせたのに、また離れてしまった二人。
それを哀れに思っているのか、皆の反応はとてもに気を遣うものだったのだ。
それを悪いと思っていながらも、ついロックの事を口に出してしまう。
そんな自分に自己嫌悪して、は瞳を細めた。
―が、
「大丈夫よ。 リルムやストラゴスはあんなに元気だったんだもの、今だって元気よ」
ティナは何時もと変わらない様子でそう言い、ニコリと微笑んだ。
「ロックもね・・・、」と言い、ティナはの横に立って海を見詰める。
「絶対無事よ。 だって、ロックはを守るって言ってたもの。
大切な人を、何が何でも、ね?」
ティナはそう言って綺麗に微笑んだ。
が思わずそれに見惚れていると、ティナは「それに、ね」と言っての金色を眩しそうに見詰めて、笑う。
「ロックは、沈んだ貴女を見ていたく無いと思うわ」
「・・・・・・ティナは、強くなったな」
クスリ、と笑みを浮かべて言うにティナが小首を傾げる。
「そう?」と言ってくるティナには苦笑して、伸びをして体を伸ばす。
「もう自分の意見を相手に示せるんだ、強くなったさ。
・・・もう私が傍に居なくても、大丈夫だったみたいだしな?」
モブリズで良いお母さんだったみたいじゃないか。
と、言ってくるにティナは少しだけ頬を朱に染め、「そんな事・・・」と呟く。
「謙遜するな」と言うに、ティナは少しだけ考えた後、口を開く。
「・・・確かに、強くなれたかもしれないわね。
でもそれは、ずっと傍にが居てくれたからだわ。が、ずっと私を支えてくれていたから・・・、
ありがとう、」
ティナが微笑んでそう言った時、丁度潮風が優しく彼女の髪をふわりと舞い上がらせた。
も笑みを浮かべ、「どういたしまして」と言って髪を押さえた―。
久々に訪れたナルシェ。
街の入り口に立っていたレオの部下に声をかけると彼は直ぐにレオの所へと案内してくれた。
久しぶりに会ったレオは温かく二人を迎え入れてくれた。
案内された部屋は既に暖炉に薪がくべてあり、冷えた肌をじんわりと刺激した。
椅子に腰を下ろしたレオが「、元気そうで何よりだ」と言う。
それには少しだけ笑んで、ティナを見た。
「お陰さまで、ティナとも会えたさ」
「そのようだな・・・。 モーグリはどうした?」
「モグは獣ヶ原でウーマロやガウと共に修行中だ」
肩を竦めてはそう言い、椅子に腰を降ろした。
その後に、未だ立ったままだったティナの腕を引っ張り座らせる。
そんな二人の様子を見たレオが、優しげに瞳を細めた。
「お前は、答を見つけたようだな」
レオにそう言われたティナは、以前彼と話した内容を思い出した。
のみは言葉の意味が分からず、小首を傾げていた。
そんなを二人は見、笑みを零した。
それに瞳を丸くしながらは「答って・・・何の?」と問うた。
「・・・愛、よ。 私は愛を見つける事が出来た・・・」
嬉しそうに微笑んで言うティナにも同じように笑みを浮かべ、頷く。
モブリズでティナはかけがえの無いものを見つけた。
それをレオも感じ取ったのだろう。
(しかしこの二人、意外と仲が良いのか?)等とは考えながら何となく腕を組む。
そんなに視線を移したレオが「そういえば、」と言う。
「お前たち、フェニックスの洞窟というのを知っているか?」
「・・・フェニックスの、洞窟・・・?」
レオの言葉を聞いたは小首を傾げて言葉を反復する。
頷きを一つ返した後、レオは「ナルシェの西の方に、家があってな」と言葉を続けた。
「其処に居るのは何処か可笑しな老人なんだが・・・、ある情報を頂いたのだ」
「情報って?」
ティナがそう問うと、レオは「お前たちの仲間に、トレジャーハンティングを得意とする者は居たな」と言ってきた。
それにとティナは大きく瞳を見開き、思わずレオを凝視する。
そんな二人、寧ろ、に優しげな瞳を向けたレオはゆっくりと頷き口を開いた。
「バンダナの男にフェニックスの洞窟の情報を提供したそうだ」
レオの言葉を聞いた瞬間、ティナが瞳に歓喜の色を映して直ぐに「・・・!」と言って嬉しそうに彼女を見た。
が、直ぐにティナの瞳は疑問を含んだ色を映し出し、丸くなった。
「・・・?」と、ティナは呼びかける。
は未だ瞳を大きく開いていて、膝の上で強く拳を握って、ゆっくりと首を下げた。
さらり、と金色の髪が重力に従って下がってくる。
俯いてしまったの肩に、ティナがそっと触れて「、」と優しい声で彼女に声をかける。
レオは立ち上がり、彼女の前にまで行くと膝を折って彼女の震えている手を握った。
それには少しだけ顔を上げ、ポツリと呟いた。
「・・・った、」
「ん?」
「・・・・・・良かった・・・。 未だ、レイチェルさんを諦めて無くって・・・」
は瞳を伏せて、そう言った。
そんなの言葉にティナは「え・・・?」と驚きの声を上げる。
は「そうか、ティナは知らないのか」と言って瞳を細める。
「ロックには、恋人が居るんだ。レイチェルさんというらしい」
「恋、人・・・?!」
驚いているティナには頷きを返し、淡々と説明をする。
「彼女の誕生日プレゼントをその場であげようとして、トレジャーハンティングに二人で行った時に事故にあったらしい。
その事故のせいでレイチェルさんは記憶喪失になってしまったらしい」
「記憶、喪失・・・・・・、」
「ロックはレイチェルさんの新しい人生の為に彼女の傍を離れた。
でも、ロックが再びコーリンゲンに戻った時、レイチェルさんは帝国の攻撃のせいで命を落としてしまっていたんだ。
・・・死ぬ直前に、記憶が戻って、最後にロックの名を呼んだそうだ・・・」
「亡くなってしまったのなら・・・今も恋人とは言えないんじゃないの?」
今は、貴女が・・・。
その言葉が喉まで出かかったが、ティナはそれを押し留めてを見た。
はゆっくりと首を振って、口を開く。
「薬を使用して、レイチェルさんの遺体の腐化を止めたんだ。
そして今も、魂を呼び戻す秘宝、不死鳥の力を探している。・・・だから、フェニックスの洞窟に行ったんだろう」
「ま、待って! フェニックスの洞窟へロックが行って、魔石とか見つけたら・・・!」
「彼女は生き返る、という事か」
瞳を不安げに揺らして言うティナの後にレオが冷静に言う。
それには頷き、笑みを浮かべた。
酷く、悲しげな、笑みを。
「私は、中途半端は嫌いなんだ・・・。
もし、レイチェルさんの蘇生に成功してロックが彼女の所へ戻るならそれで良い」
「どうして!? ・・・だって、ロックはが好きなのよ・・・?」
「あいつはレイチェルさんの事だって好きさ」
愛されている事は、分かってる。
はそう言い大きく息を吐いて顔を上げた。
「私は・・・、想えるから良いんだ。ロックが恋人の所へ戻っても、良い」
「そんな・・・どうして、愛し合っているのに・・・」
悲しげに瞳を細めて言うティナに、は微笑んだ。
自分の中のケツァクウァトルが何か言いたげにしている事も感じ取ったが、敢えてそれには触れずにははっきりと言った。
「私がロックを愛しているからだよ」
微笑んでそう言うに、ティナは唇を噛んだ。
今まで知らなかった事実。
何時も自分が欲しい言葉をくれて、何時だって自分を助けてくれた。
そんな彼女に、自分は今何も声をかける事が出来ない。
それが酷く歯痒かった。
そんなティナに気付いたが「ティナ、」と言って彼女を見やる。
そして「ありがとう」と言ってまた綺麗に微笑んだ。
「良いんだ、私は。どんな結果になろうとも誰かを傷つけてしまうだけだから・・・・・・」
「そんな・・・、」
(そうなんだよね、ケツァクウァトル・・・)
きゅ、とレオに握られている手に力を込める。
自分達の今の目標は、仲間の生存を確認する事、という感じになっているが実際は違うだろう。
戦力を集め、瓦礫の塔に乗り込んでケフカを止める。
恐らくケフカは三闘神の力を得ているので、それを破壊するしかないだろう。
三闘神は、全ての魔力の源。
それを壊すとなれば、世界から魔力を消すという事にもなる。
幻獣は魔力で出来ている。ので、幻獣は全て消滅するだろう。
(そう、魔力で命を繋いでいる、私も・・・)
そう思い、は瞳をゆっくりと伏せた。
ケフカを倒し、世界を救っても自分は恐らくケツァクウァトルと共に消滅するだろう。
結局、ケツァクウァトルを自由には出来ない事になってしまうな。と、は思い小さく息を吐いた。
――と、がそんな事を考えていたら肩に置かれた手に力を込められ、気付いたら身体を反転させられていた。
ぐりん、と視界が変わった事に驚きながら「え?」と短く声を発する。
正面にティナの顔が来た、と思った瞬間に両肩をガッと捕まれた。
そして「!!」と真剣な表情のティナに強めの口調で名を呼ばれたので思わず「はい・・・!?」と引きつった笑みを浮かべてそう言ってしまった。
「フェニックスの洞窟に行きましょう!!」
「え? あ、あぁ・・・そのつもりだったが・・・」
「直ぐによ!船を貸して貰って早く行きましょう!!」
「え゛? ガ、ガウ達は・・・?」
「後よそんなの!!!」
そんなのって。と、は思ったがティナの剣幕に押されて何も言えなかった。
それを肯定と取ったのか、ティナは今度はレオに向き直って船を貸して貰う様に頼んでいる。
あのー、ティナ?と、が言うが彼女は「レオ将軍も同行してくれるそうよ」と全然違う返事を返してきた。
「あ、さいですか、」とが言うとティナは立ち上がって荷物を全て持って歩き出した。
そして未だ椅子に腰を下ろしているに「早く行くわよ!」と言うと外へ行ってしまった。
何だか酷く怒った様子のティナにがポカンとしているとレオに肩を叩かれた。
「何を呆けている?」
「あ、否、あの、行動が早すぎると思って・・・」
取り敢えず立ち上がって歩くに、レオは苦笑を返す。
「私は、ティナの考える事が分からずとも無いのだがな」と言う。
それに首を傾げながらは外で待っているティナの下へと歩を進めた。
「フェニックスの洞窟へは元帝国で使用していたインペリアル・エアフォースの物を使用して行こう」
レオがそう言い、帝国空軍の機体のある場所へと案内をする。
空を飛んで行く場所なのか、とは考えつつもロックに思いを馳せた。
(・・・やっと、お前に会える・・・)
そう思うの、胸の辺りが温かくなった気がした―。
そして空を飛んで行く場所なのにお前はどうやって行ったんだ?(オイ)
皆さんやっとですよ! や っ と ! !