「私は、中途半端は嫌いなんだ・・・。
もし、レイチェルさんの蘇生に成功してロックが彼女の所へ戻るならそれで良い」
そう、其れで良いんだ。
(でも、それこそ中途半端―、)
そんな事は無い、
(嘘を吐かないで、貴女の本心はそんな事を思ってはいない)
違う、私の本心はこれだ。ロックが彼女を選ぶなら、其れで良い・・・。
「私は・・・、想えるから良いんだ。ロックが恋人の所へ戻っても、良い」
(何故平気で嘘を吐き続けるのですか?)
想えるからだ、と言った筈だ。
(想えるから? 彼と彼女が新たな幸せを築いて行く中に貴女だけずっと見ているだけで良いと?)
・・・それで、いい、
「良いんだ、私は。どんな結果になろうとも誰かを傷つけてしまうだけだから・・・・・・」
(それこそ、逃げです)
逃げてなんかない! ・・・私は、これ以上皆を、優しい皆を傷つけたくないだけだ・・・!
(戦いが終われば、貴女も終わる)
そう、だからこそ、良いんだ。
(どうでも?)
違う、そういう訳ではない!!
(いいえ、貴女はそう思っている。彼が彼女の所へ行こうが自分の所へ来ようが、構わないと言っている)
違う・・・!
(本心を曝け出せば良い。本当の想いを)
ちがう・・・・・・!
( 本 当 の 、 想 い を )
「」
自分を呼ぶ彼の声が聞こえたと思った瞬間、
私の中で、何かが弾けた―――。
?
今度は高めのソプラノボイスで自分の名を呼ばれてハッとする。
下がってしまった手に持っていたランプを少しだけ上に掲げる様にして持ちながらは呼ばれた方へ視線をやる。
ティナは気遣わしげに瞳を揺らしながら「どうしたの?」と問うて来た。
それには首をゆるゆると振りながら「何でも・・・」と返す。
(そう、何でも・・・・・・、)
無い。
と、言いたい筈なのに言葉は其処で止まる。
喉の奥でつっかえて、出てこない。
何故かは自身が良く理解出来ていた―。
(まだ、貴女は迷っている)
(・・・ケツァクウァトル・・・、)
(嘘を吐く事は、苦しみを体内に溜め込むだけです。
本当の事を、言葉にして吐き出せば良い―――)
(できないよ、)
は微かに俯いて体内の中の幻獣にそう言う。
もう黙ってくれ、そう願いを込めて。
だが、幻獣はそれを拒んで言葉を紡ぎ続ける。
(、貴女は何時もそうだ)
(違う、)
(一人帝国の戦火から逃れた後から、ずっと逃げていた)
(違う・・・)
(本当は帝国が怖くて仕方が無かった。だから怨み辛みで恐怖から逃げた)
(違う・・・!)
(人が怖くなった。自分が人で在りたいと思う癖に、人を恐れた)
(・・・・・・、)
(人で在りたいと思いながら、其れを隠して人を怨み、恐れた。
自分を恐れるから、同じような目で見て、ずっとずっと、)
(・・・・・・逃げてはいない・・・)
(同じ事。 貴女は信頼出来る仲間、愛する人を見つけても未だ迷い続けている)
(・・・元から迷ってなどいない・・・)
(溜めて溜めて溜めて、初めての感情に戸惑って、全てから目を向けている振りをして背けていた)
「違う!!!」
握った拳を横に薙いで、思わず叫ぶ。
突然黙って歩いていたが叫んだ事にティナは驚いて思わず足を止める。
も知らず内に足を止めていたが、それに気付いていない様子だった。
ランプを握る手に力を込めて、は「違う・・・!」と、先程とは打って変わり弱弱しい声で呟いた。
(違わない)
「違う違う!!私は人では無い!!魔力を注がれ、一度死に、幻獣の力を借りて生き長らえている化け物だ!!!」
(、それは違います)
ケツァクウァトルが優しい声で諭すように言うがは「違う!」と叫ぶように再度言った。
「人間は・・・強欲で、汚い・・・! 私を何時も捨てる!!だから人は嫌いだった!!」
(貴女は優しい。本当にそう思えてはいない)
「優しくなんか無い!全然優しくなんか無い!! 自分が人を巻き込んでる癖に相手を怨む、最低な女だ!!」
「!!それは違うわ!!」
脳内に響いてくる声―。
それが酷く怖くなりは耳を塞いでいたが、声は脳に響いてくる。
それを掻き消すかのように叫ぶように言葉を発するの手を、ティナが掴んだ。
「貴女は優しいわ! だって・・・私を助けてくれたじゃない!!」
「ティナ・・・」
「・・・、確かに人は強欲だわ。でも、全てが悪い人間では無い事を貴女は知ったはずよ」
ティナに手を優しく握られ、はゆっくりと頷く。
それにティナは優しい笑みを浮かべ、口を開く。
「大丈夫だから、逃げないで」
良いのよ。
ティナはそう言って、を優しく抱き締めた―。
真正面から伝わってくる、優しい体温。柔らかい体。
「ぁ、」とは小さい声を漏らし、おずおずとティナの背に手を回す。
ティナはの背を優しく叩き、「良いのよ」とまた言う。
「もう溜め込まなくっても。 ロックに会ったら全部吐き出しちゃえば良いわ。
――大丈夫、そんな事でロックはを嫌ったりなんかしないから。寧ろ自己嫌悪の嵐でしょうね」
「でも――、「でももだっても無しよ!」
ティナはそう言うと、から少し離れて微笑んで「ね?」と言う。
小首を傾げてそう言うティナに、は少しだけ微笑む。
「・・・ありがとう、ティナ・・・」
「良いのよ。さ、ロックを探しましょ?」
の手を握ったまま、ティナが歩き出す。
気付けばランプはティナが持っており、引っ張られている自分には瞳を丸くする。
まるで、何時もと逆の立場だ。
誰かに手を引いてもらうのは、こんなにも安心出来る事だったか。
そう思いつつ、は前を歩くティナの背を見詰めた。
(・・・私は、確かに逃げているのかもしれない、)
自分自身から、
(ティナやセリス、エドガーやマッシュ・・・・・・、他の皆だって、優しい事を知っている、信頼だってしていい事も)
唯―――、
其処まで考え、は瞳を伏せる。
(ロック・・・・・・、)
貴方に対してだけは、酷く自信喪失する。
何故? それこそ答えは簡単だ。
愛しているからこそ、だ。
そう考えながら進んでいると、少し開けた所に出た。
何だと思い辺りを見渡していると、前方から微かな物音が聞こえてきた。
その音に導かれる様に歩を進めていくと―――、
「・・・ぁ、」
視界に入ったのは――、
「・・・・・・?」
愛しい、銀色―。
長いので一旦きります。
やっとだよおおおおおおおおお!!!!